特撮オタクたちは、勇者を超越する   作:猿マン

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第52話:ある才女の推論

「……何の話だ?あれは単なるガス爆発――」

 

「――ということにしておけという緘口令が出ているのは存じていますよ。そして、私がそれを知っているということは……」

 

「――あんたも関係者か。」

 

「どうでしょう?少なくとも、皆さんと同じ程度の情報が得られる立場の人間と思っていただければ。」

 

 設楽天京が引き起こした厄介な一件に関して、国はかなり重度の緘口令を敷いた。

 

 それは、勇者が悪行を成し、魔王をこの国に呼び込んだから――()()()()

 

 ぶっちゃけた話、勇者がどうこうしたなどというニュースは今の世の中にとって『よくあること』の1つでしかない、力で司法をねじ伏せた超生物たちにとって、この手の報道はある種ですらある。

 

 問題はそこではない――()()()()()()()()()()()()

 

「勇者は現在、世界の宝です。高等なモンスターをコストがかからずに始末できる唯一の存在。」

 

「……人身御供にされた人間は被害には当たらないと?」

 

 どこか、不快そうに告げるのはゆかりだ――実際、多くの勇者は無給では動かない。

 

 多くの場合、彼らは『ヒロイン』を求める。

 

 即ち、美女だ――名声は約束された、富は必要がない、となれば、彼らが求めるものはこれしかないのだ。

 

「ぇ……ああ、いえ、違いますよ、そんなことは思っていません、本当です。」

 

 慌てたように告げる少女は、嘘をついているように見えない――そして、実際、扇の超能力はそれが演技でないことを見抜いていた。

 

「私の言うコストとは財源や兵器製造費用のことです――人のことはコストだと思っていませんでした、失礼を。」

 

 そう言って頭を下げる彼女は、なるほど、本心を語っている――脱線した、話を戻そう。

 

 ゆえに、勇者とは、言ってしまえば『悪の権化』でありながら『平和の象徴』でもあるのだ、ヒーローには実行不能なことを成し遂げるその様はまさしく勇者のそれだ。

 

「そんな存在を、所属不明、出所不明、明らかに人間ではない生物が打倒したなどと世間に知れるのは問題が大きい。」

 

 ゆえに、秘する。

 

 あの一件の直後現れた警察は、生徒、職員からスマホを没収、あまつさえ、遅れて現着した政府の子飼いのヒーローによる精神操作――といってもそれほど力のあるものではないが――によってこの事実を表ざたにできなくした。

 

「すべては世の混乱を食い止めるため。」

 

 もしも、これらの存在の実在が表ざたになれば、勇者たちはこぞってあの生物の討伐、または捕獲に乗り出すだろう。

 

 実際、そういった内容の打診が、灯と御影のもとに先日届いている。

 

「――なるほど?あんたがこっちの事情にお詳しいのは理解した。」

 

 しかし、それが、一体なぜ、自分達と結びつくのだ?

 

 そう、言外に尋ねる男に、少女はたおやかにほほ笑む。

 

「だって、ご存じでしょう?あの不思議な皆さんのこと。」

 

「なぜそう思うのかと聞いてるんだが。」

 

「だって皆さん、あの事件の時、()()()()()()()()()()()()?」

 

 その1言に、ゆかりと扇は驚いたように目を見開く。

 

 基本、ヒーローの出動履歴というものは個人の会社にしか保存されないものだが――さて、なぜこの娘が知っているのやら。

 

「皆様の評判は聞き及んでいます、古き良きヒーローにあこがれそれを実践せんとなさっている奇特で、得難い善性をお持ちだそうですね、その実力は折り紙付きだとも。」

 

 真実褒めるように、彼女は告げる――実際、褒めているのだろう。

 

「そんな皆さんが、自分の所属している会社の、社長の娘さんがいる学校が被害を受けているときに、出動していない――そんなことあり得るのでしょうか?」

 

 首をかしげる――どこか妖しげなその動きは、まったく、かわいらしく、艶やかで、少しばかり恐ろしかった。

 

「そして、皆さんがいなくなっているタイミングであの不思議な生き物は勇者と魔王と交戦、これを撃破しています。」

 

 だから。

 

「私はこう仮説を立てました、あれは特異な方法によって制御されたあなた達の新兵器の類であり、皆さんはそれの制御にかかりきりだったのでは?と。」

 

 さすがに、あれを自分達本人だとは気が付いていないらしい――が、かなり惜しい線までたどり着いている。

 

 扇は内心で舌を巻いた――なんだって、頭のいい奴というのはみんなこう、ひょいひょい答えにたどり着くのだろう?こっちは超能力を使ってもひーひー言っているというのに。

 

「あれの強さからして、あれは、魔人を利用した兵器と言ったところでしょうか。皆さんには魔人を拿捕する能力がおありですものね。」

 

 D.I.N.T.

 

 天塚が製法までばらまいた対魔人用の薬品。

 

 いまだに作れるものは彼だけだが、明確な効果を示す薬品。

 

 それを使えば、なるほど確かに、魔人を確保できる、そして、それをいかなる方法論か制御し、強化できるのなら――

 

「勇者を、討伐しうる。」

 

 可能性は――あるだろう。

 

「聞くところによれば、あの3体の超人とでも言いましょうか、あれが倒した魔人は勇者の力を回収して使うことすらできたと聞いています。」

 

 そういった魔人がいるのなら、勇者を倒せるように魔人を調整できる可能性はあるのではないかと、彼女は言っているのだ。

 

「――どうでしょう?私の推理。間違っていますか?」

 

 そう尋ねる彼女に、扇は――

 

「え、うん、全然違うけど……?」

 

 そう言って、困ったように首をひねった。

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