超いろはノート!〜寄せ書き増量版〜   作:お否さま

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彩葉が作ったの?……!?

潮騒と人の起こす喧騒が混じり合うスキマ、かんかんと真っ盛りな太陽の下。

 

目下(文字通り)、友人の髪を結ぶ少女なんありけり。

焼きそばを食べながら、ぐでーっとレジャーシートに寝転ぶ姿は無防備そのもの。小柄な見た目とその愛らしさによって、だらしなさよりも好印象なゆるさを感じる。自分にはこの空気は出せないだろう。大事な友人としてそんなとこも可愛らしいと思う。

 

「真美、髪痛くない?」

「だいじょぶっすよ〜、芦花さん〜。

いつ見ても惚れ惚れする手際〜。」

「ふふ、ありがと。真美は髪長いし癖があるから、変になっちゃわないようしっかり結んでおこうね〜」

「こっちこそ、いつもありがと〜」

「私もありがとね、ろか〜!」

 

いつものやり取りをしていると、夏の砂浜に相応しい太陽を連想する元気な声。浮き輪をリクライニング代わりにしながら、どこか鼻高々なツインテールの金ピカかぐや姫さまが、燦々と輝いている。

 

「かぐやちゃん1番髪長いからアレンジのしがいあったよ。

また別の機会にも試してみたいな」

「え〜っいいのぉ〜!」

「こらこら。芦花もあんまり甘やかさないで」

 

耳に馴染む声。保護者の彩葉からの制止がかかる。

水着の魔力か、いつもより涼やかでスポーティな彼女の姿は、彼女のファンクラブが憤死しそうな程には高嶺の百合として咲き誇っている。有り体にいえば可愛いし、かっこいい。まさに眼福というやつ。まみと一緒に褒めたら分かりやすく照れてたから、それ以上追撃はしなかったけど。

普段から、凛とした様子で勉学も運動もこなすから、不健康気味とは言えその体は均整が取れていて、より魅力を倍増させている。サングラスのデザインのせいか少々悪童っぽく見えるのがまた知り合いであるほど心臓を鷲掴みにされるだろう。

 

「でもさ、彩葉もかぐやちゃんの色んな髪型見たくない?」

「んん!……まぁ、女子の端くれとしては?

アレンジの幅を見たいのも嘘では無いというか?」

「え〜、いろは〜♡」

 

これは〜……。まみと目を合わせると頷く。

どちらかと言うと母性に近いか。可愛い娘の可愛い姿が見たいというか。

今までかぐやちゃんみたいな子がいるとは聞いたこと無かったけど、まるで『かぐやちゃんが子供の時から世話してる』ぐらい距離近いときあるし。かぐやちゃんの甘え方もそんな感じだ。まぁ、彩葉も最初はぎこちなかったしそんなわけないけど。大方、たまたまものすごく気があったってやつなのだろう。この子が現れてからは結構ましになったけど、最近までの彩葉はいつかふっと消えちゃいそうだったし。

そこで再度まみにアイコンタクト。あとでどんな魔法使ったのか聞いてみよっと。

件のかぐやちゃんはと言えば幸せそうに音楽を聴いていた。彩葉は……なんかセンスのいい富豪みたいな寛ぎ方してる?

 

各々のくつろぎ方をしている中、話題は彼女のツクヨミ内での活動へ。

 

「こないだの歌配信めっちゃよかったけど〜♪」

 

彼女のオリジナル曲は正しく彼女らしく、エネルギーに満ち溢れたものだった。まみが言っているとおり、思わず笑顔になるほど、その歌声にはこちらも元気を貰えた。

良かった部分は全部だけれど、私は特に歌詞にかぐやちゃんらしさというか、あどけなさ、純真な可愛らしさが出ていてよかったと思っている。

だが、そんな中かぐやちゃんから爆弾が投下された。

いや本人たちからしたらなんでもない事なのだろうけど。

 

「だって!良かったね!」

 

渦中の歌姫が、彩葉の方を向き誇らしげにしている。

つまりは、

 

「あれ作ったの、彩葉なの?」

 

まみの問いに対して、否定せず気まずそうにジュースで顔を隠す。正解ということだろう。本人は『自分なんてまだまだ』なんて思ってるに違いない。そこそこ長い付き合いだからそれくらいはわかる。なので

 

「彩葉可愛い上に天才すぎ〜」

 

即座に援護射撃。理由のない褒めは、告白してくる男子食傷気味なのはわかってるから、こういうところで沢山褒めてあげないと。

案の定、彼女は照れ隠しを始めていた。本当に可愛らしい人だ。

 

 

しかし、あの曲は彩葉が作ったんだ。頭の中で反芻する。曲作りもできるなんてほんとにすごいなぁ。

彩葉があの曲を……。……えっ、彩葉が!?

脳内でパニックアラートが鳴り響く。理由は可愛すぎによるもの。だって、彩葉が作ったってことはあの歌詞は彩葉の中から出てきたってことだもんね!?途端に脳内でオリジナル曲の歌詞が流れ出していく。もちろん彩葉の声で。

『あっかんべーなんだが、上等!』『好きになっちゃうよ☆』『可愛すぎちゃってグランプリ』『ばか〜〜!』

ええ、もしかしてあれもこれも?彩葉が一生懸命考えて?

かぐやちゃんに合った可愛い言葉を???つまりは元々、そういう語彙が彩葉の中にもあったってことで……!?

いやいや待った。確かこの前かぐやちゃんはこうも言ってた。

-「彩葉が小さい時に作った曲がめっっちゃ可愛くてさー!」

彩葉の幼年期に、一生懸命この歌詞を考えて……!!!?

想像すればするほど、可愛い生命体が頭の中で増殖し意識を乗っ取りパレードを企む。天使の大行列だ。沈黙してる時に通って欲しい。

だってあんなかぐやちゃんっぽい歌詞を……。

 

かぐやちゃんっぽい?

 

改めて、歌配信サイトから調べてみると、作詞はかぐやちゃんになっていた。よかった、可愛さと尊さで死ぬ私はいなかった。そんな感慨とともに一抹の寂しさ。

そんなら一時の気の迷いを誤魔化すように下を向くと、まみが訝しげな目でこちらを眺めているのに気づく。ちょうど髪もセットし終えたのでふいっと目を逸らす。

まぁまぁ誰にでもある勘違いじゃない?それに同じ間違いをしたならたとえ私じゃなくても同じことかんがえちゃうよ!なんなら管理AIでも同じ反応するはず。だから『この子またなんか暴走してたな』みたいな目をやめて?

あっ、かぐやちゃんフリーだよ!今聞きに行こう、ね!

 

 

 

『私は、私のことが好き!』

彩葉がこう思えたなら、私たちはそれだけで本当に嬉しくなっちゃうんだろうな。

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