分身スキルの最強戦術って自爆特攻じゃね?   作:sasarax

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第52話  お金を稼ぐには

 セリカから許可をもらったことで、俺は冒険者としての活動を分身の俺(ツヴァイ)に任せ、商人のドライとして本格的に動き始めた。

 

 市場やいくつかの店舗を見て周り、販売されていない商品を確認し、自分の知識と照らし合わせて売れそうなものをピックアップする。あとは試行錯誤しながら、アパートにこもって商品を開発する日々を送る。

 

 そうこうしている間に二カ月が経過した。

 

 試作品は山となり、そのうちいくつかは販売に出しても問題ないクオリティに達していた。

 

 そこで商会へ売り込む前に、実績作りもかねて実際にお客さん相手に売ってみることにした。

 

 もちろん、店舗を借りるようなお金は持ち合わせていないので露店だ。青空の下、場所代だけを支払って、布の上に並べた商品を売るあれである。

 

 なにを売るのかは悩んだが、とりあえず最初なんだし分かりやすい消耗品がいいだろうと思い、俺は石鹸を売ることにした。

 

 オリーブ油と灰から作った固形石鹸で、匂いもかなりいい。

 

 一応、モンスターの脂から作った柔らかい石鹸もあるのだが、こちらは、うん、とても臭い。用途として使えなくはないのだが、とにかく臭いのでもう少し匂いを抑える工夫なしでは売れないだろう。

 

 この世界にも石鹸自体はあるようなので、これなら売れるはずだ。

 

「さあ、いらっしゃい! いらっしゃい! 品質確かな石鹸がお買い得ですよ!」

 

 俺は自信たっぷりに売り始めた。

 

 売れなかった。

 

 結構強気な価格設定をしていたことが災いしたのか、興味を示す人こそたくさんいたものの、実際に購入してくれた人は誰もいなかった。

 

 中世っぽいこの時代の衛生観念をなめてたよ。

 

 汚れているならお湯で洗い流せばいい、というのが綺麗好きの発想であり、多少の汚れならそのままにしておくのがこの世界の庶民クオリティだった。飲食店経営でもないのに、毎日お湯を浴びて綺麗にしていた俺やセリカは少数派だったらしい。

 

 衛生観念の向上が待たれる。

 

 残念ながら、庶民に石鹸の需要はほとんどないようだった。これは実際に売ってみないとわからなかったな。

 

 他の商品も一度、店頭に並べてみることにしよう。

 

 

 

 

 

 そのあとも品を変え場所を変え売ってみたのだが、まあ売れない売れない。

 

 偶に物好きが買っていってくれるが、これなら俺も冒険者としてモンスターを狩っていた方がよっぽど金になっただろう。

 

 う~ん。なぜだ?

 

 いいものを取り揃えていると思うんだけど。

 

 セリカを初め、この街に来てから仲良くなった人に聞いてみても、よくわからないと首を傾げられてしまう。

 

 試作品の矯正下着や石鹸などを購入してくれた、冒険者ギルドの受付嬢であるレミさんに聞いたみたところ、ようやくヒントになる言葉をもらえた。

 

 曰く、

 

「これらの商品は庶民向けではないと思いますよ。それこそ、貴族などの富裕層に向けて売るような品ではないかと」

 

 レミさんたちギルドの受付嬢は、平民がつける職業の中ではかなりの高給取りらしい。それでも俺の商品を買うのにはかなりの勇気がいると言われてしまった。

 

 よくよく考えてみれば、俺の頭にあるのは洗練された現代の品物ばかりだ。

 

 その原型となるものが生まれてから、何十年、下手したら百年以上も改良が加えられた品々なのだ。この世界の人から見たら、遥か未来の高品質になるだろう。だからこその強気なお値段だったのだが、高すぎたらしい。

 

 かといって、これ以上値段を下げたら利益が残らない。一個作るにもそれ相応の費用がかかっている。

 

 費用をおさえてデチューンするか。

 

 でもなぁ。せっかくそれなりの月日を重ねてここまでのクオリティに持って行ったのになぁ。

 

 ……ここは思い切って、購買層を富裕層に定めて売り込んでみるか。

 

 高級品なら、それを買ってくれる人に売ればいい。

 

 問題は俺に富裕層との伝手がまったくないことなのだが。

 

 う~ん。もう実績作りは諦めて、このままどこかの商会に持ち込んでみるか。けど俺みたいな子供を、まともに相手してくれるだろうか?

