Fateかと思ったらクロス世界かよ!! 作:Castella
桜が舞うその道で、俺はやはり憂鬱な気持ちで進んでいた。
あれだけ大見得を切ったのだから、もっとしっかりしなければならないとは分かっているのだが。
どうにも気持ちは晴れてくれない。
なぜよりにもよってFateの世界なのか、これがわからない。
もっと平和な世界にでも転生したかったと心底思う。
もちろん、エルメロイ先生たちに会えたのは良いことだと分かっているが、それを補って余りあるほどに不幸な気持ちが強い。
周りの生徒たちが話しながら、はしゃぎながら通っていく光景を目にするたびに、なぜ俺だけこんな気持ちでなければならないのかと悲しくなる。
「………はあーやだやだ」
そんな言葉を口にしながら、俺は新しい中学校まで進んでいく。
この世界に転生してから早13年。
それだけ過ごせば愛着だって湧いてくる。
先生や教室の仲間たちを、みすみす
あの少女には悪いが、それでも俺は教室の仲間のほうが大事なのだ。殺すことも選択に入れなければならない。
そして問題は─────
「あの金ピカだよな……」
英雄王ギルガメッシュ。
この物語、Fate stay nightの前日譚のようなもののFate/Zeroに登場した第四次聖杯戦争のサーヴァント。
この第五次聖杯戦争に於いては、殆どのルートでラスボスを務める青年のような姿をした英霊。
その正体は、ギルガメシュ叙事詩に登場するギルガメッシュ本人である。
そしてそんなやつの目的は、人類の選別であり、今の時代は不要なものが多すぎると語り
改めて考えても傍迷惑すぎるし、普通に辞めてほしい。
そしてそんな野望を止めるのが、人間でありながらギルガメッシュに弱点を付ける主人公衛宮士郎なのだが。
「バッドエンドが多すぎんだよッ……」
そう、とにかくびっくりするほどバッドエンドが多かった。
いやまあ、普通にプレイすれば引っかからないものもあるが、それはそれ。
よくこんなパフェコミュ出せたなと思うし、ちょっとでもミスればあの世行きもある。
理不尽なことこの上ない。なんだよ『今日は断食でござる』って、それで殺す方もどうかしてるけど。
故に、衛宮士郎が死ねば終わりなのに死ぬフラグがそこら中にあるのがstay nightなのだ。
因みにアニメは凄く良かった。
「いやそれは今はどうでもいい………問題は、この中学の間に準備し切れるかってところだ」
衛宮士郎のサポートくらいはできるようにしておきたいし、なにかあったらしい困るから監視も欲しい。
その為に、この
後見人に無理言って連れてきてもらったが、あの人には絶対に頼れない。というか頼ったらとんでもないことになりそうだから絶対にだめ。
なんか「お前が頼ってきたのは初めてだな」とか言って納得してくれたみたいだから良かったが、付いてくるとか言われたら死ぬかと思うぐらいだ。
戸籍偽造もお手の物な彼女に頼るのは、少しよろしくない気もしたが。
「過ぎたことはもういい……さて、さっさと行くか。行ってから考えよう」
流石に往来でこんなに考え込むのは良くないと思い、中学へと足を進めた。
そこは、かなり立派な進学校だった。
内装も外装も整っており、まさに金が掛かっているといった風貌だ。
金持ちも多くおり、さらに言えば頭が良さそうな生徒が大半だった。流石は市内一の進学校と言われるだけはある。
もちろん、俺だってちゃんと試験は受けた為、気遅れする必要はないのだが。
前世ならば絶対に行けないだろう中学に来たのは、なかなか感慨深いものがあった。
努力が報われるってほんとなんだな。
「俺の名前、俺の名前っと………あった、あのクラスか」
後見人に学校はちゃんと行くことと言われてしまった為、ホントならばこんなことをしている暇はないが学業にも勤しまなければならない。
だから冬木市の中心に近いこの中学を選んだのだから。
そうして、俺はクラス表に従って教室へと入る。
このあとは入学式だし、特に授業はないはずだから時間が取れると思う。
その間に、街に監視の使い魔を放って……いや、先にセカンドオーナーへの挨拶が先か。
勝手に使い魔を放つなとか言われたら困るし。
色々やることがあって困る。
こんなことを考えていたからだろうか、突如として前から衝撃が来た。
「きゃっ!」
「おっと!?」
前からやって来ていた女子生徒に気づかず、ぶつかってしまった。女子生徒は倒れ込み、尻もちをついてしまう。
まずったな、申し訳ない事をした。
「ごめん、大丈夫か?」
「いたた……う、うん。大丈夫」
その女子生徒に手を差し出しながら、言う。
失態だ、考え事に夢中で他者への配慮が足りていなかった。
もっと周りに気を配れば良かったのに。
そう思い、俺は彼女に手を差し出したまま、彼女の顔を認識する。
手に持っていたカバンを、地に落とした。
まさにそれは、呆然とするしかない事実だった。
だが、無理もないと分かってほしい、なぜならば。
なぜならそれは────
「ご、ごめんねこっちこそ……」
彼女は魔法少女の魔女裁判というゲームのキャラクターであり、この世界にいるはずのない人物だ。
なぜ?なぜ彼女がこんな世界に?いやこれは本人なのか?
