超いろはノート!〜寄せ書き増量版〜   作:お否さま

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自分が見たかっただけのクロスオーバーです。


※クロスオーバー:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている

【2人のイロハ】

 

「「あっ」」

 

伸ばした手と、それから追随して波長が重なる。

ついでに、横に向けた視線もバチッと重なった。下手にタイミングが合ったせいでなんとなくバツが悪い。なぜなら酒寄彩葉の人生でこのような重なり方をしたのはヤチヨグッズの時だけだし、その時は目にも止まらぬ電光石火を繰り出して相手の悔し涙を横に勝利の凱旋を行った時だけだ。

それはさておき。

視界に映し出されたのはパンツスーツを着た小柄な美人。金髪ではあるが、顔がどう見ても日本人なので染めたものだろう。かぐやのような燦然とした色ではなく甘やかなクリームに近い色。

その顔立ちは、初対面でそう評するのは失礼かもだけど、なんというか可愛さの中に強かさを隠し持つというか。亜麻色の髪も、つやつやの唇もきゅるりと輝く瞳も、最近になって私もそれらが努力の結晶とようやくわかった。それでいて、大人の余裕と言うべきか愛らしいという甘さの奥にビターさが混じっているというか。自分が可愛いのをわかっているような……人格マップ的にはかぐやの系統にほんのり近い気がする。かぐやは純真さが売りだからこの人とは別の魅力だけれど。私が思わずじいっと見つめたせいか、少しばかり気まずい沈黙。その間に遠ざかっていたスーパーの喧騒が戻ってきた。

 

「えっとー?」

 

戸惑ったように目をぱちぱち、眉を下げて小首を傾げる女性と固まったままの私。優等生の仮面脱ぎかけの私だと装着するまでにちょっと時間がかかる。そんな私を見て何かを察したのか。

 

「私の顔に何かついちゃってたりですかー……?」

「あっいえごめんなさい顔綺麗だなーって思ってただけでなんでもないですすみません!」

 

動揺の末とんでもないことを並べ立て、私は手を離した。

そんな私の動揺がおかしかったのか、にまりと微笑む女性。まぁ、挙動不審だったのは認める。

 

「なんですか〜それ! あなたみたいに、顔面つよつよな子に言われたら嬉しくなっちゃうじゃないですか〜!」

 

きゃるんっと一瞬で雰囲気を変えて、私の手を握る。表情の切り替え早業すぎないですかね?というか私もなんで初対面の人の顔を褒めるなんて割とせめた発言を……?

人にあんまり言わないどころか、かぐやにすら思っててもあんまり言わないのに……。あぁ、自分の見た目を魅せることに関しては芦花みたいだから自然と口に出たのか。

芦花とかぐやのハイブリッドと考えると女子戦闘力とんでもねー……。

というかかぐやで思い出した。早く帰らないと拗ねちゃうなアイツ。いくらスマホハッキングしていつでも見れるからと言っても、緊急事態以外はやらないし、『彩葉を待ってる時間もなかなか乙なものでしてよ〜?……今度は安心して待ってられるし』とか言われるといじらしさと共に胸の奥がぐぐぅーっと重くなる。

なので。

 

「えっと、変なこと言ってすみませんでした。

そちらはお譲りしますので、それじゃあ」

「あっ」

 

にこにこと微笑む女性に、多少の気恥しさから素っ気なく別れを告げ、踵を返す。目的のものが買えなかったのは残念だが、また今度にすればいい。そう判断してだったのだが……。

すたすた。こつこつ。すたすた。こつこつ。

 

……。

 

「……あの、何かごようで?」

 

等間隔で響くパンプスの音。私が止まるとその鳴き声もやむ。明らかにつけられていた。思い当たる節も1人しか思い浮かばなかった。ぎぎぎと振り返ると相も変わらずニコニコ笑顔で佇む出生のしれぬものありけり。

問題は動機だ。何か知らぬうちに不興でも買ってたんだろうか。しかし要らぬ杞憂だったようだ。私の不安げな顔を見てとったのか、パタパタと手を振って解消しようとする。

 

「いえいえ、年下の子に譲られるだけってのもかっこ悪いなー、なんてですね?よければ、そこのカフェで可愛い大人のお姉さんとお茶しませんか?」

 

雪乃先輩にちょっと雰囲気似てるし……とよく分からない独り言を呟く成人女性を前に胡乱げなギリギリ女子高生ありけり。性別が異なれば事案かもしれなかった。

 

 

 

 

そんなこんなで。

 

「もっと頼んじゃってもいいんですよ?

私こう見えても貯蓄してるタイプなので。

ふふっ、可愛い子が堅実ってキュンってきません?」

 

この人はどう言う反応を私に求めてるんだろうか。素直にかわいい〜って言うのもなんかこの人の求めてる反応じゃなさそうだし。

 

あの後結局断れなかった私は、かぐやに一言連絡だけ入れて見知らぬ大人と近くのコンビニに入ったのだった。

怪しいのはわかってる。超100%怪しいんですけどね?

