東方夜光録『ヤコウロク』   作:◆◇夢幻水晶◇◆

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初めに、随分と遅い更新となってしまったことをここにお詫び申し上げますm(_ _)m

初の番外編でございます!初の番外編にして初の9000文字到達!何でキリよく一万じゃないのかって…?…察してください……悩みぬいた結果この文字数だったんですって……





番外編
地霊殿番外編 ~姉妹の願い~


眠りの海に沈みそうになりながら意識が浮き沈みを繰り返す中、遠いどこかで音がした気がした。

 

一度引き上げられた意識はやがて身体の感覚を取り戻す。

 

 

 「気のせいか……? 」

 

 

最初に目を向けたのは自分の足がある方向。

弾かれるようにして頭を上げ、ちょうど目の前にあるドアに視線を投げる。

夢の中で聞こえたのは扉の開閉音だったと思ったのだがやはり夢うつつの瀬戸際に幻聴を聞いたのだろうか。

時にはそんな事もあるだろうと無駄に跳ねる心臓に言い聞かせ再度頭を枕に預ける。

(さざなみ)のように押し寄せる心地よい睡魔に抗わず意識の手綱(たづな)を手放そうとして、逆に手綱に手首を絡め取られた。

 

 

 「こんばんは憩夜(けいや)さん」

 

 

 「うわ?!びっくりした!?」

 

 

完全な意識の外から掛けられた声の主はここ地霊殿(ちれいでん)の主で覚り妖怪である無表情幼女(妖女?)、さとりだった。

俺を必要以上に驚かした枕元に(たたず)む少女は悪意の片鱗(へんりん)も感じさせないような(ごく)普通の無表情を浮かべている。

 

 

 「何だってこんな時間に? 草木も眠るお時間じゃねぇか。」

 

 

夜も更け時間は元の世界で言えば深夜二時、ゲームやっててこの時間になる事はあっても何もやることがなくて起きていることはまず無い様な時間だ。

 

 

 「からいかいに………失礼、遊びに来ちゃいました。それにしてもまさかドア開けた瞬間に起きるとは思いませんでしたよ……うっかり隠れちゃいました。」

 

 

悪意の塊だった。

 

悪びれもなく言っちゃうあたりどうなのかとか思うが、風呂突撃事件から一週間弱経った今ではまぁそういうやつなんだという認識の一つや二つは出来上がっている。

 

 

 「帰れ。」

 

 

取り付く島もないと言った感じに真顔で突っぱねる。

ただでさえ非日常生活で疲弊しているのだから寝られる時にはしっかりと睡眠を取りたい、女の子を会話するのは好きだが睡眠と天秤にかけられては前者に(さかずき)が傾くことは無い、それを断言出来るほどに寝るのが好きなのだ。

 

 

 「にべもない?!折角来たんですから付き合ってくださいよー」

 

 

 「からかわれる事が確定してるのに何でわざわざ付き合わにゃならないんだ……寝かしてくれ……」

 

 

さとりに背を向けるように寝返りを打ちながらちらりと横目で顔を見ると、相変わらずの無表情のまま片方の頬を軽く膨らませていた。

 

 

 「いいですよいいですよ、そんなに素っ気無くするならこちらにだって考えがあります。」

 

 

喋りながら何かごそごそとやっていると思ったらおもむろに掛け布団をめくり、俺の寝ているベッドに小さな身体をするりと滑り込ませて少しずつ近づいてきた。その事に気づいた時、顔周辺の血液がまるで突沸(とっぷつ)を起こしたが如く熱くなるのがわかったが、そのままでいるという選択も出来ずにさとりの方を向き直して上擦りになった声をあげる。

 

 

 「お前っ…?! 何してるかわかってるのか?!」

 

 

反射的にベッドの左端の方に移動してしまったが俺が寝ているのはシングルベッド。

 

いくら限界めいっぱい端に避難しても距離には限界がある、さとりが右側から近づいてくればそれだけ距離は縮まっていくわけで、あ、もしかしてこれって詰み?

