鬼族の里に生まれまして(リメイク)   作:ゔぇる

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成長

 ここが最凶難易度であるリゼロの世界だと判明した翌日、俺はこれからのことを考えていた。

 

 まずは自分自身のこと。

 今までと大きな変更点はなく、実力をつけるという目標は変わらない。

 だが、今までの最強の魔法使いになろうみたいな浮ついた考えではなく、真剣に強くなることを考える。

 このリゼロというハードモードな世界では強くないと生きていくことはできない。

 

 次に里やラムレムのこと。

 俺は未来で鬼族の里が魔女教徒に襲われ、一夜にして滅びることを知っている。

 それを救うか救わないか。

 

 救わないのは簡単だ。

 何もしなければいい。

 

 ただ、自分の身を守る。

 それだけだ。

 

 ラムは角が折れてしまうだろうが、死にはしない。

 レムもラムが守るので死ぬことはないだろう。

 その二人はスバルが来るまでは安全だ。

 

 その代わり、俺の親を含めた里の住人は全滅するだろうが。

 

 逆に救うことは相当難しい。

 

 まず、襲撃から里を守るには、俺一人の力では絶対に不可能だ。

 そのため、里の住人にこの襲撃のことを伝える必要がある。

 

 だが、伝え方がない。

 証拠がないのもそうだが、俺が魔女教徒の手先だと思われる可能性がある。

 転生者と明かそうにも、ラムやレムのように忌み子として扱われるようになるかもしれない。

 そもそも教えたからといって、里を救える保証があるわけでもない。

 

 そして、もし里を救えたとしよう。

 仮に、里の人々に伝えて、信じてもらえて、魔女教を殲滅できたとしよう。

 

 だが、そこから先は俺の知らない世界。

 魔女教の襲撃にあの男が絡んでいる以上、必ずまた滅ぼしにやってくる。

 いつどこでどうやって襲撃されるのかは分からない。

 最悪の場合、俺やレムも死ぬ可能性がある。

 

 今答えを出すことはできない。

 守れるものは守りたいが、守ったことによってさらに失うものが増えるかもしれない。

 将来、襲撃に備えてどれだけの力を蓄えることができるか。

 

 正直、全てを投げ出して逃げてしまいたくなる。

 だが、ラムもレムも前世では俺の好きだったキャラ。

 この二人だけは絶対に守ってみせる。

 

 

 そして、その日の夜。

 

 俺は強くなるための修行をいつも通り始めた。

 だが、今回はいつもとは違って、試したいことがある。

 それは鬼化だ。

 

 ラムとレムがいることによってここが鬼族の里であることが分かった。

 ここが鬼族の里だということは、俺も鬼族であるということだ。

 つまりは俺も鬼化ができる。

 

 今までは鬼化というものを知らずに特訓をしてきた。

 だが、鬼化を知った今なら鬼化ができるはずだ。

 

 鬼化を意識する。

 すると、額から小さな角が二本出てくる。

 何故今までできなかったのかと思えるほど簡単にできた。

 

 もしかしたら、生まれた瞬間とか、俺が気づいていないだけで鬼化をしていたのかも知れない。

 

 鬼化をして行う魔法は今までの比較にならないレベルで凄かった。

 角から大気中のマナ(今までは魔力と名称)を吸収して、そのマナを自分のものとして扱うことができた。

 おそらく、ラムが見せたマナ操作はこの状態なら簡単にできるだろう。

 

 というか、角一本でこれを行っているラムは相当な化け物だな。

 

 鬼化したことによって、魔法の規模を大きくしてみたり、複数の魔法を同時に操ったりすることができる。

 まるで全てのことができるようになったと感じるほどの万能感。

 鬼化した状態でマナを扱うだけで、そこら辺の大人にでも無双できるだろう。

 

 それからも鬼化した魔法を色々と試してその日は眠りについた。

 

 

 3ヶ月が経過した。

 首が座ってきた。

 ハイハイも少しであるができるようになった。

 

