鬼族の里に生まれまして(リメイク)   作:ゔぇる

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破滅の夜 上

 時は深夜。

 誰もが寝静まった時刻。

 

 その日は実家で眠っていた。

 

 だが、俺は突如として目を覚ます。

 この里に新たな気配を掴んだからだ。

 

 その気配は邪悪で、どす黒い敵意に満ち溢れていた。

 

 その瞬間俺は飛び起きる。

 心臓が早鐘を打っている。

 

「まさか......」

 

 その瞬間に俺の脳裏には最悪の文字が思い浮かぶ。

 

 魔女教

 

 ついに恐れていたその時が来てしまった。

 考えるよりも先に身体が動く。

 布団を跳ね除け、師匠に貰った愛刀を手に取る。

 

 両親のいる部屋から緊迫した気配が伝わってきたが、声をかける時間すら惜しい。

 

 俺は速攻で家の外に出る。

 

「クソが。完全に油断していた」

 

 ここ数年の満ち足りた日々に、心が弛緩していた。

 平和という猛毒に脳を焼かれ、必ずくるこの日から目を背けていた。

 

 一刻も早く、ラムとレムの元に向かわなければ。

 

 出し惜しみはなしで全力で行く。

 額に意識を集中させ、鬼化を発動させる。

 

 だが、その瞬間......俺は片膝をつく。

 

「ぐっ......がっ......」

 

 角から大量の異物が体内に入ってくる感覚があった。

 俺はその感覚を感じた瞬間に鬼化を解いたが、入ってきたものが体外に出ることはない。

 

「これは、マナの、汚染?」

 

 汚染されたマナが俺の体内で激しく暴れ回る。

 これでは普段のパフォーマンスを出すことができるはずもない。

 

 すると、膝をついている俺を視認した複数の魔女教徒が俺に向かって走り出した。

 数は十ほど。

 

 俺は膝を着きながらも、抜刀する。

 

 そして、一閃

 

 俺に襲いかかってきた魔女教徒は全て真っ二つになり、絶命した。

 例え苦しんでいようと、この程度の奴らに遅れをとるような真似はしない。

 

 しかし、立ちあがろうとすると、身体が鉛のように重い。

 周りの鬼は苦しみながらも戦うことが出来ていた。

 俺は特別弱いらしい。

 

 一息ついてから、なんとか立ち上がる。

 そして、息を整える。

 

 ラムとレムの元に向かわなければ。

 俺は二人の家の方向に走り始めようとしたのだが、俺の視界に激しい戦闘を繰り広げている鬼と魔女教徒の姿が入ってきた。

 そして、その鬼は俺の師匠だった。

 

 いくらマナの汚染で弱体化するとはいえ、師匠が一人の魔女教徒にここまで苦戦するはずがない。

 

 俺は師匠の方向に駆け出す。

 

 師匠に近づくと、師匠の様子が段々と分かってくる。

 身体には無数の傷を受けており、顔は苦痛に歪んでいる。

 そして、魔女教徒相手に強く踏み込めていない。

 

 何か遠距離攻撃を警戒しているような……

 

「師匠!」

「......カルか」

「今すぐ回復を」

「よせ!目の前の敵に集中せよ」

 

 目の前の魔女教徒は身体を不気味に折り曲げた。

 その動きは原作で見たことがある。

 そして、その魔女教徒が口を開く。

 

「仲間の危機に駆けつける!それはまさに愛!ああ、申し遅れました。私は魔女強大罪司教怠惰担当。ペテルギウス・ロマネコンティ......デス!」

 

 ペテルギウス

 こいつまで来ていたのか。

 

「奴は視認できない攻撃をしてくる。気をつけろ」

「大丈夫です」

 

 師匠が隣から助言してくる。

 ペテルギウスの権能である『見えざる手』か。

 原作ではスバル視点だったから見えていたが、実際に対峙すると本当に見えないんだな。

 

 俺は魔法を発動させる。

 

「ヒューマ」

 

 辺り一面に小さい氷を生成する。

 原作でエミリアが見せていた対処法だ。

 

 これならば、見えざる手が氷に触れた瞬間、その位置を可視化できる。

 

「怠惰なる権能。見えざる手」

 

 俺に無数の攻撃が襲いかかってくる。

 だが、その攻撃たちは氷に当たり、ある程度の攻撃軌道は見えた。

 

 無数の不可視の衝撃が襲いかかる。

 だが、氷の粒子がそこにまとわりつき、攻撃の軌道が白く浮かび上がった。

 俺はその隙間を縫うように踏み込み、ペテルギウスの懐へと肉薄する。

 

「馬鹿な!バカなバカなバカな!私の見えざる手が......」

 

 そこから先の言葉はなかった。

 俺がペテルギウスの首を斬ったからだ。

 

 ペテルギウスの身体が地面に落ちる。

 ひとまずの危機は去ったようだ。

 

 俺は師匠に近づく。

 

「回復します」

「ああ。だが、少しでいい。今お前のマナを使わすわけにはいかん。もうワシは戦えん。お前は自分の為すべきことをせよ」

「・・・分かりました」

 

 俺は師匠を応急処置した後、師匠に背を向ける。

 

「死なないでくださいね」

 

 俺はそう言い残して、再び駆け出した。

 俺の為すべきこと。

 

 ラムとレムを守る。

 

 俺は走りながら、近くにいた魔女教徒を切り裂いていく。

 一般魔女教徒程度なら体調の優れない今でも無双できる。

 

 

 

 だからこそ油断してしまった。

 

 

 気を抜いてしまった。

 

 

 周囲にいるのは一般の魔女教徒だけだと思ってしまった。

 

 

 

「怠惰なる権能、見えざる手」

 

 

 横からその声が聞こえてしまった。

 

 その声の主の視線は俺を捉えている。

 

 まずい。

 今の状態では見えざる手に対処することができない。

 

 俺は受けの姿勢をなんとか取る。

 腕の一本くらいくれてやる。

 

 俺は被弾覚悟で行くことを決意した。

 

 

 だがその瞬間、俺の予想だにしない衝撃が俺を襲った。

 

 俺は凄まじい勢いで吹き飛ばされてしまった。

 

 だが、その衝撃は威力に対して、傷をつけるようなものではなかった。

 

 俺は突然の衝撃に混乱しながらも、なんとか受け身を取る。

 別の刺客からの攻撃だと思って、俺のいた方向に目を向ける。

 

「なっ......」

 

 俺に攻撃してきたのは魔女教徒ではなかった。

 

 その人物はペテルギウスの見えざる手によって、身体を掴まれていた。

 

「なんで......」

 

 その人物は......俺の母だった。

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