赤龍帝のIS学園生活   作:hinozi

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普通とは違う学園生活

 IS学園に来てから数日が過ぎ、転入生が来るという噂話が広がっていた。俺は白靄がこの世界に放り込んだ結果、戸籍や履歴書などはあるけどどうやってISコアを動かしたか、などが分かってない。という白靄のフォローも微妙な状況だ。あいつ絶対会社とかで平で定年終えるな。多分。

 まあ、結果ISを動かせるという後付の事実があるから心配ないと思う。不安はつきまとうが俺の噂は煙が出る前に一旦鎮火したわけで、今回の噂話のタネではない。今さらながらこの世界での俺の身元は一体どうなってるんだか。俺の身元は前世の通りか、それともないのか。

 備え付けの机に肘を立てて拳に顎を乗せた状態で考えつつ前を見る。男が見える。俺の席が真後ろの列にあって、一夏が教壇の間にいるから男が見えるというわけではない。

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。この国では不慣れなことも多いかと思いますが、みなさんよろしくお願いします」

 

 一切の淀みなく自己紹介をしたシャルル・デュノア。まあ彼ではなく、彼女だということは、既に原作を知ってる者ならば一発で誰でも看破できる。

 さて、今のうちに耳栓をしておくか。原作二巻の始まりともいえるこの二人の転入までの数日の間に安眠用の耳栓を買っておいたのだ。購買のおばさ、お姉さま方に頼んでわざわざ仕入れてもらったのだ。

 費用は嬉しいことに学園持ち。俺の財布の中に大した金が入ってなかったこともある。だけど税金を悪いことに使いたくなる政治家の気持ちが何となく理解できた気がした。政治家なんて面倒なモンになる気はないがな。

 

「お、男……?」

 

「はい。こちらに僕と同じ境遇の方がいると聞いて本国より転入を」

 

「きゃ」

 

「?」

 

『きゃぁぁああああああああ!!!』

 

 一夏は手で耳を押えて耐えたようだ。こっちは耳栓つけてやっとだってのに。こんな爆弾みたいな殺人ボイスでも考え事ができるなんて。流石主人公。普通の人間とは体の造りから異なるようだ。この耳栓が無かったら俺は悶絶していたところだろう。

 まあ、この身体は妙に五感が鋭いから妙に気を使うんだよな。

 

「男子! 三人目の男子!」

 

「しかもまたうちのクラス!?」

 

「美形! 守ってあげたくなる系の!!」

 

「地球に生まれてよかった~~~!」

 

 俺の時とは違う高評価な歓声に気分が下がる。まっ、まあ、シャルルの本来の性別は女性。その事実が俺の気分を持ち直してくれる。期間限定ではあるが、未来を先読みできるってのもいいもんだな。

 その男装女子のお隣に居られる銀髪が素敵なラウラ・ボーデビッヒ。眼帯と鋭い目つきが合わさってクールな雰囲気を醸し出している。両手を後ろ腰に合わせて丁度休めの体勢になっている。何とも年季の入った姿だ。ぼんやりとそのままラウラと織斑先生の会話が終わるのを待つ。

 

「ラウラ・ボーデビヴィッヒだ」

 

「…………」

 

さっきまでのシャルルの挨拶で湧いていたクラス中がそれだけの言葉で冷え切る。まあ、それを知っている俺はラウラの言葉を聞き流す。そして原作と同じくラウラが一夏を叩き、怒る一夏を無視して傍から聞けば何のことかわからない一言浴びせる。一気にクラスの雰囲気が悪くなるが、織斑先生の仲裁で朝のホームルームが終わる。

 ラウラの詳しい出自や事情を知る俺からしてみれば、一夏への八つ当たりも分からなくもない。初めて会った一夏にすればラウラの仕打ちは理不尽極まりないだろうが一夏のことだから伝えなくてもすぐに許すだろう。

 

「はー、それではHRを終わる。各々は着替えて第二グラウンドに集合。今日は二組と合同でIS模擬戦闘を行う。解散!」

 

 固まった空気を織斑先生が壊して指示を出す。クラスメイト全員、織斑先生の声を聴いた瞬間動き出す。詰まる話、一斉に着替えを始める。男がまだいるとか関係なしに始める。残りたい気持ちが出てくるが、そんなことができるほど俺は勇者じゃない。

 

「おい織斑と名御叢。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろ」

 

「一夏! 任せた!」

 

