赤龍帝のIS学園生活   作:hinozi

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三人称視点です。

ちょっと治まり悪くなったんで二つに別けます。


龍を見る目

『更識楯無』&『織斑千冬』

 

 

「恐ろしいまでの、成長スピードですね」

 

「何、あいつは少々不安定なところもあるが、蛮勇を押し通せるだけの力がある。心配ならお前が面倒を見ろ」

 

「私は多方面で忙しいのでご遠慮します」

 

 暗い部屋の中に、二人の女性が話をしていた。IS学園の中でも特別厳重な地下施設。そこに二人の女性。がいわずとしれた『ブリュンヒルデ』、織斑千冬。そして『学園最強』の名を持つIS学園生徒会長、更識楯無。

 青く薄い、空中に投影されたディスプレイのみが唯一の光源となって二人の間を照らしていた。

 

「何よりこれからもっと忙しくなりそうですし」

 

「……それで、あいつの身元は分かったか?」

 

「いえ、更識だけでは掠りもしなかったので他の者たちにも依頼してみたのですが、一部当たりましたが、どれもハズレでした」

 

「そちらも当てが外れた、のか」

 

「日本政府は彼を、名御叢真輝を『亡国企業(ファントム・タスク)』の手のものと考えているようです」

 

「それはないな」

 

 更識楯無にはある懸念があった。『名御叢真輝』の経歴そのものが経歴書と合致しないということだ。偽造、とも考えられたが、学校も同性同名のもので通っていたし、実際にその学校は存在していた。小中高共に経歴上は。

 だが実際には『名御叢真輝』は在校していなかったうえに出生届すらない。挙句の果てには戸籍すら見つかっていなかった。一部当たりとは同名の存在。だが、同性か同名もしくは両方の人物は確りとした経歴と過去の持ち主ばかりでハズレのようなもの。

 

 存在はしている。そのはずなのに完全に過去を消し、一方で完璧とも呼べる経歴だけを残してIS学園に入学している。織斑一夏の発見に伴って全国のIS適性検査にもちゃんと参加している。これも経歴上ではあるが、楯無の目の前でISを起動してみせた。そしてIS学園に潜り込まれた。

 種のわからないマジックの手際。もたらされる報告に驚愕の念は抑えられなかった。対暗部の看板を掲げている『更識』のトップとしての面子はもはや無いに等しい。

『亡国』の出身の『亡者』と取られてもけしておかしくなかった。

 

 だが織斑千冬は楯無の懸念を断じた。

 

「あいつは、あまりにも後ろ暗いところがない。『亡国企業』(ファントム・タスク)の陰があるならば探りの一つでも入れるだろう」

 

「それはどうでしょう。確かにISや代表候補生に対しては仲良くしているだけです。ですが今は友好関係を作るところで留めておいて、後で裏切る。なんてこともあり得ますよ」

 

「その時はその時だ。我々の目が節穴であっただけだ」

 

「……私まで名御叢君を認めるような物言いですね」

 

 織斑千冬の言葉に引っ掛かり、つい感情を込めた返答してしまう。楯無は言い切ると共に自身を攻める。織斑千冬の言葉を待つ時間が長く感じつつも言葉に表しきれない戸惑いを抱く。

 自分らしくない。そう思いつつ楯無は言い知れぬ不安と期待を募らせていた。これまでの人生の中で、真輝の存在ほど奇想天外な出来事はなかった。だが、一人の実力者として認めるには今はまだ未熟であった。

 

「名御叢と戦ったのはお前だ。ならあいつの底知れなさはよく分かるだろう」

 

「名御叢君が戦いながら強くなっていくのはよく分かります。今度戦ったら色々と手札を切らないと勝てないでしょう」

 

「認めているじゃないか」

 

 楯無はそう言い放つ織斑千冬の口もとが随分と緩んでいることを確認する。これは何を言っても無駄であることは明白であった。

 

「はい、認めますよ。名御叢君は強くなりますよ」

 

「クックック、随分早く素直になるんだな。もっと足掻くかと思ったが」

 

「それで、真輝君をあんなに信用する理由はなんでですか」

 

 楯無は内心ゲンナリしつつもようやく話が進むと安堵もする。

 

