分身スキルの最強戦術って自爆特攻じゃね?   作:sasarax

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《別視点》


第20話  フィーネの懺悔(後編)

 逃げてしまった。

 

 森の中で遭遇した、灰色の髪の子供。

 あまりにも突然だったので、謝って逃げてきてしまった。

 

 どうしよう? お父さんに相談した方がいいのかな?

 

 でも今、家にはいないみたいだし。

 

 家のベッドに寝転がって、うんうん、と悩む。

 

 おそらく森の反対側にある村の子供だ。お父さんはたしか、会わないようにしなさいって言ってた……と思う。

 

 どうしてそんな子供があんな場所にいたんだろう?

 

 あ、もしかして、あの子は迷子だったのかもしれない。

 

 わたしよりも小さい子だったみたいだし。

 

 ……み、見に行ってみた方がいいよね?

 

 胸のペンダントを握りしめつつ、家から出てこっそりと木の上へ。

 

 お父さんにお守りとして持っておくように言われた剣のペンダントは、握っているとスキルが発動する。この状態なら、大人顔向けの身体能力で動けるし、やろうと思えば誰にも気づかれずにこっそりと動ける。

 

 木の上を音もなく飛び移っていき、さっきの場所に戻る。

 

 あの子はまだ同じ場所にいた。

 

 わたしが落とした木の芽を拾い集め、ぽつんと地面に座り込んでいる。

 

 やっぱり迷子なのかな? 声、かけてあげた方がいいのかな?

 

 でもお父さんとの約束が。

 そもそも怖い。

 なんて話しかけていいかもわからない。

 

 も、もう少し様子を見よう。

 

 改めて観察する。

 

 年齢はわたしよりも幼い。たぶん六歳くらいだと思う。背も小さいし、身体も心配になるくらい細い。

 

 伸びっぱなしの灰色の髪はわたしよりも長く、櫛が入っていないのか、ぴょんぴょんとところどころ跳ねている。服もボロボロのワンピース、みたいな一枚の布切れだけ。街で暮らしていたときに偶に見た、スラムの子みたいな格好だ。

 

 でも不思議とみすぼらしいとは思わなかった。

 

 スラムの子供とは違って、雰囲気が明るいのだ。姿勢が、眼差しが、未来への希望に光り輝いているように見える。

 

 あと顔立ちがすごく整っている、ってのもある。

 

 大きなアメジストみたいな紫色の瞳は見ていると吸い込まれそうで、なんだかドキドキしちゃう。まるで絵本から出てきたお姫様みたい。

 

 わたしはいつか読んだ、誰も作者の知らない不思議な絵本の登場人物を思い出す。

 

 灰被りのお姫様。シンデレラ。

 

 うん、名前がわかるまではシンデレラちゃんと呼ぼう。

 

 シンデレラちゃんはしばらくじっとしていたが、やがてすたりと立ち上がると、その場に野草を置いて、迷いなく来た道から帰っていった。

 

 少しだけ追いかけたが、その足取りに迷いはなかった。

 

 迷子ってわけじゃないみたい。

 

 よかった。

 

 ほっと胸を撫でおろし、シンデレラちゃんを見送る。

 

 その小さな背中が見えなくなったあと、さっきの場所に戻る。

 

 野草、どうしよう?

 

 ……持って帰ろう。

 

 せっかくシンデレラちゃんが零したのを拾い集めてくれたのだ。無駄にはしたくない。

 

 籠に入れて家に持ち帰る。

 

「お、フィーネ。今日も森に行ってたのか?」

 

「う、うん」

 

 家に帰るとお父さんが戻ってきていた。

 

 わたしの顔を見て、どこか不思議そうにしている。

 もしかして、村の子供と会ったのがばれたのかな?

 シンデレラちゃんのこと、い、言った方がいいのかな?