おかしいおかしいおかしい。
なぜ彼女に似た誰かがここにいる?いやまて────
────もしかして、前提が違う?
ここは、Fateの世界ではない?そんなバカな。
魔術もキャラクターも、Fateの世界そのままだった。
そう、ありえない。
そんなものまるで、世界そのものを混ぜたようなものでもなければ………。
……混ざっている、のか?
この世界は初めから、Fateの世界ではなく──────
────クロス世界だったということか?
「……ど、どうかしたの?」
「ぁ……ああ……だ、大丈夫だ、すまん」
駄目だ、上手く受け答えができない。
思考が纏まらない、いつも冷静にいなければならない筈なのに、それでも脳が思考を拒絶しているように動いてくれない。
「そ……それじゃ」
「あっ…う、うん」
そうやって辛うじて絞り出し、その場から離れる。
いけない、このままではいけない、心を落ち着かせないと。
そうやって俺は、教師が来るまでよ時間を精神統一に使ってなんとか落ち着くことができた。
◆◆─────────────────◆◆
その後入学式が終了し、各々帰宅という形になったのだが。
「ごめん、桜羽」
「だ、大丈夫だよ!
俺はまず桜羽に謝罪に来ていた。
先程のこともそうだが、動揺したとはいえぶつかったのにする態度ではなかった。
普通に考えたら、俺ぶつかって動揺しまくりの変な奴だからな。
「……こっちもごめんね、前見てなかったから」
「ああ、悪かった」
なんか謝られるのは望んでいなさそうなので、俺は早々に謝罪を打ち切る。
そして、本題────というか目的のために会話を切り出した。
「変わりになんか奢るよ、何がいい?」
「えっ!?そんな、悪いよ!」
「いいんだよ、俺の謝罪の気持ちだから受け取ってくれると助かる」
そう言うと、彼女は少したじろいだ後、頷いた。
そうだ、それでいい。
これは、ただの善意の誘いではないのだから。
簡単にいえば、監視だ。
彼女が俺の想像通りなら、世界の破滅を担うのかもしれない。
そう、彼女は……魔女なのかもしれないのだ。
魔法少女の魔女裁判では、彼女たちは魔女と呼ばれて隔離される。
その果てに、彼女はある
(場合によっては……抑止が動くぞ)
一番問題なのは、抑止力だ。
アラヤとガイアという人類と星を守る抑止の力。
人類を脅かすそれに対して、殲滅を辞さない人類の総意──アラヤ。
そして、星を守るその意思が具現化したもの───ガイア。
ここまで言えばわかるだろう。
彼女───桜羽エマは、抑止によって殺されるかもしれない。大量の人を道連れにして。
恐らくその中には、先生や教室のみんなも含まれる。
そんなことはさせてやるわけにはいかない。
だから、暫く監視させてもらう。
その魔法を受け取る時に、止めるために。
「ジュースでいいか?」
「う、うん……ありがとね」
そうだ、俺は彼女の善意を利用する。
こんな怪しい誘いに乗った彼女の善意を、踏みにじることになる。
だから、これはやはり俺の罪だ。
いずれ彼女が仲良くなる大魔女を、引きずり出すために。
現代の人間を殺し尽くさせるのを止めるために。
やっぱり俺には、英雄なんてなれっこない。
薄汚くて、物語のような綺麗なものではなかった。
この衝動抱えている限り、絶対に。
(ごめん……桜羽……)
彼女の心に漬け込むようなそれを、心底嫌悪しながら。
主人公が言いたいことは、つまり────
・人類を滅ぼす魔女である彼女が、その魔法を発動させた時に確定で抑止力が動く。
・そしてその魔法を与えた大魔女は、恐らくこの学校にいる。
・その魔法は恐らく、現行人類ならば防ぐすべがないため、教室の仲間たちも危ない。
────という感じですね。