 千冬は更識楯無の様子を観察し、真輝への呼び方が変わったことから本当に認めたようだ。そう思って話を始める。

 これからする話は信頼できる相手でなければ、この話はできない。千冬にとって裏の裏まで任せられる相手は極めて少ない。更識楯無は『名御叢真輝』の一件で自信と『更識』の実力を下方修正しているが、真輝の異常性を認知している織斑千冬は例外として話を進める。

 

「名御叢のあの籠手。お前も知っているな」

 

「はい、真輝君は『赤龍帝の籠手』(ブーステッド・ギア)と呼んでいましたね」

 

「そうだ。だが名御叢があれを持っているのはおかしい」

 

「……というと?」

 

 織斑千冬が口にした言葉へ浮かび上がった疑問を顔には出さず、楯無は話の続きを促す。

 

「あれと同じ籠手を、私は知っている。そして一回だけ使ったこともある」

 

「もしかして、『暮桜』が」

 

「そうだ。とてもではないが、強力過ぎて使いこなすのは至難のはず、だった」

 

 千冬は第二回モンド・グロッソで織斑一夏を助け出すために一度だけ使ったことがある。能力を倍にした『暮桜』の力は凄まじく、出力の調整に酷く手間取った思い出があった。だが、そのお陰で織斑一夏を救えたのだから苦労の甲斐があったと今でも感じている。

 

 その話を聞かされた楯無は酷く驚愕した。織斑千冬でさえ一回の強化で手こずった。だが名御叢真輝はさらに数回も強化をこなしていた。その事実は楯無の心を酷く揺さぶった。

 

 名御叢真輝がこの話を聞けばこう思っただろう。それ『『赤龍帝の籠手』(ブーステッド・ギア)じゃなくて、『龍の手』(トワイライト・クリティカル)です』と。

 後、「千冬さんの能力が倍になったら、そりゃそうなりますよ」とも。

 

「……それで、真輝君が『赤龍帝の籠手』(ブーステッド・ギア)を使えることが一体どう繋がるんですか?」

 

『赤龍帝の籠手』(ブーステッド・ギア)には力の元となる精神のようなモノがいる。そのモノが発動を拒むことがある」

 

「……なるほど」

 

 楯無は織斑千冬から語られた内容の理解を後回しにすることに決めた。この時点で理解の範疇を超えていたため、後で理解しようと記憶することだけに留めた。そうしなければ、脳がパンクするだろうと考えていた。

 そんなこと更識楯無の心情はお構いなく、今まで話したことがない織斑千冬の心情を掻い摘むように語る。

 

「当時はあの力に対して、恐れのようなものを抱いていた。あそこまで力を出すことが出来る以上、さらに引き出すことだって出来ただろう。それが何より恐ろしかった」

 

「以外、ですね。もっと力に貪欲な方だと思っていたんですが」

 

「あながち間違ってもいないさ。一夏がいたからな」

 

 そう呟くように溢した言葉と共に織斑千冬は遠い目をした。楯無は思わず納得した。姉弟がたった二人で生活してきたうえで、力が必要だった。それ故に篠ノ之束の生み出したISという存在を受け入れた。そしてISを始めて動かす女性として表舞台に立った。 白騎士事件によって篠ノ之束は良くも悪くも名声を得た。織斑千冬は日々の糧の種を得た。二十歳も迎えていない女性が金銭を得る手段を選り好みできる訳もない。

 

「最近はようやく落ち着いたと思ったんだが、こんなことになってな」

 

「一夏君のことですね」

 

 確かに女性にしか動かせないと断定されてきたISを動かせる男性として突然現れたのだ。全世界がそのニュースに驚いたものだが、一番驚いたのは目の前に世界最強(ブリュンヒルデ)に違いないだろう。

 

「あいつだけなら、まだ手に余ったものの」

 

「真輝君も不明だらけですよねー」

 

「きっと神のせいだ。一度出会ったら殴ってやらねば気が済まない。そもそも国籍と戸籍がないってどういうことだ。そもそも山田先生も……」

 

「そうですねー」

 

 突如始まった愚痴を右から左に流していく。すでにこの時点の前から更識楯無の頭は機能停止していた。心の片隅で頭脳がもう働いていないことに感謝しつつ、この場にいる不幸を呪うのであった。

 

 

 

 

『シャルロット・デュノア』&『ラウラ・ボーデビッヒ』

 

…………覚えること多すぎじゃああああああ!!!