 

「フィーネ、今日は元気そうだな」

 

「え? う、うん。げ、んき、だよ」

 

「そうか。そうか! それはよかった! よしっ、じゃあお父さんがフィーネの摘んできた野草を使って、美味しいご飯を作ってやるからな!」

 

 嬉しそうに籠を受け取って、お父さんは料理を作りに行ってしまう。

 

 シンデレラちゃんのことは結局言えなかった。

 

 ま、まあ、偶々会っただけだし、もう会わないようにすればいいよね。

 

 ベッドの上に戻り、ごろりと寝転ぶ。

 

 木の上をぴょんぴょんと飛び回ったので、ちょっとだけ疲れた。眼を閉じると、眠気が襲ってくる。

 

 そういえば、お父さんとちゃんとお話したのは久しぶりかも。

 

 なんでだったかな? もう何か月も、ずっとこの家で二人きりなのに。

 

 二人? あれ? 二人だったかな?

 

 ……そういえば。

 

 シンデレラちゃんと会ったあと、ユーリちゃんとハンスくんの声、聞こえなくなったな。

 

 お姫様、みたいだったもんね。

 きっと二人も見惚れて、大人しくなっちゃったんだろう。

 

 わたしも、なんだか、眠く……。

 

 

 

 

 

 翌日、ユーリちゃんとハンスくんと一緒に森へ行った。

 

 それだけの一日だった。

 

 

 

 

 

 さらに翌日、またシンデレラちゃんと遭遇した。

 

 やっぱり逃げちゃったけれど、シンデレラちゃんはこの前のと同じ野草を摘んで持ってきてくれていた。

 

 贈り物、だったんだろうか。

 

 逃げたあとやっぱり木の上から見守ってみたけど、シンデレラちゃんは野草を置いて帰った。放置もしておけなかったので家に持って帰ったけど、贈り物だったなら逃げたのはダメダメだよね。

 

 わたしがダメなのは、今に始まったことじゃないけど。

 

 ……なんだかシンデレラちゃん、悲しそうだったな。

 

 とぼとぼとした帰りの足取りは、まるで欲しかった焼きたてのパンが売り切れで買えなかった子供みたいだった。

 

 うぅ、胸が痛い。

 

 つ、次に会ったら、お返事してみようかな。

 

 でもお父さんとの約束が。

 

 わ、わたしはどうすれば。

 

 

 

 

 

 ベッドの上で悩んでたら、そのまま寝てしまった。

 

 次の日、森でシンデレラちゃんを待ってみるが、来なかった。

 

 どうやら彼女は二日に一回森に来ているようで、次に会えたのはさらに翌日のことだった。

 

 なお結局、返事はできませんでした。

 

 わたしって、本当にいくじなし!

 

 でも自分に失望するのはまだ序の口だった。

 

 そこから何回も、一日はさんでシンデレラちゃんは会いに来てくれるのに、わたしは逃げて逃げて逃げまくる日々。

 

 い、色々と話しかけてくれたのに。ほ、褒めたりもしてくれるのに。野草を採るのを手伝ってくれるって言ってくれてるのに!

 

 でも無理。あの綺麗な顔で近くから笑いかけられると、し、心臓が持たない。後ろからいきなり肩に手を置かれたときなんて、吐息を感じるくらいすぐ近くにあの顔があって、心臓が止まるかと思った。

 

 わたしのことを可愛いってシンデレラちゃんは言ってくれるけど、本当に可愛いのはあなただよと教えてあげたかった。

 

 言えないんだけど。

 

 う、うぅ、返事をしたいのに、色々とお話してみたいのに、勇気が出ない。

 

 こういうのを相談できる相手もいないし。

 

 というか、お父さんしか話せる相手はいないし。

 

 でもお父さんは最近、なんだかすごく嬉しそうにご飯を作ってくれる。たぶん、野草が好きなんだと思う。それ、シンデレラちゃんが持ってきてくれたやつだから、大事に食べてね。

 

 うん、お父さんが嬉しいならわたしも嬉しい。

 

 ご飯も美味しいよ。

 

 

 

 

 

 シンデレラちゃんのことを考えていて、ふと気づく。

 

 そういえば、最近はユーリちゃんとハンスくんの声を聞くことがほとんどない。

 

 わたしが他のことに気を取られているから、幻聴を聞く暇がないだけなのかもしれないけど。

 

