よろしくお願いします。
2月13日
世間はバレンタインデー商戦の真っ只中。店頭にはチョコレートの材料やラッピング用品が並び、街を歩けば楽しそうに話す人々の姿が目に入る。
「誰にあげる?」
「手作りにする?」
そんな女性達の会話が聞こえてくる。一方で、男性達からは――
「今年はいくつもらえるかな」
「頼むからゼロだけは回避したい」
「どうせ俺はもらえないだろうな〜」
「バレンタイン?なにそれ美味しいの?」
など、悲喜こもごもな声が聞こえてくる。街全体がバレンタイン一色。
そしてそれは、ホロライブプロダクションでも同じだった。
ホロライブプロダクション オフィス
男性スタッフ1「なぁ、明日はバレンタインだな。何とかゼロは回避したいんだが」
男性スタッフ2「そうだな〜。ゼロはメンタルにくる」
男性スタッフ3「それだけは嫌だ!! 誰か俺にチョコを!!」
男性スタッフ4(俺は嫁と娘からもらえるからセーフ)
女性スタッフ1(男どもは全く……。そんなんだからもらえないのよ)
女性スタッフ2(今日は早く帰りたいなぁ〜。帰ったら彼ピーにあげるやつ作らなきゃ♡)
バレンタイン前日。
オフィス内もまた、いつもとは違う空気に包まれていた。
――もっとも、男性スタッフ達は別の意味で落ち着かないようだが。傍から見れば散々である。そんな中、唯一平然としている男がいた。
男性スタッフ4である。
嫁と娘からチョコをもらえることが確定している彼は、まるで勝者の風格を漂わせていた。そしてS君と葛山はというと、
葛山「全く…バレンタインデーが近いからといってみんな気が緩みすぎだぞ。仕事に集中しろよ」
S君「まぁ、チョコレートもらえるかを気にする人は多いですよ。とりあえずやることをしっかりやってれば大丈夫ですよ」
葛山「そういうお前はどうなんだ?」
S君「興味ありません。あんなの企業の購買戦略です」
葛山「お前なぁ……」
あまりにも即答だった。
その様子から、一切の未練も期待もないことが伝わってくる。
ここまで達観されると、葛山も何も言えなかった。
S君「よしっ、これはとりあえずここまででいいかな。葛山さん、この後俺は3D配信の方に行きますね」
葛山「あぁわかった。今日はチョコ作りの配信だったか?」
S君「はい。今ホロメン達が試作を作ってるところだと思うので、配信の確認と、そのまま現場立ち合いに入ります」
葛山「了解だ。よろしく頼むな」
S君「はい、何かあったら連絡入れますね」
そしてS君はオフィスを後にし、配信スタジオに向かった。
スタジオ
S君「失礼します。配信の確認に来ました〜ってうおっ!!」
スタジオに入った瞬間、鼻を通る濃厚な甘い匂い。かなりの量のチョコレートが使われたのがわかる。正直この匂いで胸焼けをしてしまいそうな程だった。
S君は思わず鼻を手で覆ってしまいそうになり、すんでのところで手を止める。鼻を覆ってしまったら、チョコ作りを頑張っているホロメン達に失礼になるからだ。とりあえず、確認に来たことを伝えるのと、換気扇を回すように促そうと思い、ホロメン達に話しかけた。
S君「皆さん、チョコ作りおつかれさまです。頑張っていますね」
ちょこ「あっ、S君おつかれ〜!」
おかゆ「おつ〜。みんなで頑張ってるよ〜!」
S君に気づき、癒月ちょこと猫又おかゆが挨拶をする。彼女達二人以外にスタジオ内には、さくらみこ、ときのそらなど、たくさんのホロメン達がいた。
みこ「あっ、S君にゃっはろ〜!」
S君「こんにちは、みこさん。チョコ作りはいい感じみたいですね。スタジオが甘い匂いに包まれてますね」
ちょこ「あっ換気するの忘れてた!ちょっと匂いが籠っちゃったよね」
換気のし忘れに気づき、ちょこが換気扇をつける。
S君「ありがとうございます。チョコの試作は終わりましたか?」
おかゆ「そうだね〜。結構いい感じにできたよぉ!ただ、予想よりチョコレートを使っちゃったから、買い足さないといけない感じだね」
S君「あっ、そうなんですか。でしたら買ってきましょうか?」