 

 こういうとき、天涯孤独の身の上なのが辛い。

 

 伝手を頼れる相手がいなければ、商売について手解きしてくれる相手もいないというのは、思っていたよりもかなりきつかった。

 

 目論見が甘かった――そう項垂れる俺に、頼れる相手はある日突然やってきた。

 

「やあ、少年。ご機嫌どうですか?」

 

 細い目をさらに細くする独特な笑顔で。

 遍歴商人のカインズさんは、俺のアパートを訪ねてきたのだった。

 

 

 

 

 

 くたびれた旅装に帽子をかぶったこの二十代前半の青年は、六聖教会に所属するエージェントだ。

 

 アルフィリアさんの指示で定期的に様子を見にやってくるので、なんだかんだ知り合いと呼べる間柄になっていた。

 

「今回はタリスマンをまだ壊していませんね?」

 

「そう何回も壊しませんよ。それよりもカインズさんこそ、アインからの手紙は預かってきてませんか?」

 

「いいえ。あちらも鍛錬に忙しそうで、今回は話す暇がなかったものですから」

 

「そうですか」

 

 向こうもがんばってるんだな。

 

「ていうか、カインズさんって実際、アインと俺の関係性をどう聞いてるんですか?」

 

「それ聞いちゃいます?」

 

 アルフィリアさんがどこまで俺の情報を伝えているのかは不明だが、あからさまに同じ顔の子供が別々の街で暮らしているのだ。

 

 しかも前に俺と分身の俺が一緒にいる状態でカインズさんに会ってしまっているので、彼からしたら同じ顔が三人いるという状況になる。誰だって不思議に思うのが当然だろう。

 

 いっそのこと分身スキルについて聞かされているのなら話は早いのだが、どうもそんな感じでもなさそうなのだ。

 

「アルフィリア様からは君のことについてはなにも聞いてません。ただ、言われたとおりに会いに来て、君の様子なりを確認して報告しているだけです」

 

「アインとの関係性は?」

 

「三つ子かなにかだとは思っていますよ。そうじゃないのかもしれませんが、それは私があずかり知るところではありませんので」

 

 変に巻き込まれないための処世術かなにかだろうか。

 あくまでもカインズさんは、上司から伝えられた情報のみで完結させているようだった。

 

「君があの方にとってどんな立場で、私のしていることがなんの意味を持っているかなんて、そんなことは知るつもりがありませんし知りたくもありません。私はただ、指示された仕事を全うするのみです」

 

「わかりました。これ以上は聞きません」

 

 お互いにこれ以上は突っ込まない。そういうことにしておいた方がよさそうだ。

 

「それはそれとして、カインズさんにちょっと商売について相談したいんですけど」

 

「商売? 君がですか?」

 

「はい。露天商を始めたんですけど」

 

 俺はカインズさんに露店でまったく商品が売れなかった話をする。その原因がどうやら、扱っている商品が高級すぎるという点も。

 

「購買層は最初に意識するべきところですよ。でなければ、不良在庫を抱えることになりますからね」

 

 遍歴商人を名乗っているのは伊達ではないらしい。カインズさんは色々とアドバイスしてくれる。

 

「ターゲットを富裕層に向けるというのはたしかにひとつの手ではありますがね。個人でやろうとすると、やはり伝手がないと厳しいですよ」

 

「ですよね。……ちなみに紹介してくれたりとかは?」

 

「ふむ。扱う商品を見せてもらっても?」

 

 カインズさんがそう言うので、俺は石鹸や矯正下着などを持ってくる。

 