 

 職員寮の一室にて、一人の青年の悲鳴が響く。それを聞いていた二人の少女は、お喋りを中断。悲鳴を上げた青年のことを思い、苦笑する。

 心当たりがある、というより原因を作った銀髪の少女ラウラ・ボーデビッヒは愚痴を吐く。

 

「フン、真輝め。あの程度を覚えるのにてこずるとは」

 

「アハハ、でも一夏が言うには広辞苑レベルらしいからね」

 

「日本語の辞書?だったか。我々とて日本語を覚え、更にあの辞典を覚えたのだ。日本語を最初から覚えている分、マシではないか」

 

「僕は小さいころから教えられてたから大分いいけどね」

 

「私はほとんど丸暗記だ。日本語からドイツ語に翻訳された物をそのまま覚えた。教官に教えていただいた方法だ。イチヤヅケだったか? それだ」

 

 ラウラ・ボーデビッヒの話を聞きつつふと昔のことに意識が向かう。ISの練習の時だけが、父との交流の時間だった。どんな思いで教えてたんだろう。シャルロット・デュノアは、ふと過去を振り返る。

 

「シャルロット?」

 

「あっ、何でもないよ。ラウラ」

 

 突如ボーとするシャルロット・デュノアに対して心配の言葉をかけるラウラ。すぐ返答するシャルロット・デュノアに対してラウラは真輝への愚痴を再び開始する。

 シャルロットはそんなラウラ・ボーデビッヒを見て、兄に甘える妹のようなに感じられた。ラウラがこの職員寮にやってきて少し暮らしが変わった。無論不満よりも満足した気持ちがある。

 

「(ラウラが来てからは真輝とは別々の部屋になったけれど、毎朝起こしに真輝の部屋に行くのに通い妻みたいで楽しみだったりするしね)」

 

「……それにすぐにムキになるところは矯正しなければ。おい、聞いているのかシャルロット」

 

「うん、聞いてるよ。ラウラ」

 

 ラウラはそういって明らかに聞き流しているようなシャルロット・デュノアに対して何か言いたくなるが、ニコニコ顔で見られると何とも言えない気持ちなる。その気持ちに対して、明確な言葉を持ち合わせてはいなかった。

 

 だが真輝に対しては言っても言い足りない気持ちになる。この気持ちはラウラの所属する部隊『シュヴァルツェア・ハーゼ』の副官、クラリッサ・ハルフォーフに聞いたところ『それは隊長が気づくべき心です』とはぐらかされてしまう。

 ラウラは最近よく戸惑うことが良くある。

例えば、格闘技のさいに顔、胸、腹、足に真輝の手が触れると顔が熱くなること。

そして物凄く恥ずかしくなって絞め落としたり、手加減無しで殴ってしまうこと。

真輝の笑顔を見ると頭が真っ白になって数秒間動けなくなってしまうこと。

真輝と話をしていると次から次へと知りたいことが出てくること。

真輝が他の女と話していると心が少し冷えてしまうこと。

真輝の強くなっていく度に心拍が早くなること。

真輝のことを考える時間が増えたこと。

 

 名御叢真輝から発せられる熱を逃がそうと愚痴を加速させていく。

 

「……特にあの赤い手を出した後は酷い! 強化?されていく度に強くなる上にかっこよくなる!! いったいどんな原理だ!」

 

「あっ、それは僕もあるよ。腕の力が強くなっていく度に二倍ずつ強化していくんだよね。あの力は本当に理不尽だよ! あの力使われた後で睨まれると顔熱くなるんだから!! 覚ます間にどれだけからかわれたか!」

 

「シャルロットも一緒か! 私もどれだけ恥ずかしい思いさせられたか!」

 

「そもそもあの腕が悪いんだよ! 無くなればどれだけ安心した生活が送れるか! あの状態で寝られると力強くて振りほどけないんだよ!! 一昨日なんて起こそうとしたらベッドに引きずりこまれて抱き締められたんだから!」

 

「何だと!? そんないい思いをしたのかシャルロット! わ、私だってこの間の特訓でむ、胸に触られたんだからな!!」

 

「そそそそ、そんなことまでしちゃったの! だ、ダメだよ! まだ恋人ですらないのに!」

 

 売り言葉に買い言葉。思わず言い返してしまい、完全にパニックに陥っている二人。二人の自虐を兼ねた羞恥責めは、名御叢真輝とのネタを振り絞るまで続けられた。

 

 

 

 

 

 




真輝「1×2」

千冬「1000(推測)×2」

これだけ差があれば違いますわ。
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