 

 

 「お気になさらず、私いま空気ですので。」

 

 

 「わかった!適当にあしらったのは悪かったから!それ以上近づくのは勘弁してくれ!」

 

 

先ほど俺が雑に扱った事が原因でだいぶご立腹だった大妖怪様は謝罪によってどうか怒りの(ほこ)を収めてくれたようで距離をゼロにして行く作業を中止してくれた。

 

 

 「私の取扱いを間違えるとどうなるか教えてあげたんですよ。」

 

 

さとりの顔に表情はなかったが声のトーンは明らかに『私は不服です』と言っていた。

 

 

 「そ、それで話は戻るが何しに来たんだ? よもや本当に巫山戯(ふざけ)に来ただけじゃないだろう? 」

 

 

 「女の子が夜に部屋に遊びに来てくれたというのにちょっと反応薄すぎやしませんか……?」

 

 

 「何気ない話しでもある程度はわかるものだぜ? 少なくともお前は今はからかうつもりはないって事くらいはな。」

 

 

不敵に笑ってみせると、悔しそうでどこか寂しげな顔が返ってきた。

 

 

「サードアイも無しに考えがわかるなんて羨ましい限りですよ………」

 

 

こちとらそんな便利なものなんて無いから必死で心をわかろうとするんだからそれなりに能力に差は出るだろうに、しかし何故そんな顔をするのだろうか?

 

こればかりはわからないことなので聞き返そうとしたのだが叶わず、話は進んでしまう。

 

 

 「遅くに来たのはですね……私たち姉妹に関してのお話をしようかと思いまして、(しばら)くの間は地霊殿に住んでもらうわけですから『私たちは妖怪です』『はい、そうですか』とはいかないでしょう?」

 

 

確かに、その通りだ。

 

容姿は人間と大差ないが彼女は立派な妖怪、そこには簡単には埋められない溝がある。

 

だがこちらに来て思うことがあった、パルスィが以前話してくれたことがあった自分の生い立ち。

 

彼女の過去は彼女にとっては最大の人生の汚点であったのにも関わらず俺に離してくれた。

 

聞けば幻想郷にいる妖怪はほとんどがワケありなのだとか、そうだとしたら俺は聞いてあげたいと思ったのだ。

 

彼女らがこんな自分に話そうと決めてくれたのならばこちらも心して聞こう、と。

 

 

 

 「真面目な話なんだな? 」

 

 

 「大真面目です。」

 

 

 「わかった、聞こう。座り直した方がいいか? 」

 

 

 「いいえこのままで結構です、ですが後ろを向いていてもらえませんか? 思い出した時にうっかり泣いてしまうかもしれないので顔を見られたくないんです……。 」

 

 

なんだ、いつもバカなことしてるのに案外普通の女の子みたいなところあるじゃないか。

 

普段見ることのできないような言葉に多少驚きつつも言われた通りにさとりに背を向ける。

真面目に話を聞くと言っておいてこの体勢は失礼なんじゃないかとも思ったが話し手であるさとりからのお願いなので割り切る事にする。

 

 

 「じゃあ行きますよ……? やっぱり緊張しますね………。」

 

 

緊張から来たものなのかはわからないが咳払いを一つしてから話を始めた。

 

 

 「最初に確認しておきますが私には妹が居るのは知っていますよね? 」

 

 

そう、さとりには妹が居るらしいのだ。会話の中に何度か出て来たから覚えている。

 

 

 「あぁ、こいしちゃんだっけ? 」

 

 

 「はい、私たち古明地(こめいじ)姉妹は元々妖怪ではなく人間でした。」

 

 

人が妖怪に転ずるなどそんな事ありえるのだろうか、いや、突拍子(とっぴょうし)もないのはわかっていたことだろう。

驚くな俺……。

 

 

 「ですが、私たちは所謂(いわゆる)()み子と呼ばれる存在でした。今思えば子供の頃はこのサードアイはなかったので忌み子とは少し違うものなはずなのですが周りの人からすればそんなものはどうでもよかったんでしょうね。」

 

 

 「忌み子……か……」

 

 

 「はい……同じくして私たちが子供の頃、あれは忘れもしません、八歳の時でした。親がある日買い物の為に街まで出かけたんです、その間私はこいしと一緒に留守番をしていました。その時ですよ……奴隷商人が来たのは……」

 

 

奴隷商人……?っていったらあれだろ?人身売買の代表格みたいな……本当に……?

