今回の話は、かなり頑張って書きました。
いつもより長めになっていますが、最後まで読んでいただけるとうれしいです。
よろしくお願いします。
ホロライブプロダクション社内
かなた「……」
ホロライブプロダクションの社内を、かなたがトボトボと歩いている。髪や服はぐしゃぐしゃに乱れ、歩く背中には哀愁が漂い、無気力、無力感を感じさせていた。かなたは、葛山やホロメンの皆に頼まれたことを果たすことができず、合わせる顔がないと感じていたのだ。
かなた(どうしよう。皆に何て言えば…)
かなた(S君の魂を天国に送るって言ったのに、見つからなかった)
かなた(みんなに頼まれたのに…)
自分を責めるかなた。気を抜くと、涙がにじみそうだった。
そして、フラフラと歩いていると、オフィスの前に来てしまった。
ギィ…
ゆっくりとドアを開くかなた。
みこ「あっ、かなたん」
かなたが入ってきたことに、みこが真っ先に気づく。オフィスには、みこや葛山を始め、ココ達を止めに行ったメンバーも集まっていた。
葛山「天音さん、桜木の魂…無事に送れたのか?」
かなた「……」
かなたはすぐに答えない。その姿を見て、葛山やホロメン達は、不安に駆られる。
まさか…
かなた「うぅっ、みんな、ごめん…。S君の魂、ヒッグ…、見つからなかった…!」
みこ「そんな!」
かなた「ごめん…ごめん!!」
フブキ「謝らないで、かなたんは頑張ってくれたんだよね?」
ミオ「そうだよ。かなたんのせいじゃない」
S君の魂を見つけることができなかったかなたは、その場で泣き崩れてしまう。だが、それを責める者は誰もいない。かなたの姿を見たら、彼女がどれだけ必死に探していたのかが分かるからだ。
だが、S君の魂が見つからなかったという事実は、今この場にいる者たちにとっては衝撃的な話だった。皆かなたを労わってはいるが、心には大きなショックを受けている。
休んでほしいと思っていた相手の魂が見つからないのだ。もしかしたら消えてしまったのかもと想像してしまう。誰も言葉を続けられなかった。ただ静寂だけが、オフィスを支配していた。
そのころ、博衣こよりのラボでは…
ラプラス「こより、どうだ?」
こより「ちょっと待ってね」
ラプラスに声を掛けられたこよりは、顕微鏡やパソコンを操作し、ラプラスたちが回収してきた、ギノガの毒の解析を進める。その姿を、ラプラスやココ達は眺めていた。
こより「…うん。だんだん分かってきた」
マスクを下げ、こよりはラプラスの方を向く。
こより「まず、この毒はキノコの胞子によく似ていることが分かった」
こより「そして、この胞子は35~37度くらいの温度で、最も活性化するの」
ココ「35~37度って、ほぼ人間の体温と同じってことか」
こより「そう。この胞子は、人間の体内に入って活性化し、増殖して、人体を腐らせ、死に追いやる」
ノエル「じゃあ、その毒は体の中に入らなければ効果はないんだね?」
こより「今わかっていることだけで言えばそうなんだけど、でもまだわかってないことがあるかもしれないから、断定はできない」
ラプラス「そうか…」
ラミィ「…それで?あいつを倒す方法はないの?」
こより「わからない。今言えるのは、毒は、極端な低温や高温には弱いっていうことくらいしか…」
ココ「なら、あたしの炎やラミィの雪の魔法は効果がありそうだな。万が一、少し離れたところで毒の胞子を吐かれても対処はできる」
ラミィ「そうだね。毒の対処は任せて」
いろは「あとは、どうやって倒すかでござるな。普通の攻撃だと倒しきれないと思う」
ノエル「うん、あのときの未確認にも私たちの攻撃は全然効かなかったからね」
ココ「はぁ、まだまだ準備が必要そうだな」
毒の対処には目途がついたが、肝心のギノガを倒す方法が見つからない。グロンギには、生半可な攻撃は効かない。倒すには、クウガのような、常識はずれの威力の乗った攻撃が必要。さらに封印エネルギーを注がなければならない。しかし、そのことをココ達は知らない。決定打に欠ける。それが、ココ達を悩ませていた。
ピコン
ラプラス「ん?」
ラプラスのスマホの通知音が鳴り、ラプラスがスマホを確認すると、みこからのLINEが届いていた。
ラプラス(なんだろう。また説得のメッセージか?)
