東方夜光録『ヤコウロク』   作:◆◇夢幻水晶◇◆

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思ったより書くの時間かかった………こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ……。

今回は地霊殿に戻って来た憩夜君のお話です、本日もまたガチバトル。
幻想郷は今日も平和です。

そんなこんなで本編(∩´。•ω•)⊃ドゾー


二十一幻 ~酔い醒まし~

お互いに構え、礼に(のっと)って宣言する。

 

 「いざ、尋常(じんじょう)に」

 

 

 「勝負だね」

 

 

基本的に剣術をメインで習っていたが、じっちゃんには剣術よりも体術の方がややキレがあると言われていた。

 

今回に至っては相手は素手だからというのもあるが、こちらは素手でいく。

 

じりじりと間合いを詰めていく間、少し気になることを見つけて動きを止める。

 

 

 「その(さかずき)は? 置かないのか? 酒が入ってるんだろ?」

 

 

 「あぁ、これかい? 言ってなかったね、アタシは鬼だから力をセーブするためにこれを(こぼ)さないように闘うのさ。」

 

 

鬼……そうか、あれは有り余るパワーを逆手にとった抑制具。

 

 

 「馬鹿にしてるわけじゃないのか、そいつはよかった。」

 

 

相手の状態とはいわば片手を塞ぎ、時に水面の荒立ちの調整に全身の筋肉を使う事になる擬似的な『満身創痍』。

 

向こうとしてはこちらの命を気遣い、同時に自分も闘いを楽しめる画期的な手法なのだろうが場合による。

 

その説明がなければ完全に舐めきっているものだと思い、ある程度心得のあるものなら闘う事すらやめる程の行為だ。

 

個人としても常人より優れた技術を持っている自負はあるのだ、小馬鹿にされてはかなわない。

 

 

 「あぁ、久しぶりにいい獲物が釣れたもんだから早く拳を交えたくてさ、説明を色々省いちまったのは詫びるよ。」

 

 

その言葉に嘘は無いようで、空いた片手を握ったり解いたりしながら表情はこれ以上ないくらい楽しそうだった。

 

ここまで闘う事に楽しみを見出しているやつがいるのか……これは本当に幻想郷(ここ)に来た甲斐(かい)があったかもな。

 

 

 「いや、俺こそ申し訳ない、再開と行こうぜ。」

 

 

そう言って再度構え直す。

 

構えは攻防一体。

 

出方と、鬼という種がどれほどの強さを持っているのかがわからない以上は迂闊に攻められないと思ったが(ゆえ)の判断。

 

 

 「ふっッ!」

 

 

射程に入っても動く気配のない勇儀(ゆうぎ)に対して、小手調べとばかりに各部位に打撃を打ち込む。

 

五箇所目に掌底を叩き込んだ瞬間俺は飛び退った。

 

 

 「なるほど……これが鬼か……とんでもねぇな……」

 

 

 「一発目は善意と余裕の譲渡のつもりだったんだけどねぇ、もうバレちまったかい? 」

 

 

先の連撃、相手の身体の具合を調べるつもりで放った。そこまではいい。

 

しかし、拳を介して鬼の身体自身がして来た返事は瞠目(どうもく)するには十分すぎた。

 

 

 「これが鬼……筋肉、内蔵、関節の構造、その果てには骨格まで人間のそれとは違う……」

 

 

 「へぇ、ここまで早く気づかれるとは思わなかった、やるね、お前さん。」

 

 

ひゅう、と口笛を鳴らす勢いで感嘆の声をあげる勇儀。

 

 

 「降参するかい? 」

 

 

このまま普通に闘っても勝てない、そんな思考が頭をよぎったがすぐに振り払った。

 

上等だ、不本意に始めた勝負事だったがなかなかに面白いじゃないか。

 

 

 「冗談」

 

 

 「そうよな、降参ってツラじゃない」

 

 

ひとまず『人間の本気』で行こうか、鬼相手では頑丈さ故に力にものを言わせることも出来ない。

 

ならば速度で、幻想郷にの尺に直された俺自身の限界の速度で打撃を叩き込もうじゃあないか。

 

 

 「ふっ!」

 

 

地面を打ち砕かんばかりに足に力を込めて勇儀へと向かう。

 

初撃は愚直に、だが小細工を視野に入れて右正拳突きを相手の右脇腹めがけて繰り出す、避けさせる為に。

 

 

 「ふむ、なかなか」

 

 

半身―――――相手に正中線を隠すように斜めに立つ事で突きが避けられる。上手くいったッ!