 それを一個ずつ手に取って確認したあと、カインズさんはじゃっかん口の端を引きつらせながら俺を見た。

 

「君、とんでもないものを開発してますね。これは逆に売れなくて助かったというべきですよ」

 

「と言いますと?」

 

「変に売れてこの品が街の大商人の目に止まっていたら、間違いなく君は厳しい監視下に置かれていたでしょうね。下手したら拉致られて、アイデアを絞り取るために拷問されていたかも知れませんよ」

 

「そ、そんなにですか?」

 

「大金が絡んだ商人は怖いですからねぇ。領主に咎められない程度の固有武力は、当たり前に抱えているものですからね」

 

「ひぇ」

 

 警戒はしていたんだがそこまでか。特許も独占禁止の法律とかもないしな。

 

「やっぱり俺に商人は向いてないのかな」

 

「かも知れませんね。けど、商品開発者としては間違いなく才能がありますよ」

 

 才能というか前世の知識なのだが。

 

 それを知らないカインズさんは、今までにないくらいはしゃいだ様子で俺の手を取った。

 

「君との関係性を円滑にするためにも、適当な商会をこちらで紹介してあげようかと思ってましたが、こんなものを見せられては仕方がありません。私のこれまで培ったノウハウを使って、君の商売が軌道に乗るまで手伝って差し上げますよ」

 

「えっ? そこまでしてくれるんですか?」

 

「相応の報酬はもらいますがね。それでもなお、これらを使えば稼げますよ」

 

 やはりカインズさんの眼から見ても、現代の商品は魅力的に映るらしい。

 

 さて、どうしたものか。

 

 カインズさんが手伝ってくれるなら助かるが、この人も教会の人間ではある。しかもアルフィリアさんの直属の部下だ。

 

 変に頼りきってしまうのはまずい気がするが……。

 

 いや、正直いって俺の目論見は甘すぎた。俺一人で商売を始めても上手くいきそうにない。最初のうちだけでも、カインズさんに頼るべきだろう。

 

「わかりました。お願いします」

 

「ええ、任せて下さい。早速ですが、展望などはありますか?」

 

「俺としては、商品のアイデア自体を売るか、どこかに委託しようと考えてるんですけど」

 

「ありだと思いますが、自分の商会は立ち上げないのですか?」

 

「人手が足りません。あと商品の現物もたくさんあるわけじゃないので」

 

「たしかに、それだと一から全部始めることになりますね。二、三年準備に時間をかけてもいいのでしたら、そちらの方が最終的には儲かると思いますが、さすがに私もそこまではお手伝いできないですね」

 

「ですよね」

 

 将来的には視野にいれつつも、やはり最初は当初の予定どおり商会に売り込む形がいいだろう。

 

「やっぱりアイデア自体を売ったり、委託したりで行こうと思います」

 

「わかりました。であれば、最初にするべきは実績作りですね。いくら商品がよくても、実績がなければ基本的には取り合ってもらえません。もしくは、他の誰かに商品と名前を奪われて終わりです」

 

 世知辛い世の中のようだ。しかし言っていることはごもっともである。

 

「じゃあ、やっぱり少しでも露店で売っていくしかないのか。でもそれだと最初にカインズさんが言っていたとおり、身の危険もあるし」

 

「そうですね。なので、考え方を変えましょう」

 

「考え方?」

 

「ええ。少年は」

 

「あ、ドライって呼んでください。商人として使ってる名前がそれなんで」

 

「ではドライさんと。ドライさんは、最初から利益を出すことを考えていますね?」

 

「それはもちろん。ダメなんですか?」

 

「商売の目指すべきところですから、間違いではりません。ただ、物事には順序というものがあります。利益も欲しい。実績も欲しい。初心者が最初からそう欲張っては上手くいかないものです。そこで、まずは実績作りだけを優先しましょう」

 

「利益を捨てて名声だけを得る、みたいなことですか?」

 

「そのとおりです。そういう考え方でいけば、なにも商品を持ち込む先は商会である必要はありません」

 

「具体的にはどちらに?」

 

