【極秘】暫時報告:精神干渉型勇者の制圧、妖霊の真の目的、および『次元切断計画』の立案について 作成者:天塚 新(ルモス・ベセル / 次元)
閲覧権限:特撮班メンバー、黒土未来社長のみ
【概要】
本報告書は、笹藤春華氏を標的として行われていた「精神潜行型勇者」による継続的なハラスメントおよび物理的干渉事案の解決、ならびに当該作戦中に接触した高次元精神生命体『妖霊』から得られた「異世界召喚の真実」についてまとめたものである。
また、当該妖霊の逃亡に際して発生した、衛星軌道上からの広域電磁パルス攻撃の阻止作戦についても併記する。
【個体および事象データ】
■ 識別名:夢幻の勇者(または寄生の勇者) 捕獲者:扇 雄介(精神形態変換型人類)
外見的特徴:現実空間における身元は特定済み(別途警察へ身柄を引き渡し予定)。精神空間内においては、自己の肥大化した自尊心を反映した「王城」を構築して顕現していた。
確認された能力・役割:
対象者の無意識領域(夢・精神の深層)への潜行・寄生。および、その精神空間内に展開した勇者固有のシステム「アイテムボックス(次元共有倉庫)」を介して、現実の物理空間へ干渉(物品の転送・回収など)を行う能力。
この「精神空間を中継点として物理干渉を行う」という性質上、既存の魔力探知や秩序体現委員会による観測網に一切引っかからなかったものと推測される。 備考:
自己顕示欲と歪んだ独占欲を抱える典型的な「パターンB(元来問題があった個体)」。
扇の極限まで圧縮されたψ意識場の解放に伴う不可視の重圧、超高電圧の放電現象により、抵抗の余地なく完全制圧された。現在、精神と加護の接続を物理的にロックした状態で拘束中。
■ 識別名:妖霊δ(忍び足で現れる腐毒) 対処者:特撮班(扇・天塚による広域防衛にて無力化)
外見的特徴:扇の精神探知上では、紫の靄、あるいは不定形で虹色に濁った極彩色の結晶体の集合として観測された。
確認された能力・役割:
H.A.D――異世界由来の超人化薬物――の流通における主犯格の1体。
扇の追跡を逃れるため、自らの構成成分(精神体)の半分を切り離して自壊。その際、囮および人類への攻撃として、衛星軌道上に超大規模な魔法攻撃を展開した。
備考:当該魔法攻撃は、オゾン層と接触することで超高出力の電磁パルスを発生させ、現代文明の電子基盤を完全に破壊することを企図したものであった。
これに対し、扇雄介が南半球側の大気圏外にて極大のψ意識場を展開。
事象のベクトルそのものを空間ごと反転させる力場を形成し、魔術の効果を当該妖霊へ向けて強制的に押し戻した。
同時に、私が北半球側の大気圏外へ展開し、戦闘体の光圧導波器官から放出される超高温の熱放射を用いて、押し戻された毒雲を構成成分ごと完全に焼却・無力化。
地球環境および電子機器への被害はゼロに抑えられた。
なお、各国の気象機関が観測したオーロラ状の閃光は、この防衛作戦における熱線による蜘蛛焼却時の余波である。
【総括・天塚の所見】
1. 「勇者召喚」の真実と異世界人の欺瞞 扇雄介が妖霊「腐毒」と精神的接触を図った際、勇者召喚システムに関する重大な事実が判明した。
妖霊の証言によれば、彼らは「次元の扉を開く召喚術のシステム」を異世界に提供したのみであり、「地球の誰を」「何のために」呼んでいるのかは、異世界人側の完全な独断であるという。妖霊はただ、一方的に拉致されてきた地球人を「哀れに思い、同情から加護を与えているだけ」に過ぎないとのことだ。
ここで重大な懸念が生じる。これまで「魔王退治の特効薬」として、記録に残っているだけでも964人もの勇者が召喚されてきた。しかし、未だに「魔王」という脅威が根絶されたという確たる報告はない。
この矛盾から導き出される仮説は一つ。異世界人は魔王討伐という「建前」を利用し、我々の次元の人間を、別の軍事的・政治的、あるいは生態的な目的のための「消費可能な資源」として搾取している可能性が極めて高いのではないか?という疑念が生まれた、要調査とする。
2. 妖霊の「平等」という名の絶対的傲慢
当該妖霊の目的は「全人類に加護を与え、強制的に平準化することで、勇者という病――格差による暴走を当該妖霊はそう表現した――を根絶する」ことであった。
彼らは高次元生命体であるがゆえに、我々3次元の生物が持つ生死観、苦痛、あるいは個人の尊厳といった概念を一切理解していない。
個人的な試験ではあるが、彼らにおける死とは『一時的な睡眠、昏睡』に近い状態であり、条件さえ整えば復活、あるいは『再生成』とでもいうべき状態になることのできる『些細なこと』なのだと考えられる。その性質上、彼らに『復活』という概念そのもののない三次元の人江gンの感覚が理解される日は来ない物と考えていい。
※注記:ただし、『物質世界における死は妖霊にとってもリスクが高い』という発言を他の妖霊から聞き取った事例があるため、物質領域ではその限りではない可能性あり、要確認。
3. 特撮班の最終目標:『次元切断計画』の本格始動 以上の情報より、現在我々は致命的な膠着状態に置かれている。
・妖霊を完全に殺害すれば、彼らの報復による絶滅戦争が勃発する危険性がある。
・異世界人を放置すれば、勇者召喚という名の人類拉致と搾取が永続する。
この悪循環を根本から破壊するため、我々特撮班は今後、事後処理的な魔物・怪人討伐から、より抜本的なフェーズへと移行する。
現在、私が開発・運用している『時空相転写機構』によるプランク長レベルの時空制御技術を広域応用し、この地球(物質次元)と、妖霊の住まう「成分界」および「異世界」を繋ぐアクセス経路そのものを、物理的・量子力学的に『完全切断/不可逆的閉鎖』するシステムの構築を開始している。
詳細は別紙八号を参照。
【追記】 扇雄介(精神形態変換型人類)のヒーローネームについて、妖霊からの呼称を逆手に取り、今後は『瘴気の男
ミアズマン』を公式の二つ名(あるいは裏のコードネーム)として採用する案が本人より提出された。
悪役の怪人としか思えない言語学的センスには大いに疑問が残るが、毒を以て毒を制す我々のスタンスには合致しているため、本報告書にも備忘録として記載しておく。
以上。 引き続き、次元切断システムの基礎理論の構築、および残存する妖霊・怪人・悪性勇者への対処を継続する。