26話はいつもの倍です。内容はいつもの倍ゆったりです。
ちなみに私は気がついたのです。成長するには厳しさが必要なのだと……っ!
厳しい感想もお待ちしております(Mとかそういうことじゃないです)
そんなことはさておき26話はデート回です、初めての試みなので不安いっぱいです。
それでは本編(∩´。•ω•)⊃ドゾー
待ち合わせ場所にやってきたパルスィを見てしばらくの間呼吸を忘れた。
彼女はいつもの服ではなく普通の――――俺の元の世界の服を着ていた。それもとてもセンスの良い形で。
ボトムスは
足元には折り返しのあるショートブーツ、こちらも茶色を基調とした物でファーなんかもついていて非常に可愛らしい。
さてここで何故男の俺がここまで女性物の服の知識があるのかと疑問が浮かぶだろう。実のところそれは俺が剣術にかまけて他のことに興味を示さなかった頃に母さんが心配して色々説明してくれた事が原因である。やれ女の子に興味をもてだとか、やれ知識だけならいくらあっても良いだのと色々な理由をつけてきてはこういった知識を植え付けてきた結果なのだ。気持ち悪いとかは言わないで欲しい、ちょっとは自覚してる。
「どう……かな? 」
そう言ってこちらを見てくる目には照れと少しの期待が混ざっている様な気がしたりして。
彼女の気恥ずかしさが伝播したのかこっちまで恥ずかしくなってくる。そのせいでさっきまで考えていた一言を忘れてしまって無難なセリフしか言えなくなってしまう。
「似合ってるじゃないか、凄く可愛いぞ」
気の利いた事も言えなかったはずなのにパルスィはシューっと煙が出てくるんじゃないかってくらい一瞬で赤くなって俯いた。
聞いておいて照れるなら着替えてこなくてもいいのになんて思うけどそれを言うのは無粋だっていうくらいは分かる。きっと自分は恥ずかしいのに俺だから着替えてくれたんだと思うから。
「え……えぇっと……待ったり…した……? 」
気を取り直したのかパルスィが話しかけてくるが俯いたまま目だけで顔を見てくるものだからものすごい上目遣いになっていてまた俺の心拍数が急にあがった。
どうした事だろう、いちいち反応が可愛く見える。
今まで何度か可愛いなとは思った事があるもののここまでではなかった。服が変わったからなのか、しかしそれだけだと自分が現金な人間に感じてきてしまう。何が俺の心拍数を上げているのかそれを突き止めるのは第二の目標として掲げるとしよう。第一は勿論パルスィに楽しんでもらうことだ。言うまでもない。
「いや、待ってないよ」
「ほんとに? 」
「そこで嘘つく理由もないだろ? 」
「それもそっか」
なんだ、ちょっとはわかってるじゃない。
聞こえるか聞こえないかくらいの小声でそんな言葉が聞こえてきたが何がわかっているのか。
「そうだ、憩夜も私と同じ様な格好してるのね」
誤解しないでいただきたいが別にスカートを履いているわけでもないしブラウスを着ているわけでもない。
今日の俺は幻想郷に来た時と同じ私服だった。
「早速行くか? 」
この時間も全く以て悪くはないのだが一日は、特に休日の楽しい時間というものは限られてるのだからゆったりとしているのも勿体無い。
「そうね、行きましょ 」
こうして地霊殿前を出発して旧地獄街道へ繰り出していった。
今回の件に関してここに来て結構経つがほとんど街道をしっかり見て回ることもなかったから何があるかもわからず心配しているという話をさとりに予めしていたのだが特に気にしなくていいと言われた。
それは不味いのでは、と思ったが最後まで教えてはくれなかった。意地の悪いさとりを恨んだ、しかし少し歩いて分かったことがある。懸念する必要もなかった。本当に何でも揃っていたから。そして忘れていた事がある。ここはパルスィの住んでいる場所であるという事を。
「どこがいいか、場所には困らなそうだが…」
「ちょっと気になってたところがあるのよね」
ついて行くとそこはアイスのちょっとした屋台だった。
屋台と言っても店だけでなく、店の前に座れるような椅子がこしらえてあった。
というか暖かくなってきたとはいえまだ冬だ。そんな時期にアイスを選ぶあたりパルスィも子供っぽいと言うか何というか。こう言うと冬のアイスがそんなに好きじゃないように聞こえるがそんなことはない。ただガキの頃に比べて積極的に食べなくなっただけだ。
「何の味にするの? 」
パルスィが鼻歌交じりに聞いてきた。
バニラやチョコは勿論、黒ごま、苺、抹茶。桃や
「俺は抹茶にしようかな、お前はどうする? 」
「バニラがいいかな、今日はそんな気分」