みこ「助かるにぇ。まだ時間はあるからお願い!」
S君「わかりました。では、今から行ってきますよ」
ちょこ「それなら私も行くよ!使うものがわかってる人がいた方がいいと思う」
おかゆ「僕も手伝うよ〜。一緒に行こ!」
S君「ありがとうございます。では、行きましょう」
S君「っと、その前に葛山さんに連絡っと」
S君、ちょこ、おかゆは買い出しに行くことになり、葛山に買い出しの連絡をし、スタジオを出ていく。
そうして三人は、不足していた材料を買うために、近くのスーパーへ向かった。
そしてスーパーに到着した三人は、必要な材料をカゴに入れながら店内を回っていく。
途中、おかゆがお菓子コーナーに行ってしまったり、ちょこがスイーツに目を奪われたりするなど、ちょっとした寄り道などがあるが、無事に材料を買うことができた。
そして、今はスタジオに戻るために歩いている。
S君「結構買いましたね」
おかゆ「そうだね〜。でもこれくらいないと配信に使う分が足らなくなっちゃうからねぇ」
ちょこ「それにしても、S君が買い出しを手伝ってくれて助かったよ〜」
S君「いえ、皆さんのサポートが仕事ですから」
おかゆ「相変わらず真面目だねぇ〜」
ちょこ「ほんとほんと。もう少しくらい欲を出してもいいんじゃない?」
S君「欲ですか?」
ちょこ「例えば明日のバレンタインとか!」
S君「あぁ……」
ちょこ「その反応は興味ない人の反応だね?」
S君「そんなことはないんですが、そこまでではないんですよね」
おかゆ「ふーん」
ちょこ「ちょっと意外だよね」
S君「皆さんは楽しそうですね」
おかゆ「まぁお祭りみたいなものだからね〜」
S君「そうですね。ん?あれは…」
そんな他愛もない話をしながら、三人は歩き続けた。そして線路下を通りかかったとき、道端に何かが落ちているのをS君が見つけ、近寄ってみる。
ちょこ「えっ、なにこれ…」
おかゆ「木くず?でも、落ちてる服の中から出てる…?」
S君(これって、まさか!?)
S君は、この木くずに心当たりがあり、驚愕の表情を浮かべ、焦りだしていた。
そして、三人が木くずを見ているところに、白髪の中性的な青年が現れる。
S君(こっ、こいつは!?)
青年『ゴラゲゼバギンドパパンビンレザ(お前で10人目だ)』
おかゆ「え!?」
ちょこ「ちょっと、待ってよ…まさか…」
青年が謎の言語を口にしたのを聞き、ちょことおかゆの二人は、この青年の正体を察し、一気に血の気が引いてしまう。そんな二人を守るため、S君が前に出る。
S君「お二人とも!離れてください!!」
そう言うS君に、青年が掴みかかってくるが、S君は力を込めて突き飛ばした。
S君「このぉ!!」
突き飛ばされた青年が壁にぶつかると、その姿が異形に変わる。
おかゆ「ひっ!!」
ちょこ「うそでしょ…!!」
目の前に現れたグロンギに、二人はこんどこそ恐怖の表情を浮かべてしまう。
S君(やっぱり、こいつは!!)
三人の前に現れたグロンギ。
『メ・ギノガ・デ』
キノコの特徴を持ったグロンギ。原作の仮面ライダークウガでは、五代雄介に毒を吸わせ、一度心停止まで追い込んだグロンギだった。S君もこのことは知っており、先ほどの木くずを見たときに、ギノガに殺された人間の遺体であることに気づいていた。
S君はこのグロンギに遭遇したくはないと思っていた。万が一、毒を吸わされてしまった場合、一歩間違えれば死ぬ恐れがある。原作の五代雄介のように息を吹き返せる保証はないのだ。
S君(くそっ!!とんでもないやつに遭遇してしまった!!)
市民「うわああああああああ!!!未確認だぁぁぁぁぁぁぁ!!」
市民「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ギノガを見た市民は一目散に逃げていく。また、その声を聞いた他の市民も同様だ。死を恐れ、必死に逃げていく。
そしてS君が後ろを向くと、ちょことおかゆは恐怖に染まった顔をして、後ずさりしていた。
S君(まずは二人を逃がさないと!!)
