東方夜光録『ヤコウロク』   作:◆◇夢幻水晶◇◆

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今回は少し短めなお話です。

次回で地霊殿に帰ります。

熱中症になりかけたせいで頭が録に回りません。

それでは本編どうぞ。


十九幻~半死の対価~

 「……っ!?痛っ!?!?」

 

目が覚めていきなり身体を起こそうとしたのが大きな間違いだった、即座にとんでもない筋肉痛に襲われたからだ。

寝ぼけていた寝起きには十分すぎる痛みで、問答無用で目が覚めた。

覚醒した意識とともに記憶が戻ってきた、天狗二人に背中から刺されて内蔵ごとズタズタに引き裂かれる記憶。

背中に背負ったはずのものを守れなかった記憶。

 

 

 「……く……そっ……!!」

 

 

少し動かすだけでも筋肉が尋常じゃない痛みを発してもう動かすなと懇願してきた。

15分弱の『狼化』の代償がこれほどとは思いもよらなかった、しかもどうやら数箇所骨にヒビがいっているようで筋肉痛とはまた違う痛みが時々走るのだ。

そこでふと思い出したかのように手の感覚が戻ってくる。

焦燥感と激痛で気にする余裕すらなかったが気がついてみれば俺の左手は誰かに握られているようだった。

 

 

 「………っ…!」

 

 

痛みに耐えながら首を捻ると俺の手を胸に抱くようにして穏やかな寝息を立てている文がいた。

 

 

 「よかった……でもどうして……」

 

 

あの白黒天狗はそもそも文に用があったはずだ、邪魔する俺がいなくなったのだから当初の目的を遂行するのが普通のなのではないだろうか。倒れた俺。弱りきった文。格好の獲物だろう。

 

 

 「まぁ、考えるのはよそう……。」

 

 

折角お互い無事でここにいるのだ、過ぎたことを案じるより今を喜ぼう。

 

 

 「おいおい、そんなに心配しなくてもいいじゃんかよ」

 

 

初めは気がつかなかったがよく見ると文の目元は少し赤くなっていて、俺の為に泣いてくれたのだと知れる。

あぁ、そうか、この子はいい子なんだ。

痛む身体をやや無理に動かして胸に抱かれていた手を抜き、髪を撫でてみる。

その髪は日に当たって少し熱をもっていてとても柔らかいサラサラとした髪質で、撫でていると少し楽しくなってしまい、俺は片手で髪の毛をいじり始めた。

しばらく髪の毛で遊んでいると閉じていた目がぱちりと開く。

 

 

 「ん……っと……憩夜…さん? 」

 

 

俺の姿を認めたと思うと文はみるみる慌てだした。

 

 

 「あ……っと……えと……これは…ですねっ!」

 

 

ちょっと面白い、全身の痛みも一瞬忘れるほどに微笑ましい光景だ。

しかし慌ててる場合ではないと思ったのか少々真面目な表情を浮かべたかと思うと急に謝った。

 

 

 「このたびは本当にごめんなさいっ!!!記事のためとは言え憩夜さんをあんな目に合わせてしまって!!!」

 

 

我ながら甘いとは思うのだが可愛い女の子に謝られたら許さなければならないと思っているので、若干でも説教してやろうとか思っていた気持ちは彼方へと吹き飛ばして何も言わずに許した。

 

 

 「まぁ、大変な目には遭ったけどこうして生きてるしなぁ……いいよ別に。にしても文の方はどうもないか? 」

 

 

こうも簡単に許してもらえるなどとは夢にも思わなかったであろう文はきょとんとして次の瞬間必死の形相でまくし立てた。

 

 

 「そんなに簡単に許さないでください!! 比喩抜きで死にかけたんですよ!?!?」

 

 

話を聞くに俺は天狗二人に背後から切り裂かれたあと河童や白狼などの文のつてを迅速且つ最大限に使って助けを請い、失血で死に至る寸でのところで何とか命を繋ぐことが出来たのだという。

 

 

 「俺としては守りたかった奴を結果的にとはいえ守れた、それだけでもう十分なんだけどな……」

 

 

口をついて出た素直な気持ちに自分で失態を悟った、記憶を辿れば文を助けるときに何も言わずに助けに入ったはずなのだ。ましてや当初は打倒せんとまで思っていた相手、ならば返ってくる疑問は当然。

 

 

 「私を守りたかった? どうしてです……? あの時は貴方の気迫に押されて何も聞けませんでしたけど不思議だったんです、白黒天狗に加勢こそすれど助ける義理なんてどこにもないんじゃないのかって。」

 

 

あぁ、やっぱりそうなるよなぁ……仕方ない、ここは大人しく答えるとしようか。

 

 

 「助けたいって思っちまったんだよ、お前のいいところ見つけちまった。女の子一人に男が寄ってたかってってのも気に食わなかったけどな、それよりもこいつを護りたいって思ったんだよ。」

 

 

先はあんなにも恥ずかしいと思っていたのに言葉にしてみれば案外すらすらと出てくるもので自分でも驚いてしまった。小恥ずかしい事は言ったがこれは嘘偽りのない真実だ。

 

 

 「守りたかった? この私をですか……? あちこちで恨まれるようなこの私を……? 」

 

 

俺は無言で頷いた。

文はそう言いながら両手を自分の胸に当て、笑い泣き、こう続けた。

 

 

 「あはっ……本当にヒーローっているものですね……っ、こんな私まで救おうとしてくれるなんてほんと救えないヒーローです……」

 

 

 「救われてるさ、現に俺の目の前にお前が居る。十分すぎる。」

 

 

そのまま手を伸ばして撫でてやろうと思ったのだが限界が来てしまった、せめて話が全て終わるまではと思い気を張っていたのだが守りたかった人が目の前に居る事を確認できた安心感と言いたいことを言えた満足感で完全に緊張の糸が切れてしまい意識が遠のく。これは眠気によるものか気絶に近いのか、幾度となく気絶を繰り返したが今この時だけはどちらが原因なのかは判断がつかなかった。

 

 

 「憩夜さんっ?! 大丈夫ですか!?」

 

 

聞こえてくる声に距離を感じる……

 

 

 「大丈夫だ、また後でな……」

 

 

思った言葉は声となって発せたか、つもりで留まったのか。それは俺にはわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回で地霊殿に帰ります。
そして近いうちに彼にはあそこに行ってもらいます。
どこかって? それを言ったらおしまいですって(*´ー`*)

それではまたお会いしましょう( 。`- ω -´。)ノシ
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