 

耳を疑った、想像の上を軽く飛び越えていく内容に既に心が悲鳴をあげてもう何も聞くなと訴えかけてくる。

このまま話を聞けば今までのように楽しく暮らすことができなくなる。そんな予感さえさせた。

 

『真実を知れば人は良くも悪くも変わってしまう』

 

昔だれかがこんなことを行っていた気がするが、なるほど、これがそういうことか……

理解出来る時には手遅れな格言ってそれ本当に意味あるのかよ……と内心自問しつつ今にも暴れだしそうな精神を何とかつなぎ止める。

 

 

 「あぁ……その点はご心配なく、私たち二人を買い取った人は女性でしたので。」

 

 

図星をつかれ、ビクリと自分でもオーバーだと思うほどに大きく反応してしまう俺。

最悪の想像をしてしまいそれが本当だったらと思っていたのでその予想をへし折ってくれたのには感謝するが、ピンポイントにその部分だけ”詠まれた”事に並々ならぬ罪悪感と全身を赤く染めるような恥ずかしさに身を()かれ、酷くいたたまれない気分になる。

 

 

 「私が話している間、感情がぐるぐるしすぎていて何を考えているのかわからなかったのですがそこだけ鮮明にぽつりと心の中に置いてありました。そういうところ素直ですよね憩夜さん。」

 

 

――――――――――背中に指の先が少し強く触れる感覚

隙有りとばかりに追い打ちをかけてくるさとりに心の中で勘弁してくれという旨を伝える。

 

 

 「話の続きですが、その女性は私たちの仕事に欠陥があるとすぐに暴力に訴えかけてきました。買い取った初日からずっとですよ。それが私たち二人の性質を分けたんだと思います。」

 

 

 「性質……?性格じゃなくてか? 」

 

 

 「性質です、こいしは私と同じ種の妖怪なのにも関わらず私とは違って心を読む事ができないとは以前言いましたね? 」

 

 

日常にうもれていた記憶を呼び戻して妹さん関係の会話の中から引き抜く。

 

 

 「確かに言ってたな。」

 

 

 「私自信は主である女性の意に沿うように必死に日々の仕事をしました。ですがこいしの方はそうは思わなかったようで逃げ出したいと思うようになっていったんです。何度か(さと)しましたよ、でも思考は巡らせてくれるのものの結果的には逃げ出したいと言う結論に至るようで、最終的に私が考えを変えました。私が意に沿う形で動いて妹をフォローし、逃げ出す算段がつき次第一緒に逃げ出すという考えにしたのです。」

 

 

慣れてきたのかやや心に余裕が出来てきた、これならある程度ならば冷静に話を聞くことが出来るだろう。

なるほど、よく考えたものだ。自分の負担は倍近くなるが、計画は自分で管理できるし妹との仲違いもない。

主人に感づかれることもなく上手くいけば逃げ出せる。上手く行けば……な。

 

 

 「そうです、お気づきですね? 簡単には逃げることができなかったんです。よもや八歳児の考える事ですから上手くいかないのが当たり前ですが……でも幸いな事にも”逃げることが出来なかった”に留まったんです。」

 

 

 「もしかして主人にはバレなかったとか……か? 」

 

 

 「段々と憩夜さんもわかってきましたね、そうです、主人にはバレませんでした。ですが逃げられなかった……識別番号みたいなものがあり、首に付けられてましたから。そうですね、憩夜さんが今考えたモノの中では『ドッグタグ』が一番近いでしょうか、でも勿論そう簡単には外せない類のものでしたよ? 」

 

 

 

―――――――――――壮絶

 

まさにその一言に尽きる、齢八にしてそんな体験をしようものならばとても耐えられるものじゃないだろう……

幻想郷(ここ)』にいる妖怪が自分の話をしたがらないわけだ。

でもこれはほぼ確信にも繋がった。信頼を寄せてくれているかは最終的には過去を話してくれるかどうかによるのだと。

 

 

 「そうですね、耐えられませんでした。心が決壊したのはこいしが先でした、買い取られてから丁度二年後の雨の日でした。逃げ出したいのに糸口がつかめず、私に負担をかけている事に気づいてしまったこいしは外に出せない強すぎる思いが心の中で弾けてしまったんでしょうね………気が触れてしまいました……。」

 

 

 「…………」

 

 

