これは非常に迷うところだ。
「真輝、ちょうど良かった! 助けてくれ!」
「お願い。手を貸して」
俺は今現在、非常に困惑している。一夏とシャルルの二人が俺の目の前で頭を下げているのだ。何がどうなっているのか?
感謝の正拳突きにわか風味を千回終えて昼食を買って、部屋で食おうとしたら一夏とシャルルが頭を下げていた。うん。何がどうなってるの?
「シャルル、頭を上げろって。一夏何やったんだ? 今なら織斑先生に言わないでおいてやるから」
「いや、俺じゃなくてシャルルがな。じゃなくて! 助けてほしいんだ!」
「あぁ~、た、助ける? 何を?」
「一夏落ち着いて。僕が説明するよ」
覚悟を決めた顔つきのシャルルがポツリと語りだす。一夏にISを教えていていたところ、女であることがバレたこと。一夏と俺のISデータを取るという目論見とシャルルの身の上を喋り、特記事項を盾にIS学園で生活することを決めたこと。
助けてほしいこと、というのがどうやってこれから誤魔化して生活をしていけばいいか、ということだ。二人とも簡単にバレそうだと考えて俺に頼ってきたわけだ。
「なるほどね。また随分とデリケートな話題だこと」
買ってきたパンを食いながら聞き終えると同時に食い終わる。ものすごく真面目に話してくれたけど知ってるから特に驚きもないし腹減ってたし。そう言えばメロンパンを始めて見た時に亀の甲羅を思いだしたのはいい思い出だ。
「……えっと、それでどうしたらいいかなって」
「まあ、まず俺に相談に来た時点で冷静じゃないね」
「うん? あっ」
「あっ、うん」
少し悩んだ後にそうか、という顔をした一夏。すぐに気が付き、しまったという顔をするシャルル。二人を見比べて何となく和む。衝動的に俺に相談しようって一夏が提案して焦ったシャルルが流されて俺が来るのを待つところまで想像した。
「一夏とシャルルって、ウソ付くの下手そうだな」
「うるせえよ。そう言う真輝はどうなんだよ」
「割と得意だと思うよ」
こっちは出身どころか元いた世界すら偽ってますから。それに俺の所在もどうなってるか知らないから前の世界の家族構成にして原作の箒の家族が重要人物保護プログラムとかいう拉致監禁するシステムを使って知らないの一点張りで頑張ってる。
さらには俺の打鉄に生えた『赤龍帝の籠手』についても突然出てきたで分からないフリをしている。多分織斑先生のことだからウソついてることに気が付いてるんだろうな。
「俺の話はいいとして、シャルルがこれ以上バレないようにする方法ね。それなら結構思いつくよ」
「そうなの?」
「さすが真輝だぜ! 相談して良かった」
何を持ってさすがと一夏が言ったのか不明だが、シャルルのことは相当考えていたから自信がある。
「シャルルって女であることがバレないように体を見せないでいたんでしょ」
「そうだよ。着替えてるところを見せないようにするのが一番だと思って」
「俺も最初は体のどこかに傷でもあるのかと思ってたからな。最初は特に気にしてなかったけど、それが自室の中でも監視されて風に警戒してるんだから自然と疑いを持ったな」
常に俺の視線を伺ってくるんだからこっちとしても気が滅入るものがある。シャルルの身元を知ってるからあまり気にしないよう心掛けていたけど気になるものは気になる。
シャルルの着替えてる姿を一度も見たことがないのも疑う理由に加えておく。男なんだから大なり小なり見られても気にはしてもそこまで問題はないと思う。だがシャルルの警戒の度合いと俺がいない時に着替える早さを考え、見られて困ることがあると俺が思っていたように言う。
「それに俺たちと話してるより、クラスの女子と話してるところの方がいきいきとしてた。女好きと考えたけど一週間何の疲れも見えないのは異常だ」
などなどを説明していく。シャルルが怖いものを見るような目で俺を見ていたが無視する。
「そういうことで、シャルルが男として振る舞うにはどうしようなく無理があります。わざわざ嘘を付くぐらいならいっそのこと、あああああっ!!!」
「な、なんだよ真輝!?」
「いきなり大声出してどうしたの!?」
そうだ。いっそのこと男装していることを辞めさせてしまえばいいじゃないか。うん、原作通りだけどいいんじゃないかな。時期は学年別トーナメントがタイミングが良いとして、っていうか原作もろパクリで十分じゃないか?
