東方夜光録『ヤコウロク』   作:◆◇夢幻水晶◇◆

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やっと文体を安定というか固定させられそうです、今思えばあっちへフラフラこっちへフラフラしていた……。

今回は日常回、ゆったりとした時の流れをどうぞお楽しみください。(*゚∀゚*)

それでは本編(∩´。•ω•)⊃ドゾー


二十五幻 ~三つ目の策略~

眠い目をこすりながらベッドから身を起こし、大きな欠伸をしながら開口一番愚痴(ぐち)をこぼす。

 

 「さとりの奴…あんなに長く説教しなくてもいいじゃねぇか……まだ眠いぞ……」

 

時計を見れば()四つ、起きるには早すぎるが二度寝するにも惜しい時間だ。

いつも枕元に置いている靴下を寝ぼけ(まなこ)で探すが昨日は長い説教に疲れて履いたまま床に着いた事を思い出してそのままベッドから這い出した。

思えば随分と久しぶりの平和な起床だ、幻想郷にしてからというもの起きるときは決まって気絶していたり面倒事に巻き込まれている最中だったりと心の休まる時がほとんどなかったわけで。さとりがベッドに潜り込んできたこともあったがアレはアレで落ち着かない夜だった。

これも久しぶりだと思ったが朝練をしようと思い立って部屋に立てかけてある二本の刀を手に取り、リビングに顔を出すこともなく地霊殿(ちれいでん)の外に出た。

 

 「ハァッ!!」

 

地霊の庭に手頃な場所を見つけ次第二本の刀を抜き、演舞を始めた。

こうも戦闘続きだと()せる為の演舞が恋しくなる。キレを重視する技もいいが、流麗さを磨く演舞もまた武の中では大事なものだと思うのだ。

緩やか且つしなやかな動きから豪快な怒涛の勢いの技へ。

それぞれに意味を持つ動きを切れ間なく続けることで一つの物語を作り上げる。それがじっちゃんが教える妖魄流の演舞に対する考え。

その考えと物語を交互に浮かべながら一つ一つ動きを重ね、全てを一つにして孤立した動きをなめらかな流れとなるまでひたすらに舞う。

拍手が聞こえてきたのは十二回目の演舞を終えた時だった。

 

 「お見事ですね、憩夜さん」

 

 「剣って野蛮な事以外も出来るのね、見蕩れたわ」

 

 「パルスィ……さとり…よくわかったな、俺が此処にいるって」

 

演舞は気合を必要としない音は精々剣が空を切るか地面の芝生を靴が歩く程度。

常識的に建物の中にいて聞こえる音じゃない。

 

 「こいしが貴方が庭に出たところを見ていたとの情報を得ましたので」

 

なるほど、外に出るのを見られていたのならそんなの音なんて関係ないな。

 

 「それでわざわざ来たってことは何か用があるんだろう? 」

 

 「えぇ、そうよ、憩夜。貴方には今日から紅魔館(こうまかん)に行ってもらうわ」

 

紅魔館? 字面(じづら)が思い浮かばないが館の一つか。というかあくまでも俺に平和で何もない一日は訪れないというのか、世間は俺に厳しいものだな……。

 

 「紅魔館? どういったところなんだ? 」

 

 「紅の悪魔が住む館、人呼んで紅魔館。そこには幼月の悪魔を領主とする多くの者が住んでるわ。吸血鬼、妖怪、妖精に人間、魔法使いや悪魔なんかもね」

 

おとぎ話くらいでしか聞いたことのない種族の名を羅列されるだけでもうすでに目眩がするんだがそんな魔境に俺が何をしに行くというんだ。文字通りに魔境、友好的な吸血鬼なんて想像出来ないし常識の通じる悪魔なんてのもいるはずがない、ただの先入観かもしれないが仮にそれらが居ても無事に帰ってこられるとは到底思わないし思えない。

 

 「何となくだけど勇義から話は聞いたわ、仲間が必要なんでしょ? もしくは確実に敵対しないと分かる人が。」

 