 俺の席は一番後ろの窓側。前に行くより先に着替えシーンを目撃する。今まで音沙汰にはなってないが、何度か移動にもたついて下着をチラッと見たりしてる。

 当初は滅茶苦茶焦ったな。だけどようは見なければいいだけの話だ。

 

「君が織斑君? 初めまして。僕は」

 

「任された! 自己紹介は後だ。まずは移動が先だ」

 

 二人が話しあってる間に教室を出る。IS学園の女子は危機感というか恥じらいってのが薄い。男なんて親以外知らないってレベルの生粋のお嬢様たちばかりだ。仕方ないんだけどやっぱり不用心だし、何より性欲が。

 教室の後ろ扉から出て3秒もしない内に一夏たちも出て来る。それを確認してすぐさま行動を開始する。

 女子に取り囲まれたが最後、ひたすら質問攻めをされる。周りの女子は教室が比較的近いからまだいいが、授業開始のチャイムが鳴る頃にアリーナに着くのは笑えない。そして織斑先生にしばかれる。

そう一夏が遠い目をしながら語ってくれた日を俺は今でも鮮明に覚えている。こうならないように戦術まで練ってきたんだから。とはいっても、やることはとても単純。

 

「真輝! 倍化をかけてくれ!」

 

「分かった!」

 

『Transfer! Transfer! Explosion!』

 

 一夏とシャルロットに譲渡。俺には強化。二人には三回分の身体能力の倍化をしておいた。身体能力は身体の動きを速め、筋力を高めてくれる。倍化なしと比べると100m走の9秒台が1秒台ぐらいになる。月並みだけど本当に凄いと思ったよ。

 『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の倍化能力は。神器の中でも特別と言われる『神滅具』なだけはある。ただ今の俺だと恐らく百回辺りで限度が来ると思う。それは譲渡も含めて同じはずだ。

 それと教室内で予めに『赤龍帝の籠手』を発動したため既に十回分の倍化ができる。携帯電話で時間を止めて見てみると103秒か。特に何のデメリットもないけど時間をもっと正確に時計無しで計れるようにならないと。

 体内時計ばっかりは俺の感覚の問題だから仕方ないけどこの計測を始めたより5秒も縮まったことを考えれば大分マシだろ。この調子で時間を正確に計りつつ、戦闘ができるくらいになりたい

 

 そんなことを考えつつ障害となる女子生徒たちの津波というか壁というか、とにかく邪魔な女子たちと出くわさないように気を付けながら走っていく。普通なら経験上、もう誰かに会っていてもおかしくないが今の俺たちの身体能力は普段の8倍。俺たちが通る第2アリーナまでのルートを事前に抑えておかないとまず出くわさない早さだ。

いざ出会っても壁走りなんかで回避できる。最近は壁走りにも反応できるようになりつつあるので一つの集団を抜くにもやりづらくなってきた。壁走りの勢いで天井を這いつく勢いで移動ができると思ったが、できなかった。前は出来なかったが倍化が後一回分残ってはいるから……できるか分からないし保存しておこう。

 

「とりあえず男子は空いてるアリーナの更衣室で着替え。これから実習のたびにこの移動だから早めに慣れてくれ」

 

 シャルロットは手を繋いで一緒に移動しているからどうにも上の空だ。一夏が説明をしながら移動するが、聞いてるようで聞いてなさそう。周辺探索のために聴覚に倍化を譲渡する。五感にやると脳を強化するから無駄に負担がかかる仕組みになっている。だから必要な事以外は全て個別で使い分けるようにしている。

 8倍の聴力で微かな音にも反応できるようになる。すでに女子たちの追いかける音がするがもう遅い。俺らは今、第2アリーナまでもう少しってところにまで来ている。今日は逃げ切ったか。

 

「おい、大丈夫か?」

 

「えっ、う、うん。大丈夫だよ」

 

「なんかボーとしたけど」

 

「大丈夫だよ。ありがとう名御叢君」

 

 礼を言いながら笑顔を見せる。グラッと来たな。これは破壊力が尋常じゃない。顔が熱くなるのを紛らわせるためにちょっと力を抜いて距離を少し開ける。

 あんなに一点の曇りのない笑顔初めて見た。心に矢が刺さる、なんて馬鹿げた言い方しないと言い表せらんないほどグッとくる笑顔だった。たぶん今顔熱いんじゃないか。触んなくても分かるくらいに熱い。可愛いなぁ~。