「気分て、了解だ。椅子に座って待っててくれるか。」
「憩夜に任せきりなのもなんか自分がアイス食べたいのを催促したみたいで嫌なんだけど…… 」
「たまにはいいじゃねぇか、こんな機会もそうそうないだろ」
気にするな。そういう意味合いを込めたのが伝わったのかおとなしく引き下がってくれた。
俺は二人分のアイスを買い、パルスィの左肩に腰を下ろした。
「ほら、バニラ」
「ありがと」
片方を私、どちらともなく話し始める。
「ここって何でもあるんだな」
「そうね、一通り不便はしないわ」
「でも医者は呼んでたよな?」
何時ぞやの医者を思い出す。
「あれはたまたまよ、妖怪は規則正しいから滅多に病気とかしないしね、病に伏せるのは人里の人間だけよ」
「人間のほうが不摂生ってそれもどうよ…」
とは言うが布団入ってからゲーム初めて二時間経過、なんて事はざらにあったので強くは言えず。
「あ、憩夜口にアイス付いてる」
パルスィが俺の口の横、頬と唇の間についてたらしいアイスを指で取った。
「悪いな」
「いいのよ、でも……これどうしよう…?」
「どうしようって食べればいいんじゃないか? 」
敢えてさらりと答える。
「えぇっ……?!でもなぁ……」
冗談で言ったのに間に受けて迷いが出ているというのが結構心配になるがふざけていられる時間もないだろう。
早くしなければアイスが溶ける。
「ハンカチとかあるだろ?使えば良くないか? 」
至極真っ当な事を言ったはずなのにパルスィがちょっと遠い目をした。
「色々忙しくてハンカチ忘れてきた……」
何もそんなところでうっかりしなくても……。
冗談言ったりなんだりしているうちにアイスが溶けて指から垂れそうになる。
―――――あ。
と思ったときには時既に遅し。俺はパルスィの指先をを口に含んでいた。
俺が座っているのは左、双方共に利き手は右手、そしてパルスィは空いている左手で口元のアイスを取った。垂れないようにするなら俺自身が左手をパルスィの指の下まで持っていけばよかったはずなのに咄嗟に左手が間に合わないと判断してしまったが故のこの状況だった。
「なっ……なななっ……?!」
こいつの指冷たいな……アイスが溶けるのに余裕があったのもこのせいか。
そんな現実逃避も長くは続かない。辞めだ、そろそろ現実を見よう。
「つい…な……」
「咥えたまま喋んないでよ……」
真っ赤な顔して不機嫌そうに言うパルスィは本気で嫌がっているわけではないようだった。
本気なら今頃頬を張られている事だろう。
俺は彼女の指から口を離し、左手でポケットからハンカチを取り出して拭いてやる。
「あ、ありがと……」
「いや、俺が悪いんだしな」
その後は何とも微妙な空気が流れてしまってどうにも声をかけられず、黙々とアイスを食べるだけの時間を過ごしてしまった。微妙な空気と言ってもパルスィが話しかけるなオーラを出していたわけでもなく、ただ俺が自責の念に囚われて過ぎていただけなのかもしれないが。
コーンを包んでいた紙を二人分持って店側にあるゴミ箱に捨てに行き、ついでに店主に礼を言おうとした時に逆に店主に声を掛けられた。
「にぃちゃんよ、あんまおイタはいけんぜ? 」
そう言われたものだから苦笑いしか出てこない。
「ははは……ほぼ事故なんですけどね……」
「そうなのかい? まぁ見ちまった俺も悪ぃんだけどよ、あんま気負いすぎちゃいけんぜ? 」
「……肝に銘じておきます。」
店主の遠まわしな助言はアバウトさが一周回って心にすとんと落ちた。
「おうよ、頑張りな」
「ごちそうさまでした、おいしかったです」
最後に一つ礼を言い、パルスィの元へと歩いていく。
「何話してたの? 」
「ちょっとした世間話だよ」
不機嫌そうなのは変わらないようで、ちょっとした受け答えにも刺がある。
非がこちらにあると言っても少しは容赦してくれてもいいんじゃないだろうか、折角の機会なのにこのまま沈黙して一日が過ぎるのだけは勘弁して欲しいところなんだが……。
「他のところも回ってみようぜ、お昼までも時間あるみたいだしな」
「ん、行く」
短いながら明確な肯定を受け取って努めて明るく振る舞いながらまた歩き出す。
空気を必死で読んでしまうのは幻想郷に来てから癖になったようでついつい無難な話題を選んでしまう。
「街の雰囲気から地霊の人たちって勝手に浴衣とかジンベエ着てるイメージ持ってたけど、そうでもないよな」
「ちょっと前までは全員が着てたわよ、外の服が入ってくるようになって一気に半々くらいになったわ」
「浴衣も風情が有っていいと思うけどなあ」
「普段着に風情は感じないけどね、何せそれが普通なわけだし」