勇義の奴喋ったのか…口に戸を立てるつもりはなかったがパルスィには余計な迷惑をかけたくはないんだがな……。

 

 「そこで私が提案したわけです、厄介ではあるが紅魔組はどうかと。」

 

紅魔組って何かヤクザみたいな呼び方だな。それはそうとして仲間か敵か無干渉かを見極められるのは大事だ、幻想郷のお偉いさんが危ないという情報と今まで会ったことのある人は恐らく的ではないと言うことしか今は分かっていないのだから。

 

 「その紅魔館に行けば少なくとも情報が得られるわけか、なら行かない理由は無いな。」

 

言ってから気がついた、別に自ら足を運ばずとも幻想郷内のコミュニティを駆使すれば白黒までは分からずとも白かグレーかくらいはわかるのではないかと。そう思ったので先の言葉にだけど、と付け加えた。

 

 「地霊殿のコミュニティを使えば俺が動かずとも情報収集くらいは出来るんじゃないのか? 」

 

常識的に考えれば分かることだが我ながらいい考えが浮かんだと思ったのだが返事は薄い反応だった。

パルスィとさとりはお互いの顔を見合わせて肩を竦める。

どういうことかと頭に疑問符を浮かべているとさとりが俺の疑問を覚ったのか答えを持ってきてくれた。

 

 「幻想郷のコミュニティは大きく分けていくつかしかありませんが地霊殿のコミュニティはいささか閉鎖的なのですよ、それこそ異変前よりはいくらか改善はしましたが十分なほどではありません。」

 

異変というとお空が暴走してしまったという例の一件か、その話を思い返せば適任が一人いるじゃないか。

幻想郷に顔が広いであろう人間が。

 

 「霊夢はどうだ? 聞けばあいつは幻想郷各地の異変を解決して回ってるらしいじゃないか。」

 

合点がいったのか手を打つパルスィ。さとりはいつもどおり無表情だが一つ頷いたから彼女もわかったのだろう。

 

 「なるほど、彼女ならいいでしょうね。分かりました、私が伝えておきます。でも時間はかかるので一先ず憩夜さんには紅魔館には出向いてもらいます。幻想郷の危機が貴方にどれだけの時間を与えてくれているかわかりませんから。」

 

何もない休みが欲しいなどと言ったが、結局はこの大きな問題を解決しなければならない事には恐らくどうにもならない。じっちゃんからの手紙の中身は曖昧なものだったがあれは意地悪く情報を隠したわけではないのだろう。

あの人のコミュニティは判らないけど霊夢とは仲が良さそうに見えたしその彼女が住む幻想郷の危機を適当に済ますような事はしないと思うからだ。

本当に時間がないかも知れないしまだ余裕があるのかもしれない。急げば間に合うかもしれないし慎重に行かなければ間に合わないかもしれない。一つの希望としてじっちゃんが俺を送ったのだからせめて一縷(いちる)の光くらいにはなりたいのだ、恩返しとして。

 

 「憩夜さん」

 

呼ばれて初めて考え込み過ぎていたことに気づいた。話の途中なのについ意識が。

 

 「大丈夫ですよ、全て上手くいきます。」

 

心を読んだのか優しい声をかけてきた。彼女の言葉には妙に安心感がある、能力故か自分の心を掬ってくれるような気分になる。能力を差し引いてもいつも無表情な彼女が僅かに表情を浮かべて発する言葉には言霊のようなものが宿っていると思える。

俺の長考故の少し表情の陰りとさとりのかけた言葉。それらをみただけで察したのかパルスィもさとりに続く。

 

 「貴方の考えてることはさとりみたいにわかったりしないけどさ、貴方なら大丈夫なんじゃない? ほら、勇儀にも勝ったんだし。」

 

パルスィの言葉には俺への信頼を大きく感じる。無責任にも聞こえるが俺にとっては十分に勇気づけられる言葉だ。

一つ言わせてもらうなら勇儀とのアレは勝ったというよりは気に入られたとか認められたといった感覚の方が近いと思う。

 