 

「うわ! 時間ヤバイな! すぐに着替えようぜ」

 

「お前も中に着ておけばいいのに」

 

「俺はいいよ。なんか妙な感じがして嫌なんだよ」

 

「俺の方は何ともないけどな。アームストロング社のやつ」

 

 あの衆院議員と名前が一緒だから釣られたなんて言えない。

 

「俺もそっちにするかな」

 

「色々と試しておけって。どうせISスーツを買うにしても使うにしてもタダなんだし」

 

 第2アリーナの更衣室に到着した俺たちはすぐさま着替えを始める。一夏はISスーツを毎回着替えるから少し時間がかかる。シャルロットはどうやらすぐに着替え終えたようで俺に話しかけて来る。

 

「忙しくて紹介が遅れたね。僕はシャルル・デュノア。これからよろしくね」

 

「俺は名御叢真輝だ。よろしくシャルル」

 

 握手しようとして出したを手をすぐに掴んで握り返してくれる。やっぱり柔らかい。それに小さな手だ。それでもよほど集中しなければ女だと思わないとすぐには感づかないだろう。男の手でも人それぞれだけど、従妹の手と感触と似たところがある。

 その経験と前世の知識がなければ絶対に気が付かなかっただろう。

 

「大丈夫、なんだか顔色悪いけど」

 

「問題ない。そろそろ行こうぜ。もうちょっとで遅れる」

 

「着替え終わったぞ。真輝」

 

 気が付きたくなかった二つの問題がいきなり急浮上した。忘れたい気持ちでいっぱいなので話をずらす。一夏が上手く乗っかってくれたおかげでごまかせた。でも、よりにもよって一夏にホモ疑惑を持つことになるとは。いい友人でいたかった。

 いやまだ俺の身元の件が何も済んでなかった。

 

「それじゃ行こうぜ。……そうだ、自己紹介が遅れたな。俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

 

「うん、よろしく一夏。僕のこともシャルルでいいよ」

 

「先に行ってるぞー」

 

 そういいながら個人的に重い空気となりつつあった更衣室から出られる。俺が出て少ししてチャイムの音が聞こえ、その音が聞こえると同時に危険信号を受信してダッシュする俺と一夏。そして俺たち二人を追うシャルロットの三人の絵図ができた。

 数日して、その立場が逆転する未来が訪れるのは想像に難くない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゆっくりしすぎた俺たち三人は急いでアリーナに到着し、何とか罰を免れた。ギリギリ間に合ってよかった。その後一夏は折角間に合ったのに鈴とセシリアと喋ってお怒りを受けた。バカだ。

 原作の如く鈴とセシリア対山田先生の戦いは山田先生の勝利で終わった。どうやって誘導するのかぜひ教授してほしいほど鮮やかな戦いだった。巧みな射撃で二人を激突、体勢を崩し、グレネードがドンピシャでハジケるところまでの過程は見物だ。

 多分俺の今のスタイルからして接近してから殴り合いってのが主流になる筈だ。そのことを考えると山田先生の戦い方はとても参考になる。

 この世界にきてから肉体が良くなったおかげか頭の回転もよくなった気がする。いつまで考え事しても数秒しか経たないから素敵。運動もできて頭も良いなんて出来過ぎも甚だしい。自分の体のことなのに素直になれない俺って子どもらしい。

 

「……それじゃあ搭乗して」

 

『はーい』

 

「それじゃあ始めようか」

 

 まあ、さっきの戦闘のことはともかく専用機持ちがISの実技指導をする。女子校生が一斉に元気よく手を上げて返事する姿を見ると心がゆるむ。引率の教師ってこんな気分なのかな? だがその背格好はスク水に似たISスーツである。改めて観てみると、やっぱり非常に犯罪的な光景だ。

 肝心の指導は滞りなくISの装着から徒歩、着脱までの実技はスムーズに進んだ。彼女たちは素直に俺の言う事を聞いてくれたことと彼女たちが優秀なおかげでもう後一人というところまできた。

 

「……そこでストップ。降り方は分かるな」

 

「えっと、膝を地面に着けてから降りるんだよね」

 

「そう。自分の体をそのまま膝を着けるだけだから。……はい、お疲れ様」

 