 ……そう、幻聴だ。二人は亡くなっている。

 

 わたしが、見殺しにした。

 

 今更だけど、少し前のわたしは正気じゃなかったのかもしれない。

 

 死んだ人間と当たり前に会話をしていたのは、どう考えても頭のおかしい人間だ。

 

 いつからそうだったかは思い出せないけれど、頭にはずっと靄がかかっていたように思う。

 

 それが完全に晴れたとは言わないけれど。

 それでわたしの罪が許されるわけじゃないけれど。

 

 これ以上、お父さんに心配をかけるわけにもいかない。

 

 ……本当にごめんなさい。ユーリちゃん。ハンスくん。

 

 いつか、いつかまたクリスタの街に行くことが出来たら、お墓参りに行くから。絶対に行くから。

 

 それまでバイバイ。

 

 わたしの、初めての友達だった人たち。

 

 

 

 

 

 ゆ、勇気!

 

 今日こそ、わたしは勇気を出してシンデレラちゃんとお話してみせる!

 

 そのために、朝からしっかりと準備を進める。

 

 髪に櫛を通して、お母さんが亡くなる前に買ってくれたお気に入りの赤いリボンで結ぶ。服はお父さんが街で買ってくれた純白のワンピース。お父さんが可愛い可愛いって褒めてくれた物だから、わたしが持っている服の中では一番マシなはず。

 

 胸には勇気のペンダント! 握ってる間、わたしはすごいすごくなる!

 

 か、完璧な装備だ。

 

 これなら行ける!

 

 行け、行け、行け……た!

 

 苦節ひと月、ついにシンデレラちゃんに返事を返せた。

 

 しかも色々とお話もできて、パンを分け合って食べることもできた。

 

 名前も教えてもらえた。シンデレラちゃんはアインっていうみたい。

 可愛い名前だ。アイン。アインだ。間違えてシンデレラちゃんって呼ばないようにしないと。

 

 ここまでやれたのは、きっと完璧な装備のお陰だ。

 

 お母さんありがとう。リボンも似合ってるって褒めてもらえたよ。

 お父さんもありがとう。特にワンピースについて言及はなかったけど。

 

 明日洗濯して、明後日も装備して会いに行こう。

 

 

 

 

 

 びっくりした。過去一番びっくりしたと言っても過言ではない。

 

 アインちゃんはアインくんだった。女の子じゃなかった。

 

 えっ? 嘘でしょ? わたしよりもずっと可愛いのに?

 

 ……信じられない。

 

 確認が急がれる。

 

 明日、川遊びに誘ってみよう。

 

 

 

 

 

 本当に男の子だった。

 

 お、男の子……。

 

 なんだか急に恥ずかしくなってくる。

 初めてお父さん以外の男性の裸を見てしまったし、見せちゃった。

 

 うぅ、アインはなんでもないような顔をしてたけど、なんか意識しちゃう。

 

 でもこの日よりも、ずっと意識してしまう出来事が起きた。

 

 一緒に野草を食べようって話になったとき、アインにわたしのお母さんが死んでいることを伝えたら、同じだと言われた。

 

 これまでこのことを口にすると、他の子供たちは可哀そうなものを見る目でわたしを見て、少し優しくしてくれた。死んでしまったユーリちゃんやハンスくんもそうだった。わたしはいつもそれを、ちょっとだけ嬉しくて、ちょっとだけ悲しく受け止めていた。

 

 けどアインは違った。アインもそうだった、というのもあるかもしれないけど。

 

 お互いたくましく生きていこう。

 

 彼はそう言った。

 

 そのときの横顔は、いつもの楽しそうな笑顔とは違って、なんだか誰かをにらみつけるような顔だった。

 

 きっとそれは現実だ。厳しい現実を彼はにらみつけていたのだ。

 

 その横顔はいつもとは違って凛々しくて、格好よかった。

 男の子なんだな、とそう理解してしまい、ドキドキとしてしまった。

 

 ベッドに入った今も収まらない。

 

 ずっと、ドキドキしている。

 

 

 

 