S君「お二人とも!早く逃げてください!!」
おかゆ「逃げてって、S君も逃げようよ!!」
ちょこ「そうだよ!早く逃げよう!!」
ギノガ『ビガガバギジョ!(逃がさないよ!)』
S君「くっ!」
ギノガがS君に飛び掛かってくるが、S君は横に転がって躱す。
S君(四の五の言ってられない!!)
S君「俺は大丈夫ですから、先に逃げてください!!」
そしてS君は腰に手を翳し、アークルを出現させる。
S君「変身!!」
S君はクウガに変身する。
ちょことおかゆはS君が変身したのを見て、目を見開く。
ちょこ「うそ…」
おかゆ「S君が変身した?」
ギノガ『っ!クウガ!!』
S君の変身に驚愕し、逃げることを忘れてしまう。
ギノガも、今殺そうとしていた人間がクウガに変身したことに驚く。
クウガ「なにやってるんですか!早く逃げて!!」
ちょこ・おかゆ(ビクッ!!)
ちょこ「わっ、わかった!」
おかゆ「S君、無事でいてね!」
二人は走り出し、逃げていった。
クウガ(よし、とりあえず逃げてくれた…)
ギノガに向き直るクウガ。いつ来られてもいいように構えを崩さず、間合いを維持する。
対するギノガも、クウガとの間合いを取りつつクウガを睨みつけていた。
ギノガ『ラガバ、ゴラゲグクウガザダダドパベ(まさか、お前がクウガだったとはね)』
ギノガ『クウガ、ゴラゲンボドパジュスゲバギ。ボボゼボソギデジャス!!(クウガ、お前のことは許せない。ここで殺してやる!!)』
クウガへの殺意を剥き出しにし、ギノガが襲い掛かってくる。
クウガ(来る!!)
ギノガ『ガァ!!』
ギノガは先ほどと同じように飛び掛かってくるが、クウガはバックステップで距離を取り、ギノガが隙を見せたところで拳を叩きこむ。一発攻撃を受けただけで、ギノガは大きくよろめく。
ギノガ『グゥ!!ボボ ボンブサギ(こっ、このくらい!!)』
封印エネルギーの乗った攻撃に苦しむも、クウガへの攻撃をやめないギノガ。クウガは冷静にギノガの攻撃に対処し、攻撃を加えていく。そして、ギノガの胸に蹴りを入れ、大きく吹き飛ばす。
クウガ(よし、やっぱりこいつは身体能力が低い。毒に気を付けながら、このまま!)
ギノガ『ブ、ブゴ!ボグバダダサ!(くっ、くそ!こうなったら!)』
クウガは勝機を見出すが、ギノガはこのままではやられることを悟り、何かを考え逃亡を図る。
クウガ「なっ、待て!」
逃亡したギノガを追いかけるクウガ。
クウガ(この方向は…マズい!!)
クウガは焦る。そう、ギノガが逃げた方向は、ちょことおかゆが逃げた方向と同じだったからだ。必死に追いつこうとするクウガ。少し追いかけたところで、ギノガの前方に何かが見えてくる。
クウガ(あれは!)
視線の先に見えたのは、ちょことおかゆだった。二人とも、転んだ子供を起こし、逃げようとしているところだった。
そして、ちょことおかゆが後ろからギノガが迫ってきていることに気づき、表情が一気に引き攣る。
クウガ(くっそ!!狙いは二人か!!)
クウガ(やらせない!!)