みこ達から、また戦うのをやめるよう言われるのかと思い、メッセージの内容を確認する。
ラプラス「!!」
みこ『S君の魂、見つからなかったって。どれだけ探しても、どこにもないんだって。消えちゃったかもしれないって。かなたん、泣いてるよ。ねえ、お願いだから戦うのをやめて。もう誰も死んでほしくないよ。』
メッセージを見て、ラプラスの表情が強張った。その様子にココ達が気づき、ラプラスに声を掛ける。
ノエル「ラプちゃん、どうしたの?」
ノエルの問い掛けに、ラプラスはゆっくりとココ達の方を向き、メッセージの内容を伝えた。
ラプラス「S君の魂が、見つからなかったって…。消滅してしまったかもしれないらしい…」
ラプラスから伝えられたことを聞き、ココ達は、大きく衝撃を受けた。心が大きく抉られるようだった。
ココ「っっっ……!クッソ…!」
いろは「こんなのあんまりでござる…」
ココといろはが悔しさを滲ませた言葉を漏らす。ノエルもこよりも辛そうな顔をしていた。
ラミィ「…………………そう」
ラミィは目を閉じ、静かに言った。その姿は、大きく動揺した様子はなかった。しかし、体はブルブルと震えており、手は強く握られ、その拳からは血が滴り落ちていた。
ラミィ「なら、なおさらアイツを倒さないといけない」
ラプラス「ああ、そうだな…」
ココ「なんとか倒す方法を見つけないと」
そうしてココ達は、またギノガを倒すための方法を考え始めた。
都内某所
東京の夜の街を多くの人が行きかい、あちこちから人々の声が聞こえる。未確認が蔓延っているかもしれない街でも、人々の動きは止まらない。だが、繁華街を少し離れた公園になると、ちらほら人影が見えるが、比較的静かな場所となっている。そんな中、白髪の青年が一人、人々の方へ向かって歩いてくる。そして、投げキッスをするような動作をし、人々の間を抜けていく。すると、その場にいた人々は一斉に苦しみだし、バタバタと倒れこんでいった。
ギノガ『ボセゼバギンググシギドドググビンレ(これで29人目)』
そう言い、手首にはめられた腕輪についている装飾品の一部を動かした。
ギノガの毒は、本来は口から直接相手の体内へ注ぎ込まれるのだが、今のギノガには、それをする必要がなくなっていた。
進化、あるいは変異。
ギノガは、自身が傷ついたあと、そこから再生する際に、自身の性質を変質させ、強化されていく。今のギノガは、寒くても空気中に毒を散布することができるようになっている。さらに、身体能力も向上している。
ココ達が、懸命にギノガの対策を考えているところだが、無情にもギノガは強くなっていく。はたして、ギノガを倒す方法は見つかるのだろうか…。
その後もギノガは、新たな標的を探し、夜の街に溶け込んでいった。
2月15日早朝
みこ達は一度帰宅し、再びホロライブのオフィスに集まっていた。表情は酷い疲れが見える。眠れなかったのだろう。前日も、S君の安否が気になり、ほとんど寝ていなかったため、ほぼ二徹に近い。
葛山「…」
みこ「…」
集まったのはいいが、誰も何も言わない。沈黙しかできない。そのまま時間だけが過ぎ去っていくのかと思われたとき、
ガラッ
シオン「みんな、おはよう」
入ってきたのは紫咲シオンだった。
みこ「シオンちゃん…」
シオン「大丈夫、じゃないよね…」
周りを見渡し、酷い状態であることは一目瞭然だった。シオンは、特に酷く憔悴しているかなたに声を掛けた。
シオン「かなた、大丈夫?」
かなた「シオン…うん、大丈夫」
弱々しい声だった。
シオン「ねぇ、今どういう状況なの?」