 俺の指示通り、膝を着けてからISから降りる。胴体の装甲部が消えて、脚部の足を抜くことで実体のISから降りることができる。ただ専用機を一度でも持つとこの作業が非常に面倒になる。なにせ何をしなくても降りることができるからな。

 

「ドキドキしたよ」

 

「慣れたらもっと楽しくなるよ」

 

 うん、と可愛らしく頷いて離れていき、終了組とキャキャと騒ぎ出す。最後の一人が俺に近づいてくる。

 

「しんきー、よろしくねー」

 

 間延びしたお言葉を聞き、非常に不安を感じる。何かやらかすのではないか不安でしょうがない。布仏本音。のほほんさんで有名だ。おっとり屋、着ぐるみ装備、何気に巨乳とキャラが濃いし、出番もそれなりにあるから覚えている。

 それに身長も周りの女子と比べて一回り小さい。可愛い。日本人は小さいものが好きだと噂で聞いたことがある。本音ちゃんを見た後だとあながち否定できないな。かわいいは正義だ。

 

「よろしくね。えっと、名前は?」

 

「のほほんだよー」

 

「あだ名じゃなくて本名のほう」

 

「えぇ~」

 

「えぇ~、って何だよ。後で教えてな。それじゃあのほほんちゃん。始めようか」

 

「は~い」

 

 名前を教えてもらおうとしたら渋られた。まあ、後で聞けばいいかな。名前を教えてないのに相手の名前を知っていたら怖いはずだ。いや、別に名前で言いたいわけでもないけど、名前を知ってる分なるべくボロが出ないようにしたいからな。

 そうしている間にのほほんちゃんは装着を終わらせる。ここまでは今までの子と一緒でわざわざ指示しなくても装着まで頭に入っているから大丈夫だったけど同じようで良かった。さあ、覚悟を決めろ。と思ったのも束の間。

 俺の懸念とは反対にちゃんと歩けている。運動音痴とか勝手に思っていたが、むしろ今までで一番うまい。歩行の際も左右に体を振って実に危なげに見えるが一定のテンポで脚を前に出して歩いている。歩くときの軸足が揺れていないのが、ちゃんと動かせている証明だ。

 

 ISはあくまでも手足の延長線上の感覚で動かす。簡単に言うと足に鉛を付けて歩くわけだから、素の状態と鉛を付けた状態とのギャップに慣れず体が揺れて不安定になってしまうのだ。

 のほほんちゃんより前の子たちは一歩前に進むたびに体が揺れるから実際に倒れるんじゃないかとハラハラした。そのことを考えればやはり一番うまいんじゃないか。

 

「のほほんちゃんうまいね。練習とかしてたの?」

 

「えへへ、お姉ちゃんがISの使用許可を取ってくれたからなんだー」

 

 なるほど。姉の虚さんの手解きを受けていたのか。確か3年生だったから、ISの使用許可を取ることも教えることについても納得だ。面倒見のいいお姉さんだな。

 

「いいお姉さんだな」

 

「うん。でも時々パーンて頭を叩くんだよー」

 

「それは仕方ない」

 

「むぅー、何でー」

 

 つい口から出てしまった。だけど、かわいい。フグみたいに頬を膨らませて可愛い。頬っぺたツンツンしたいけど今は早く終わらせちまおう。

 

「それじゃあ、そこらで止まって降りようか」

 

「はーい」

 

 のほほんちゃんは素直に返事して降りる。ISの膝を立てないで降りてしまったようだが、もう終わっているので後は織斑先生か山田先生に終了の旨を伝えてお役御免だ。

 そこまで考えた数秒後、にわかに騒がしくなる。元凶はおおよその予想、というか何が起きたのかは既に分かっている。元凶の方を見るとポニテの美少女、條々之箒をお姫様抱っこでISに乗せようとしている。個人的には條々之は美少女ではなく美人だと考えている。全く関係のない話だが。

 

「いいなー」

 

「條々之さん、羨ましい」

 

「ジー」

 

「擬音語を口に出すな。もう終わってるんだからやる必要はない。ご協力ありがとうございました」

 

「しんきー、嫌味ったらしいー」

 

 ハッハッハ、何とでもいうといいさ。……前ふりとかじゃなくて本当に何もなく終わりました。

 

 




前作の保存が完了したので『赤龍帝のIS生活』を削除します。

私の甘い心積もりで作品を書いたために消さなくてはいけないなんて。
これも私の思慮のない投稿を繰り返した報いと思って書いていきたいです。
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