クウガ「超変身!」
クウガはマイティフォームからドラゴンフォームに姿を変える。
クウガ「ふっ!」
クウガはドラゴンフォームの俊敏さを活かし、一気に速度を上げ、ギノガを飛び越え二人とギノガの間に着地した。
おかゆ「S君!」
クウガが来てくれたことに安堵の表情を浮かべる二人だったが、それも一瞬だった。
クウガがギノガに振り向いた瞬間…
ギノガ『ゴググスドゴロダダジョ(そうすると思ったよ)』
クウガ「なにっ」
ギノガがクウガに掴みかかり…
毒の胞子を注入した。
クウガ「ぐうぁっ!!!!」
一気に苦しみ始めるクウガ。
クウガ「がっ、がぁ!!」
何とかギノガの顔にパンチを入れ引きはがすことに成功する。しかし、苦しみ続けるクウガ。そしていよいよ倒れこみ、ドラゴンフォームからグローイングフォームになってしまう。
ギノガ『ブスギンゼギベ。クウガ!(苦しんで死ね。クウガ!)』
苦しむクウガを見たギノガは自身が勝ったことを確信し、よろよろと去っていく。
クウガ「うぁっ、ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
クウガは苦しみ、ついに変身が解けてしまい、S君の姿に戻ってしまった。
おかゆ「S君!!」
変身が解けてもなお苦しみ続けるS君に、ちょことおかゆが駆け寄る。
ちょこ「S君、しっかりして!」
二人が呼びかけるが、S君はうめき声を上げ、身をよじらせ苦しみ続ける。唇は紫色に変色していた。
ちょこ「これって、毒!?」
S君の様子に、何らかの毒をもらったのではないかと推測するちょこ。
ちょこ「急いで救急車を呼ばないと!」
おかゆ「すぐに呼ぶよ!」
おかゆがスマホを操作し、救急車を呼ぶ。
ちょこ「S君お願い!しっかりして!」
おかゆ「もしもし!?救急車をお願いします!早く!!」
都内某所 〇〇病院
看護師「先生!急いでください!」
医師「わかっている!患者は!?」
看護師「こちらです!!」
病院では、S君が運び込まれ、医師達が処置を始めようとしていた。
S君「はあっ!はあっ!」
医師「状態は!?」
救急隊「脈拍が安定しません!心拍数もどんどん上昇しています!」
医師「わかった!あとはこちらが引き継ぐ!」
ちょこ「先生!」
医師が救急隊からS君を引き継ごうとしたところに、救急車からちょことおかゆが駆け寄ってくる。
医師「なんだ!あんたたちは!?」
おかゆ「お願いします!S君を助けてください!!」
ちょこ「私たちを庇って、未確認にやられたんです!!お願い!S君を助けて!!」
医師「…わかった。必ず助ける!!」
S君を乗せたストレッチャーとともに、医師と看護師たちは集中治療室に入っていく。ちょことおかゆは、運ばれていくS君を黙って見送るしかなかった。そしてそこに、おかゆから連絡を受けた葛山とさくらみこ、ラプラスが病院に駆けつける。
みこ「ちょこ先!おかゆん!」
おかゆ「みこち、ラプラス。それに葛山さん…」
葛山「桜木は!?」
ちょこ「今集中治療室に運ばれていったところ…」
ラプラス「いったい何があったんだ?」
おかゆ「買い物をした帰りに、未確認に遭っちゃって、それでS君が変身して、僕たちを庇ってぇ…!!」
ちょこ「毒をもらっちゃったみたいなの…。S君、すごく苦しそうだった…!」
おかゆは今にも泣き出しそうだった。ちょこも目に涙を浮かべている。
みこ「S君…」
ラプラス「大丈夫…だよな…?」
葛山「桜木…」
葛山たちはS君の状態を聞き、大きな不安に駆られた。死んでしまわないか。なんとか無事に回復してほしい。そんなことを思いながら、S君が運ばれていったほうを見つめていた。
その頃、集中治療室では…
S君「はっ!はっ!はぁっ!!」
看護師1「血圧上昇!心拍数が150を超えています!それに体温も40度まで上がっています!!」
医師「鎮静剤投与!」
看護師2「鎮静剤!投与します!」
看護師3「先生!患者の血液を調べましたが、白血球の数が基準値の三倍を超えています!」
医師「なに!?」
医師は驚愕する。白血球の数が3倍にまで増えるというのは、通常ではありえないからだ。
医師「生きようとしているのか。必死に!」
医師「頑張れよぉ!絶対に死なせない!!」
医師は、S君を見るまでに、ギノガに殺されたであろう被害者の報告を受けていた。全員、毒を吸わされ、体が木くずのように崩れ落ちてしまったそうだ。もし、今目の前にいるS君が、同じ未確認にやられた者だとしたら、S君は医師が知る中で、唯一の生存者となる。必死に生きようとするS君の様子に、医師として何が何でも助けたいと思うばかりだった。
医師「絶対に死ぬな!あんたが唯一の生き残りなんだ!」
S君が集中治療室に運ばれて数時間後、集中治療室の外では葛山達が椅子に腰かけて待っていた。
葛山「…」
みこ「…」
ラプラス「…」
ちょこ「…」
おかゆ「…」
誰も何も言わなかった。ただ、S君が無事であることを祈るばかりであった。すると、集中治療室の扉が開き、医師と看護師達が出てくる。全員疲労困憊な様子だった。
葛山達は、医師たちが出てきたことに気づき、駆け寄ってきてS君のことを聞く。
おかゆ「先生!S君は…S君はどうなんですか!?
