こういう評価って思った数倍は嬉しいものなのですね。
【この夏いちばんあちーやつが優勝な!】線香花火トーナメント!
わいわいがやがや。
蝉の音にまじりて、やかましさありけり。
いつもは夜になったら静まっている河川敷が、今日だけは子供たちが集まっている。元凶は目の前の金髪のおねーちゃん。最近僕らのたまり場に現れた、僕の短い人生でいっちばん騒がしいおねーちゃんだ。まず声と行動がもうやかましい。今だって、いつも通りケータイに向かって変な格好と顔で話しかけてるおねーちゃん。僕たちはいつか、学校の不審者情報におねーちゃんが乗るんじゃないかといつも戦々恐々としていた。まぁ、今日みたいに夜にみんなを集めてもお母さん達から苦言を呈されないぐらい地域に溶け込んでるから今更な気もするけど。
後は見た目がそれなりにやかましい。いるだけでキンキラ光を振りまくというか。10年しか人生を生きてきてない僕でも、このおねーちゃんが美人寄りにいることが分かる。テレビやYo〇Tubeでもここまでの人は中々見ない。まぁ行動で全部打ち消してる感はあるけど。
「今日は近所のガキンチョ集めて線香花火トーナメントするよ〜!彩葉?彩葉はなんかすごい数の子供にビビってたよ!お母さん方にペコペコしてた!ねっ、いーろはっ」
始めて見る黒髪清楚なお姉ちゃんが、見た目に合わぬげんなり顔をしてる。たぶんこういうのは初犯じゃないんだな……。
「夏といえば花火っしょ〜?かぐやまだ生後1、2ヶ月なキュートベイビーだけど色んなの見て知ってんだよねー!
んで、なーんかないかなって探してたらたまにはこういうしっとりするのもよさげ的な?」
線香花火をしっとりやる時のテンションではないな、とその場の全員が思っていたが誰も口には出さなかった。
そんな僕らの空気に構わず、至極やる気な彼女はびよんびよんと両手に持った花火をしならせ叫ぶ。
「よーっし、早速やるぞ〜!
みんな、線香花火は持ったか〜?」
「もったよ」「火つける?」「おかあさんわたしのは?」
「ん〜?まだまだ足りないよ〜!!返事はいえーいだ!もっとおっきく!!
みんな線香花火は持ったかー!?」
『いえーーーい!!!』
「いろはおねーちゃんも!」
「ええっ!?いや、あんた……!ぐっ、無垢な子供たちの期待の眼差し……ぃ、いえーい」
「いろはかわい〜♡」
「ええいうるさい、さっさと始めろ!!!」
夜の河川敷で線香花火をやる人間達の姿か?これが。あーあ、後ろにいるお母さんたちすごいにやにやしてる。絶対後でいじられるじゃん。
あ、今ので何人か下向いてる。どうしたんだろ。なんか失恋した時の友達に似てるけど……まさかね??
「そんじゃー、みんな一応危ないから大人の人に火付けてもらってね〜。ルールは簡単、いちばん長く残ってた人な優勝な!んで、勝ったらスーパー美少女かぐやちゃんがご褒美あげちゃう!」
みんながほぼ同時に火をつけて、勝負開始。
だが、あれほど騒がしかったというのに気がつけば蝉の声と川が流れる音、あとは静かなバチパチという音がよく聞こえるようになった。時折漏れだすこしょこしょとした声も長くは続かず、するりと流れていってしまう。線香花火の魔力だろうか?未来も過去も考えず、今を楽しむ子供たちがじっと物思いに耽っている時間はなかなかないだろう。
ふと耳の端に聞こえた小さな声がする方に目を向ける。月明かりと、静かな火花に照らされて彼女が微笑んでいた。
今この瞬間を噛み締めるように。けれど花火に夢中なみんなとは違って、そんな彼らを眺めるようにいたのが、なんだかすごく大人な気がして……。見とれた、なんて認めたくはないけれど、その時だけこの世で1番のお姫様のように見えてしまった。
彼女は時折、楽しそうに画面と、それからそれ以上の感情で黒髪の彼女へ話しかけている。幸せで弾けちゃいそうで、けれどそれを堪えて堪えて、堪えきれなくて。
ずっと見ていたい。
けれど、楽しい時間はすぐに終わるもの。線香花火のようなものだ。僕の線香花火はもう既に落ちてしまっていた。
結局、一人勝ちしたのは金髪のおねーちゃんだった。 なんか線香花火を長くもたせるコツをフルで使ってたらしく。ズルすぎだろ、子供相手に何してんだ。
すごいうねうねしながら嬉しがってるし……いや動き怖いななんだあれ。
「いーろは、勝ったからご褒美ちょーだいっ」
「はいはい、家帰ったらね。」
「やったー!ほんなら、次はどれだけおっきくできるか選手権やるぞーー!」
結局その日はみんなでくっつけ合わせた直径5センチくらいの線香花火で集合写真撮って終わったけど、漏れなくみんな笑顔になっていた。
重さで落ちそうなところを、おねーちゃんがよく分からない謎技術でずっともたせていて、耐える度に歓声とどよめきが上がっていた。
大盛り上がりのうちに、僕らは家へ帰っていく。彼女らと同様、自分たちが帰る場所に。母と一緒に家に帰る途中、彼女らが目に入る。
ふざけて、黒髪のおねーちゃんに絡んでしょうがないなと微笑んでふざけ返す。そしたら金髪のおねーちゃんもすごく喜んで……。月明かりの下、小さいけれどキラキラと光る彼女たちがさっきまで見ていた光のようで目が離せなかった。
僕はこの光をきっと、10年後も覚えているだろう。
いつかまた、彼女らと会える日はあるのだろうか?
「ツクヨミでコラボライブします、コラボ相手はこの子達!って、あれ見てた神々はだいたい知ってるか〜」
「……んっ??」