 ドキドキといえば、忘れてはいけないのはあの日だろう。

 

 お父さんにアインのことがばれていたと知った翌日、彼を初めて家に招いた。

 

 お友達が家に遊びに来るなんて。

 

 街にいたときも含めて、初めての経験にドキドキしっぱなしだったけど、というか最近はアインと話すときはずっとドキドキしてるけど。

 

 ご飯のとき。

 

 お父さんが狩ってきたお肉を口に含んだアインが、急に黙り込んでしまった。

 

 わたしと一緒でお肉が好きじゃないのかな、と思ったけど、アインは小動物みたいに頬を大きく膨らませ、もぐもぐと美味しそうに食べていた。つい黙り込んでしまうくらい美味しかったらしい。

 

 よかった。そう思った次の瞬間、アインの目から大粒の涙が零れ落ちた。

 

 たくさん。たくさん。

 

 まるでずっと堪えてきたものがあふれ出したような、そんな泣き方だった。

 

 それを見て、ぎゅうっと胸が締め付けられる。

 今すぐアインを力一杯抱きしめて、大丈夫だよ、わたしがいるよ、と声をかけてあげたい衝動に駆られる。

 

 それくらい、今のアインは放っておいてはいけないオーラが出ていた。

 

 お肉、たくさん食べてね! なんだったら、追加の獲物をお父さんに取ってきてもらうから、わたしの分もお父さんの分も全部食べていいよ!

 

 美味しい、美味しい、と言ってアインは食べてくれる。

 

 それを見ているだけで幸せだった。

 

 守ってあげないといけない。わたしはそう思った。

 

 この子がこれ以上傷つくことなく、こうして笑っていられるように。

 

 隣でずっと、わたしが守ってあげないとって。

 

 

 

 

 

 そう、たしかに思っていたのに……。

 

 

 

 

 

 ああ、そうだ。日々が楽しくて忘れていた。

 

 わたしには勇気がない。

 泣き虫で、弱虫で、たとえスキルを授けられても、それは変わらない。

 

 だけどいつかは。いつかはきっと。

 アインと一緒なら、いつか彼のように強くなれるかもしれない。

 

 そう、思えるようになっていたのに……。

 

 わたしが変わる日が来るよりも、過去が追い付いてくる方が早かった。

 

 突然やってきた六聖教会の人たち。また逃げないといけないのかと、わたしは絶望した。アインと別れるなんて、今では考えられなかったからだ。

 

 だけど、アインは言ってくれた。わたしと一緒に来てくれるって。

 

 わたしの過去も後悔も、気にするなと笑い飛ばそうとしてくれた。

 

 そうだ。そうありたい。

 

 わたしも、アインのようにたくましく。

 辛くても笑える人間になろうと、そう思ったのに……。

 

 突然現れたモンスター。いつかの悲劇を招いた、あのサイクロプス。

 

 その恐ろしい巨体を見上げたとき、わたしの身体はぴくりとも動かなくなった。

 

 剣を握っているのに。スキルは働いているのに。身体に力が入らなかった。

 

 そんな情けないわたしを庇って、アインは戦ってくれた。

 

 わたしよりも弱いのに、絶対にサイクロプスには敵わないのに。

 

 わたしとは違って、迷うことなく戦いを挑んだ。

 

 その剣はサイクロプスに歯が立たなかった。

 身体は傷つき、流れ出た血で灰色の髪が真っ赤に染まっている。

 

 それでも折れず、倒れず、アインは戦った。

 

 そしてあのサイクロプスの瞳に、一撃をお見舞いしてみせたのだ。

 

 すごかった。涙が出た。まるで物語に出てくる英雄のようだった。

 

 彼は灰被りのお姫様ではなく、綺麗で凛々しいわたしの王子様だった。

 

 けれど……

 

 サイクロプスはアインの一撃では倒れなかった。

 

 振るわれた凶腕に、アインの身体が宙を舞った。

 

 吹き飛ばされたアインの身体はボロボロで、足は変な方向を向いていて、剣を握っていた腕はちぎれ飛んでボトリと近くの地面に落ちた。

 

