特撮オタクたちは、勇者を超越する   作:猿マン

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第103話:分担

「――えーやることが爆発的に増えたので、人員を3班に分けます。」

 

 扇のその一言に、正義の味方の3人がうなずく。

 

「現状、非常に危うい均衡のせいで僕らも本気が出しにくい状態となっております――ま、僕らの嘘のせいなんじゃけど。」

 

「やっぱり嘘は悪、はっきりわかんだね。」

 

「まあ、やらかしましたよねぇ。」

 

「というわけで、きりきり働きます――言うても、3人しかいないからそれぞれに担当割り振るだけだけども。」

 

 ホワイトボード代わりの巨大なホログラムモニターの前に立ち、扇は指を1本立てた。

 

「まず1つ目。世間を騒がせているあの偽勇者、ローンウルフの処理だ。あいつはH.A.Dの被検体でありながら、管理委員会に勇者として登録されている彼、こっちに関しては現行『監視』が最適じゃろうという方向で行きます。」

 

 というのも、彼の現状がどうなっているのか、薬自体の性質が完全に把握できていない今、判断がつかないのだ。

 

「普通に肉体が変異してるだけとかっていうならいいけどな。」

 

「下手すると体の中身は完全に魔物になってて倒したら消えるなんて可能性もありますからねぇ。」

 

「まあ、そういう危険性があるので、こいつの監視は僕がやります。」

 

「「異議なし。」」

 

 機械的に監視するにせよ、超人的な身体能力で監視するにせよ、必ず敵との接近が必要になるが――超能力による遠隔監視であれば、その必要はない。

 

 魔術や魔性の力で発覚する危険性自体はあるが――それは普通に監視をしても同じことだ、だとしたら、危険の少ない方にする。

 

 当然の論理の帰結だった。

 

「で、次、H.A.D関係の停止、抑制、妖霊の捜索はまあ、天塚くんです。っていうか、手が出せるのが君しかおりません。」

 

「ええ、重々承知していますよ」

 

 天塚が白衣のポケットに手を突っ込んだまま、眼鏡のブリッジを中指で押し上げる。

 

「ネット上のダークウェブに構築された販売ルートの遮断、それに伴う資金源の凍結。加えて、怪人たちの細胞を変異させているH.A.Dの構成物質の特定と、中和剤――あるいは怪人を人間に戻すための専用麻酔の開発。」

 

「わー人気者。」

 

「人気者はつらいですねぇ、飯を食う暇すらない。」

 

「――って言いながらお前、今何食ってんだ。」

 

「晩飯ですけど。」

 

「矛盾してねぇ?」

 

 呆れたように突っ込む七星の視線の先で、天塚は白衣のポケットから取り出した、アルミパック入りの得体の知れない泥のような物体をチューチューと吸い上げていた。

 

「栄養とカロリーを極限まで圧縮し、咀嚼という無駄な運動エネルギーすら削ぎ落とした僕謹製のパーフェクト・ディナーですよ。見た目はアレですが、味は極上のチョコミントを再現しています」

 

「嘘つけお前、食後のデザートだろそれ、ごつ盛りにはいくって嘘つくなよ。」

 

「まあ、僕らの会話は基本的に脊髄だけでしゃべってるからね、仕方がないね。で、進捗はどうよ。」

 

 1本足の椅子で絶妙なバランスを取りながら、七星が欠伸交じりに尋ねる。

 

「まあ、ぼちぼちですねぇ。ダークウェブの販売サイトは僕の組んだAIが自動でクラッシュさせ続けてますが、相手もイタチごっこで別ドメインを立ち上げてくる。中和剤の方も、竹林くんから抽出したデータをもとにシミュレーションを回していますが、実証実験と量産には機材も予算も足りません」

 

「そらそうやな。ゆかりもげんなりですしねぇ、そんなものよねぇ――まあ、ゆえに君が担当です。」

 

「うっす、了解でーす。で、学校は?」

 

「はい、学園関係――七星君、君に決めた!」

 

「モンスターを召喚するみたいなノリで俺を投げるな。だいたい、俺が学園ってどういうことだ。制服着て転校生やるには、さすがに無理があるぞ。社会常識的に考えて。」

 

「それはそうね。」

 

「という前提の上で、君以外は手が離せません。」

 

「というわけで、頑張れ!」

 

「いや、まあわかるけども……とりあえず風紀委員長か?」

 

「とりあえずそっちかな。」

 

「何が起きているにせよこの次元の薬品ではないですからねぇ。」

 

「頭よくなってっからねぇ。」

 

 七星が、いつもの1本足の椅子で絶妙なバランスを取りながら天を仰いだ。

 

「何咲いたらいいかわからんち―なんですけど俺。」

 

「メンタルケアと化しなさいよ、御影さん、君のこと信用していますよ。」

 

 天塚が、怪しげなチョコミント味のペーストを完食し、空になったパックをゴミ箱へシュートしながら言った。

 

「メンタルケア……俺が? 悩みを聞く前にスクワット100回とか命じそうだぞ、俺。」

 

「いいじゃないですか。健全な精神は強靭な大腿四頭筋に宿る。実に説得力がありますよ。」

 

「お前ら、他人事だと思って……」

 

 七星はため息をつき、手元のタブレットに表示された風紀委員長――「正体不明の優等生」のプロフィールを睨みつけた。

 

「ま、なんかあった時に、駆け付けられる大人がいるのは事実か……」

 

 その一言に、2人がうなずく――そのための超人で、そのための正義の味方だ。

 

 賽は投げられた――誰も知らないうちにだ。

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