特撮オタクたちは、勇者を超越する   作:猿マン

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第14話:あの三人は何者なのか?

 翌日の夕方、三人は会社の会議室を訪れていた。彼らの目の前にはパソコンが置かれ、彼らはその前で何やら自慢げである。

 

 その前には、当然のように社長たる黒土未来が座り、にこやかに笑っている。

 

「――社長、何度もご覧いただいている我々の大活躍ですが」

 

「ええ、素晴らしいデビュー戦です……うちの娘たちの影が薄かったのは少しあれですが――街を壊さずに大型モンスターを撃滅できたことは、紛れもない大活躍と言っていいでしょう。次は、勇者との直接的協調も見せていきたいですね。」

 

「あ、一応それ用に訓練は始めました――とは言っても灯さんにこちらが合わせる格好になるとは思いますが……それはともかく、我々は基本的に、自らの功績を誇ったりはしません。それもご存じですね?」

 

「ええ、存じてますよ。」

 

「ではお聞きしましょう――なぜ、僕らの企画した幼稚園への慰問が却下になるのかを!」

 

「企画書が出ていないからです。」

 

「……企画……書……?」

 

 三人の表情が固まる――かれこれ10年、高校を出てからずっとこの仕事に就いていた彼らには、まったく聞き知らぬ存在だった。

 

 レポートは書ける。

 

 報告書も書ける。

 

 が――企画書、とは……?

 

「ッ、企画書怪人めが……!」

 

「一也、たぶんこれ僕らのせいだと思うわ……え、っていうか、真面目な話、君、論文とか書けるのに企画書って知らんの?」

 

「あ、真面目にやる感じですか?いや、書いたことないから分からないんですよね。基本僕、ヒーローと研究で忙しいので」

 

「僕らも基本、敵を倒すくらいしかしてないからなぁ。書けるん……ですかね?」

 

「私に聞かれても……?」

 

「……やっぱあれ、他人と入れ替わっとったん違う?」

 

「うーん……?」

 

 困ったように顔を歪める妹に、灯は呆れたような視線を向ける。

 

 先立っての一日、妹だけが立ち会ったという中年オヤジ共の活躍は、彼女には到底信じられぬものだ。

 

 百歩譲って、あのデカ物を倒せたのはいい。自分たちの愛しい姉の大発明だ。それくらいなことはできて当然である。

 

 問題はあの男どもがそれほどの活躍をしたという事実だ。

 

 自分の母に、「企画書ってどう書けば……?」と尋ねている彼らに、それほどの力があるようには――まったく見えない。

 

「なーんか信用できひんなぁ」

 

「で、でも、お姉ちゃんも見たでしょ、あの映像」

 

「見たけどなぁ……」

 

 彼女の言う『映像』とは、トランサーに付いた記録装置の映像である。

 

 ヒーローとしての力を悪用せぬようにと取り付けられたそれは、非常に頑健なカメラであり、どれほど激しい戦いでもつぶさに映像を収められるという触れ込みの装置だった。

 

 実際、彼らの戦いの映像は灯も見た。かなりの大活躍だ。正直に言って、自分たちにあれほど機敏に動けたかと言われると難しい気はする。

 

 ただ――。

 

「でも、これやで?」

 

「……うーん……?」

 

 再び、悩みに沈んだ妹に、しかし、灯も悩んでいた。

 

『……こいつら、なんなんやろなぁ……?』

 

 なぜ、自分の姉――いや、正確には従妹だが――はこの連中をこれほどまでに信用しているのだろうか。

 

 この新型ヒーローシステムは、この会社の社運を賭けている一大プロジェクトだ。

 

 断言してもいい、なまっちょろい連中には任せられない重大事なのだ。

 

「……調べてみよか?」

 

「……うん」

 

「――で、私のところですか。なるほど、結構なことですね!」

 

 薄い胸を張って、自分たちの姉が自慢げなのを見つめて、二人は苦笑した。

 

「ええ、いいでしょう。私の先輩について話してあげようじゃないですか!」

 

「私が言うてるやん、姉ちゃん」

 

「え、そういう仲なの!?誰と!?三人とも!?」

 

「そ、そこまで不埒なはずがないでしょう!……まだ、ちょっと、その、そういうのは早いかなぁって……」

 

「ビビり!」

 

「行き遅れ!」

 

「ええい、黙りなさい!具体的内容、話してあげませんよ!」

 

「――私と先輩たちの関係は小学生のころから始まります。」

 

 最初に出くわしたのは、扇雄介と呼ばれている彼だったという。

 

「些細な問題を先輩と乗り越えまして、七星さんと天塚さんに引き合わされた格好になりますね。」

 

「ふーん……そん時からあんな感じやったん?」

 

「ええ。いや、むしろもっとひどかったですよ」

 

「ふーん……で、すごいん、あの人ら」

 

 そう、ひどかったのだ――大真面目に、特撮ヒーローのコスプレで学校に来ていた時があるくらいには。

 

 誰彼構わずやたらめったら特撮を布教するのはどうかと、今なら思うが、あの時はあれが個性だと信じていた。

 

「初めて会った時から『特撮ヒーローになりたい』と言い続けてまして、本人たちなりに様々な修行をこなしてました――正直、頭がおかしいのかと思うものも複数ありましたが。」

 

 岩を拳だけで砕くとか、精神を養うために完全絶食を行うとか。

 

「まあ、そんな人たちですから、高校を出てすぐにヒーローになって――今に至ります。」

 

 これが、三人の概略だ。

 

「ふーん……で、すごいん、あの人ら。」

 

「すごいの定義次第ですが――私は、あの人たちが三人揃って、私の兵装があるのなら、勇者にだって負けないと思いますよ。」

 

「――ふーん……?」

 

 あれが? そう言いたいのだろう表情で眉を顰める従妹に、ゆかりは苦笑する。

 

『本当に普通でないこと』は、今はまだこの子たちには関係のないことだ。

 

 いつか、それを世界が知った時――きっと、自分の見る目に世の中が驚くことになるのだから。

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