 死。

 

 死が、わたしから彼を奪おうとしていた。

 

 いいや、大好きな人を奪おうとしているのはわたし自身だ。弱くて情けないわたしが、アインをこの窮地に追い込んだ。

 

 サイクロプスが怒りの雄たけびをあげ、アインに向かって突進していく。

 

 いつかの光景が脳裏をよぎる。

 赤い視界。誰かの肉塊。なにもできない、弱い自分。

 

 助けなければならないと思った。怖くても、助けなければと。

 

 剣を持ち上げる。耳には誰かの嗤い声と、呪いのようなあの言葉。

 

 弱いわたしなんか誰も友達と思ってくれるわけがない――そんな絶望から、手からまた力が抜けそうになって。

 

「フィー、ネ……に、げ……」

 

 その声が聞こえた。

 

 この期に及んで、彼の望みはそれだけらしい。

 

 全身が震えた。自分への怒りでどうにかなりそうだった。

 アインを殺されることだけは、絶対に、なにがあっても許せなかった。

 

「我、死の弾丸を放つ者――魔弾装填ッ!!」

 

 気が付けばわたしは立ち上がり、進化した聖句を唱え、持っていた剣をより大きく振りかぶっていた。

 

 サイクロプスは間合いの中にいない。

 

 けれど問題はなかった。わたしのスキルは魔弾。この身は死の一槍を放つためだけにある。

 

 魔弾は決して標的を外さない。外さないように、わたしの身体を動かすのだ。

 

 スキルを手にして一か月、あの恥にまみれた日々の中、試しに使ってみたときとはなにもかも違う。全身全霊をもって、わたしはスキルを使って剣を投げた。

 

 その刹那――

 

『いいか? フィーネ。約束してくれ。そのスキルは使い方次第では他の誰かを危険に晒してしまう。だから絶対に、感情任せに使わないように。いいね?」

 

 ――いつかのお父さんとの約束が、脳裏をよぎった。

 

 けれど遅かった。

 

 剣は光となって、サイクロプスを背後から強襲する。憎たらしい瞳を持つ頭部ごと、その肉体を跡形もなく消し飛ばした。

 

 領主様がかつて言ったことは本当だったのだ。

 わたしのスキルを使えば、あの程度のモンスターなんて敵じゃない。

 

 ……そうだ。領主様は言っていた。他の誰かも言っていた。

 

 わたしの魔弾スキルこそが【輝ける槍】――勇者ハルルカンの用いた、一投をもって万軍を滅ぼし、山をも砕いてみせた殲滅の槍であるのだと。

 

 そしてわたしは怒りの中、それを全力で行使した。

 

 放たれた輝きはサイクロプスどころか、正面にあるすべてを消し飛ばしてみせた。

 

 地面も、森も、なにもかもを跡形もなく消し飛ばして見せたのだ。

 

 あとにはなにも残らなかった。

 

 抉れた地面だけが視界の先まであるばかりで。それ以外は本当に、なにも、なかったのだ。

 

「…………ぇ……?」

 

 目の前の光景を疑って。あるべきものを必死に探して。それでも見つからなくて。

 

「……………………ァィ、ン…………?」

 

 わたしはようやく理解した。

 フィーネ・アルトゥールという人間の底を理解したのだ。

 

 ――ああ、神様。あなたがスキルを授けたのは、最低の人間でした。

 

 いくじなしで、泣き虫で、なにもできない人間のクズ。

 関わった人を不幸にすることだけが得意な、そんな生きる価値もない生き物です。

 

 なぜならば。

 

 あれだけ大好きだった人を。

 

 わたしは、わたしの手で。

 

 殺し、て――……。

 

 




思ったより別視点が長くなったので、前後編に分けての投稿でした。
これできっと、曇らせタグさんに怒られないで済むよね。

なお、取って付けたように見えるかもしれない主人公の男の娘設定ですが、実はすごく重要な理由があったりします。

爆散したとき、むさくるしいおっさんと、ガワだけは可愛い女の子、どっちがより映えるのかというお話です。

今後とも対戦よろしくお願いいたします。

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