そういうものなのか、いや、そういうものだろうな。自分の私服に風情を感じるかと言われれば感じない。
考えてみれば物凄くもっともな話だった。
「パルスィの浴衣姿か、見てみたいかもな。」
なんて正直な感想を冗談みたいに言ったのとほぼ同時。
背後から大きくて早口な声が聞こえてきた。
「退いた退いたーーー!!!危ないよっとぉ!すまんねぇ!ご両人!」
「危っ!?」
「きゃっ?!」
運悪く道路側にいたパルスィの腕を引っ張り、手前に引き寄せる。
すっぽりと腕の中に収まったパルスィ。俺は安堵の息をついた。
「大丈夫か? 結構思いっきり引っ張ったからな、手首とか痛めて……」
「…ぅ………め……」
パルスィは弱々しく俺の胸を両の手のひらで押して、何事かを呟いた。
「本当にもうダメだってば……恥ずかし過ぎる……」
はっきりと声にした時にはもうパルスィは手で顔を覆い隠してその場にうずくまってしまっていた。
これには心底困ってしまい、おずおずと声を掛けるので精一杯だ。
「お、おい……どうしたよ…というか周りの目が痛いので立っていただけませんかパルスィさん? 」
その後何度か声を掛けたものの反応はなく、パルスィが立ち直るまで途方に暮れることになるのだった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
パルスィが立ち直った後、昼飯を蕎麦屋で済ませてからまた街道をぶらつく。
どうしてもさっきの反応が気になってしまって折を見て聞いてみたりしたものの返ってくる反応は軽い拳のみ。
普通の話題には問題なく返答してくれるためそこに心配はなく、極々普通に、それこそ本当にデートをしているかのように時間を過ごしていった。
「そろそろ帰るか? 結構気温も下がってきたしさ」
俺がそう言い出す頃にはもう日も落ち切るような時刻になっていた。
「それにはちょっと早いわ、最後に行きたいところがあるの。付き合ってくれる? 」
是非もない。
そう思ってパルスィについていくと何時ぞやに妖怪の山に行く際に通った空の渦まで連れて行かれた。
「これは……」
「そうよ、私の管轄の旧地獄の門。」
「こんなところまで来てどうするんだ? また妖怪の山まで行こうって? 」
「えぇ、そのまさかよ。」
そのまさかだった。パルスィ曰く、この渦は意思で繋ぐ場所を変えられるのだという。
でもいいのだろうか、そんな職権乱用みたいなことをして。
「何か偉い人に怒られたりとかしないのか? 」
心配したからやんわりと止めたのだが否定される。
「何言ってんの、ここの一番上はさとりよ、怒られるわけがないじゃない。」
「そうでした、むしろ親指立てて行ってこいって言いそう。」
上司の威厳ないなぁなんて思いもしたけどそのフレンドリーさがいいのかも知れない。何も考えていない線もあるが。
「ほら、行くわよ。妖怪の山の天辺までね。」
「慣れないなーこの感覚。」
最初とは比べ物にならない落ち着きぶりで上に落ちていく感覚を受け入れて妖怪の山まで飛んだ。
「おぉ………すっごいな……」
着いて早々声を上げたのには訳がある。
文字通り満天の星空なのだ。妖怪の山が一番高い山なので周りに景色を邪魔するものはなく、空気が澄んでいるから星が綺麗に見えるし、雲がないから見渡す限り星だった。
「ね? 綺麗でしょ?」
パルスィがちょっと得意そうに言ってくるのも無理はない。ここまで綺麗なのだから。
「あぁ、綺麗だな」
その得意そうな顔をした彼女に感謝を込めて笑顔を向ける。
こんな景色があったのかと思うほどの絶景だ、余裕がなかったとは言えど妖怪の山の滞在中じっくりと見る時間がなかったことが悔やまれる。
「あそこに寝転がれそうな岩場があるのよ、来て」
二人して岩場を登ると平らな場所が見つかった。自然のものだから完全な平らとは言えないが寝るには十分そうだ。
俺は着ていた上着を極力面積が出るように下に敷いてそこに寝るように支持する。パルスィが寝転がったのを確認して俺は岩場に直接背中を預けるようにして寝転がる。
「案の定この気温だと岩冷たいな」
「ちょっと横にずれるからこっち来なさいよ、寒いんでしょ? 」
自分だけという思いから提案してくれているのだろうけど俺にも羞恥心はある。女の子と隣り合わせで、上着の面積に収まるように寝るというのはハードルが高い。さとりには布団に潜り込まれたがあれは受動、能動的にするのとは違うのだ。
「本格的に寒くなったらそっちに行くから使っててくれ」
無理はしないからと嘘を吐いてパルスィにそのまま使わせた。
