こんなに可愛い私が魔法少女じゃないなんておかしい 作:T-h208
今後もこのくらいのペースになるかもです……
「……殺してやる。お前なんて……お前たちなんてっ!!殺してやるっ!!……変身!」
光が少女を包み込み、パッ、と蛍ような光の粒子が散乱する。
光の中から現れた少女は一目見て魔法少女と分かるような、フリフリの衣装を身に纏っていた。深い群青色の衣装は夜空を、ブルーモーメントを彷彿とさせる。
ーーー綺麗
その一言につきる。
目の前の魔法少女の美しさに気を取られてしまったが、私の予想が当たっていたことが明らかになった。いやぁー、さっすが、私!可愛いだけでなく、頭も冴えてるなんて!
ところで、あの少女はなぜ、急に雰囲気が変わったのだろうか?大体は予想つくのだが……十中八九、あの変体コスプレイヤーが言ってた『博士』と不発のアイテムが関係しているだろう。まあ、あの少女がおかしくなったわけではないということだ。……急に大声だして変身したときはちょっと、いや、とても驚いたが。
「……覚悟してね。この前みたいに楽に殺してあげないから」
少女はそう言うと、杖に星のかたちをしたアイテムを取り付け、レイピアに変え、変体コスプレイヤーへ攻撃をする。
……ん?
なんだ?まるで、昔殺したことがあるような……?
「っ!ステーーー」
ドッカーン!
という効果音が聞こえてきそうなほど、派手にコスプレイヤーは空を跳んでいく。
攻撃される前に先ほど不発だった不良品のアイテムを掲げようとしていたが、不良品は不良品。どう頑張っても再び光ることはなかった。
ところで、レイピアであそこまで跳んでいくものなのか?
という疑問はあるものの、嫌いな人がヒドイ目にあっているのを見るのは気持ちのいいものだ。
「っ……なぜ……ステラが反応しないのですか……!?」
服がボロボロな、若干……ある層が喜びそうな格好のコスプレイヤーは、何もない空間からスマホのようなものを取り出し、何処かに連絡し始めた。
……が、それを止めるかのように、少女が魔法の光線のようなものを放つ。
『ボロボロだねー?駄犬ー?』
『ズタズタだねー?キメラー?』
だが、運良くスマホのようなものは何処かの誰かに繋がったようだった。その代わり魔法の光線は変体コスプレイヤーの肩に直撃!肩からはビックリするほど血が流れている。うぇ、気持ち悪い……
ホログラムで映し出された声の主たちは一見、中学生くらいの子どものように見えた。白金色の髪に、メイド服と執事服。服装でしか見分けがつかないほどそっくりだった。双子だろうか?
私と同じ、肩につくくらいの長さの髪。宝石のような青い瞳。圧倒的美男美女。髪色は多少違うが、パッと見同じように見える。明らかに違うのは身長だけだ。……生き別れのお兄ちゃんとお姉ちゃんです!と言われても信じてしまうほど私と似ている。言ってしまえば、キャラ被りだ。
『あれれ?もしかして、聞こえてない?』
『あれー?もしかして、もう殺られちゃった?』
「聞こえていますよっ!茶化しに来たのなら帰ってください!私はっ博士と話がしたいのですっ!!」
コスプレイヤーはキャラ崩壊を気にしてもいないように乱暴に言った。ホログラムの彼らは大袈裟にポーズを取って煽っている。
『ん?博士?誰それー?』
『んー?あ!お兄ちゃん、お姉様のことじゃない?』
『あぁ!確かに!お姉様、いっつも変なもの作っているもんね!さっすが、ぼくの妹!』
お兄ちゃんと呼ばれた方がメイド服。妹と呼ばれた方が執事服。……あれ?声の高さも同じくらいだったから気づかなかったが、女装と男装……?
『んー、でもねー??お姉様は新人の調きょ……じゃなくて……教育に忙しいからぁ』
『お姉様に繋がることは無いよぉ。残念だねー??』
くすくす、ニヤニヤ。
コスプレイヤーの思い通りにいかなかったことを面白がるように、バカにするように言った。
……教育???
絶対に教育じゃないよね!?調教って言ったよね!?小声でじゃないとか言ってるの普通に聞こえたけど……!!
『もしぃ、キメラが失敗しちゃったらぁ、新人と一緒に教育してもらえるねぇ?』
『あははっ!お兄ちゃんひっどぉーい!そもそも、あの新人が死んじゃう可能性のほうが高いんだよ?駄犬は駄犬だから大丈夫だけど、私たちだっていっつも
「そんな……」
魔法少女から攻撃を喰らってから顔色が悪かったコスプレイヤーの顔色がさらに悪くなる。そろそろ大量出血で死んでしまうのではないだろうか?今もまだ、血は流れている。
もしや、博士は私が思っている以上に結構ヤバイやつなのでは?多分、教育(笑)で暴力的なこととか、洗脳紛いのこととかしてるよね。今のところ冷酷なマッドサイエンティストみたいなイメージなんだけど……まぁ、人格が終わっているほうが倒しやすいし、いっか!
「……なぜ、なぜ来たのですか」
『そ、れ、は、ねー』
『あまりにもつまらない戦闘だったから、面白くしようと思って!』
『ちょっと!私が言おうと思ったのにー!!』
ぷくーっと頬を膨らませる。
もしかして中継とかしているのか?ほら、よく敵キャラが戦闘しているときに同じ組織の敵キャラが基地で見てたりするし。見ているならボス格か?