 「お前らにそう言われると上手く行きそうな気がするな」

 

 「「 チョロいわね(ですね) 」」

 

 「お前らなぁ?!」

 

からかい混じりの応援もそれはそれでいいと感じてしまう俺がいて、幻想郷の危機に彼女たちが巻き込まれるとすれば出来ることならこの手で守りたいと思っている俺がいる。不思議なものだとは思ったがそれが愛着なのだと気がつくとすとんと心に落ちた音がした。

 

 「紅魔館に出向く憩夜さんの為に、というか主にパルスィのためですが今日一日はお二人には街に繰り出していただこうかと思います。」

 

 「「 はい? 」」

 

さらっと、あくまでさらっと予定を組まれたんだがこれは意見する権利とかあるんだろうか。

特に意見する気もないが。

 

 「ち、ちょっと!? それどういうことよ?! 」

 

 「あれ? 嬉しくありませんでしたか? 」

 

 「嬉しいか嬉しくないかの問題じゃなくて何の準備もしてないのに突然そんな事言われてもっ…!」

 

パルスィがさとりに抗議し始めてしまったから完全に突っ込むタイミングを失ってしまった。

しかしどうしてそんな事を言い出すのだろう、戦闘続きの俺に対する労いかなにかなのだろうか。

 

 「憩夜さんは構いませんよね? 」

 

さとりはパルスィの抗議にも大して耳を貸さずにこちらに寄ってきて俺にだけ聞こえる声で呟いた。

 

 「パルスィのためだと思ってどうか一つ」

 

それがどうしてパルスィの為になるのかは判らないがそう言われては断る理由もない。引き受けるとしようじゃないか。

 

 「あぁ、構わない」

 

 「ちょっと憩夜?! 何考えて…」 

 

 「俺とは嫌か……? 」

 

 「嫌じゃ……ない……けど……」

 

先までの勢いはどこへやら。パルスィは段々と俯き、最後には自分のスカートの裾をぎゅっと掴んで黙ってしまう。

 

 「なら決まりですね、()一つに地霊殿前に集まって下さい。」

 

 「あぁ」「うん……」

 

テンションに格差はあれど話は無事に話はまとまり、一旦解散することとなった。

さとりはあくまで無表情に、パルスィは変わらず俯いたままふらふらと、俺は頭に疑問符を浮かべながら各々が各々の家に戻った。

パルスィの様子がずっと気になっていたからさとりに聞いたりもしたのだがさとりは一向に教えてくれる気配はなく、大丈夫ですよ、楽しませてあげてくださいとだけ言って来た。大丈夫と言われても気になるものは気になるのだがあまり考えすぎるのもよくないのだろう。

更に言えば今日外に行くのにあたり、刀の携帯を禁止されたのはどうしてか。

こちらはさとりにかなり強く止められた。反論しようとしたら二度止められた、大事なことらしい。

 

約束の時間までの間。

幻想郷には幻想郷の通貨があるからと急速に知識を詰め込まれ、些細な反抗すら叩き潰され、貴方は鈍いと謗られるという怒涛の三連コンボを身に受けて精神的疲労を強いられた。鈍いと言われる回数が多かったのは気のせいか。

最終的にそんなにいらないだろうと思うほどの額を持たされ、刀を没収され、少し跳ねていた髪を梳かされて予定の五分前に地霊殿の入口に移動させられた。

 

 「なんだったんだあの二時間は……」

 

うっかりそうこぼしてしまう様な時間だったのだが、地霊殿を出た瞬間からほぼ時間を経ずに待ち合わせ場所に現れたパルスィに視線と思考を全て奪われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




第25話どうでしたでしょうか。
私としては当初の本作設定の甘さが祟り、四苦八苦しております。失踪だけはするつもりはありませんが(*´∀`*)

この場をお借りして感謝をば、UAが4000を超えました!ありがとうございます!
読んでいただける、それが作者の活力だと強く感じております。ありがたいことです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
誤字脱字の報告、感想、共にお待ちしております。
それではまた( 。`- ω -´。)ノシ

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