医師「できるかぎりのことはしました。後は、彼次第です」
ちょこ「そんな…」
医師「彼は必死に生きようとしていました。彼を信じてあげてください。失礼します」
S君を信じて待ってほしい。そう言い残し、医師と看護師たちは、その場を後にした。
葛山「桜木…」
おかゆ「ねぇ、S君は大丈夫だよねぇ…ねぇ!!」
ちょこ「…」
ラプラス「おかゆ先輩…」
おかゆはS君が無事であってほしいという願いから大声で叫び、ちょこは黙ったまま。ラプラスはおかゆの肩に手を置き、なんとか落ち着かせようとしていた。
みこ「…きっと大丈夫だよ。そうに決まってる。大丈夫…」
みこは、S君はきっと助かる。そう自分に言い聞かせ、震える手で自身を抱きしめる。
葛山「…いったん帰りましょう。桜木なら、きっと助かりますよ。それにここにいても、俺たちにできることはない」
葛山がいったん帰ることを提案する。しかし…
おかゆ「ぼく…ここで待ってる」
ちょこ「わたしも…」
葛山「…そうか。お二人とも、無理はしないように…。病院の人には伝えておきます。何かあったら連絡をください」
葛山「みこさん、ラプラスさん。帰ろう」
みこ「わかった…」
ラプラス「うん…」
その後、ホロライブプロダクションに戻ってきた三人。
葛山は社長である谷郷に、みことラプラスは、他のホロメン達にS君のことを報告した。
S君のことを聞いた谷郷社長や来ていたホロメン達の動揺は凄まじかった。また、連絡を受けて、急いで会社に来るホロメンもいた。
オフィス前
ラミィ「S君が死にそうって本当!?」
ラミィが走ってオフィス前にやってくる。
みこ「ほんとだよ…」
ラミィ「なんで、どうして…」
口に手を当て、顔を青くするラミィ。その場には、ラミィ以外にもホロメン達が集まっていた。みこやラプラスを始め、S君の秘密を知っている者。他にも白上フブキや大神ミオ、尾丸ポルカ、天音かなたなど、S君と関りが深いメンバーが集まっている。その全員が、不安な表情を浮かべていた
ラプラス「未確認にやられたらしい…」
ラミィ「そんな…」
葛山「今は病院で治療を受けている。後はあいつ次第だ…」
ラミィ「おばあちゃん…」
ラミィはS君の状態を聞き、ポロポロと泣き始めてしまった。
葛山「ここにいないホロメン達はどうだ?」
みこ「みんな心配してるって。特に、枢ちゃんはラミィと同じ感じで、フログロのみんなで見てるって…」
葛山「そうか…」
葛山(桜木…なんとか生き残ってくれ!!)
その日、ホロメン達の配信はすべて中止になり、全員、眠れぬ夜を明かした。
次の日
朝日が昇り、オフィスを光が差し込む。
葛山「朝か…」
結局病院からは何も連絡がなく、それがS君の容態が安定しないことを表していた。
病院では、ちょことおかゆがガラス越しに、S君を見ながら容態が安定するのを待っていた。ガラス越しに見えるS君は未だに苦しんでいる。
ちょこ「S君…」
おかゆ「早くよくなってよぉ…」
ちょこは手を握って祈り、おかゆは力なく言葉を漏らす。
そうして正午を過ぎた頃。
ピー!ピー!ピー!
