鬼族の里に生まれまして(リメイク)   作:ゔぇる

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私は特典小説などは一切持っていないので、鬼族の里が滅んでから、ロズワール邸でどんなことがあったのかはほとんど知りません(一応少しは知ってる)

なので原作開始まで完全にオリジナルとなります



原作開始前
新天地


「知らない天井だ」

 

 目を覚ました俺は一度は行ってみたかった台詞を口にしてみた。

 視線を隣に滑らせると、そこには不安げな表情でこちらを見つめるレムの姿があった。

 

 独り言聞かれたわ。

 

「......おはよう」

「おはよう、ございます......っ!」

 

 レムの目には涙が溜まり、今にも決壊しそうだ

 俺はどう慰めるべきか一瞬迷ったが、彼女が抱える孤独と恐怖を思い出し、無言で手招きをした。

 そして一声かける。

 

「おいで」

 

 その言葉を聞いた瞬間、レムは俺の胸の中に飛び込んできた。

 その目に溜めた涙を溢れさせながら。

 

「よがったぁ、がるぐんがぶじでぇ......」

 

 レムは俺の胸の中で泣いた。

 今日まで溜め込んでいたものを全て吐き出すように。

 

「大丈夫。心配をかけたな。俺はなんともない」

 

 胸の中にいるレムの頭をを撫でる。

 この子はまだ8歳の女の子なのだ。

 急に故郷が滅び、両親を失い、姉は角を目の前で折られて、俺は意識を失っていた。

 

 どれだけの負担を背負っていたか。

 考えるだけで胸が痛む。

 

 それから数分間レムは俺の胸の中で泣き続けた。

 俺は黙って頭を撫で続けた。

 

 そして、レムは涙を拭いて顔を上げる。

 

「とりあえず、レムが分かっていることを教えてくれ。俺が倒れた後はどうなったかとか」

「はい。まず、ここはロズワールって人のお屋敷です。そのロズワールって人が倒れたカルくんとお姉ちゃんをここまで運んできたんです」

「里は滅んだのか?」

「生存者は私たち3人だけだって言ってました」

「......そうか」

 

 師匠も死んだか。

 死なないでって言ったのにな。

 

 薄々察していたことではあったが、事実を知るとやはり心に刺さる。

 俺が師匠の言葉を無視して回復魔法を使っていれば助かったのかも知れない。

 たらればでしかないが、そう思ってしまう。

 

「ラムはどうしてる?」

「まだ目を覚ましてないです。あと数日は眠ってるって言ってました」

 

 鬼族の生命線である角を折られたのだ。

 数日で目を覚ますのも奇跡だろう。

 

「そういえば、俺ってどのくらい眠ってたの?」

「1日半くらいです」

「そんなに寝ていたのか。それは心配をかけたな」

 

 俺はレムの頭を撫でる。

 

「さて、これからどうなるのやら......」

 

 そう俺が呟くと、別の方向から言葉が来た。

 

「それはわたくしがお答えしますわ」

 

 その方向を見ると、金髪のメイド服姿の少女がいた。

 

「メイザース辺境伯が使用人、フレデリカ・バウマンと申します」

 

 フレデリカ。ガーフィールの姉か。

 

「それで?俺たちはどうればいい?」

「とりあえずはラム様が起きるまでは客人対応とさせていただきますわ。ラム様が起きてから、旦那様とこれからどうなさるかを相談されるとよろしいでしょう」

 

 まあ、どうするかと言われても、俺たちに選択肢などない。

 ラムはこれからロズワールがいないと生きていくのは難しいし、そもそも故郷を失った俺たちには行く宛がない。

 そして、ロズワールは俺たちに使用人として仕えることを求めるだろう。

 原作通りであるならば、ロズワールの目的にラムが必要であるだろうから。

 手元にラムを置いておきたいはず。

 

 俺のすべきことは全員の身の安全と生活の補償を約束させることくらいか。

 

 そんなことを考えながら、その日一日は客人としてレムと二人で過ごした。

 ロズワールは本日中の帰宅はないと言われているので話すことはできなかった。

 

 そして、翌日となる。

 

 

 ラムが目を覚ました。

 

 俺とレムは大急ぎでラムの元に向かう。

 

「お姉ちゃん!」

 

 目を覚ましたラムを見たレムは俺の時と同じように泣き出してしまった。

 そして、ラムに抱きつく。

 ラムは少し苦しそうにしながらも、レムを撫でる。

 

「調子はどうだ?」

「......最悪ね。身体が全然動かないわ。今までこんなことはなかったのに」

「角が折れたんだよ」

 

 ラムはおそらく、自分の身体が何故こんなにも動かないのかが分かっていない。

 だが、俺は真実を隠さずにラムに伝えた。

 

「......っ!そう、なの......」

 

 ラムは絶句し、瞳に暗い影を落とした。

 

「すまない。俺が敵を発見できていれば、こんなことには......」

「別にカルのせいではないわ。ラムも気づかなかったもの......」

 

 ラムは俺のせいではないと言っていて、表面上は落ち着いて見えるが、内心穏やかではないはずだ。

 今まで力の拠り所としてきた鬼族の生命線、それを失ったのだ。

 

 すると、背後にいたフレデリカが口を開く。

 

「旦那様がお戻りになられました」

「そうか。どこに行けばいい?」

 

 俺はロズワールと話すために場所を尋ねたのだが、その返答は別のところから飛んできた。

 

「行く必要はなぁーいよ」

 

 ロズワール自身がこの部屋に来たのだ。

 ロズワールを見た瞬間に拳を強く握りしめたが、表情には出さないようにする。

 

「まずは自己紹介をしようか。私の名前はロズワール・L・メイザース。この屋敷の主だぁーよ」

「カルです」

「......ラムよ」

 

 俺とラムも名乗っておく。

 

「まずは約束を果たすことにしよう」

 

 そうして、ロズワールはラムに近づいて、額に手を当てる。

 

「星々の加護あれ」

 

 そう言って、虹色のマナがラムに注がれる。

 

「一気に楽になったわ」

 

 ラムが驚いたように言う。

 やはり、この男がいないと、ラムはきついか。

 

「さぁーて、これから君たちにはこれからどうするか決めてもらうよ」

 

 ロズワールはあえて、ラムを治療したところを見せてから選択を迫ってくる。

 嫌なやり方だ。

 

「では、この屋敷においていただけないでしょうか。ラムの治療はあなたしかできないようですし、私たちにはもう帰る場所はありませんから」

 

 俺は迷わず言う。

 

「客人として、ここにいさせろということかぁーな?」

「いいえ。フレデリカさんと同じように使用人としてここに置いていただければと」

 

 ラムとレムの方に目をやると、レムは肯定するような視線を。ラムは少しだけ複雑な視線を飛ばしてきた。

 自分の角が無くなったせいで選択肢が無くなったことを思っているのか、ロズワールが鬼族の里の襲撃に加担していることに気づいて、信用できないと感じているのかはわからない。

 だが、ラムも俺の言葉を否定するようなことはしなかった。

 

「では君たちを使用人として迎え入れようじゃなぁーいか」

「ありがとうございます」

 

 俺はロズワールに頭を下げた。

 

「ではカルくん、少しだけ私と二人っきりで話そうじゃなぁーいか。フレデリカは姉妹の世話をしてあげなさい」

「かしこまりました」

 

 そうして俺はロズワールについていく形で部屋を出た。

 

 どんな話をされるのやら。

 

 何を話されるのかという不安と、原作通りに使用人として受け入れられた安堵の混じった複雑な感情になっていたのだった。

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