特撮オタクたちは、勇者を超越する   作:猿マン

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第64話:ある少女の悩み

「――ほん、同級生にストーカー……?」

 

 「……はい。」

 

 困り果てた様子でそう告げる彼女《御影》に、七星たちは顔をしかめた。

 

 先立ってのサイコメトリー実験の失敗を踏まえて、御影による検査を終えた扇と合流した2人は、実験前に頼まれていた御影の相談とやらを受けていた。

 

 いや、正確には、七星が受けた後に、ほかの2人に伝えたのだ。

 

 というのも――いかんせん、これは七星の管理外の話だったからだ。

 

 ストーカーとの対決は彼ではなく、天塚や扇の担当だ。物理でぶん殴るマンである彼にはどうにも判断できない。

 

 正直に言って想定外の相談だ――まさか、勇者をストーカーする人間がいるとは思いもよらないだろう、普通、彼らがする側なのだから。

 

「えーっと……それは、つまり、お前さんを追いかけまわしている同級生がいると。」

 

「……変ですか?」

 

 どこか傷ついたような声音で告げる少女に、七星は頭を振る。

 

「いや、ちょっと納得するけど。」

 

「まあ、美人さんですからねぇ、そういう同級生の1人ぐらいいるだろうなという気はしますが。」

 

 あっけらかんと言った七星にどこか胡乱な目を向けた天塚の一言は確かに納得しかない。

 

 以前も語ったことだが――御影を含む黒土の人間はみな美人だ。世が世なら勇者などではなく配信者かインフルエンサーかアイドルにでもなっていたことだろう。

 

 ゆかりを含めて、血の力というもののすごさを感じざるを得ない――が、今回はそれが悪い方に働いているらしい。

 

「いつからです?」

 

「その……少し前に、クラスメイトがいじめられていて、そのいじめっ子を倒したんですけど。」

 

「ほう、助けたと。」

 

 そう告げる七星に、しかし、御影の反応はひどく鈍い。

 

「……?いえ、別に助けてはないです、邪魔だったので排除しただけで。」

 

 それは、まるで、ごく当然のように告げられた一言。なぜ、助けたことになるのか?そう聞きたげな一言。

 

「あー……はい、了解、で?」

 

「その、その後ぐらいから、視線を感じるようになって。」

 

「そこがストーキングの起点だと。」

 

「たぶん、視線を感じるだけで、別に何か実害があるわけでもないんですけど、気味が悪くて。」

 

 なるほど、理解はできた。

 

 正直、勇者としての力を十全に――いや、小指の先を動かす程度の労力をいとわなければ探し出せはするだろう、が、同時に、精神的には普通の少女に、ストーキングされながらその手の冷静な判断をしろ、といっても無理があるだろう。

 

「……うーむ……その助けた奴って、男子?」

 

「はい、割といじめられっ子だったみたいで。」

 

「……」

 

「正直、ずっと見られているの、気味が悪いので、どうにかしたいんですけど、どうすればいいのかわからなくて。」

 

「勇者パワーでどうにかとかは?」

 

「お母さんから止められていますし……後、お姉ちゃんたち嫌がるから。」

 

 なるほど、納得だ。

 

 つまり、超人的な要素無しで、そのストーカー被害から逃れたい、という話なのだろう。それ自体は納得できる。

 

 そして、正直に言ってしまえばおそらく犯人はその男子だろう。

 

 助けられたことへの恩義か……さもなければ……

 

『勘違いかな。』

 

『たぶん……?心理担当!』

 

『ほぼ確で勘違いかなぁ、合っとらんゆえさっぱりわからんが。』

 

 小声での密談――正直、あっていてほしくない推論だが、確率は高い。

 

 ごくまれにいるのだ、そういう人間というものが。

 

 あの人はこっちを見てほほ笑んだから、あるいは、何かを施してくれたから、だから――あの人は、自分のことが好きなのだと、そう感じてしまう人間というのが、まれにではあるがいるのだ。

 

 そして、えてして、そういった人間は妄想が進み過ぎるとストーカーになってしまうことがある――無論、これもまた、稀なことだ。

 

「で、お姉さんとかゆかりには知られたくないからかかわりの薄い一也に頼んだと。」

 

「はい、その……一番、友達少なそうだし……」

 

 ばつが悪そうに視線を逸らす少女――言っていることの内容的に、もっと悪そうにしていていいとは思うが。

 

「んー無礼!」

 

「言われてやんの。」

 

「悲しいかなこの中で一番友達少ないの雄介君ですしね。」

 

「よせ、よせ!その話はやめよう……それを言われたら戦争しかなくなるだろうが……!」

 

 沈痛な声を上げる扇に免じて口をつぐんだ天塚に代わり、七星が尋ねる。

 

「で――実際、どうしてほしいんだろ?」

 

「どう、っていうと……?」

 

「要するにあれよ、捕まえてほしいのかやめてほしいのか、自分で決を付けるのに相手の確認がしたいのか。」

 

「あー……」

 

 困ったように、御影の表情が曇る――はて、なぜここで?

 

 そんな天塚と七星の疑念に、扇は唯一1人だけ、鋭い視線を御影に向けていた。

 

「その……こんなこと聞くのもおかしいと思うんですけど。」

 

 そう、前置いて、御影は困ったように告げる。

 

「その……どうするのが、普通なんでしょう……そこがよくわからなくて……殺すのは、違うんですよね。」

 

 そう、困り果てて告げる彼女は、まるで幼稚園の子供が、どうして空が青いのかを疑問に思うかのように、心からわからないと言いたげにそう言った。

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