今アナタの頭の中に直接話しかけています……しかしながら前書きをゆっくり書いている余裕もあまりないのです……ないのです…ないのです…
【本編】*-ω-)ノ" どうぞー♪
憩夜が紅魔館へと出立してから六時間が経過した頃ーーーーーーー
「どういうこと!!?」
部屋のドアのノブに手をかけたパスルィが聞いたのはこいしの今までに聞いたことも無いような切迫した声だった。
入るタイミングを失ったパルスィは立ち去る事もドアを開ける事も出来ずにノブに手をかけたまま姉妹の会話に聞き耳をたてる事にした。
「 落ち着いて下さい。こいし。」
「落ち着けるわけ無いでしょ?!おねぇちゃん自分が何したのかわかってないわけ無いよねぇ?!」
なだめるさとりと熱の上がるこいし。
いつも対照的ながらも仲の良い姉妹が明確な対立をしている。それは事が起こったことを明確に示しており、笑顔の絶えないこいしが憤るのはそれだけの理由がある。
「えぇ…分かってますよ…分かってますとも…このまま順調に行くならば間違いなく憩夜さんは……死にます。」
まるで死神からの死刑宣告かと錯覚するほどの衝撃がパルスィの心を一瞬で抉る。
次の瞬間には扉が力強く開け放たれ、ノブが軽く変形するほどに強く握りしめている少女の目には淡くも力強い燐光が映っていた。
「 その話…聞かせてくれるわね?」
何かを諦めたような表情を浮かべたさとりは金髪の少女へと肯定の意を示した。
「はい…。順を追って説明致します。二人ともお座りください。」
椅子を勧められ、仕方無しといった様子で腰を下ろす。パルスィがちらと横目でこいしを見ると彼女は歯を食いしばり、怒りの色の焔を瞳に灯して姉をじっと見据えていた。
ややあって、さとりは事情を話し始める。
「 今回の件は八雲 紫を筆頭とした幻想郷の古株達の話を聞いた事を原因として起こしたものです。その内容というのは『幻想郷の厄が限界を迎えている。破滅を待つか神かそれに等しい者を、或いは博麗の巫女が連れてきた例の子を禍神として祀り上げて永久に封をするか早急に決めなければならない。』というものでした。」
椅子をガタリと鳴らして思わず立ち上がるパルスィ。
「ちょ、ちょっと!厄が溜まってるなんてありえないでしょう?!それなら雛がいるじゃない!?どうして限界なのよ?!」
「それに人間を神にするって実際問題として出来ることなの?魂にも格があるんだし常識的には無理、だよね?」
追随してこいしもさとりに疑問を投げかけた。
二対一の構図にも怯むことなくさとりは投げられた疑問を正面から受け止めていく。
「厄は随分前から臨界状態だったそうです。紅魔の紅い霧の事件。洩矢の幻想郷進出。それらに始まる厄異変の数々。不安は解消されるものですがゼロには決してならない。幻想郷に負の感情、つまり厄が積もりに積もっているのですよ。さしもの厄神と言えど膨大な量のそれらの前では能力のほども焼け石に水なのだそうです。」
「でもそもそも妖怪に不安感なんてそんなもの……。」
そこまで言ってから一つの事にパスルィが思い至った。いる、この力が全ての世界で恐怖に打ち勝てない種族が。
「人間、だよね?」
「そうですね、人間です。今の幻想郷の種族の割合は人間が三割五分から四割弱、彼らからすれば自分らより遥かに強い者が倍以上周りに居る。事実上安息の地はこの幻想郷の何処にもない。妖怪達が問題を起こさないから平和で居られるのです。」
続けてさとりはこいしの問いの返答に移った。
「次に魂の事ですが、限度はあります。獣は魚になれませんし人は神になることはありません。」
そもそもとして魂は種族を決めるための器だ。魚には魚の魂があり、妖怪には妖怪の魂がある。強さや妖怪の種類によってある程度の細分化はされているもののそれらは互いに変化する事はなく、全く別の魂に変わるという事はまず無い。
真っ先に否定された魂という種族の不変化の定義にこいしの頭にさらなる疑問が浮かぶ。
「それならどうして……」
さとりはすっと目を閉じ、そのまま話を繋げた。
「ですがそれは原則。例外があります。」
例外という言葉にさとりの言葉を聞いている二人は同じ結論に至り、誰を示唆しているかの理解に達しながら言葉の続きを待った。
「霊と長時間居れば人間でも霊を見る事が出来るようになる。狼に育てられれば人間も野生児になり得る。同じように妖怪と過ごせば何処かでは性質が似てくるんです。」
よりわかりやすく、と、良かれと思って言っているのだろうがこの瞬間だけは相手の意思を汲もうとも考えずに机を叩きながらパルスィは吠えた。
「結論を言いなさいよさとりッ!!」
目を見開き、一瞬びくりとなった姉妹に気付かされて正気に戻り、申し訳なさそうに目を逸らして続きを促す。
「どうぞ…そのまま話して…」
気を取り直そうとしたのか、さとりは軽く咳払いをした。
「つまるところ憩夜さんの魂は非常に感化されやすい状態にあります。白狼の姿に加えて彼は烏天狗の容姿までも手に入れた。それは現在彼の魂は少なくとも『人間』『白狼』『烏天狗』の三種類が混ざっていることになるんですから。」
切りの良い所で上手いことこいしが姉に続く。
「完全には神に出来なくても擬似的な神にまでなら出来るって事?」
