色々なしがらみから解放され、やっと自由に筆を進めることができるようになりました。これからまた書き始めていきますのでどうぞお付き合いくださいませ。
謝罪はほどほどに本編を
(∩´。•ω•)⊃ドゾー
二十幻 ~地底への帰還~
「全く……気を
控えめなドアの開閉音がしたと思ったらそこには食材調達に出かけていた河童がいた。
ぐしぐしと目元を拭ってから極めていつもの調子になるように努めて口を開く。
「盗み聞きとは趣味が悪いじゃないですか河童。」
隠そうとしていることすら理解が及んでいるのだと文に知らせるように少し微笑を浮かべ、すぐに呆れた顔になって言った。
「いやぁ、君は可愛いよね。」
突然の褒め言葉にいつもの癖で警戒心を抱いてしまう。
「な……何ですか急に……褒めても本当に何も出ませんよ…?」
河童はまた何かを悟ったような顔をした。
私は河童のこの顔が嫌いだ、悪い奴ではないことは知っているのだがただその察しの良さがムカつくのだ、ただの好き嫌いの話だが河童だけは仲良くなれそうにはない。
「そうではなくてね、君も女の子なんだなぁって事さ。王子様を待っていることなんてなかなか出来ることじゃないよ?いくらここが幻想郷でも夢希望が全て叶うわけではないのだからね。」
気を遣わざるを得なかったと言ったが要は外で聞かれていたのだろう、今は寝ている彼との会話を。
よりにもよってこいつに……。
「王子様ではなくヒーローです!!というかアレを聞かれた以上生かして返しません!!ここで抹殺します!」
「くくく……そう言いながら顔を赤くしてしまうのが可愛いと言ってるんだよ」
本気で行こうかと考えていると河童は矛を収めた。
「おや、お目覚めのようだよ?―――――――――――― 」
ん……俺はさっき落ちたのか……一体どれくらい……?
「よかったですよ本当に、一時は本気でどうなるかと思ったんですから。」
「おはよう
目を開けると女の子が二人こちらの顔を覗きこんでいるという、ちょっと嬉しいことになっていた。
その目の前の現状を理解して小さくもう一度呟く。
「俺は守れたんだな……この手でじゃないにしても守りきったんだ……」
達成感と自己満足を孕んだ一言は案外独り言とは行かなかったようで、文が返事をした。
「今度は相手だけじゃなくて自分も無傷で完璧に助けてくださいね?助けた相手に心配をかけさせるなんて格好良いとは言えませんよ? 」
ずっといい思いに浸っては居られないようで手厳しい言葉をもらってしまった、だがそんな厳しい事を優しい笑顔で言うものだから反論も出来ずにこちらも微笑を浮かべてしまう。
「もっと強くなるよ、それで今度は完璧に助ける」
「はい、いい返事ですっ」
そう言って破顔した。
やはり思い切りの笑顔をした娘は輝かしい。
「包丁の音するし…もう…いませんよね……?」
突然きょろきょろとあたりを見渡し始める文。
一通りあたりを確認するとこちらを向き直る。
「あのですね、少しの間でいいので目を瞑っていていただけませんか? 」
「こうか? 」
言われた通りに目を瞑る。
しかし少し待っても何も起こらない、いたずらでも仕込まれているのかと思い声をかけてみる。
「もう目はあけていいのか? 」
問うと慌てたような声が近くから返ってきた、どうやらベットの隣に置いてある椅子からは動いていないらしい。
「だ、ダメですよっ!うぅ……結構恥ずかしいですねこれ……」
後半は小声で言っているが二人共黙ってる状況で言っても小声の意味なんてないのである。
しかし一体何を考えているのかを推測する時間的余裕は皆無だった、急に唇に襲ってきた感触に思考のすべてを持って行かれてしまったからだ。
「………ーーーッッッ!!」
またあの感覚だ、椛の時と同じ脳が焼けるような沸騰するようなあの感覚。
甘い陶酔感と
正確には分からないが五秒ほど身を任せていると今まで支配していた感覚が一気になくなった。
「なんとなく何したかはわかるけど……一体どうして…?」
「強くなるためのやる気の足しになるかと思いまして……」
「そんなに恥ずかしかったならわざわざ唇にやらなきゃいいのに」
半ば笑いながらそういうと顔を真っ赤にした文はあわあわと弁明する。
「だ、だって頬にしたら自分に負けたみたいでなんか嫌だったんですもん!!」
