こんなに可愛い私が魔法少女じゃないなんておかしい 作:T-h208
生まれてからずっと、
私はこの世界の人とは違うと思った。
透明感の強い白銀色の髪。
まるで、サファイアが埋め込まれたような瞳。
少し赤みがかった白い肌。
ひらひらとした白いワンピースがより美しさを、可愛さを引き立てる。
ーーーー圧倒的美少女っ!!
それが私である。
だが、勘違いしないで欲しい。
私はナルシストではない。
ただ、私の前世……何年間か過ごした世界ではこんな美少女は画面の中にしかいなかった。アニメや漫画、小説にでてくるような絶世の美少女。それが今の私だった。
ましてはこの世界には魔法少女がいるようだ。
テレビに映っているニュースキャスターが興奮気味に言う。
『突如町に現れた怪物を謎の少女が退治しました』
テレビに映る推定魔法少女はニチアサと同じような浄化魔法(?)的なものを使って怪物を倒していた。
……うーん。
なんで朝のニュースで放送しているんだろうか。
ここ最近、よく、テレビで推定魔法少女を見るようになったが、違和感しかない。
「るなちゃん、そろそろ学校の時間ですよ?」
「あ、うん」
お母さんの声で現実に戻される。
「いってきます」
「……気をつけてね」
それが、今世の私の名前である。
10歳の、超絶美少女である。
話を戻すが、私は明らかにこの世界の人とは違う。
一つ、前世の記憶がある。
二つ、圧倒的美少女である。
三つ、
プラスアルファで悲しい過去持ち。(条件付きで現在進行形)
長くなったが、何が言いたいかと言うと……
きっと私は魔法少女なのである!
きっと、きっと!
何処からから妖精みたいなのが飛んできて、
『このステッキで変身して、魔法少女になって!』
と、助けを求めに来るだろう!きっと!
こんなに魔法少女になるしかない属性を持ち合わせているんだぞ!来ないほうがおかしいだろう!
……そう思ってきて早5年。
未だに妖精らしきものは現れない。
ニュースで映っていた推定魔法少女たちは、私の持っている謎のアイテムと同じものを使って戦っていた。
それなら、私のところにも何かしら変身グッズを持ってくる生物がくるばずだ。ただの一般人が持っているのはおかしいからね!
……だが、待つだけではダメだ。
理想はあっちから勧誘に来ることだが、もし……もし、敵側が強すぎて今の推定魔法少女たちがいなくなってしまったら?
その場合は私のところにすっ飛んで来るかもしれないが、もし、私が魔法少女になる前にこの世界が滅んでしまったら?
今のところ推定魔法少女たちは負けるような気配がない。弱いものいじめと思ってしまうほど、怪物に圧勝している。だが、必ずしもそのまま同じ展開で進む保証はない。急に敵が強くなるかもかもしれない。味方が裏切るかもしれない。第3勢力か登場するかもしれない……
なら、それなら、私は何をするべきか。
そんなの、1つしかないじゃないか。
推定魔法少女と関係を持ち、魔法少女になりやすいポジションにつくこと
それが、圧倒的美少女である私にできる1番楽な方法だった。
ーーーーー
ーーーー
ーーー
ーー
学校が終わって家に帰る途中。
滝にでも打たれたくらいびしゃびしゃの少女が公園のベンチに座っていた。今日は午後からずっと雨だったが、まさか、ずっとここにいたのだろうか?
「……おねえさん、大丈夫?」
「……」
ザーザーっと、そこそこ強い雨が少女を打ち付ける。
びしゃびしゃの少女は今にも消えてなくなりそうな、そんな感じがした。……どーした?
「……?」
「傘、ささないと濡れちゃうよ?」
私は優しいからびしゃびしゃの少女に傘を差し出す。小学生用の黄色い傘では2人も入れない。少女が雨に打たれなくなったかわりに私が雨に打たれる。……えへへ、水も滴るいい女になっちゃう。ただでさえいい女なのにね。
「……ありがと。でも、早く帰った方がいいよ」
「どうして?」
「……それは、……言えない。でも、危ない、から。早くここから……」
少女が何かを言おうとしたとき、何者かによって言葉は遮られてしまった。
「おや、ここには1人で来るように言ったはずですが……その子は……?」
男にも、女にも見える、何処かの執事みたいな格好の人がいた。……コスプレイヤー?
せっかく、目の前の少女が何か重要そうなことを言おうとしていたのに……こいつ、人の話を遮りやがって……!きっと、まともな教育を受けてないんだな。きっと。
「……私はあなたに聞いているんです。ミーティア」
「っ……」
コスプレイヤーは急に声を低くして圧を与えるように言った。うわっ、急に怒らないでよ。生理か?