とすると細かい打ち合わせが必要そうになる。なるべく同情心を引くような内容がいい。内容はそのままで十分いい。デュノア社と父と義母からシャルルの受けてきたこと。そして実母の死をありのままに伝えるだけで皆から関心を引ける。
IS学園の女を全員敵に回して、さてはてデュノア社は一体何日持つだろうか?
「し、真輝? 何だか悪い顔してるよ」
「この顔は弾とかで見たことがあるぞ。ろくでもないことを考えてる顔だ」
安心しろ、ろくでもない目に合うのはシャルルの実家だよ。きっと。
「そういえばどうしてシャルルが女だってことにどうやって気が付いたんだよ」
「ああ。それは、シャルロット、シャルルの元の名前な。シャルロットとボディーソープが切れたって話をしてて、俺が後で持っていって風呂から上がった直後のシャルロットに会ったんだ」
原作通りになったことに喜べばいいのか泣けばいいのか。
事件から少しして、ラウラがやらかした。
ラウラは説教した日からそれほど間を置かず、ある意味で俺の期待に応えてくれた。一夏襲撃の件から間を置かずにラウラは俺の忠告も無視して原作通りセシリアと鈴の二人を学年別トーナメントに出場不可能にするほどのダメージをISに与えた。
ラウラに肩入れしている俺ではあったが、二人はIS学園で早くできた友人だけどまあ、原作通りで良かったと思う。二人にはもちろん悪いとは思うが、こればかりはねえ。
鈴たちへの罪悪感より、俺の知る展開どおりに事が進まないことへの不安の方が簡単に上回る。ラウラに感謝するってのも筋違いというか、八つ当たりの結果こうなったというのが適切だからな。
「それで鈴たちは大丈夫なのか?」
「ああ、山田先生が言うには問題ないらしい。でもISへのダメージが相当大きいらしい」
「だが、二人とも出場は難しいかもしれん。ISに問題が起きたそうだ」
お見舞いに行ってきた一夏たちに話を聞く。オシドリのように息の合った一夏と箒の会話を聞きながら鈴とセシリアに安心して息をつく。
……医務室か。俺がここに始めて来て目覚めたのも医務室だったな。あれからもう2週間以上が経つのか。何年のように長く濃密に感じる時間だ。まだそれだけの時間が経っているのか。
「それで、ラウラの方はどうなった?」
「俺の話は一応聞いてはくれるんだが、どうにもボーっとした感じで俺の話を理解してるかは怪しいな」
一度でダメなら二度目と勇んでラウラを探して見つけて説教でもと思っていたんだが、意外にすんなり話を聞くもんだから面を食らった。今にして思えば流された感が否めん。一夏との試合さえ始まるまでの辛抱。とでも言いたげな対応だった。
何にせよこれ以上の荒事は起きないだろう。そう切に願うしか方法がない。
「何にせよ、ラウラとは決着をつけてやるさ」
「意気込むのはいいけど、トーナメント戦の方式がタッグになったけどどうするんだよ。相手はいるのか?」
「シャルルと組むことにしたぜ。真輝は誰か相手がいるのか?」
「俺はラウラと組むことにしたから。そこんとこよろしく」
「なぜそんなことをしたのだ貴様は!」
覚悟していたとはいえ、箒さんに怒られるのは流石に怖い。一夏とラウラを戦わせるための露払いと悲劇の回避と言ってむりやり説得させる。これでお膳立ては済んだ。後は、戦うその日までラウラと仲良くなれればいいな。
そもそもラウラと一緒に戦う予定はないけど、事後承諾何とかならないかな。
研修用の荷物は収めた。あと十日もある。よし後は書くだけだ。