マナの扱いのお披露目をした翌日、俺は陽魔法を試すことにしていた。
確か陽属性の身体強化の詠唱は「アクラ」だったっけな。
自身のゲートに意識を向けながら詠唱をする。
「アクラ」
唱えた瞬間に自分の体内のマナが熱を持ちながらゲートを通り、身体中に流れていくのを感じる。
俺の身体が、うっすらと黄金色の淡い光に包まれる。
初めて使ったので、上手く使えている感覚はしないが、自身の身体能力が向上しているのが分かる。
身体を動かして感触を確かめる。
鬼化の身体能力強化には遠く及ばないものの、あるとないのでは大違いだ。
何よりも、鬼化と併用することによって、相当な身体能力強化ができる。
さらに、この魔法に慣れていけば、もっと身体能力を強化できるようになるだろう。
少しだけ、魔法を慣らすために魔獣の出ない森の中を走ることにした。
走る速度は風のように速く、出力をもっと上げると、制御できずに木にぶつかってしまうような気がする。
だが、その危うい高揚感が、俺の修練をさらに加速させた。
しばらく森を駆けていると、視界が急に開けた。
そこには綺麗な花畑があった。
そして、その中心には二人の少女。
その二人の少女と目が合う。
相変わらずラムは感情が読めない目で、レムは少しだけ怯えたような目でこちらを見てくる。
レムに関しては仕方ない。
レムにとっては俺も周りの大人たちと一緒なのだから。
とりあえずは話してみよう。
「こんにちは」
できるだけ優しい声音で話しかける。
ラムは妹を守るように一歩前に出て、レムは姉の影に隠れるように視線を落とす。
「「こんにちは」」
だけど、なんとか挨拶は返してくれた。
「俺の名前はカル。よろしくね。君たちの名前も聞いていいかい?」
「ラムよ」
「レム、です......」
やっぱり警戒されているか。
どうすれば距離を積めれるだろうか?
「二人は何をしているの?」
「花を集めたりして遊んでるのよ」
二人の手元には、摘み取られたばかりの色とりどりの花があった。
「俺も一緒に遊んでもいいかな?」
できるだけ優しく、敵意はないよと言外に伝える。
レムの表情は未だ暗いが、小さく頷いてくれた。
「ありがとう」
それから俺は二人と遊んだ。
最初は暗かったレムも、俺が花で作った冠を作ったり、珍しい花を見つけたりしていると、だんだんと明るくなってきた。
やっぱり一緒に楽しいことをするのが距離を詰める一番の方法だね。
俺が敵ではないと分かったのか、向こうから積極的に話してくれることもあった。
最初は俺のことを警戒していたっぽいラムも、途中からは警戒心が無くなっていた。
警戒している姉様は結構怖かったので助かったぜ。
そんな中でレムが向こうに見たことない花があると言ってかけだした。
俺はレムを追おうとしたのだが、背後から低く、冷徹な声に呼び止められてしまった。
「待って」
「どうしたんだ?」
俺はラムの方に振り向く。
「どうして、そんなに優しくするの?」
ラムは魔法のお披露目の時と同じような表情をしながら俺に問いかけてくる。
「どうしてって、仲良くなりたいからだけじゃダメか?」
「ラムは隠し事が多い人は信用しないわ。あなたのように、力を隠している人は特に」
力を隠しているか......
やっぱあの時のお披露目で手を抜いていたことがバレていたようだ。
流石は姉様だ。
「俺は剣もやっていてね。魔法の力を見せすぎると、魔法に専念した方が良いとか言われそうだったから手を抜いたんだよ」
「じゃあ本当に私たちと仲良くなりたいだけ?」
「そうだよ。せっかく同じくらいの年齢なんだ。友達になりたいと思うのはおかしいかな?」
「そうね。おかしくないわ。変なことを言ってごめんなさい」
すると、レムが遠くの方で俺たちを呼んでいる。
「いくか」
「そうね」
そうして俺とラムはレムの方へと向かった。
隣を歩くラムの横顔は、先ほどまでの険しさが消え、年相応の穏やかさを取り戻していた。
「お姉ちゃんとカルくんはなにを話していたの?」
「大したことじゃないわ」
「ラムに友達になろうって言っただけだよ」
「友達じゃなかったの?」
「いいや友達だよ。俺とラムも。俺とレムもな」
それから陽が傾くまで俺たちは遊んだ。
「また遊ぼうな」
「うん。じゃあね」
そう挨拶をしてから俺たちは帰路ついた。
今日はラムとレムと仲良くなれたし、大きな前進だったな。