一体自分自身の何に負けるというのだろうか、そこについてはよくわからなかったがどうやら文としては最上級の応援をしてくれたのらしかった。
「というかなんでそんなに貴方は普通なんですか、私はこんなにも恥ずかしいというのに……物凄く納得がいかないんですけど……?」
『私は不満です』と文の膨れた頬が言っている。
「いや、こっちとしても物凄く照れるんだけどね、自分でしたことなのに顔真っ赤にして照れてるどっかの誰かさんが微笑ましいものだからさっきまで抱いてた恥ずかしさがどこかにいったというか何というか。」
「くっ……なんということですか…ならば今度は恥ずか死んでしまうようにしましょう。」
よくわからない対抗心を燃やしている文だったがふと気になったことがあった。
「今度は……って、もしかしてまたアレするつもりなのか? 」
「さっきのは……こちらのダメージも大きいので貴方が蛙にでもなった時にまたしてあげますよ。」
いきなり蛙とは一体どういった思惑でそんな事を口にしたのかと思案していると先ほど奥へと引っ込んだはずのにとりがひょこりと顔を覗かせて答えを置いていった。
「何だ、やっぱり王子様でも期待しているんじゃないか。素直じゃないなあ君は。」
なるほど、それなら合点がいく。王子様と蛙、と来れば行き着く先はひとつと決まっているものだ。
「河童?! どうして?! 包丁の音はまだしているのに! 」
台所のある場所からは確かに未だに包丁がものを刻む軽快なリズムが聞こえてくる。
ああ、正確過ぎるのか、まったくもって気がつかなかった。
「私のバックパックは基本機械の塊なのを忘れたかい? 出歯亀というのは趣味じゃないんだがね、これほどまでに面白いものだとうっかり歪んでしまいそうだよ。くくく。」
「貴女って人は全くもって懲りない!! 本当に抹殺します!! 私が羞恥で死ぬ前に!!」
台所の方で皿が割れる音、木材の破砕音、何かが壁に連続で突き立つ音。
それらの音が止むのにはたっぷり三十秒ほどを費やし、気になって体が痛むのを耐えながら台所へと向かってみると目も当てられない惨状が広がっていた―――――――。
「もう、行くんですか? 」
「ああ、社会的な地位もなんとか守れたし、地霊の連中に何も言わずに飛び出してきちまったから一回はどちらにせよ戻らないといけないから。」
文、椛、にとりの見送りに来てくれた三人それぞれを見渡しながら各々に礼を言う。
来たばかりの時に自分を信じてくれたこと、疑わずにいてくれたこと、命を助けてくれたこと。
短いようで色々あったもので、今生の別れでもないのにお互いに激励を送り、別れを済ませた。
戻るためには渦の巻いた空をまた突っ切って行かなければいけないわけだが、戻るときは一体どうなるのだろうか、行きはパルスィの助言通りにすればなんとか上手くいった。
しかし帰りの方法なんて一言も聞いてないことに渦に向かう最中に気が付く、妖怪の山の連中にも聞いたがにとりも椛も山から出ないから分からず。
唯一の手がかりの文はというと『ひょいっと飛び降りたらぐいーんと。』としか言わずどうすればいいのかさっぱりだった。
せめて概念的なものだけでも理解しようと道中考えていたのだが結局どこにも行き着かずに渦へとたどり着いてしまう、行きの時にパルスィが自分の許可さえあれば通り抜けは自由だと言っていたが肝心の渦というのは妖怪の山付近の崖に接するようにして存在しており、先が全くもって見えないためそこを妖怪の山側から通るというのは崖から身を投げるに等しい恐怖があるのだ。
「とやかく言ってもしょうがないか……よっと!!」
意を決して飛び込む、すると懐かしくも不快なGが身体にかかった。
「これは吐きそう………」
下に向かって落ちたはずなのにいつのまにか頭から落ちている感覚に襲われ、気が付けばきりもみ回転していたりと、妖怪の山へと向かった時とは明らかに異なる不快感だ。
そしてそれらが全て終わった時に驚くことになる。
「またか!?!?」
渦から放り出されたと思ったときにはもう既に自由落下を始めていた。
最初に
「上手くいきゃ胴体着陸くらいできんだろ」
空中で上着を脱ぎ捨てて脱いだ衣服を片手で掴みつつばさりと黒い翼をはためかせた。