そもそも、コスプレイヤーが、魔法少女のお姉さんになにしに来たか分からないから、なんとも言えないなぁ……うーん。
『んー?あれれ?なんだか似てるー?』
『んん?あれー?もしかして生き別れの妹ー?』
双子は私に気づいたみたいだ。今まで気づかなかったほうがおかしいのだが。
『あれ?……お兄ちゃん』
『うーん、
これは……魔法少女の適性があるってことで間違いないのか……?そもそも魔法少女の適性って、見たら分かるものなのか?
『えーと、はじめまして!ぼくたちの妹ちゃん!』
『うーんと、こんにちは!あたしたちの妹ちゃん!』
「……」
いや、あなたたちの妹になったつもりはないけど。
「……私、一人っ子です」
『そんなこと気にしなくていいよ!家族なんて後からでもなれるし!』
『そうそう!…………?』
自称お兄ちゃんがふと後ろを振り向く。それにつられて、自称お姉ちゃんと私も振り向く。だが、そこには特に誰かいるわけでもないし、何かあるわけでもなかった。ただ、少し違和感がある。
「……」
『んー、あー。なるほどね』
『……お兄ちゃん?』
『そろそろ帰らなきゃじゃない?キメラが持ってきたお姉様の玩具は試作品だし、今は黙ってるけどいつ戻るか分かんないよ?……もし戻ったとしても、
『え、あ!ホントだ……
魔法少女のお姉さんを見て、女装の自称お兄ちゃんは言い聞かせるように言った。魔法少女のお姉さんは違和感がある所を見て固まっている。
途中から全く反応しなくなった魔法少女のお姉さんはどうしたのだろうか?百パーセント、あの不良品のせいだと思うが、魂が抜けたように立ち尽くしているお姉さんは少し怖かった。
試作品の玩具に『いつ戻るか分からない』……ね。これは考察がはかどるね!何がなんだか、さっぱりだけど!『ぼくには太刀打ちできない』って言葉も気になるな……含みがあるような気がする。例えば、女装の自称お兄ちゃんは太刀打ちできないけど、男装の自称お姉ちゃんは太刀打ちできるとか?それと、
『あんまり好きじゃないけど……時間も時間だし、仕方ないよね』
自称お姉ちゃんは、死んだコスプレイヤーのポケットから星のかたちをしたアイテムを取り出した。……自称お姉ちゃん、そんなゴミを見るような目でコスプレイヤーを見ないであげて。……自称お兄ちゃん!?どーして、コスプレイヤーを蹴飛ばすの!?
極力見ないようにしてたのに、見えてしまった。赤黒い血に言葉通りの死んだ顔、曇りきった瞳。初めて死んだ人(……人?)を見たが、小学生には到底耐えられらものじゃなかった。
「ぅ」
『あー……妹ちゃんにはちょっとグロすぎた?』
『ごめんね~今、消すからね~』
口に手を当ててしゃがみこむ私を見て、彼らは親切にも声をかけてくれた。そして、親切にも男装の自称お姉ちゃんがコスプレイヤーに手をかざして燃やしてくれた。
え、手をかざしたら燃えるんですか?コスプレイヤーって……
『気になる?これはね、私の固有魔法みたいなものなの。適合者は固有魔法を持っているんだよ。だから、そのうちあなたも魔法使えるかもね!まあ、確認してからなんだけど!』
「っ!?」
『ごめんね!ちょっと……いや、結構……かなり苦しいと思うけど、我慢してね!』
男装の自称お姉ちゃんの話を真剣に聞いていたせいか、いつの間にか私の後ろにまわっていた女装の自称お兄ちゃんに持ち上げられた。その後すぐに、男装の自称お姉ちゃんが星のかたちをしたアイテムを私の身体にくっつけた。直後、今まで味わったことの無い激痛に襲われる。身体の中の器官が、細胞が、ぐちゃぐちゃにかき回されているような……そんな感じだった。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたいいたいいたいっ!!!!
死ぬ間際だから頭の回転が早いのか、私が特殊なだけなのか、頭のなかではものすごく冷静だった。
いつの間にか離れたところに飛んでいった黄色い傘を見ながらふと思う。
ーーーこれ、ぜっっったい風邪引くやつだ……!!
雨はまだ降っている。
おそらく私は痛みに耐えられず、意識を失うだろう。てか、早く意識を失いたい。ここまで耐えられているのは逆にすごくないか?
意識を失ってしまえば、苦しい思いをしなくてもよくなるが、ずっと雨に濡れていれば風邪を引いてしまう。それは嫌だなぁ……
あれ、そういえば女装の自称お兄ちゃん、私のこと触れてるよね。…………ホログラムなら、私に触れることできなくないか!?
いや、接触可能の高度なホログラムかもしれないし、私が思っているホログラムと違うかも知れないけれど……!!自称お兄ちゃんお姉ちゃんは、ここにいる!!なら、私から干渉できるかも!!
……重要なことに気づくのが遅かった。
私が行動しようとするより先に意識を失うほうが早かった。
『あ、あれ?おかしい……いつもならすぐ終わるのにっ……!これじゃあ……このままじゃっ!お兄ちゃんっ!!』
『なるほどねぇ。あーあ、これじゃあ、適合者だったとしても欠陥品になっちゃうね…………まるで、あのミーティアちゃんみたいに。ーーね?無能くん?』
意識を失う直前に聞こえたのは、そんなよく分からない会話と蚕の擬人化のような見た目の子どもだった。