「そういう事になります。災いをその身に宿す事になると分かっていながら神々はその御霊を幻想郷に捧げる事はしないでしょう。居なくなっても問題の無い外来人を使えば事は丸く収まる。……これ以上は言う必要も無いでしょう。」
先に向けられた怒りの矛を再度向けられるのを恐れたか本当に必要性を感じなくなったかさとりは話を一旦切り上げた。
しかしこいしはまだ聞きたい事は聞けていないとばかりに首を振る。
「幻想郷が危ないのはわかったよ。でもおにぃさんを殺すこと…ないよね…?」
いつの日か、姉を取るなと一人の男に向けたのと同じ視線を一人の男を奪う
「こいし……貴女ならばわかりませんか。いっそ死んだ方が楽だと、幸せだと思う事が。久遠の苦痛を与えるより一瞬の苦痛で終わらせた方が良いと感じる事が。」
この返しは想像がついていた、否定する準備も出来ていた。それでもこいしはその言葉の否定を言葉に出来なかった。
あの時の辛さを知っているから。
自由になれるかも知れない、その一縷の希望の前にはその輝きを諦めたくなる様な絶望が広がっていることを。
その絶望がとても甘美な響きをもって頭を悩ませる事を。
諦めが首筋を舐める度に快楽すら覚えそうになるあの感覚を。
それでも。
分かっているからこそ言える言葉がある事も知っている。
「生きてたら…いい事あると思う…」
こいしは基本感覚で生きている。
それ故に考えて物事を行う事はない。
「死んだら辛い時のまま…だけど…生きてたら私たちみたいにいい事ある。」
この時だけはしっかり考えないといけないと、意識的にーー心を閉ざしたあの日から殆ど成長していないーー言葉を連ねていく。
「悪い事して霊夢に叱られて、パルスィとお空とお燐と、おねぇちゃんと仲良くなって。」
拙いのはこいし自身も理解している。上手い言葉が出てこない事にもどかしさも感じる。相手の心を揺らす事が出来るのか、不安を抱えながらも思いの丈を出来得る限りぶつけようと口を動かし続けた。
「生きるのは大変、だけど死んじゃうのは簡単。……難しい方が価値があると思うよ。おねぇちゃんも分かる…よね?私は分かる、だから……行かなきゃ。」
「こいしっ!」
ぽそりとした呟きに顔を上げ、静止の声をと思った時には部屋のドアは開いており、玄関の閉まる音が聞こえてきた。
「何か…最後の方完全に置いてけぼりくらっちゃったわ…私も追いかけようかしら。」
怒ること意外全て持っていかれたパルスィが後ろ頭をぽりぽりと掻いた。
「こいしでさえ間に合うかどうか。貴女が行っても無駄だと思いますよ。」
「憩夜が生きてた時の為に行くのよ、貴女が回収した瓶を持ってね。」
「瓶ですか。」
「白々しい事は言いっこ無しよ。」
わかるでしょ、と肩をすくめる。
さとりは確かに分かっていた。
『憩夜の霊水を没収していた事をパルスィが気づいていた』
という事を。
「そうですね。すいません。持って行ってあげてください。」
テーブルの上にコトリと二本の瓶を乗せてパルスィの方へ押しやる。
そして押しやりながら問うた。
「何故貴女が未だ私に平手の一つも食らわせていないのか、それだけがわかりません。」
パルスィは瓶を鳴らしながら服の内に収め、そのまま出口へと歩いていく。
「生きてるかも知れないからよ。もし憩夜が死んでたりしたら覚えておきなさい、私自ら貴女を呪うわ、藁人形ですら足元にも及ばない。『水橋パルスィ』は身を賭して呪い殺す妖怪よ。」
ひたすらな真面目さと底なしの恨みを込めたその表情は般若など子猫のように可愛く、阿修羅など駄々をこねる赤子に感じるほどの怖れを感じさせた。
「浅慮でした。こいしに諭され、貴女に猶予を貰う。全くもって良い身分ですね。」
さとりはこの計画の成功は自分の死と同義だと分かっていた。
人間嫌いだったパルスィは霊夢と会った時よりも憩夜に会った時の方が壁が無くなった。
こいしがのぼせて倒れた時も意識が戻ってからはさとりに対する態度がふとすれば見落としそうになる程度だが軟化した。
間違いなく憩夜は人を変える。前を向く力を人に与える。そんな人を殺そうと言うのだから変化をもたらされた彼女らからどんな報復が待っているかなど火を見るより明らかだ。
「せいぜいこいしに祈る事ね。」
最後に一言だけ放って部屋の扉が響いた。
そして誰に向けるわけでもない言葉が部屋に染みていく。
「『自分』を失うのには抗えても『彼』を失う辛さには心が耐えられなかった…」
放っておいても消えゆく幻想郷ならばどうして自分の好きに生きようとしなかったのか。
生より死を選ぶ楽さになぜ甘んじてしまったのか。
たった二本の瓶がともすれば世界すら変えたのではないか。
様々な、本当に様々な事が頭に渦巻き、言葉となり、そして最後に彼女は言った。
「都合が良いなんて百も承知です…それでも彼には生きていてほしい…贖罪の機会を私にくれませんか…神なんて信じませんが貴方なら信じます、この願いをどうか……憩夜さん……」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字等々ありましたら報告お願いします。
それではまたお会いしましょうノシ