 「人格が崩壊しなかっただけまだ良かったんでしょうが発狂してしまったこいしはどうしても止められませんでした、ですが主人を殺すために台所に走り包丁を掴み取った時にゼンマイが切れた機械のようにピタリと動かなくなってしまったんです、どうしたのかと思い歩み寄ろうとした瞬間こいしの背中から青い触手が暴れるようにして出てきました。(つんざ)くようなこいしの絶叫と共に…です。」

 

 

 「………それから……どうなった……? 」

 

 

 「こいしの気に当てられたのか私も触手が出てきたんです、あの感覚は今思い出しても嫌になりますね……全身の皮膚の表面の薄皮一枚下の辺りが冷たくなって動かなくなったんです、まるで金属の板が張り巡らされたみたいに。でも冷たいのは表面だけなので変な気分でしたよ。その後細い触手に全身をまさぐられる感覚がありました……全身はあたりまえ、足の指先や耳たぶ、眼球の中まで隅々まで探られるんですからたまったものではありませんでした。そのあとはこいしと同じでした、突如襲ってきた強烈な痛みに耐えかねて声をあげて苦しみました。」

 

 

想像するだけで末恐ろしい……鳥肌なんて通り越して打ち震えることしか出来ない。

喉を潰して叫ぶ程の痛みとは一体どのレベルの痛みなのだろうか、気を失うほど殴られ続けたら? 刃物ゆっくりと身体に刺されたら? もしくは全身に釘をカナヅチで打ち込まれたら同じだけの痛みになるだろうか。

だがきっと俺が思いつく限りでは限界があるだろう。

 

 

 「その日もたまたま主人は出かけていました。戻ってきたのは私たちの苦しみが弱まり、立って歩けるくらいになった時でした。驚いたでしょうね、苦しみを紛らわせるために壊した家具、触手が出てくる際に飛び散った夥しい量の血液、幽鬼の如くゆらりと立ち上がる異形の者と化した自分の奴隷二人……。恐ろしかったでしょうね、私の三つ目の瞳に見つめられた瞬間私に心を完璧に読まれたんですから。自分が信じられなかったでしょうね、目の前にいたはずのこいしが”いつのまにか”後ろにいて包丁で心臓を一突きしたんですから。」

 

 

 「これで合点がいくでしょう? 私は相手の意思をより知りたいと願ったから心を読めるようになった。対してこいしは逃げる事を切に願ったから誰にも気づかれないようになった。私たちの全ては今話した事が元になっているんですよ。」

 

 

 「その後はどうなった……?結果としては自由になったわけだろ? 」

 

 

 「私が今ここにいるのがその後の結末の全てですよ、今では楽しく仲良く暮らしてます。」

 

 

そうか……やっとわかった、彼女が街の嫌われ者になっている理由が。

邪魔されたくなかったんだ……やっと手に入れた幸せを……周りから嫌われれば干渉されることもない、最適解かどうかはさておいても安全地帯は確実に確保できる。だから”わざと”嫌われたのか。

 

 

 「そうか………で、でも最後まで泣かなかったじゃないか? 」

 

 

さとりが話している間、途中で嗚咽(おえつ)が漏れたりだとか鼻をすする音がする事はなかった。

だから俺は重い空気をいつまでも続けるのはどうかと思いやや軽めの口を叩きつつ反対側に向き直った、しかし今回ばかりは自分の考えの軽率さを悔いた。

さとりは俺の後ろで辛さを声に出さなかった、だが泣いていた。すぐ傍にいる俺に助けを求めることもせず、今までもそうしてきたかのように人知れず一人で無表情のまま涙を濡れた瞳から溢れさせていた。

 

 

 「ぁ……やです……って…こっち見ないで下さいよ……恥ずかしいじゃないですか……」

 

 

手の甲で涙をぐしぐしと拭おうとするが俺はあえてそれを右手で相手の手首を掴んで止めさせる。

手首を掴まれ驚いている間も涙は零れてきていたが気にせずに空いている左手でさとりの後ろ髪を撫でてやった。

 

 

 「ぇっと………何してるんですか……? 」

 

 

 「ん? お前に一言言いたくてな」

 

 

 「……何…ですか……? 」

 

 

少し怪訝(けげん)そうに見つめてくるがこの際そんな目も無視だ。後ろ髪を撫でながら話を聞き終えてからずっと言いたかった事を告げる。

 

 

 「今までよく頑張ったな。」

 

 

