特撮オタクたちは、勇者を超越する   作:猿マン

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第160話:暫時報告:妖霊について

 【極秘】高次元精神生命体『妖霊』の捕獲および生態に関する調査報告書

 

 作成者:天塚 新

 

 閲覧権限:特撮班メンバー、黒土未来社長のみ

 

【概要】 勇者に加護を与える存在として知られてきた『妖霊』に関する、従来の認識を根本から覆す報告である。

 

 彼らは「物理的な肉体を持たず、3次元には干渉できない」というこれまでの前提は虚偽、あるいは一部の事実に過ぎなかった。

 

 今回、独自の手段で物理的肉体を獲得し、直接当次元へ侵入・干渉を行っていた3体の妖霊を、鏡面次元内にて完全制圧し、その中核――以後、コアと呼称――を無傷で捕獲することに成功した。

 

 以下に、捕獲した個体のデータおよび、判明した生態的特異性についてまとめる。

 

【捕獲個体データ】

 

 ■ 識別名:妖霊α(真紅の女 / 通称ディーラー)  捕獲者:扇 雄介

 

 外見的特徴:精巧な人形を思わせる女性型の肉体。常に営業スマイルを浮かべているが、生物的な生気は皆無。以前の交戦時のダメージにより右半身が炭化し、内部から赤黒い光の粒子――以下成分と呼称――を漏出させていた。

 

 確認された能力・役割:H.A.D流通の主犯格。空間転移、対象の精神への直接干渉、および高度な情報収集能力を有する。また、後述のβ・γとは敵対関係であり、当該妖霊2体による攻撃を受ける直前での確保であった。

 

 備考:物理的な戦闘力は他2体に劣るものの、人間の心理的脆弱性を突く交渉術と、自己の肉体を容易に破棄・再構築する生存能力を持つ。

 

 また、その戦闘能力は『怪人02』並びに『怪人05』という勇者に匹敵、あるいは部分的に凌駕しうる能力を持った個体に対して優位を取れるほど高く、当該個体にあってなお、その戦闘力は驚異的である。

 

 コア状態に還元・封印済み、ただし、他2体と異なり言語能力を喪失していない(おそらく次元への習熟度によるものと考えられる、プランクプレーンへの幽閉により完全に現次元への干渉を断つことに成功、以下、その領域に確保中)。

 

 ■ 識別名:妖霊β(白蝋の巨人 / 鋼の巨人)

 

 捕獲者:七星 一也

 

 外見的特徴:初期形態は全高3メートル超、白蝋のような皮膚から黒曜石の刃を生やした巨人。後期形態は皮膚を溶解させ、超高質量の『鋼』の肉体へと変態した。

 

 確認された能力・役割: 徹底した物理的破壊に特化。重力加速度を無視した大質量の近接攻撃を行い、防壁や建造物を容易に粉砕する。

 

 備考:高次元存在であるがゆえ、3次元の物理法則に対する理解が浅く、格闘術の理合において七星一也に圧倒された。

 

 ただし、その高出力には目を見張るものがあり、当該対象を捕縛した七星一也曰く、「ここまで簡単に確保できたのは、向こうがこの次元に慣れていなかったから」であるとしており、もし同一の、かつこの次元への習熟性が高い個体が現れた場合、勇者、並びにヒーローでの対処は不可能と考察する。

 

 王心七征拳・奥義による内部破壊を受け、肉体構造が崩壊。

 

 コアを抽出・封印済み。

 

 ■ 識別名:妖霊γ(浮遊要塞 / 反響し崩れ行く者たちの長)  捕獲者:天塚 新(ルモス・ベセル / 次元)  外見的特徴:

 初期形態は赤黒く脈打つ臓器と、周囲を旋回する数万枚のステンドグラス片の集合体。後期形態はガラス片を吸収し、絶対的な硬度を持つ棘の要塞へと変態した。

 

 確認された能力・役割: 遠距離からの全方位制圧攻撃。光の屈折率や反射角を強制的に最適化し、内部で乱反射させた光粒子を熱球として作り出し、周囲一帯を破壊する高出力の魔力放出攻撃を持つ。

 

 備考:非常に高度な魔力制御を見せ、天塚新に使用した『熱球』による攻撃も『現次元での肉体的、精神的衝撃を受けたうえ』で、かつ、『重度の錯乱状態』で放たれたものであり、勇者を凌駕する戦闘能力を有していたことは間違いない。

 

 逃亡を図った核をプランク長レベルの位相檻で捕縛・封印済み。

 

【総括・天塚の所見】

 

 1. 妖霊の「肉体」に関する異常性

 彼らは高次元――扇雄介による精神調査によって判明した結果、成分界との名称判明――の精神生命体。

 

 3次元の物理法則(例:重力、気温、痛覚など)に縛られること自体が、彼らにとって「耐え難い拷問」に等しいストレスを与えていることが判明。その結果、

 

 長時間の物理的活動は彼らの『成分』を激しく消耗させるため、戦闘においては短期決戦、あるいは「自爆による周囲の巻き込みと成分界への帰還」を躊躇なく選択する傾向がある。

 

 2. H.A.Dの正体について

 H.A.Dは単なる化学薬品ではなく、妖霊自身の『成分』と『液体状の魔法』を物質化したものであると断定する。科学的な機器で成分解析が不可能だったのは、そもそも当次元の物理法則に属する物質ではなかったためである。

 

 彼らは自らの構成要素を切り売りすることで、人間に強制的な変異を促していたと考えられる。

 

 3. 目的の矛盾と「はぐれ者」の可能性

 彼らがこれほどの苦痛を伴ってまで当次元に顕現した理由は、現在も不明である。

 

 が、扇雄介による潜行調査において。当該対象である妖霊αはこの次元内部での行動に対して『治療』であるとの発言を行っている。

 

 曰く『勇者という病をこの世から根絶するために行動している』と語っているが、目的と行動に乖離が見られる。

 

 もとより、自分たちの与えた力であるはずの加護の剥奪を行わず人類に加護をばらまき、あまつさえ、暴走を誘発しうる薬品として販売している理由の不透明さから、別の目的、あるいは当該の行動に別の意図があることが推察される。

 

 以後、調査続行。

 

 4. 懸念事項:『我々』について。

 

 妖霊αは幾度となく『我々』との呼称を用いており、当該対象にあっては『複数の人員』を抱えている可能性を示唆している。

 

 現状ディーラーとして活動していた妖霊αを捕獲したため、流通が一時的にストップしているが――それがどこまで効果があるかは極めて疑問である。

 

 以上。 目下、捕獲したコア3体の情報抽出システムを構築中。引き続き、残存するH.A.D流通ルートの完全遮断と、被害者の治療にあたる。

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