お互いの目を見ることなく経過していく時間の中、先に口を開いたのはパルスィだった。
「あの……さ……」
「何だ……? 」
切り出した短い言葉には遠慮を感じて、真面目な話なのかと少し身構える。
「憩夜って人間でしょ? 」
「まぁ…そうだな、最近怪しいが」
「うん、知ってる。魂混ざっちゃってるもん。」
魂の色と器は分かる人にはわかるものなのだったか。前に永琳が言っていたっけな。
「それで……? 」
「憩夜は普通の人間よりは格段に強いけどあくまで人間なの、わかる? 」
いくら強かろうとそれは人間の範疇の話だということか。確かに天狗や鬼を思えば人間の強さなどたかがしれてるだろう。
「あぁ」
「この前の文の騒動で私ちょっと怖かったんだ。文を捕まえるのはいいけど貴方は人間で、妖怪の山は妖怪の巣窟だから下手したら本当に死んじゃうんじゃないかって」
確かに、それは俺が思い始めていることではあった。いずれ限界が来て淘汰されるのではないかと。
「でもどうしてそんな話を? 」
「次紅魔館行くんでしょ、幻想郷で一番危険なのは多分あそこだからね。また怖くなったんだ、もしかしたら今度こそって」
「そんなに不味いところなのか? さとりの口ぶりからするにそこそこ大丈夫そうじゃないか」
「さとりから何も聞いてないのね……。あの子には笑顔で送り出してあげろって言われたけどこの忠告だけはしておくわ。幻想郷には今も人間を食べるという事は有り得ることで、紅魔の領主は吸血鬼なのよ。言いたいこと分かってくれるよね?」
ただでさえ冷たい夜の空気がより凍った感覚がした。
下手をすれば比喩でもなんでもなく喰われるぞ。そういうことか。
「本当は泣きついてでも止めたいところだけどそうはいかないもん」
「あぁ、じっちゃんが幻想郷を救ってこいって言うからな。俺なら出来ると思ったから送り出したんだろ、どうあれ止まってらんねぇよ」
「そうだよね。でもそのお爺さんって何者なの? 幻想郷関係の人? 」
「それがさっぱりなんだよな、『魂魄双刀流』の師範ってのはあるけど後はバカみたいに強いだけのただの爺さんのはずなんだがな…霊夢と面識あったみたいだし幻想郷に多少は関係あるんじゃないか? 」
「『魂魄双刀流』……何か聞いたことあるような……気のせいかな…」
良くは判らないが記憶の端にひっかるようなら何かしらあるのだろう。しかし言われて気づくあたりあまり考えずに行動していたんだとつくづく思う。
「見た感じ平和そうな幻想郷で何が起こってんのか皆目見当も付かないんだけどな、動いてたら見つかるような気がするんだ。動かずにはいられない俺の性格をじっちゃんが考慮しないはずがないからな」
「信頼してるのね、そのお爺さんのこと。」
「長い付き合いになるしな、それなりにはってやつだ」
かれこれじっちゃんとは10年くらいになるか、10年もあの不敵な白髪頭を見ているのかと思うと少し、ほんの少しだけ思うところがあるが頭を振って追い出す。
「話戻すけどね、私は憩夜に生きて帰ってきて欲しいんだ」
「生きて……?」
「そう、生きて。この際だから言うけどね、私は憩夜が好きなのよ。友達としてか男の子としてかは自分でもわからないけど」
どちらかわからないのだと楔を打たれたにも関わらず心拍が跳ねる。
こういう真面目な時くらい大人しくしていてもらいたいものなのだがそんなことはお構いなしらしい。
「そっ……か……そう言われちゃ頑張らなくっちゃな。分かった、生きて帰る。」
自信はない、確信もない。それでも口にする。
いつの日かじっちゃんに言われたのだ。
『男なら自信がなくても口にしろ、そしたら責任が生まれる。その責任を負ったことを自信にしろ』と。
「それが聞けたからよかったかな。それじゃ帰ろっか、本格的に寒くなってきちゃった。」
小さくくしゃみをしてパルスィは立ち上がる。
夜空に一人立ってこちらを見ている彼女は少し物憂げで、淡い星光に照らされた金の髪と緑色の瞳は吸い込まれそうでさえあった。
「綺麗だ………」
恐らくほうけていた事だろう、思ったことが口をついて出てしまうくらいには。
「でしょ? 」
俺は優しく笑った彼女を眠るまでの間片時も忘れる事が出来なかった。
どうでしたでしょうか26話。
どこかしらに可愛さを見出していただいたのであれば幸いです!
次回からはいよいよ紅魔館編突入になります。どうなることやら……。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
誤字脱字、感想お待ちしております。
それではまたお会いしましょう( 。`- ω -´。)ノシ