特撮オタクたちは、勇者を超越する   作:猿マン

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第139話:彼らの計画

『――鏡面――』

 

 次元。

 

 妖霊たちが作り出す一種の異空間であり、妖霊たちが作り出せる空間の中で物質の領域に最も近い空間。

 

 物質の領域に最も近く、その写し身たる領域を作り出すことで物質の領域に存在するものをこちらの次元に引きずり込むことすら可能であるとは聞いたことがある。

 

 および、その力を、勇者に与える妖霊がいることも――また、聞いたことのある話だ。

 

『だが――どうやってこれほどの――』

 

 領域を作り出したのか?

 

 異世界人のため、こちらの世界の住人を拉致することをよしとする妖霊たちが、この領域に魔物を閉じ込めないのにはそれなりの理由がある。

 

 魔神クラスになれば、この空間からたやすく逃げ出すことができること、この次元に引き込む量によって消費されるエネルギーの量が変わること、および何より――

 

『どうやって我々を鏡の映る場所に――』

 

 それだ。

 

 この領域に生物を引き込むためには、それなりに巨大な鏡と、大掛かりな儀式が必要になる。勇者であっても、それは変わりないはず――

 

「――だから、勇者2人に手伝ってもらった。」

 

 そう告げたのは、巨人の脇に立つ七星だ。

 

「うちの後輩――お前らは知らんだろうが――と、知り合いの勇者にな、8時間もかかったが、町全体を覆えるくらいデカい鏡ができたよ。」

 

 言いながら、七星は天上を見上げる。

 

 そこには、薄く、波打つ何かがある――水鏡、勇者の異名として周知される彼の得意技。

 

 あれほど大きく作ったことはないと、彼がこの屋上に上る前に苦情を言ってきたが――まあ、許してくれるだろう、世界を守るためだ、そういうことにしておこう。

 

『――なぜ、なぜ――』

 

「お前たちが来るのは、ずいぶん前からわかってた、問題は、お前たちとあの妖霊の女が戦うことだ。」

 

 そんなことになれば、間違いなくこの町は――あるいは、日本という国が、いや、この星全体に悪影響があるのは間違いない。

 

 都市は消え去り、国は地図から消え――あるいは、星図からこの星自体がなくなりかねない。

 

 それがわかっていた、見逃すほど彼らは甘い連中ではなかった。

 

「なので、少し罠を張りました――あの妖霊の女と、まだ会ったことのないあなたたちをね。」

 

 そのために、麗華を泳がせた。

 

 彼女の姉を救う計画を、彼女ご本人にも話さずに進めていたのはそれが原因だ――正直、正義の味方として、それはいいのかという倫理的な葛藤はあったが、恨まれてもやらねばならないことというのはある、と言い聞かせるしかなかった、ひとえに、力不足がゆえだ。

 

「お前たちが、自分たちよりもこの次元に長くいるあの女との直接戦闘は避けたがるのはわかってた、生身の俺らに勝てないくらいだしな、ただ、物質界に直接干渉ができないお前たちが、この次元に爆弾みたいなものを放り込んでくることもできない、ってことは――」

 

 この連中は確実に、『遠距離、かつ、直接的に攻撃ができない位置に現れ、攻撃される前に売人を消し飛ばす』行動をとるだろうと考えた。

 

「だから『売人の位置を固定して、お前たちの出現位置を固定しよう』と思った。」

 

「そのために、少しばかり悪いこともしましたからね――美咲さんまで巻き込むのは想定外でした、てっきり、あの魔物愛護論者だけで計画を実行すると思ってましたしね。」

 

 15kmのはるか先で、七星の言葉を引き継ぐように天塚が告げる。

 

「だから、わざわざ『麗華を僕たちの組織に入れた。』」

 

 そのために、彼女に()()()()()()()()

 

 彼女のためにも、これが最良だったと、今でも思っている。

 

「そのために、わざわざ、話が進んでいないかのように偽装した。」

 

 まあ、治療薬の開発が進まず、いまだにできていないのは本当なのだが――それは、今は語るべくもないことだ。

 

「だから、わざわざ分断して行動するようにした。」

 

 七星が薬の調査によく出かけたのも、灯たちを魔法少女として売り出しているのも、麗華をヒーローとして戦線に出しているのも、すべては、あの妖霊の売人から隠れつつ、予知を共有してこの一瞬に備えるためだ。

 

「まあ、魔法少女として売り出したのは、半分はあの2人の情操教育のためだったし、麗華さんを戦線に出しているのは、あの子のストレス発散のためだったりもするんですけどね。」

 

 まあ、物事は多角的だ、そうどれか1つだけが真の目的であることなどない。

 

「だから――」

 

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「お2人をこの場所に縫い留めるために、それが必要だったんですよ。」

 

 AIと天塚の超人的頭脳は、敵の行動をほとんど完璧に予測し、あの無響室での予知でそれは確実になったが――そのためには、誰かがあの場所にあの妖霊を拘束しておく必要があった。

 

「麗華さんに頼む案もあったはあったんですが――まあ、あの子は僕らのことを疑っていますし、切羽詰まってますからね、『問題の解決』の方を優先して、雄介君に頼むことにしたんですよ。」

 

 それが、この一件の真相。

 

「まあ、ゆかりに関してはあれなんだが……」

 

「あの子、変なとこ覚悟決まっていますよねぇ。」

 

 まさか――

 

「「雄介の活躍が見たいからわざわざ自分から捕まりたがるとは……」」

 

 げんなりとつぶやく2人の脳裏によぎるのは、「私を作戦に混ぜないのなら私はこの場でエナドリをがぶ飲みして卒倒する」と意味のわからない脅しをしてくる後輩の姿だ――何が、彼女をそうさせるのか……?

 

「おかげさまで、お2人を捕らえることができて、こちらとしては万々歳と言ったところですかね。」

 

 そう言ってほほ笑んだ天塚のセリフを、またしても、七星が引き継ぐ――通信機もなしに15kmの距離を無にするその力に、疑念を抱けるものはここにはいない。

 

「お前らには捕まってもらうぞ――なんだって、こっちの世界から人を浚っているのか、全部教えてもらうだろ、被害者的に考えて。」

 

 そう言って、肩をすくめる――それが、この連中をここまで倒さずにいた最大の理由だった。

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