本作はホロライブの二次創作です。
オリジナル主人公が登場し、ホロメンと関わる描写を含みますので、その点が苦手な方は閲覧をお控えください。
ゆるく読んでいただけると嬉しいです。
真っ白な空間だった。
境界という概念すら曖昧で、上下も時間も感じられない。
男はそこで目を覚ます。
男「ここは……どこだ?」
意識ははっきりしているのに、現実感がない。
仕事帰りだったはずだ。
いつもの道を歩いていて、その先までは覚えている。
だが、そこから先が途切れていた。
思い出そうとするたびに、頭の奥が鈍く痛む。
男「……思い出せない」
理由の分からない違和感だけが残る。
まるで、本来あるべき流れから外れてしまったような感覚だった。
「お目覚めですか」
突然、声が響いた。
振り向くと、そこにはひとりの女性が立っていた。
この空間にあって、異質なほど“明確な存在感”を持っている。
男「……あなたは?」
女神「私は、あなたたちの言葉でいう“女神”と呼ばれる存在です。気軽にそう呼んでください」
男「女神……」
あまりにも現実離れした単語だったが、不思議と冗談には聞こえなかった。
女神は一瞬だけ間を置き、静かに続ける。
女神「まず、あなたに起きたことを説明します」
空気がわずかに重くなる。
女神「あなたは帰宅途中に命を落としました」
男「……」
言葉の意味は理解できるのに、実感だけが追いつかない。
女神「本来、そのような結末になるはずではありませんでした」
女神「しかし因果の流れにわずかな歪みが生じ、別の結果へと繋がってしまったのです」
視線がわずかに落ちる。
女神「……申し訳ありません」
男はしばらく黙っていた。
驚きも怒りも、まだ形にならない。
やがて小さく息を吐く。
男「そうですか」
あまりにも淡白な反応だった。
男「まあ……仕方ないですね」
自分でも少し違和感のある軽さだった。
(こんなもんか……俺の人生)
女神「あなたはもう元の世界には戻れません」
その言葉は、静かに確定事項として告げられる。
女神「ですが、別の世界へ転生することは可能です」
男「転生……」
少しの間。
男「じゃあ、それでお願いします」
女神「転生先は、あなたがかつて好んでいた“ホロライブ”の存在する世界です」
その言葉に、わずかに胸が揺れる。
女神「希望すれば、その組織のスタッフとして働くことも可能です」
男「……本当ですか」
思わず声が出る。
男「それは……いいですね」
小さく笑う。
その笑みは、控えめで、どこか自分を信じきれていないものだった。
思い出す。
画面の向こうで笑っていた人たち。
全力で何かを届けようとしていた姿。
それを見ていた時間。
ただ、それだけだった。
女神はその様子を静かに見ていた。
何かを言いかけて、やめるような間。
男「あっ……それと」
男「転生する前に一つお願いが」
女神「はい」
男「家族に伝えてもらえますか」
少し視線を落とす。
男「今まで、ありがとうって」
女神は目を見開いたあと、優しく微笑んだ。
女神「わかりました。必ずお伝えします」
女神「それでは、転生の準備に入ります」
そう言いかけた瞬間、わずかに言葉が止まる。
空気が変わる。
女神「その前に……大切なことを一つだけ」
男「……なんですか?」
女神の表情が、これまでと明確に変わった。
静かだが、確かな重さを持つ声。
女神「実は┈┈┈┈┈┈」
男「……!!」
光が、視界を包み込んだ。
——現実世界——
桜木宏斗としての人生が始まっていた。
「Sく〜ん!準備できてるにぇ〜!」
明るい声が響く。
さくらみこが笑っている。
「はい、問題ありません」
自然に返事をする自分がいる。
配信が始まる。
画面の向こうでは、彼女が楽しそうに話していた。
S君(すごいな……)
ただ素直にそう思う。
彼女たちは、いつも全力だった。
見ているだけだった側と、届ける側。
その違いを、今さら実感する。
自分はどうだっただろう。
何かに本気になったことはあったのか。
思い返そうとしても、途中で止まった記憶ばかりだった。
S君「……」
画面を見つめる。
S君「この笑顔くらいは……」
小さく呟く。
S君「守れたら、いいな」
それはまだ決意ではない。
ただの願い。
だが確かに、それが始まりだった。
全てはホロメンのために
ここまで読んでいただきありがとうございます。
初投稿のため拙い部分もあるかと思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。
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作者は豆腐メンタルなので、優しく見守っていただけると嬉しいです。