 

その正拳突きは本命ではなくフェイント、瞬間的に突き出した右の手首を猫のように曲げて手の甲側の手首を勇儀の顎に向けて走らせる。

 

 

―――――『鶴閃(かくせん)

 

手首を曲げた際、拳を握った状態だと余計な負荷が腕にかかるため一旦拳を解き、指を全て伸ばして指の先を全て合わせる。

 

手首の曲がりと指の形が鶴のようで、正拳突きからの切り替えが閃くように疾い為にこの名が付けられた。

 

 

 「ふむ、いい手だ」

 

 

その閃きを見切り、それでいて尚声を出す。

 

余裕が有り余っている証拠だ、もしかすればとは思っていたが予想通りに収まってしまった。

 

いとも簡単に避けられる。でもそれで終わるわけじゃない。

 

 『七禍一拍(なのかいっぱく)

 

先ほどの正拳突きから連なる、鶴閃、左正拳突き、肘、掌底、膝、蹴りの合計七つの合わせ技だ、最後には相手から距離も取れるので個人的に好きな技だ。

 

そのすべてを叩き込み、距離を取って顔をあげた時の俺はさぞ苦い顔をしていただろう。

 

 

 「鬼ってなんなんだよ……文字通りの化物じゃないか……っ!」

 

 

――――――――――無傷

 

 

この技は急所撃ちも存在し、大きな隙を伴うものもあるため攻防一体の型になっている動きもある。

 

それなのに初撃以外は全て防御どころか在りありとわかる隙にも手を出さず、味わうかのように受けきったのだ。

 

鬼は。

 

 

 「この幻想郷には弾幕使いしかいないからこういう肉弾戦は久々でね、アタシとしてはこっちのほうが好みなんだ、一回目は零距離での弾幕かと思ってちょいと驚いたけどそうじゃないなら、と思って楽しませてもらったよ。」

 

 

戦闘中であることも気にせず長々と感想を述べるその口調には痛みを我慢している風でもなく、ただ純粋にそう思ったからそう言った、それだけに感じた。

 

 

 「次はこっちだね、避けな、骨じゃ済まないよ」

 

 

推定五メートルあった距離をステップの様な軽い動作で(ぜろ)にしたかと思うと勇儀の拳は眼前に迫っていた。

 

身体を捻るのは間に合わないと判断して首だけを先に回して追従させるように身体の軸をずらす。

 

 

 「いい神経してる」

 

 

前腕部まで通過した勇儀の腕はそのまま引きちぎるかのように俺の頭を薙ぎ払う。

 

俺と同じことをすると直感的に察して横跳びしたが、この飛び方はあまり衝撃を殺せない。

 

 

 「ちっ……普通に痛てぇ……あんたの腕が肘まで横に来てたら死んでた」

 

 

大木の幹をそのまま振り回したような質量感、大型機械のような馬力、嫌になってくる。

 

 

 「おお、見なよアンタ、観客が集まってきたよ。」

 

 

言われて周りを見渡すと、まるで俺たちのリングを作り出すかのように大きめの人の輪が形成されていた。

 

厄介だな……逃げるつもりは端からなかったが簡単に降参の一つも出来ない。

 

 

 「こりゃアンタがいくら強くてもすぐ負けるなんてわけにはいかないな」

 

 

 「負ける気なんてないんだろ? 勝ちしか見えてない眼ェしてる。」

 

 

楽しいな、素手の闘り合いは。

 

ふと考えていた事に気づかされる、いつのまにか楽しんでいた、闘いを。

 

そろそろ俺もじっちゃんに似てきたのかね……『いずれお前も理のある闘いを楽しめる日が来る』、そんな事をいつか言ってたっけ。

 

 

 「行くぜ」

 

 

短く言って地を蹴る。

 

今度は殴りに行くのではなく蹴り。

 

相手の数歩前で跳び、身体に縦と横の捻りを加えて脳天目掛けて脚を叩き込む。

 

 

 「そうこなくっちゃ!」

 

 

精一杯の速度を以て脚を振り下ろしたつもりだったが勇儀は当たる直前に顔を上げた。

 

彼女の額には鬼特有の角がある。

 

現状が導き出した答えは―――――――

 

 

 「がっ……!?」

 

 

脹脛(ふくらはぎ)の貫通。

 

勇儀は俺の放った蹴りと同じ方向に首を動かして勢いを殺し、俺の体重が加算された頭を振るって俺を観客側へと放り投げた。

 

こういった事に慣れているのか見事に割れて道を作る観衆。

 

その中を俺は二回跳ねて貫かれた足以外を地に着いて放り投げられた勢いを止めた。

 

 

 「くぅ…いっつ……」

 

 

