分身スキルの最強戦術って自爆特攻じゃね?   作:sasarax

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第5話  森を探索してみよう

 森の奥に行けば火を使ってもばれないんじゃね?

 

 食事事情がなぜか少し改善されたとはいえ、食べられる物はあればあるほどいい。せっかくの森の恵みを諦める理由はなかった。

 

 とはいえ、火。火だ。

 

 火を使えないことには、森でとれた物は食べられそうにない。

 

 村の近くで火をおこせば村人たちにばれかねない。なら森の奥の方で燃やせばいいと考えた俺は、森の奥を探索することを決めた。

 

 もちろん、行くのは俺じゃない。

 

「分身の俺。今日は俺が仕事をするから、森の探検の方をよろしくな」

 

「森のさらに奥か。危なくないか? モンスターも出るんだろ?」

 

「それを探るのも含めての探検だから」

 

 分身が軽くにらみつけてくる。でも文句は言わない。わかってるからね。

 

 というわけで久しぶりの畑仕事だ。

 

 飯のためにがんばるぞー。

 

 

 

 

 

 畑仕事に行く本体を見送って、釈然としないまま森の奥へ踏み入っていく。

 

 慎重なのはいいことだ。

 

 けれど、危ないとわかっている仕事を任せられる方の身にもなってほしい。

 

 本体からすれば、分身を解除したときに自分の記憶と経験になるから問題ないんだろうけど、実際に行動を起こしている最中は普通に怖いんだからな。

 

 いやそれは本体もわかってるだろうけど。

 

 あと記憶しか引き継げない関係上、本体は身体を鍛える必要性もある。

 

 冒険者をやろうというのだ。体力はどれだけあっても困らない。

 

 畑仕事は重労働だが、その分下手に筋トレするよりもはるかに体力がつく。

 超回復などを考慮すれば、二日に一回、いや、三日に一回くらいは本体が畑仕事に出るべきだ。

 

 ……総合的に考えて、やっぱり森の奥へ行くのは分身の仕事だな。

 

 よし、切り替えよう。

 

 見方を変えれば、これもある種の冒険だ。わくわくしないこともない。

 

 拾った棒で草をかき分けながら、森の奥へ奥へと進んでいく。

 

 しかし薄暗いな。

 

 手入れされてない森は、伸びた木々の枝が太陽の光を覆い隠し、昼とは思えない暗さだ。

 

 空気もじめっとしていて、時折どこからか聞こえてくる獣の声がとても怖い。

 

 ……獣か? モンスターじゃないだろうな?

 

 周囲を注意深く警戒しながら、さらに進んでいく。

 

 木の棒で時折目印をつけているので、まっすぐ進めているとは思うが、いよいよ帰り道がわからなくなるくらいのところまで踏み入ってしまった。

 

 どうするべきか。

 

 これ以上進むと、本格的に道に迷うだろう。

 

 夕刻になれば、村の方角で炊事の煙があがるから、それを目印にして帰ればいいと思っていたが、この木々の茂り具合では見えそうもない。

 

 そういう意味では、このあたりまでくれば火を起こしても問題ないだろう。

 

 当初の目的は果たされたわけだが、実際にここで火を起こすなると、獣をおびき寄せそうで怖い。

 

 火を怖がるのは、火で怖い目にあった獣だけ、というのは前世でテレビかなにかで見た記憶がある。そうじゃない獣は、火を恐れず逆に興味をもって近づいてくるとかなんとか。

 

 いるかどうかはわからないが、野犬や猪などの獣ですら遭遇したら死を覚悟する必要がある。それがモンスターだったらなおさらだ。

 

 森の奥で火を使う計画はあきらめるべきかな。

 いや、俺のことだから、一度実際に試してみてから考えるか。

 

 ……この異世界に慣れつつあるよな。

 

 現代に比べて、圧倒的に死が身近にある世界。

 

 ポンポンと人が死んでいくから、他人の死には慣れつつあったわけだけど、死んでもいい自分というものを手に入れた結果、より命というものの扱いが軽くなってしまっている。

 

 最悪、死んでもいい。

 

 それが分身状態にある俺の根底にある考え方だ。ひいては、俺という人間の考え方になっている。

 

 よくないかな。よくないかも。

 

 でもまあ、慎重になりすぎても、未来をつかめるとは思わない。

 

 行けるところまで行くか。

 

 そう考え、さらに森を進んでいく。

 

 しばらくすると、今までとは違う光景が目に飛び込んできた。

 

 あれだけうっそうと茂っていた木々が切り拓かれ、ぽっかりと空いた空間に出る。四方を木々に囲まれつつも、ちょうど俺の村のような、けれどあの村ほどは広くない空間である。

 

 そこには一軒の家があった。

 

 家族が一組暮らせそうなくらいのサイズの、木でできた家。

 玄関前の土は踏み固められ、家の脇には薪が積み上げられている。敷地内には小さくも、しっかりと手入れされた畑もあった。

 

 現在進行形で、人が暮らしている家だ。間違いない。

 

 その家の扉が、ぎぃっと音を立てて開いた。

 

 まずい。

 

 慌てて近くの木に隠れる。

 

 同時に、家から女の子が出てきた。

 

 俺よりもいくらか高い背丈。ツインテールに結ばれた亜麻色の髪。手には、木で編まれた小さなかごを抱えている。

 

 ふんふんふ~ん、という楽し気な鼻歌を奏でながら、繕いのあとが残るワンピースのすそを翻し、少女は俺が潜んでいるのとは逆の方角の森に踏み入っていく。

 

 その姿が完全に見えなくなったところで、ふぅ、と知らず止めていた息を吐く。

 

 危なかった。

 

 まさか森の奥に人が住んでいるとは。

 

 よくよく女の子が向かった方を確認してみると、切り拓かれた道らしきものが見えた。それがずっと奥まで続いている。

 

 単純に考えて、広い森のど真ん中に家を建てる人間はいないだろう。

 おそらくは歩いているうちに、森の反対側の出口近くまで来てしまったのだ。

 

 つまりこの家は、ちょうど森を挟んで村の反対側あたりに建てられているということになる。

 

 建物はひとつだけで、周囲を見回しても他に切り拓かれた場所はない。

 

 どうしてこんなところに住んでるんだ?

 それとも、あの道の向こうには開けた場所があり、俺の村と同じような形で村があるのだろうか?

 

 わからない。知らない。聞いたこともない。

 

 ……ここは帰った方がよさそうだな。

 

 女の子はどこかへ行ったとはいえ、あの家にまだ誰かいるかもしれない。

 

 いろいろと気になることはできたが、これ以上は危険だろう。今日の探索はこれで終了だ。

 

 こっそりとその場をあとにする。

 

 残る問題があるとすれば……

 

 村まで迷わず帰れるかどうかだな。

 

 

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