「貴族に話を持ち掛けましょう」

 

「貴族!」

 

 封建制の王国においては、貴族は当然存在している。

 

 上から公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵と爵位が分かれており、それぞれが王宮に努めたり、領地を運営していたりする。平民からすれば雲の上の存在であり、住むところすら城壁内に城壁をさらに作り、貴族街と呼んで分かれていたりする。

 

 幸か不幸か、俺のこれまでの人生で貴族と関わり合いになることはなかった。あってコルニ村にいたとき、領主様の寄こした徴税官がやってきたのを遠目から見たくらいである。

 

「貴族に関わって大丈夫なんですか? 商人よりもよっぽど怖いイメージがあるんですけど」

 

「大丈夫ですよ。きちんと根回しをして、礼節をもって接すれば無礼討ちなんて滅多にされません」

 

「偶にはあるんですね」

 

「そこはまあ、仕方がありません。どこの世界にも予想外のことをしでかす馬鹿はいますから」

 

 実感のこもった言葉であった。

 

「少なくとも、この街の領主であるゼルクト伯爵は話の分かる御仁と聞いています」

 

「領主様に話を持ち掛けるんですか?」

 

「ええ。他の商会からの横やりを防ぐためにも、話を通すなら街でも上位の貴族の方が望ましい。領主様の後ろ盾を得られれば、先々の商売でも有利に働きます。狙ってみてもいいでしょう」

 

 この街と一帯を治めているのは、グランマリア・フォン・ゼルクト伯爵だ。

 

 齢三十に満たない若き女伯爵であり、剣と槍をこよやく愛する武人として知られている。戦士と冒険者の街であるゼルクトにふさわしい人物であると、街の人や冒険者に人気の領主様だ。

 

「でも会おうと思って会えるもんですか?」

 

「普通なら難しいですが、少し時間さえいただければ、会うことくらいなら可能です」

 

 さらりとカインズさんは言ってのける。

 もしかしてこの人も、結構すごい人だったりするんだろうか?

 

「それにゼルクト伯爵は先のモンスタースタンピードの対応に、かなりのお金を注ぎ込んでいますからね。自分の領地から新たにお金になりそうな産物が生まれるなら、お墨付きをくれる可能性は十分ありますよ」

 

「なるほど」

 

 つまりは特産物になりそうな商品を領主様に献上し、後ろ盾になってもらおうって魂胆なんだな。

 

 その事実をもって実績とする。

 

 献上したその商品では利益を出せないが、次の商品のアイデアを売る際にはかなり有利に働きそうなやり方だ。

 

 となると、ゼルクトの街だけで作れそうなものを献上しないとだよな。石鹸とかは店で売ってるものを組み合わせて作ってるから、特産品としては弱いだろう。

 

「この街にふさわしい献上品か……ゼルクトの街といえばモンスターの素材と木材ですよね。これなんてどうです?」

 

 俺はお手製の盤とコインの形をした駒を取り出す。

 一個一個、同じ大きさになるように必死になって削った一品だ。

 

「盤上遊戯ですか? この白と黒に塗られた駒でどう遊ぶんですか?」

 

「これはこんな感じで、挟んでひっくり返して遊ぶやつで」

 

「ふむふむ。これも売れそうですね。木材があれば作れるところがいいです。ルールも簡単ですし、庶民相手にも行けるかも。ただ、献上品としてはいささか弱いでしょう。製作者としての名声も手放すならかなり良さそうではありますけど、それでは本末転倒ですからね」

 

「ダメですか」

 

「結局は娯楽品ですからね。話を持っていくなら、できれば普段使うような日用品であるのが望ましいです」

 

「う~ん」

 

 いざそう言われるとなかなか思いつかないものだ。

 

 そのあともカインズさんは俺が開発した商品を手にとっては、一個一個真剣な顔で品評してくれた。

 

「ん?」

 

 その視線がふと、発明品ではない方向へ向いた。

 

「あのたらいに入っているものはなんですか?」

 

「たらい?」

 