瞬間的に虚空で姿勢を制御する。
「扱いづらいんだよな…翼って……」
事前に少しだけ練習はしたものの、前提として翼とは人間には存在しない部分である。
それを、完成形とはいえ生えたばかりで動かすというのはなかなかに難易度の高いことだった。
「落ちる落ちる落ちる落ちる!!!!」
いくらかマシにはなったが飛ぶ事なんて出来はしない。
向こうでもう少し練習しておくべきだったと別段急いでいる用もないのに急いた自分を悔やみながらエスカレータの倍程度の速度で落ちていく。
「あとどれくら……いっ!?!?」
下を向いて気がついた、ここが目測上空数千mであることに。
怖い、物凄く。低速落下といえど怖いものは怖いのだ。
「あまり下を見るのはやめておこう………」
結果として危なげなく着地することは出来たが、早いところ自由に飛行する術は身につけないと何かと不便だ。
上手く利用できれば戦闘にすら活かせるかもしれない。
「なんか久しぶりな気がするな、地底」
一週間も離れていないのに妖怪の山での毎日の濃度が高すぎて一月近く過ごして来た気分だ。
ここから地霊殿までの距離を思い出し、無意識に『獣化』しようとしたが既のところで解除した時の筋肉痛が脳裏をよぎったのでやめた。
しばらく歩くとやがて旧地獄へと入って行った。
酔った妖怪、客引きの妖怪、ガラの悪い妖怪と妖怪ばかりだがすれ違う妖怪たちは人間と特に変わらない生活風景を作り出していて、人外でも不思議な事に忌避の念を抱かないな、などと特に何でもないことを考えていると、丁度真横数mのところに設置されていた居酒屋のスライド式のドアが破砕音を立てて吹き飛び、欠けた木材とともに一人の男の妖怪がボールのように飛んできた。
「危なっ……」
慣れというのは恐ろしいもので、半分視界の外からの飛行物を特に顔を驚愕に染めることもなく受け止めるようになってきている。
どうやら飛んできたのは男の妖怪らしく、すっかり目を回していた。
「そういう客がいるから折角美味い酒が不味くなるんだ」
そう言いながら壊れたドアの奥から現れたのは、一人の普通の女性だった、額から一本の角が突出した以外は。
「これとそれは貴女が? 」
腕の中で目を回している妖怪と粉砕されたドアを指差して確認を取ると、その女性は不敵な笑みを浮かべた。
「そうさ? ドアは少しやりすぎたがそいつはご愛嬌って奴だ、にしてもアンタ随分染まってるねぇ」
ドアの破壊を愛嬌で済ますのはどうかと思ったが染まっているという言葉が引っかかった。
「それは一体どういうことだ? 」
「あれ?聞いたことないか? 格が上の妖怪は魂を視ることが出来るから大きさも魂の色も自由にわかるのさ」
随分前に永琳が言っていたそんなことを気がする。
「そんなことはどうでもいいんだが、アタシはアンタに興味が湧いちまった、酔い醒ましに一戦どうだい?」
よくない、心底どうでもよくない。
「交えたら色々話聞かせてくれるかい? 」
肩を回しながら問う。
すると不敵な笑みを絶やすことなく返事をした。
「アタシに勝てたら何でも答えてあげるよ」
「露骨に目の前に吊り下げられてる餌にのこのこ食い付きに行かなきゃいけないってのが癪だ」
隠す気もなく溜息を吐くと、向こうは少しだけ申し訳ない様な表情をした。
「出来ることならほんのちょいとでいいから自然に誘いたいんだけどね、粗くて悪いね。」
それなら、餌で釣るような真似をやめればいいのに、とは思ったが口には出さずに心の中にしまっておく。
「そういえば聞いてなかった、アンタ名前は? 」
「憩夜」
「ケイヤか、気づけばアタシも名乗ってなかったね」
対戦相手は思い出したように手を打ち、自分の名前を告げた。
――――――――――――――――力の鬼、
どうでしたでしょうか、帰ってきましたよ地底に!!地霊メンバーが待ってるんです!疾く物語を進めなければ!(使命感)
次回は戦闘シーンです。
一話丸々戦闘にするつもりなので描写とか描写とか頑張ります
((((;゚;Д;゚;))))カタカタカタカタカタカタカタ
それではまた次回お会いしましょう( 。`- ω -´。)ノシ
P.Sオリジナルの作品書き始めました。
※誤字脱字等がありましたらコメントで教えていただければと思います。