生まれてから2年が経過した。
魔法の練習は毎日欠かさずに行っている。
マナを直接操ったり、魔法を詠唱したり、鬼化しないで特訓したり、色々と試行錯誤をしているが、とりあえず言えること。
「飽きた!」
いくら前世の精神があるとはいえ、毎日毎日、誰に見せるでもなく部屋の隅でマナをこねくり回すだけの生活を二年だ。限界というものがある。
そんな中でふと頭に思い浮かんだことがあった。
自分の実力を知りたいと。
どれだけ特訓しても、自分の現在地が分からなければモチベーションも保てないというものだ。
特訓すること以外にすることもないので、モチベーションが無くなっても続けると思うが。
そんなわけで、自分の実力を試すことにした。
ある日の夜中。里の誰もが寝静まった頃に、親にバレないようにできるだけ気配を消して家を抜け出した。
俺はワクワクしながら近くの森へと向かった。
そこは魔獣が生息しているという話を聞いたことのある森だ。
森に向けて、鬼化をして走る。
いつも以上に、身体が軽い。
羽でも生えたのではないかと思うほど、地面を蹴る足に抵抗がなかった。
そして、3分ほど走ったところで森の中に入った。
森の中には様々な動物の気配が満ちている。
その中には動物とは比べ物にならない敵意を発している生物がいる。
すると……
「うおっ!」
草木の間から狼が飛び出してきた。
原作のウルガルムに近い見た目をしている魔獣だ。
鬼化していた俺はなんとかその奇襲を避ける。
「ヒューマ」
そして、魔法を使う。
氷の矢が狼に飛んでいって、突き刺さった。
その狼はすぐに絶命した。
狼一匹くらいではつまらないな。
俺は森の中を駆けて、魔獣にマナや音によって自分の居場所をバラしていく。
森を駆ける中で、どんどんと俺を追ってくる気配が増えていくのが分かる。
俺の精神はどんどんと高揚していく。
そのたびに俺は走る速度を上げていく。
そして、ある程度の魔獣が集まったと感じた時に、俺は木にのぼり、そこからさらに上に跳んだ。
鬼化による身体能力向上といつもよりも軽い身体を活かして、高さ10mくらいまで跳ぶことができた。
月を背にした滞空。眼下には、俺を喰い殺そうと群がる魔獣の群れ。
そして、地面に向かって、俺の全力の魔法を放つ。
「アル・ヒューマ」
自分のマナを使えるだけ使って魔法を発動させる。
すると、直径15mほどの氷塊が現れる。
「ははっ」
思わず笑いがこぼれる。
これを放てば地上は大変なことになるだろう。
だが、俺はそんなことを気にするよりも、この氷塊を撃ったらどこまでの攻撃になるのかという好奇心が優先される。
俺は氷塊を地面に向けて放つ。
氷塊は、地面へと落ちていく。
そして、地面に着弾する。
凄まじい爆音と衝撃が辺りを揺らす。
衝撃によって、2歳である俺の軽い身体は木の葉のように吹き飛ばされてしまった。
幸いなことに里の方に飛ばされているため、森の奥に行ってしまうということはないだろう。
長時間の滞空によって体勢を立て直す余裕ができる。
そして、鬼化によって上手く着地する。
「わー、すっげ」
俺の魔法を放った場所を見ると、巨大なクレーターができていた。
当然、魔獣の気配は跡形もなく消滅していた。
物凄い威力だな。
実戦向きというよりは、ロマン火力に近いけど。
大規模な魔法をぶっ放したことで、俺の精神が冷静になる。
ここで、一つの懸念が頭をよぎった。
この音で俺の両親は起きるのではないか?
起きたら俺がいないことに気づくのではないか?
そんなことを考えていると、俺の中で焦りが大きくなる。
そして、里の方向へと全力で走り始めた。
行きよりもさらに速く、俺は駆ける。
それから2分ほどで俺は家に着いた。
気配を消しながら家の中に入る。
両親の気配が動いている感覚はない。
気配を消しながら布団の中に戻る。
布団の中に入ってからも、魔法を放った興奮からか、全然眠ることはできなかった。
布団の中にいる間も、身体は走っていた時ほどではないが、非常に軽い感じがした。
次の日、俺は目を覚ます。
起きた時には両親が起きていて、近くにクレーターができていたことを話していた。
すいません。それ俺がやりましたとは言えないので、気まずい感覚がする。
そして、身体を起こすと、そこで違和感。
昨日と比べて身体が重いような。
「いや、昨日が軽すぎた」
そう独り言をこぼして、少し身体を動かして感触を確かめる。
昨日は身体が軽くて、なんでもできる万能感のようなものがあった。
今鬼化をしても、こうはならない。
原因はなんだ?
昨日と今の違う条件は、夜であったこと、外であったこと、森に入ったこと、走ったこと。
夜であるならいつもの特訓中に気づくはずである。
外でも親に連れられることがあるので、その時に気づくだろう。
森に入ったからなら、家を出た時に身体が軽いと感じたのはおかしい。
走ったことは今まで何度もあるが、こんなことになった記憶はない。
いくら考えても原因は分からなかった。
だが、俺の中にはまだ俺の知らない力があるということを知ることができた。
当面はこの力を解明することを目標にすることにしよう。