特撮オタクたちは、勇者を超越する   作:猿マン

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第24話:砲声

 魔人は強い。体格が人間と同等か一回り大柄程度である彼らにとって、大型の火砲――即ち戦車やミサイルは有効たり得ず、それでいて耐久力は並外れている。

 

 オーガにすら通じない対物ライフルの砲撃など効きようもない高強度の外皮と、一体いかなる方法論か衝撃をまるでゲルのように吸収する筋肉を持つ彼らは他の人型魔物より知能が高く武術や魔法の技術も高い。

 

 基本的に、こちらの次元に訪れることもないので交戦データも少ない――というか、ヒーローとの交戦記録は2件しかない。

 

 その2例ですら、ヒーローはまともに、魔人と交戦できなかったと、事例には残っている。

 

 だから、魔人の到来は、一大事であり、国は何を差し置いても勇者の出動を要請する、それが、この世界の不文律。

 

「――ほんまに捕まえてるやん。」

 

 ――だった。

 

 珍しく驚きに満ちた声を漏らす灯に、振り返った3人がねぎらいの言葉をかける。

 

「お疲れ様、どうだった?」

 

「ゆかり姉ちゃんから聞いてんのやろ?」

 

「それでもだ、コミュニケーションってやつよ。」

 

「……助けて来た、泣き付かれたわ。」

 

「ちゃんと避難場所まで送ったか?」

 

「ん、そりゃな。」

 

「ならいいさ――よかったな、死んでなくて。」

 

 そう言って笑う――まあ、装甲の下なのでわからないのだが……――七星に、灯は顔をしかめる。

 

 その顔が、かすかに赤く見えるのが宵闇に暮れる世界による見間違えではないと、3人は信じていた。

 

「ってか、こいつよ、よお捕まえたやん。」

 

 そう言って、話題を変える――実際、かなりありえないことだ。

 

 これまでの常識において、ヒーローは魔人を倒せない。

 

 それが、世界の基本概念だったはずだ。

 

 だというのに、今、目の前には魔人が妹の魔法によって拘束された姿で鎮座している。

 

「世界初……って言うたっけ?」

 

「そうなんですか?」

 

「そう、何じゃない?」

 

『そうなんですよ、勇者が魔人を倒したのも、魔人の生け捕りに成功したのも、これが世界初です。』

 

 そう、呆れたように告げたのは無線機の向こうのゆかりだ。

 

「へーすごいやん!どうやったん?御影がやったん?」

 

「あ、いや、私はゆかりお姉ちゃんに呼ばれてきたらこのままの体勢で魔人が固まっていて。」

 

『天塚先輩謹製の薬品です。元来肉体を持たない魔物がこちらの次元で活動するために作り出す『魔導実体』に共通する構成因子を凝固させて体を金縛り状態にする薬――ってところですかね。』

 

「ええ、まあ、おおざっぱに言えばそんなもんです。」

 

 そう言って、胸に鏡を貼り付けたヒーローは自慢げに胸を張る――実際、たいした偉業だ。

 

「内部は薬品、量産は可能、薬液を体内に静注させる装置は特殊ですが、まあ、作れない素材ではありませんし、そのうち、一般的なヒーローにも普及させるつもりですよ。」

 

 もしそれが実現すれば、ヒーローも魔人と戦えるようになるだろう。

 

 そうなれば――勇者の圧倒的な優位も少しは揺らぐだろう。

 

「まあ、今のところ、この新型以外では起動できないので、あまり一般のヒーロー達には役に立ちませんけどね。」

 

『ふっふっふ、この私の偉大なる英知がまた一つ証明されてしまいましたね!』

 

「うん、まあ、そこは否定しないかな。」

 

 生け捕りにするのは殺す事よりも難しい。

 

 それができるのならば、会社にも大変な利益の還元があるだろう、拾ってもらった恩ぐらいは返せそうなものだ。

 

「――と、いうわけだ、お前にはいろいろ話してもらう。」

 

 そう言って厳しい目で見つめる男に、魔人の返す視線もまた厳しい。

 

 屈辱と恥辱を同時に感じながら、それでも自分の主人について語るつもりはないらしい、そういう目だった。

 

 だから、現実を教えることにした。

 

「いいですか、一応言っておきますが、僕らに捕まっているうちに話しておいた方が身のためですよ。僕らは基本的に人道を重んじますし、戦争法に引っ掛かりそうなことをする気はありませんが――他は、そうでもないですから。」

 

 そう、それが『ヒーロー』というものの、あるいは勇者というものの限界であり現実だ。

 

 世間にとり、ヒーローとはあくまで魔物に対抗する戦力でしかない。ゆえに、求められる分野は多岐にわたり、時に――非人間的なことすら許されるとされる風潮がある。

 

「ヒーローならいいけどな、勇者が出てきたらどうなるかわからんぞ?連中、拷問好きとかたまにいるしな。」

 

 でなくとも、心を読める者、見た物に強制的に真実を語らせるもの、脳を破壊して情報を引き出す者、多種多様だ。

 

「そういうわけだ、話すなら早めに話せ、どうにか国に掛け合って、勇者を護衛につけてやってもいい。」

 

 国も、魔王との戦争になりかねない状況で、魔王側の情報提供者を殺すことはするまい。

 

 何なりか褒章を出すなり()()()()()()()()勇者に協力を頼むだろう。

 

「さて、わかりましたか?まあ、わかってなくとも、引き渡すので、ちょっと待って――」

 

 その時だった。

 

 話していた天塚を扇が弾き飛ばしたのは。

 

 すわ洗脳?魔人の最後っ屁?――そう思った3人が1発の砲声と共に、扇の体が脇に弾かれて脇に転がったのを見たのはその直後だった。

 

 

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