決してかぐやに雰囲気の似たオネダリを受けて断りづらかったとかじゃないが、研究にも多少の息抜きは必要だなと愚考したまででして。

 

彼女に遠慮した訳では無いが、一杯だけ頼んだコーヒーを小さく啜りながら、上機嫌に話す彼女を見やる。

ピンクとフルーツにホイップというカオスな甘味の暴力ドリンクは写真の中にだけ完成系を残し、その命を半分にまで減らしている。私の特別な人要素フルコンプするつもりか?

まぁそんなわけないんだけど。

それで言ったら名前が一緒だし。

 

『そういえば名乗ってませんでしたね。

私は一色いろはって言います。』

『私の方こそすみません、えっと酒寄彩葉、です。

名前だけお揃いですね。……ど、どうかしました?』

『……酒寄さん、初対面の人にお名前はあんまり教えちゃいけませんよ?JKブランドなんてハイブランドすぎて手を伸ばしたい人たーくさんいるんですから!』

『ええ……わかりました』

『おお、おなじクール系優等生とは思えないほど柔らかい対応。』

 

自己紹介がてら、その通りすぎする正論を当てられ、その上で名前が一緒だからかなんとなく距離も詰まった様子。

さっきまでの会話を見てればさもありなんと言った感じだ。

雪乃先輩もあれだからこそ雪乃先輩としてギャップがずるいんですけど〜、なんてよく分からない独り言をこぼすくらいには私に対して気を許してくれてる。

 

「それで〜、って聞いてますー?」

「き、聞いてます」

 

回想入ってても外行きの仮面は機能してくれている。

あぶね〜。

 

「えっと、それで私が知り合いと似てるってお話でしたっけ」

「ですです。酒寄さんは、見た目とかスペックは尊敬してる先輩の方に似てるんですけど、中身に関してはしんぱ……くさって……あー、センパイのほうに似ててですね?

だからちょっと心配になるといいますかー」

「そんなに似てるんですか?」

「いや、ほんとに比べるのもおこがましいくらいに似ては無いんですけど」

 

じゃあ、どっちだよ。

とは口に出しては聞けないが。ただ、正面に座ってる関係上口ほどにものを言う物がしっかり見られていた。

 

「いやですねー?お話聞いてたら、自分ベットしてでも大事な人のために頑張っちゃいそうというか?なまじ自分でなんでもできると思って人を頼ろうとしないと言いますか?」

「うぐっ」

 

覚えがない訳では無い。というか、それで何度も友人に心配かけてるし、この前も泣かれてしまった。私の反応からして、察したのだろう。けれども棘の着いた視線はなく。ストローから口を離し、眩しくもない陽の光の中私を見つめた。

 

「昔、目が腐ってて口が悪くてカッコつけたがりで目腐ってて性格も捻じ曲がっててキモくて目が腐ってるセンパイに一丁前に言われたことがあって」

 

あの、どんだけ言うんすか。

こんな美人さんからそこまで言われるの、見たこともないその人が気の毒になってきた。それ止まりだが。だってあまりにも、その顔が宝物を見守るようで。あんまり言わない方が、なんて言葉は水を差すようなものかとひっこめる。

 

「『無理すんな、いつでも助けを呼べ。お前は俺の後輩だ。

だから立ってるうちに親のすねくらいしゃぶり尽くしておけ。ほんと保険くらいの気持ちでいいけどな。いやまじで。』って。しょーじき、親に対してそんなこと思ってるあたりサイテーじゃないですかー?」

 

要約しましたけど、これをずっと言えないセンパイってほんと……。小声でそう続く。

 

「つまりですね、酒寄さんも。色々抱え込んでもうだめーってぶっ倒れちゃう前に、周りの人きちんと頼ってくださいね。それに貴女がなんともなく思ってる関係だって周りからすればきっと大事な縁だと思ってる時もありますから」

 

実感の伴ったような、それでいてこの場にいない誰かに向けた言葉のような。きっと彼女にとってその人は、恋愛的な意味を抜きにしても、どれだけ口先だけで罵倒していても本当にかけがえのない人なのだろう。それがわかるほど、温かくストンと胸の中に留まるオモイだった。

 

 

「さってと、わたしもセンパイが寂しがっちゃうからそろそろ戻りますかねー。ふふっ、部屋分けた程度で私から逃げられるなんて浅はかです♪」

「あの、なんだかありがとうございました」

 

感謝を伝えなければと思い、結果在り来りな言葉になってしまう。それでも彼女はふにゃりと微笑み。

 

「いえいえ、わたしも甘酸っぱいお話聞けてキュンキュンしちゃいましたし。それにやらなきゃいけないことあったなー、って思い出せましたから。

こちらこそ付き合ってもらってありがとうございました」

「いいえいえいえ奢ってもらいましたし!というかお金出します……!」

「じゃあここはお互い様ということですね♪」

 

私の申し出にしーっと、人差し指を当てる。その仕草は並の人間なら一撃でハートを撃ち抜かれてしまうだろう。

うーむ大人の小悪魔とは一筋縄ではいかない……。

 

「さよならですー、またいつか会うことがあれば!」

 

そういって幻の中に消えていった彼女は、どこか軽い足取りだった。きっと私と同じように、『誰か』に会いに行くのだろう。

心を砕くような、焦がすような人に。

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