大量の血を(したた)らせる足は痙攣(けいれん)しており、吹き飛んだ際に散ったのか俺が通った線上には一筋の血の道が敷かれている。

 

まだいける、こんなに早く使うことになるとは思わなかったけど仕方ないな。

 

俺はポケットから河童にもらった小瓶を取り出し、栓を開けて傷口にバシャリとかける。

 

泡を立てて傷を治していく様を目視して完治しないままクラウチングスタートをするように駆け出す。

 

 

 「簡単に終わるかよっ!」

 

 

拳から黒い腕輪を出して吹き飛ばす事に特化させ、構えを変える。

 

今までの攻撃の型から全てが自由な蛇の型へと。

 

 

 「その気概(きがい)や良し!!かかってきな!」

 

 

突き出された拳と下から生えた膝を”ぬるり”と避け、下腹部に掌底を添える。

 

―――――『影縫(かげぬい)

 

相手の攻撃を紙一重で避け、最奥(さいおう)に潜り込み全霊で浸透系(しんとうけい)の攻撃を打ち込むだけの技。

 

難易度があるとすれば攻撃を入れるまでの明確な型がなく、自力で最奥まで辿り着かなければならない点である。

 

いわば去なしの最終形態、最速、最効率、最強の浸透系が求められる。

 

大丈夫、『弾く』だけなら弾幕以外にも効く事は事前に把握してる。

 

―――――裂帛(れっぱく)の気合と共に打ち込む衝撃

 

身体の重心を斜め下から入れ込んだ一撃は腕輪の能力で吹き飛ばす事に強化され、相手に足で地面を踏みしめる事すら許さずに空へと放る。

 

 

 「最高だよ!!こんな隠し(だま)があるなんてねッ!!」

 

 

その一撃に勝ちを見たのだが勇儀は空中で盃を器用に操作して酒を溢れないようにした後に姿勢制御に移行する。

 

彼女が再度地に足をつける頃にはもう全てが完了していた。

 

 

 「本当信じられねぇよ……今の全力だぜ……?」

 

 

もはや驚かなくはなってきたが、それでも落胆はする。

 

もう降参しても良いのでないかとすら思い始めているほどだ。

 

 

 「知ってる、どこにも隙も無くて動きも老獪(ろうかい)、気迫だけで私が少し()押された。」

 

 

ふむ、と何か考えるように顎に指を添える勇儀。

 

僅かな間逡巡(しゅんじゅん)した後意を決したのかこちらへと向き直る。

 

 

 「悪いが、ルールを変えさせてもらう」

 

 

 「…………どう変える? 」

 

 

 「簡単さ、私の酒を零すルールから私の一撃を受ける、もしくは(かわ)し切れたらアンタの勝ちだ。」

 

 

そのルール変更に観衆がざわめく。

 

『あの勇儀が自ら制約を?』『今までと違うな』『あの白髪の兄ちゃんにチャンスあげるんじゃないか』

 

などと耳を澄ませば色々と聞こえてくるがあくまで推測、宛にはならない。

 

 

 「それはあんたの全力を見せてくれるって事か?」

 

 

自分で真意を問いかける。

 

しかし帰ってきたのは否定。

 

 

 「いや、本当に全力でやったら観客に迷惑がかかる、それと………アンタが間違いなく死ぬ。」

 

 

俺に対する配慮か、なるほど。

 

それはありがたいな、こんなところで死ぬわけにはいかないんだから。

 

 

 「分かった、呑もう。」

 

 

俺は相手の心を汲みんでその変更を受け入れることにした。

 

勝算が出来たわけでは決してなく、勝っても負けても格好が付くと思ったからだ。

 

要はただの意地だ、武術を学ぶものとしての、それより、男としての。

 

自分でもくだらない、でも貫き通したい大事なものだ。

 

 

 「あぁ、そうだまた言ってなかったね、全力ではやらないがそれは威力の話だ速度は全力でいくよ。」

 

 

 「そんなに器用な事できるのか? 凄いな……」

 

 

それは純粋に凄いことだ、力だけを抜いて速度だけそのままなんてそう楽な芸当じゃない。

 

 

 「てなワケでちょっと休憩しようか」

 

 

 「は? 」

 

 

俺の発した一言はこれ以上なく間の抜けていたことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたでしょうか? 
一話で全部書ききるつもりが半分になってしまって申し訳ない……。
次本当に終わらせますんで、はい。

そうだ、戦闘描写ですが少し勉強したんです。
あんま変わってなくね?と思う方も描写に関する感想いただけると今後の参考になります。どうぞよろしくお願いします((。´・ω・)。´_ _))ペコリ

それではまたお会いしましょう( 。`- ω -´。)ノシ
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