心の中でコスプレイヤーに悪態をつきまくる私とは違って、目の前の少女は顔を歪めている。
ん?この少女がさっき、『危ない』とか言っていたのはもしかして……
「話す気がないならいいです」
すっ、と。
コスプレイヤーは右手あげる。
おぉ、序盤にやられる系悪役が攻撃するときにやりそうなモーションだ。
「っ!この子はっ!……この子は、関係ない。ただの、通りすがりの、親切な小学生……だから」
少女はとても苦しそうな表情で声をあげた。
私の仮説が正しければ、この子は、この変なコスプレイヤーは……
「……答えてくれてありがとうございます。さて、お嬢さん、申し訳ありませんね。急に知らない人が来て怖かったでしょうに」
コスプレイヤーが私たちのいるところに、私に近づいてきた。しかも、親切なことに目線を合わせるためにしゃがんでくれた。さっきほどの態度とはうってかわって、ちゃんと執事っぽい。私が超絶美少女ということもあいまって、はたから見たらお嬢様とその執事に見えるに違いない。
「……あなたは誰ですか?」
心の中では、この人情緒不安定なのかなとか、悪態をつくが、ちゃーんと年相応の、超絶美少女を演じる。勿論、不安そうな表情を作って。
「まだお嬢さんには名乗っていませんでしたね。失礼。私、モナルカ様に仕える執事、ミニステルでございます。以後お見知りおきを」
いや、モナルカ様って誰だよ。
んー、まぁ、だいたい予想はつく。少女の発言、コスプレイヤーの言動、朝のニュース、あまたの魔法少女系作品を見てきた私にならわかる。
「……魔法少女とその敵か」
「どうかしましたか?」
「あ、いえ……その、雨、冷たくないんですか?」
傘をささず、雨に打たれているコスプレイヤーに対し、親切に声をかける。まるで、心の底から心配しているかのように……まぁ、嘘だけど。
こんな変なコスプレイヤーを気にかける心は持ち合わせてはおりません。ごめんなさいね!
思ったことがポロっとでてしまうのは私の悪い癖。気を付けないとね。まぁ、そんな私も可愛いんだけど。
「確かに、ミーティアが言ったとおり親切なお嬢さんですね。お嬢さん、気にかけてくださりありがとうございます。ですが、私のことはお気になさらず。私も、用がすんだらすぐに帰りますので」
そう言い、コスプレイヤーはふっ、と微笑んだ。
あらやだイケメン……じゃなくて、もしかしてこのまま、あの少女と話を続けるんですか?
え、え、え、神様?仏様?コスプレイヤー様?
私の予想が正しければ、今からあなたたちは私の知りたい情報を私の前でペラペラしゃべるってことですか!?
……散々心の中で悪態つきまくってごめんね!
「さて、お待たせしました。ミーティア。あの件について……考えていただけましたか?」
雰囲気が、変わる。
始まる……何が始まる!そんな感じがした。
「……私、は……」
「時間はたっぷり与えたはずです。今回はこの前のように、先延ばしはやめていただきたい」
「……」
コスプレイヤーは自分のセカイに入ってしまったのか、私のことを気にも止めなくなった。だが、少女は私がいることをすごく、すごーく、気にしているようだ。言葉を発することを躊躇っているように見える。すごく泣きそうな顔をしてる。
「……はぁ、手荒な真似は好きじゃないんですけどね」
そう言い、コスプレイヤーは私のほうを見る。
おや?もしかして、あれですか?私を使って怪人産み出すとか、そーゆー系のあれですか?わくわく、どきどき。
「っ!やめて!!!」
「すみませんね、お嬢さん。私たちの計画のため、犠牲になってもらいます!」
少女はベンチから立ち上がり、さらに顔を歪めて叫んだ。
一方、コスプレイヤーは『待ってました』と言わんばかりの嬉しそうな顔している。
あまり情報漏らさないんだな、とか思っていたけど、さらっと、『私たちの計画』という重要そうなことを言ったな。
ふーむ、その、『私たちの計画』とやらのためにはこの圧倒的弱者にしか見えない可哀想な少女(魔法少女の可能性大有り)が必用なのか……ふーん、へー。面白くなってきたじゃん!
おい!女の子が顔を歪めることに興奮している変体コスプレイヤー!(語弊しかない)
その、『私たちの計画』とやらのために存分に私のことを使ってくださいな!そして、私が魔法少女になるために少女をフルボッコにして、魔法少女になった私に倒されてくださいな!
「さぁ、ステラよ!我らの計画のため、その力を解き放て!」
「それはっ……!
変体コスプレイヤーは私の持っている謎のアイテムに
「……は?……いや、でも博士の改造版だから……
」
変体コスプレイヤーの間抜けな声が雨の音に書き消される。何か呟いているようだが、あまり聞き取れない。……博士?
そんなことより、不発ですか……ちゃんと家出る前に、使えるか点検しといてよ!ぬぬぬ……魔法少女になれたかもしれないのに……!私が魔法少女になったら、一番最初に消しとば……じゃなくて、浄化してやる!許さないぞ!!
「……そっか、そっかぁ!私に
少女の雰囲気が変わった。
苦しそうな、辛そうな表情をしているのに、目には涙をためているに。
変体コスプレイヤーを睨み付け、その目には明らかな殺意が混じっている。
何処からかステッキのようなものを取り出し、
変身コスプレイヤーへ死の宣告と、魔法少女になるための呪文を。
「……殺してやる。お前なんて……お前たちなんてっ!!殺してやるっ!!……変身!」