18話投稿です。
正月が過ぎ、いよいよ年始の仕事が本格化してきた。
ホロフェス・エキスポが近づいてきており、その準備に追われる日々が続いている。ここ数年で、フェスやエキスポの規模が大きくなってきており、それに従って内容も複雑化してきている。スタッフ達は複雑化する準備に頭を悩ませることが多いのだが、S君はそれとは別のことでも頭を悩ませていた。
(身体がギシギシいってる。この前の戦闘も結構効いてるな)
仕事に取り組むが、その動きはぎこちない。S君の悩みは、戦闘する度に受けるダメージだ。体に残ったダメージにより、仕事に支障が出ることがある。尚且つ、周りに心配をかけてしまっているという負い目もあるため、S君にとって懸案事項となっていた。
(今のところ一番ダメージを受けにくいのがペガサスフォームだけど、制限時間内に仕留めないといけないからなぁ)
(どうにかならないかなぁ)
そう悩むも、いい解決策が思いつかず、仕方ないことなのかと思いつつ仕事を続けた。
昼休憩
S君はオフィスで一人昼食を摂っていた。普段は食堂で食べるのだが、どっかの誰かさんたちが、実験やらなんやらで食堂の器具を吹き飛ばしたせいで使用不可となっていた。
S君は食べながらスマホを弄り、ホロメン達の切り抜きを観ていた。ホロリスの編集する切り抜き動画はクオリティが高く、暇を潰すのには最適だった。
(ん?これって…)
切り抜き動画の中で何かを見つけ、食べる手を止め動画を注視する。
(この人に話を聞いて見れば何か掴めるかもしれない。それに、この後こっちに来る予定が入ってる。ちょうどいい)
そう考え、さっと弁当を食べ終わらせ、時間を確保するために仕事を捌き始めた。
しばらくして、S君はスタジオにやってきた。スタジオ内では、複数のホロメン達がレッスンに励んでいた。
その中で、S君がスタジオに来た目的のホロメンが一人。
『獅白ぼたん』
S君は、ぼたんがレッスンに一区切りつけるのを待ち、話しかけた。
S君「ぼたんさん、おつかれさまです」
ぼたん「ああ、S君。おつかれさま。今日はどうしたの?」
S君「今日はフェスのレッスンの様子を見に来ました。皆さん頑張ってますね。」
ぼたん「そうだね〜。みんな気合入ってるよ。私もだけど、フェスを盛り上げたいし、楽しみなんだよね」
S君「ええ、年々フェスは熱量が上がってますからね。私達も楽しみですよ」
数ヶ月後のフェスに対して思いを語る2人。そしてS君は、ここに来た本題を話し始めた。
S君「そういえばぼたんさん。ぼたんさんは、FPS系のゲームが得意なんですよね?」
ぼたん「あ〜そうだね。結構やるね。それがどうかしたの?」
S君「いえ、さっき昼食を食べながら切り抜き動画を観ていたら、ぼたんさんのエイムの動画が流れてきまして。びっくりするくらい正確に撃ち抜いていて凄いなと思ったんですよ。なにかコツとかあるんですか?」
ぼたん「コツか〜。そうだねぇ、強いて言えば、ズレない位置に置くことかなぁ」
S君「ズレない位置に置く?どういうことですか?」
少し食い気味に聞きに行く。
ぼたん「エイムって、慣れてない人は動かして合わせようとするんだよね。そうすると力入っちゃうし、視野も狭まるんだよね。だから、視野を広く持って、相手はこの辺に移動するなって予測して照準を置くんだよ。あとはタイミングを掴むことかなぁ」
S君「なるほど」
S君(ズレない位置に置くっていうのは考えなかったな。参考になる)
ぼたん(なんか真剣に聞いてるなぁ。どうしたんだろ)
S君「いや〜ぼたんさん、ありがとうございました。なかなか面白い話でした」
ぼたん「いえいえ〜、全然大したことないよ。ただ〜、聞かれただけだと面白くないから〜、私も何か質問しようかな」
S君「えっ」
ぼたん「何聞こうかな〜」
S君(これは予想外。何を聞かれるんだろ)
面白がるぼたんとは対象に、どんなことを聞かれるのか、内心オドオドするS君。
ぼたん「おっ、そうだ。S君はラーメンが好きだって聞いたんだけど、ラーメンよく食べるの?」
S君「ええ、まぁちょこちょこ食べますよ」
ぼたん「じゃあさ、今度オススメのお店あったら教えてよ!麺屋ぼたんの企画に使いたい」
S君「そういうことでしたらいいですよ。ラーメン屋の系統も言っていただければまとめますよ」
ぼたん「りょーかい。じゃあ後で教えてね。じゃ、私はレッスンに戻るね〜」
S君「はい、ありがとうございました」
そうして2人は各々のやることに戻っていった。
夕方
S君がオフィスに戻ってくると、スタッフ達がざわついていた。
S君「何かあったんですか?」
葛山「あぁ、どうやらさっき未確認が出たらしくて、既に被害者も出てるらしい」
S君「なっ!!」
同僚「報道だと、〇〇町近くらしいな。なあ、この前警察が未確認のことを公表したけど、未確認が出る頻度って増えてるんじゃないのか?」
葛山「そうだな。これまでの連続殺人が未確認によるものと考えると、去年より頻度が多くなってるのは間違いないと思う」
葛山達が未確認について話しているが、S君は一人離れ、オフィスの入口に向って歩いていく。しかし、それに気づいた葛山が止める。
葛山「おい、桜木。どこに行くんだ?」
S君「あっ、いえ、スタジオにいるホロメンの皆さんに、外は危ないことを伝えに行こうかと」
葛山「…そうか。伝えたらすぐに戻ってこい」
S君「はい…」