 たらいと言えば、沸かしたお湯を入れて身体を拭くのに使っているやつだが。

 

 入っているのは、まだ洗濯していない服と洗濯板くらいだ。

 

「服と洗濯板ですけど」

 

「洗濯板?」

 

「ええ。あれ? 知りませんか? こんな感じで使うんですけど」

 

 実際に洗濯板を実践してみる。やっぱり石鹸を使わないと、洗濯板だけじゃなかなか汚れが落ちないよなぁ。

 

「それですよ!」

 

「わっ」

 

 いきなり大声をあげられ、俺は思わず服を落としそうになる。

 

 カインズさんは細い目をかっぴらいて、興奮もあらわに詰め寄ってくる。

 

「その洗濯板が一番やばいじゃないですか! なんで最初に出さないんですか!」

 

「え? でも、こんな簡単な作りのもの、売りだしたところですぐ真似されて終わりだと思って」

 

「だからこそですよ。たしかに利益を出そうと思えば、計画的に売り出す必要がありますから、個人では扱いにくい。けれど、たしかな販路を最初から持っている領主様からすれば、準備さえ整えればわかりやすく利益が出そうな商品になります」

 

 頭の中で色々と考えているのか、カインズさんは手をワキワキと動かす。

 

「木材だけで作れる日用品! 作るのも簡単! そして一家に一個売れるであろう需要の高さ! どれをとっても献上品として最高じゃあないですか!」

 

「そ、そこまで興奮するものかなぁ」

 

 商売なんて考えてなかった頃の俺が、洗濯の効率を上げるために適当に作ったものなんだけど。

 

「これも考え方ですよ。よくよく想像してみてください。この洗濯板を売り出して一年後には、きっとどの家庭にも当たり前に洗濯板が常備されることになるでしょう」

 

 カインズさんに言われるままに、俺も想像してみる。

 

 手揉みや足踏みでやっている洗濯よりも、たしかに洗濯板の方が汚れは落ちる。そんなに値段も高くならないだろうから、主婦はこぞって買いに走るだろう。

 

「その洗濯板を最初に作って世に広めようとしたのは誰か。そう、ドライさんです。次に君が商品を作って商会に持ち込んだとき、こう言うのです。洗濯板をこの世に生み出したドライである、と。きっと、その商会でも上の人間が慌てて出てきますよ。もしかしたら、会長自ら顔を見せに来るかもしれませんね」

 

 そう言われてみると、不思議とすごい発明のような気がしてきた。

 

 なるほど。実績作り。名前を売るというのは、こういうことか。

 

「いいですよ! 面白くなってきました! これは私も本気って奴を見せるしかないようですね!」

 

「燃えてますね」

 

「もちろんですよ! こんな商品をどんな形であれ取り扱っていいと言われて、燃えない商人はいません!」

 

「なんだかんだでカインズさん、商売が好きなんですね」

 

「そりゃそうですよ。でなければ、遍歴商人なんて名乗らずに吟遊詩人でも適当にやっています」

 

 頼もしいかぎりだ。

 

「すぐに私の方でも根回しを始めますが、できれば早めにゼルクト伯爵に面会したいですね。ドライさん、実は伝手があったりしませんか?」

 

「そんなのあるわけ」

 

 いや。

 

 俺の頭の中に、とあるメスガキ先輩の顔が思い浮かぶ。

 

「伯爵の騎士に知り合いがいます」

 

「……なんか私が手伝わなくても、君ひとりでやれそうな気がしてきましたよ」

 

 そんなことないです。手伝ってください。

 

「ま、今更仲間外れにされても、無理やりご一緒させていただきますがね。ではドライさん、そちらの方に伯爵を紹介してもらえないか確認していただいても?」

 

「あー。いや、う~ん」

 

「なにか不都合でもあるんですか?」

 

「不都合というか、代わりになにを要求されるのかが怖いというか」

 

 メスガキ先輩ことシスティー・レビュテッド。

 

 彼女のそこはかとなくむかつく言動を思い出し、俺は悩まし気に溜息を吐くのだった。

 

 

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