 「…っ……!」

 

 

俺の一言から何を感じ取ったのか、ただでさえ泣いているのに俺だけを映した瞳からは珠のような雫を落としてぼろぼろと泣き出してしまう。

 

 

 「お、おいおい……そんなに泣かなくてもいいだろ? 」

 

 

 「だ…だって…憩夜さんがそんな事いうから……」

 

 

 「参ったなこりゃ……」

 

 

気休め程度にしかならないだろうが、と思ってかけた一言にここまで反応を示すとは思わなかったので焦りに焦りつつもなんとか平静を装い、さとりが泣き止むまでずっと頭を撫で続けていたのだった。

 

 

 

   ◆

 

   ◇

 

   ◆

 

   ◇

 

   ◆

 

 

 

 「憩夜さん、憩夜さん」

 

 

 「何だ? 」

 

 

泣き止んでからの第一声は俺の名前だった。

 

 

 「実は私ですね、憩夜さんの事は結構気に入っているんです。」

 

 

身長差的にも仕方がないことなのだが必然的な上目遣いの状態でそんなことを言われてしまっては心拍数も急上昇するというもの、それでも変な誤解をしてはいけないと自分に言い聞かせて問いを重ねる。

 

 

 「そ……それはどういった意味で? 」

 

 

 「ふふっ……どういう意味だと思いますか? 」

 

 

これは俺の心を読んでわかっている上でからかって来ている…っ!?

結局当初の目的通り俺はからかわれているのか……策士だな…さとり……

 

 

 「はい先生!純情な男子をそうやっていじめるのは良くないと思います!!」

 

 

 「そういう素直な所が好きなんですよっ」

 

 

ぷにっと人差し指で頬をつつかれる。女の子らしくて小さな手だなと思いつつこの子がこの手でどれだけ大きく、どれだけ多くの”モノ”を(すく)い上げようとしてきたかをふと思い出す。

 

 

 「折角重くなってしまっていた空気を何とかして振り払ってあげようとしたのに憩夜さんが考えてしまうのでは何の意味もないように感じるのですが………」

 

 

やはり気づかれていたか……といっても心が読めるんだからバレないわけがないのか。

 

 

 「すまないな……」

 

 

 「いいんですよ、憩夜さんが相手の事をまるで自分のように考えて行動したり考えたりしてしまうのが分かっていたのに話してしまったこちらにも非はありますから。」

 

 

 「気を取り直して少し話そうか? 」

 

 

 「はい、そうしましょう。」

 

 

とはいっても改めて考えてみると意外と思いつかないものだな……普段は無意識だったり他のメンバーが居たりするから話題に困ることがないんだろうか。そう考えると俺は話題に乏しい生活を送っているのかもしれない。

 

 

 

 「話題に乏しいというのは間違っていますよ、何だかんだといっても身の回りに女の子しかいない環境が普通だなんて口が裂けても言ってははいけませんよ」

 

 

 「うん、確かにそうなんだけどな、自然(ナチュラル)に心を読むのだけはやめないか? 思考が全部筒抜けって俺のプライバシーは一体どこに行ったんだよ……」

 

 

そういうとさとりは少し逡巡した後にこう返してくる。

 

 

 「私だけは憩夜さんの思っていることを全て分かっている、なんて言ったら結構良くないですか? 」

 

 

身長差的にも仕方がないことなのだが(ry

 

 

 「良いか悪いかで言えば確かに良い、だがそれを認めてしまったら俺はなにか大切なモノを失ってしまうような気がしてならない。」

 

 

 「失っちゃったついでに他の大切な”ナニか”も失っちゃいますか? 」

 

 

 「何言ってんだお前?! 」

 

 

言葉の一部を違う意味で言っているのを理解できるあたり俺もさとりをわかってきたのだろうかとか思いながらしっかりとツッコミは忘れない。

 

 

 「ちょっと肌寒いのでもう少し布団に潜ってもいいですか? 」

 

 

人の話を聞かないのは健在らしく、自分のしたい事は何よりも優先するらしい。

 

 

 「いいけど……って聞く前に潜んのかよ?! 」

 

 

 「あ、スカートめくれちゃいました……まぁ…布団の中だから見えませんし気にしませんよね? 」

 

 

なん……だと……スカートがめくれ……

 

 

 「って言ってる場合か、そういうのはわかってても言わなくていいんだよ! 言わなきゃ気がつかないんだから! 」 

 

 

 「言ってる場合か……って前半部分は口にしてないじゃないですか………」

 

 

言葉の続きを待っていると寄ってきて俺の片足に自分の両足を絡めて来た。

あまりにも密着しすぎているため太ももの辺りに感じる熱さが気になって仕方ない。

だけどさっきスカートがめくれていると言ったわけだからこの熱量はとても貴重なわけで? 