呼び止められたことに驚き、少し動揺した様子で答えるS君。
すぐ戻ってくるよう言われ、力のない声で答えた。
S君(葛山さん、すみません)
S君はそのままビルを出ていく。
S君は人通りのない裏路地に来た。
そして…
S君「変身!!」
クウガになった。
クウガ「来い!ゴウラム!」
クウガの呼び声に応じ、ゴウラムが飛来する。そして、その背に飛び乗り、その場を離れていった。
クウガ(確か、〇〇町って言ってたよな)
未確認が出たと思われる場所に向かう。少しすると、ゴウラムがグロンギを探知する。
ゴウラムから伝わってくる思念を基に周囲を見回すクウガ。
クウガ「見つけた!」
クウガはグロンギを見つける。グロンギはとてつもないスピードで走っていた。
クウガ(なんて速さだ。ゴウラムと同じくらいの速さだぞ)
クウガ(これじゃあ接近戦は無理だ)
接近戦になったとき、相手のスピードについていけないことを知り、どう戦えばいいか迷ってしまう。
クウガ(ペガサスで…やるしかないのか)
ぼたんに狙撃のアドバイスを聞いたが、イマイチ自信が持てない。そう思うのには理由があった。
──────回想──────
クウガはゴウラムに乗りながら、グロンギを追っていた。その姿は緑色をしており、手にはボウガンのような武器が握られていた。
《クウガペガサスフォーム》
クウガの射撃戦の形態。手に握られているのは《ペガサスボウガン》だ。この姿の時は、感覚が研ぎ澄まされ、遠方や見えない敵を探知することができる。しかし、負担は大きく、短時間しかこの姿でいられない。
今は姿を消すグロンギを追っていた。
《ペガサスフォーム》になったお陰で、すぐにグロンギを見つけることができたが、敵の動きに狙いが定まらない。一発撃つが、外れてしまう。そして、二発目、三発目と撃ち続けるが、ことごとく外してしまった。
クウガ(くっそ!当たらない!!)
そうしているうちにペガサスフォームの制限時間がきて、クウガはグローイングフォームに戻ってしまい、激しい疲労感に襲われてしまった。さらには敵を取り逃してしまった。
クウガ「はぁ、はぁ、くそぉ!!」
取り逃したことに悔しさを滲ませる。
その後、数日経ってから再びグロンギが出た時には、至近距離からブラストペガサスを撃ち込むことで、何とか倒すことができたが、新たな犠牲者を出すことになってしまい、S君は苦い思いをすることになってしまった。
──────現在──────
クウガ(できるか…)
過去の失敗を思い出し、悩むクウガ。
だが、打てる手が他にないのが事実。
クウガ(やるしかない)
クウガ「超変身!!」
クウガは掛け声と共に《ペガサスフォーム》に姿を変え、ゴウラムに括りつけられていたエアガンを握った。
エアガンはクウガのモーフィングパワーによって、《ペガサスボウガン》に再構成された。
クウガ「すぅーーーーー」
クウガは深く息を吸い、ペガサスボウガンのレバーを引く。銃口に空気が圧縮され、撃つ準備は整った。
クウガ(視野は広く…)
クウガ(相手がどう動くかを予測する…)
クウガ(ズレない位置に置く!)
静かに敵を狙う。そして、ついにそのときがやってきた!
クウガ「そこだ!!」
引き金を引き、封印エネルギーを含んだ、圧縮された空気弾が放たれる。
《ブラストペガサス》
【邪悪なるものあらば その姿をかたより知りて 疾風のごとく 邪悪を射ぬく戦士あり】
放たれた弾は、狂いなくグロンギを撃ち抜いた。
グロンギ『バッ!ゾボバサ!(なっ!どこから!)』
グロンギがどこから攻撃をされたのか分からず混乱している中、撃ち込まれた弾から封印エネルギーがゲドルードに流れ込んでいく。
そしてグロンギは爆散した。
クウガ「やった!」
クウガ(上手くできた…ぼたんさん、ありがとうございます)
クウガは心の中でぼたんに対して感謝した。そして、マイティフォームに戻り、ホロライブプロダクション方面に戻ってきた。
クウガは、ゴウラムから飛び降り、地面に着地した。だがそのとき、
クウガ「うぉっ!」
腰に鈍い痛みが走った。そして、クウガからS君の姿に戻る。
S君「あいたたたた、この前蹴られたところが…」
腰を押えながら、ゆっくり立ちあがる。
S君「腰もちょっといたいけど、疲れたぁ」
S君「ペガサスフォーム、制限時間内だったけど、やっぱりしんどいよぉ」
S君「五代雄介ってなんであんなにピンピンしてたんだろ。やっぱり凄い」
そう独り言を零しながら、ビル内に入っていく。オフィスに戻ると、葛山の鋭い目がS君に向けられた。
葛山「桜木ぃ、今までどこに行っていた?」
S君「あっ、すみません。ちょっとお腹痛くなったのでトイレに…」
葛山「ほぅ、1時間もか」
S君「はい、すみません……」
葛山の追求に小さくなっていくS君。
葛山は少し黙った後、
葛山「はぁ、まぁそういうことならいい。仕事遅れた分、働けよ」
S君「はい!」
S君はすぐに仕事に取り掛かった。
葛山(未確認が出たと知るや否や、あいつはどこかに行ってしまった)
葛山(以前の天音かなたのときのこと。あのときも未確認が関わっていることとしたら…)
葛山(あいつは、未確認に関係あるのか?)
今回、S君は自分の課題を一つ解決することができた。しかし、身近な人物に大きな疑念を持たれてしまうことにもなってしまった。
全てはホロメンのために
今回も読んでいただき、ありがとうございました。
次回もよろしくお願いします。