【綾小路清隆】
オレは、高度育成高等学校に向かうバスで初めてやつを見つけた。
どうやらOLに席を譲れと絡まれているらしい。
可哀想な奴もいるもんだな……と思いながら眺めていると、急にOLはなにかに怯え始め、やつと話すのをやめた。
やつが何かをしたようには見えなかったが、何があったのだろうか?
バスが目的地につき、降りると、やつは学校に向かわずにこっちの方を見ていた。
オレは気にせずに学校に向かおうとすると、やつは隣に並んで歩いてきた。
なんだ?こいつはオレのことを知っているのか?
それともバスから降りたら2人で歩くのが常識なのか?
と、考えていると、やつから話しかけられた。
どうやら同じ新入生らしく、名前は石川雄大と言うらしい。
少し話しただけだが、石川はいいやつだ。
こういうやつと友達になりたい。
学校に着くと、クラス分けの紙があり、石川とは同じクラスだった。
そして石川は、友達になろうと言ってきた。
初めての友達だ。
こんなに嬉しいことがあるのだろうか。
それから石川は自己紹介で俺の手助けをしてくれた。
いいやつだ。
石川がいなかったらどんな悲惨な自己紹介になったか分からない。
石川が自己紹介してるとき、失礼なツッコミを入れたやつが石川に怯えていた。
バスのOLと同じような怯え方をしているが、やはり石川が何かしているのだろうか?
その後、2人でコンビニに行くことになった。
途中、須藤と言うやつが揉め事を起こしていたが、石川が仲裁して止めていた。
須藤も怯えていたように見えた。
やはり石川が何かしてるに違いない。
それが確信に変わったのはすぐのことだった。
上級生の3人組が須藤に絡んできたのだ。
そして、流れで石川にも絡み始めた。
手に持ってるものをよこせと言っている。
オレが介入しようとしたその時、3人組は固まった。
涙を流しているようにも見える。
そして、石川が帰るように促すと、やつらは帰って行った。
やはり、石川は何かをしている。
恐らく殺気を出しているのだろう。
気配だけで相手を制圧するなど、どんな鍛錬を積めばできるのだろうか。
少なくとも、ホワイトルームでは習わなかった。
とても興味深い存在だ。
その後も、石川とは色々あった、石川が殺気を使うのを見たり、水泳の平均記録を騙されたりした。
そしてある日、石川がやりたいことがあると言ってオレの部屋に来た。
やりたいこととはなんだろうか、と思い聞いてみた。
すると、石川は俺に向かって殺気を放つ、威圧の限界を試したいというのだ。
仲が良いと言っても、なぜオレなのか。
水泳の件といい、もしかしてオレの実力を知っているのか?
それを問うと、石川はあることを告げた。
オレの過去を知っているということだ。
オレの過去をこいつは本当に知っているのか?
まだ分からない、とりあえずなんのことだと問う。
石川は衝撃の一言を口にした。
「具体的に言えば、ホワイトルームのことかな」
なぜこいつがこのことを知っている?
こいつはオレを連れ戻すために送られた刺客なのか?
それならあの殺気にも納得ができる。
動揺するオレに石川は、過去を知っているが、オレたちが友達であることは変わらないこと、オレが大切な友達であると思っていることを伝えてくれた。
オレは嬉しかった。
雄大とは名前で呼び合うことになった。
これが、親友というものなのだろうか。
最初に言われた通り、オレは威圧を受けることになった。
結果から言うと、オレは怯えと恐怖という感情を学んだ。
雄大には絶対勝てるはずなのに、不思議なものだ。
これも実力なのだろう。
それとも実力を隠しているのだろうか。
雄大のその力を使えば、多くの人を支配できるはずなのにそれをしないということは、そういうことが嫌いなのだろう。
『力を持っていながらそれを使わないのは愚か者のすることだ』
思い出したくも無い言葉が思い出される。
オレは愚か者なのだろうか……
その少し後、喉が乾いたオレたちは、寮のロビーへ向かった。
なぜかこんな時間に出ていった堀北を2人で追いかけると、生徒会長が堀北を投げ飛ばそうとしていた。
オレはそれを腕を掴んで止めると、生徒会長は裏拳を飛ばしてきた。
オレはそれを避けることができたが、次の標的は雄大だった。
生徒会長は蹴りを放ったが、オレはそれを止めることができず、蹴りは脇腹にヒットし、雄大はコンクリの上に体を叩きつけられてしまった。
雄大は意識を失っているようだ。
親友の雄大を傷つけられたオレは、自分の中から湧き上がってくる感情に気づいた。
これが、怒りという感情か。
気づけば、生徒会長は倒れていた。
傷をつけずに倒すのは少し骨が折れたが、生徒会長も所詮この程度ということだ。
雄大が目を覚ましたので、この場をあとにすることにした。
今日だけで、多くの感情を学べたな、とオレは喜びながら考えていた。
これからの学園生活も楽しみだ。