S君の心電図が警報を鳴らす。
すぐに看護師が駆けつけてきた。
看護師1「心停止!すぐに先生を呼んで!!」
鳴り続ける警報音に、ちょことおかゆは今一番の焦りを見せる。
おかゆ「S君!!」
ちょこ「そんな…嘘だよ!!S君!!」
そこへ医師が室内に入ってきた。
看護師2「先生!患者が心停止!2分経過!」
看護師は胸骨圧迫をしながら、医師に報告する。
医師「電気ショック準備!急げ!」
看護師に指示を飛ばし、胸骨圧迫を交代する。そこへ、電気ショックの機器が運ばれてくる。
医師「いくぞ、3・2・1!」
ドン!!
S君の体が跳ねる。心電図が一瞬心臓の動きを捉えるが、すぐに動きが止まってしまう。
医師「胸骨圧迫再開!次の電気ショックの準備だ!」
看護師1「はい!」
医師「死ぬなぁー!あんたを待っている人達がいるぞぉ!!」
その後も心肺蘇生を繰り返す。しかし、S君の心臓が再び動くことはなかった。
心肺蘇生が10サイクル繰り返された頃。
医師「はっ!はっ!はっ!」
看護師1「先生、これいじょうは…」
医師「…」
医師は手を止め、S君の脈をはかり、瞳孔を確認する。
そして医師は、ゆっくりと目を閉じた。
医師「…2月14日、午後1時22分。死亡を確認…」
医師「後は頼む…」
医師はそう看護師に伝え、部屋を出る。
おかゆ「先生…S君は…」
医師「…申し訳ない」
おかゆの問いかけに、頭を深く下げる医師。
おかゆ「そんな…嘘だ…」
ちょこ「S君・・・っ!!」
おかゆ「嘘だ…嘘だ嘘だ!!」
病室に駆け込むおかゆ。あとからちょこも駆け込んでくる。
二人はS君をのぞき込む。
ちょこ「S君!S君!!目を開けて!お願い!!」
おかゆ「S君!!」
二人は何度も呼びかけるが、S君が目覚める様子はない。
おかゆ「あっああ…あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
ちょこ「S君…」
バタン!
室内におかゆの叫び声が響き、ちょこはショックで倒れてしまった。
ホロライブプロダクション社長室
谷郷「はい、はい、そうですか…」
ガチャッ
受話器を置く音が静かに響く。
社長室には、谷郷と葛山の二人がいた。そして社長室の外にはホロメン達が控えていた。
全員、電話の内容が気になるようで、扉に耳をつけている。
葛山「社長、桜木はどうだったんですか!?」
葛山の問いかけに谷郷は答えない。
ドン!!
そして、谷郷が力強く机を叩いた。
その様子に、葛山は察してしまう。
葛山「桜木は…死んだんですね?」
谷郷「そうだ…」
葛山「…くっそぉぉぉぉぉぉ!!」
社長室の外では…
ポルカ「え?」
ポルカが目を見開く。そのままフブキやミオの見ると、二人も同じような表情をしていた。三人とも耳がいい種族であるため、中の会話が聞こえてしまったようだ。
みこ「ねぇ…どうだったの? 君はどうだったの?」
みこが三人の近づきながら聞く。ポルカは涙を流しながらゆっくり答えた。
「S君が…死んじゃった」と、
みこ「そんな……」
みこはヘナヘナと座り込んでしまい、両手を床に着く。
みこ「死なないって言ったのにぃ……!!」
ラプラス「嘘だ……こんなのって…」
みことラプラスの言葉を皮切りに、ホロライブプロダクションに悲痛な叫びが響き渡る。
誰もが信じられなかった。
誰よりも優しく、
誰よりも人のために動いてきた青年が、もう二度と目を覚まさないなど。
全◼️はホ◼️メン◼️◼️めに
今回も読んでいただき、ありがとうございます。
今回出てきたギノガは、冬でも活動できるよう少し強化されてます。こいつは、当時クウガを観ていた子供達に強烈なトラウマを植え付けたヤバいやつです。作者もトラウマを植え付けられて、正直嫌いな奴です。
原作を知ってる方は、この後の展開は予想できると思いますが、ちょこちょことアレンジをしてますので、楽しみに待っていただけたらと思います。
また、感想と評価、お待ちしてます。
次回もよろしくお願いします。