 

 

 「さとりさん……何をしていらっしゃるのでしょうか? 」

 

 

 「あったかい……ですね……」

 

 

暖をとりたくてくっついてきたわけか、それなら仕方な……くないだろ普通!?

 

落ち着け俺……もちつけ……

 

精神的に猛烈に不安定になりながらやっと言葉を紡ぎ出す。

 

 

 「さとりさん……? もしかして眠くなってます? 」

 

 

会話に費やした時間を考慮した結果この結論に至ったわけだが、返ってきた言葉は真逆の答えだった。

 

 

 「……んー? 眠くないですよー………」

 

 

訂正、間延びしていた。

 

眠くないというのは言葉だけで完全に船を漕ぎ出しており、当の本人はというとこくりこくりとしていた。

 

 

 「おいおい、自分の部屋に戻れってば」

 

 

 「やーですよ……私の部屋ですもん……」

 

 

 「ったく……完璧に寝ぼけてるじゃねぇか……」

 

 

ガシガシと頭を掻いて困惑と焦燥に駆られる。

このままでは理性に必死に説得をかけながら一夜を過ごさねばならない、それだけは勘弁して欲しいので何とかして部屋に戻したいところなのだが諦めるしかないだろうか。

 

俺が地霊殿の構造を把握していれば寝ているさとりを彼女の部屋まで送り届けるという選択肢もあったのだが生憎ここに来てからそれなりに日は経っているものの城と見紛うほどの大豪邸を全部頭に叩き込んでいるほど要領は良くないのだ。

 

 

 「俺のベッドで寝るなー、じゃないと襲うぞー」

 

 

貞操的な危機感を煽れば嫌でも起きるだろうと踏んだのだが予想は外れるもので、結局起きてはもらえなかった。

 

 

 「憩夜さんが……です…か……襲われる…のも…幸せ……かもしれませんね……」

 

 

こいつは俺の心をどれだけ跳ね上がらせれば気が済むのだろうか……一瞬心臓を全力で握られたのかと錯覚するほどドキッとした。

 

一体どういうつもりで言ったのだろうか、まさか本当に……?いや、考えるのはよそう。

 

俺はさとりの足とベッドから抜け出し、必然的に端の方に寝ることになってしまっていたさとりをベッドの真ん中まで移動させてから改めて布団をかけてやった。

 

もう少ししたら自分も寝ようと思い、部屋の四隅の一角に椅子を置き、音を立てないようにしてクローゼットの中から掛布団を引っ張り出す。

 

 

 「外…出るか……」

 

 

ぽつりと零しながら一度も開けたことのなかったバルコニーへのガラス戸を開き、手すりに組んだ両腕を乗せてその間に顔を沈める。

 

外はまだ寒さが残っていて冷気が肌をつく、だがこのまだ鳴り止まない心臓の熱を冷ますには丁度良いだろう。

しばらく、夜風に当たってから寝るとしよう。

 

 

 「ふぅ………さみー………」

 

 

僅かに差し込んでくる月と星の光に照らされ、努めて何も考えることの無いようにしながら時間を浪費していく。

時間はだいたい深夜四時。

 

 

――――――――薄明かりの中、吐いた息はまだ白かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたかとある一夜の物語!!時系列としては本文中にもありますが風呂突撃事件から少し後のお話です。

この話が大きな伏線になっているだなんて誰が気づくでしょうか!!
(←隠し事が出来ないタイプ)

おっとそんな話はどうでもいいんですよ、最後の最後、少しでもドキリとしてもらえましたか?(←小声で)してもらえたとしたら作者としても幸せでございます!(←大声で)

そろそろお暇しましょうかね、最後まで読んでいただきありがとうございます!!
それではまた次回お会いしましょう~( 。`- ω -´。)ノシ

※誤字脱字等々はご報告下さいませ!!
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