特撮オタクたちは、勇者を超越する   作:猿マン

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第83話:暫時報告:怪人について

 黒土製薬・社長直轄特殊遊撃部隊(通称:特撮班)。

 

【極秘】H.A.D服用による変異体(怪人)に関する調査報告書

 作成者:天塚 新(ルモス・ベセル)。

 

 閲覧権限:特撮班メンバー、黒土未来社長のみ。

 

【概要】

 異世界由来の違法薬物「H.A.D」を服用した一般市民が変異した存在を、便宜上【怪人】と呼称する。従来の魔物――異界からの侵略者――とは異なり、召喚円を伴わず突如として市街地に出現する。

 

 最大の特徴は、素体となった人間の「個人的な欲望、執着、コンプレックス」が異形として具現化している点である。

 

 現在までに交戦・確認した4体の個体について、以下の通り特徴をまとめる。

 

【個体データ】

 

 識別名:怪人01(刃殻型)

 

 素体: 一般男性(某企業の関係者と思われる)

 

 外見的特徴:

 前衛芸術を思わせる歪な人型。体全体から牙や爪ともつかない骨状の刃が突き出している。手指は物をつかむ構造ではなく、鋭い剣のように伸びている。

 

 確認された能力:

 高い身体能力と、全身の刃による斬撃。

 

 備考(精神状態):

 薬の副作用により著しい錯乱状態にあった。「特定の人物への殺意」と「女性への執着」が混在し、目の前のターゲットを瞬時に見失うなど、思考の短絡化が見られた。変身解除後、貧相な人間の姿に戻ることを確認。

 

 識別名:怪人02(形状不明)

 

 素体:不明。ただし、勇者への攻撃からは明確な敵意が感じられるため、対象が何かしら勇者への、あるいは『勇者に類する存在』への恨み、敵愾心を持っていたのは間違いないものと考えられる。

 

 外見的特徴:

 不明、ただし、扇雄介は現場検証に際しサイコメトリーによって『鷲もしくは鷹』のような意匠を確認している、怪人の変異傾向から言っておそらくは『鳥』の怪人と考えられる。

 

 確認された能力:

 勇者の防御を容易く貫通するほどの高火力攻撃(詳細不明だが、超高周波やエネルギー弾によるものと推測。)

 巫覡の勇者・中峰司を抵抗の余地なく殺したものと推察される形跡有。

 

 ベアリング球を用いた超高速の投擲攻撃(インパルス・バングルを狙ったもの、扇雄介の過去視によって判明。同ヒーローが素手で受け止め制圧)。

 

 備考(精神状態):

 不明。

 ただし、勇者を殺害していることから、正常とは言い難い可能性が高い。また、扇雄介のサイコメトリーにより『明確な喜びと敵意』を持って攻撃していることが判明している。

 

 識別名:怪人03(甲殻型 / スレイバー)

 

 素体: 竹林(黒土姉妹の同級生・ストーカー)

 

 外見的特徴:

 シオマネキに似た赤黒い甲殻類。右腕が軽自動車ほどの質量を持つ巨大なハサミとなっており、左腕は鞭のように細長い。背中からは複数の歩脚が生えている。

 

 確認された能力:

 巨大なハサミによる、コンクリートを削り取るほどの超質量物理攻撃。

 口から強酸性の消化液(泡)および神経毒ガスの噴射。

 

【重要】細胞レベルで脊椎が「未知の金属」に置換されており、薬効切れに合わせて肉体を元に戻すためのギミック(または機密保持用の自壊装置)として機能していた。

 

 下記植物型への調査においても同様の機構確認、これはおそらく、すべての怪人に搭載されている機構であり、その影響によって、肉体が自発的に崩壊する危険性を常に帯びているものと考えられる。

 

 備考(精神状態):

 黒土御影への異常な執着が増幅。戦闘中も彼女の名前を叫び続けた。天塚新の『超人体』によって細胞を復元、強制的に人間に戻し、無力化・救命に成功した。

 

 現在、経過観察を行いつつ、扇雄介によるメンタルヘルスを実行中。経過良好。

 

 識別名:怪人04(植物型 / 茨の怪人)

 素体: 成人男性(襲撃時に攻撃されていた女性たちの『ママ友』だった女性の夫と判明。)

 

 外見人特徴:

 全高3メートル近い巨体。皮膚がひび割れ、そこからどす黒い粘液と、植物の蔦(茨)のような繊維が絡み合って形成されている。

 

 確認された能力:

 地面から有刺鉄線のような茨を湧き出させ、対象を拘束・骨折させる。

 

 口からの強酸性粘液の吐出。

 

 備考(精神状態):

「公園にいる母親だけを狙って拘束する」という極めて特異な行動原理を持っていた。

 

 追加調査により、『今事件被害者に精神的、肉体的苦痛を与えられた結果、精神的に病んでしまった女性の夫』に相当する人物であり、おそらく、その件に対する報復の意思を薬物によって拡大させられ、視野狭窄状態だった可能性が、扇雄介より示唆されている。

 

 魔法少女(灯・御影)の連携により、殺害せずに生け捕りに成功。ただし、警察側にこの生物を止め置ける施設が存在しないこと、並びに、これからの怪人案件に対する対処法発見のための検体として、現在黒土製薬で保護を実施中。

 

【総括・天塚の所見】

 H.A.Dは単なる身体強化薬ではありません。

 

 現状、理解できている範囲において、この薬物は強い精神錯乱を引き起こし、重度の視野狭窄を引き起こします。

 

 結果、暴露者は『現状抱えている不満』のみに意識が向くようになり、それからの離脱を試みます。

 

 逃避、執着の段階を経た結果、最終的には『不満の源になるものの破壊』を実行するように、強迫観念を引き起こすものと考えられます。

 

 元怪人03のカウンセリング内容から、引き起こされる視野狭窄の元凶はトラウマに類する強力なものではなく、時間経過で薄れるような『憧れ』や『嫉み』程度のものですら効果の対象となることが判明しています。

 

 また、「怪人03」「同04」の解剖学的透視により、脊椎の金属化が確認されました。

 

 上記の通り、この金属化した骨からは対象の細胞を分解する酵素が生成され、対象を消滅させます。勇者による暴露者の救助に際してはまず脊椎部分の回復を優先するように厳命してください。

 

 現状、この骨の変異について、こちらでは『機密保持のための自裁装置』と考えています。これを起動させず暴露者を回復させる方法は現状勇者による『時間回帰』ないしは『細胞レベルでの変換』――あるいは超人体による超自然的回復以外見つかっていません。

 

 また、この自裁装置は遠隔での起動ができる可能性が示唆されており、現在、天塚新・黒土御影共同作成の『試作型魔力遮断ファラデーケージ』によって魔術的、魔法的起動を阻害中。目下効果ありと判断。

 

 我々が早急に断つべきは、この薬の供給源――すなわち、先日超高空で接触した「真紅のスーツの女(妖霊)」および、その流通を担う組織です。

 

 引き続き、ネット上の注文経路の特定と妨害を継続、並びに天塚新による『妨害薬剤』と『治療薬』の開発を継続。

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