 少し成長が早いと思う。

 これは俺が転生者で、動けるように頑張っているからなのか、鬼族だから身体が強いのかは分からない。

 だが、両親はその成長を素直に喜んでくれる。

 前世では親孝行(祖父母だけど)はできなかったので、今世の親にはしっかりと親孝行したい。

 

 だが、たまに耳にする。

 親がラムとレムの話をしていることを。

 両親はあの二人を生かすことに反対している。

 

 この時の俺はいずれ自分がなんとかすればいいなんて甘い考えを抱いていた。

 それが一生の後悔の始まりになることを知らずに。

 

 

 さらに3ヶ月が経過した。

 これで生まれて半年ほどになる。

 俺は完全にはいはいを習得。

 鬼化すれば立ち上がることも可能になった。

 

 今では家の中を自由に探索できるようになった。

 探索ができるようになったらしたいことがあった。

 それは本を読むことである。

 前世では本を読むことが好きだったからな。

 

 というわけではいはいをしながら家の中を探索する。

 だが、本らしきものは見つからない。

 もしかしたら、この家には本がないのではないかと思い始めてきた。

 

 そんな感じに絶望しかけていると、部屋の隅に本のようなものを発見した。

 見てみると、本ではなく、古いノートに近いものであった。

 それを手に取り読んでみる。

 

 うん。読めん。

 そういえば、スバルも文字の勉強してたっけな。

 うーむ、どうしようか。

 

 まあ、これしかないか。

 

 俺は本を母のところへと持っていく。

 そして、母に本を見せる。

 

「よんれ?」

 

 まだきちんと発音できないが、頑張って発音して読んでもらおうとする。

 

「私の子、天才かも知れないわ!まだ生まれて半年しか経ってないのに!」

 

 なんか母が騒ぎ始めた。

 そんなことよりも読んで欲しいんだけどな。

 

「よんれ?」

 

 もう一度言ってみる。

 

「カルにはまだ難しいと思うわよ?」

 

 俺は上目遣いで頑張っておねだりする。

 

「仕方ないわねぇ。読んであげるわよ」

 

 よっしゃ。

 おねだり成功だぜ。

 

 それから母親は本を読んでくれた。

 物語ではなく、父の日記のようなものだった。

 別に特段面白いとかはないので、文字と言葉を結びつけて覚えることに集中する。

 一音一語に対応されているから覚えるのは楽そうだ。

 英語みたいなのだったらやばかったかもしれない。

 

 そんな感じに数日に渡り、母に繰り返し読んでもらった。

 そのおかげである程度の文字はわかった。

 

 あとはそれを元にさらに解読を進めるだけだ。

 

 

 と、こんな感じに順調に見えるが、困ったことがあった。

 

 一つは暇なこと。

 身体はまだ生まれて一年も経っていないため、できることが少ない。

 隠れて修行することと、文字を覚えること以外に寝ることくらいしかすることがない。

 魔法の練習はいずれは親の前でやるつもりだが、今は騒がれたくないので秘密にしている。

 

 文字を覚えることは、ある程度覚えてしまうと、繰り返し読んでもつまらないだけである。

 つまり、眠くない昼の時間が暇すぎるのである。

 前世の俺はよく暇にならなかったなぁ。

 覚えてないけど。

 

 もう一つは、最近離乳食のようなものを食べているのだが、まあ美味しくない。

 前世で舌が肥えているため、この発展していない里の飯はあまり美味しく感じることができなかった。

 ラーメンが食べたい。ポテチが食べたい。

 まあ、現代に転生しても、この年齢ではラーメンもポテチも食べることはできないのだが。

 

 

 

 さらに半年が経った。

 鬼化なしでも歩くことが安定してきた。

 次の目標は走ることだぜ!

 と息巻いていたのだが、結構早くにできてしまった。

 

 鬼化を使用すれば不安定なことも一切ない。

 というわけで、目標がなくなってしまった。

 

 修行は毎日しているし、文字も覚えた。

 

 何かできることはないかなと思いながらさらに一年を過ごすのだった。

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