葛山「…俺から話そう」
葛山がこれまでにあったことをシオンに説明する。シオンは、時折辛そうな顔をするも、一つずつ、ゆっくりと受け止めていく。そして、かなたがS君の魂を天国に導こうとするも、見つからなかったことを伝える。そのとき、シオンが違和感を感じ、口を開いた。
シオン「…ねぇ、かなた。人って死んだら普通は天界に行くんだよね?」
かなた「うっ、うん。そうだよ。それがどうかしたの?」
シオン「そしたらさ、見つからなかったっておかしくない?」
ミオ「えっ…何を言ってるの?」
シオンの言葉に疑問を持つミオ。シオンは続けて言う。
シオン「ごめん。これは私の想像でしかないんだけど、かなたが言うように、人が死んだら、魂は天界に行くのが普通なんだよね?なのに天界で見つからないってことは…」
シオン「S君はまだ生きてるんじゃないの?」
シオンの言葉に、全員が目を見開く。
シオン「ごっごめん!ほんとに私の想像なだけなんだけど!でも、今回の未確認の犠牲者って、みんな遺体が朽ちてったって聞いてて、でもS君の体は朽ちてないみたいだし、天界に魂がないから、もしかしたら心臓が止まってるだけで、まだ生きてるんじゃないかって…」
みこ「S君が生きてる?」
おかゆ「まだ、死んでない…?」
シオンの想像は、なんの確証もない話だった。しかし、妙に納得できてしまう。徐々に、葛山やホロメン達の目に光が戻ってくる。
シオン「ダメもとだけど、私の魔法で、S君の体に魂が残ってないか見てもいいかな?もしまだS君の体の中に残ってれば、語りかけられるかも…」
もう無理だ。何もできないと思われたところに、一筋の光明が差す。葛山やホロメン達の体は、自然と動き始めていた。
みこ「…病院に行こう。…もう一度、S君に会いたい」
ちょこ「私も行きたい!」
フブキ「うん!みんなで行こうよ!」
葛山「よし、すぐに車を回す」
そして葛山とホロメン達はS君が眠る病院に向かった。
〇〇病院
再び病院にやってきたみこ達。目の前には静かに横たわるS君。
そしてその横にシオンが立ち、杖を構える。
シオン「じゃあ、始めるよ」
シオンが目を閉じ、杖が黒い光を放ち始める。
みこ「どう?シオンちゃん」
シオン「ちょっと待って…」
シオンは集中して探し続ける。
シオン「!」
シオンが何かに気づき、目を開ける。
かなた「シオン、どうしたの!?」
かなたが前のめりになりながら聞いてくる。
シオン「見つけた…」
シオン「S君は、生きてる!!」
その場にいた全員に衝撃が走る。
だがその衝撃は、これまでのものとは違った。
歓喜
S君が生きていると分かり、熱いものが込み上げてくる。
ちょこ「S君…‼」
みこ「うぅ、よかったぁ~!」
おかゆ「ほんとに、ほんとによかったぁ!!」
葛山「桜木!お前ってやつは!!」
それぞれ涙を流しながら喜ぶ。
しかし、
シオン「あっ、待って、反応が弱くなってる!!」
フブキ「そんな!」
ミオ「だめ!S君!戻ってきて!!」
シオン「あぁっ、消えちゃう!!」
葛山「桜木ぃ!戻ってこい!!」
みこ「S君!みんな待ってる!!お願い!戻ってきてぇ!」
おかゆ「S君!!」
ポルカ「S君!」
みこ達は懸命に呼びかける。
そこに医師が慌てた様子で入ってくる。
医師「取り込み中すまない!」
かなた「先生!S君が生きてるんです!用事なら後で…」
医師「それは承知している!だが、こればっかりは伝えなければと思いまして!!」
医師「未確認がまた出たそうだ!!それに、今度は白昼堂々と人を
殺してるらしい!!」
廊下のテレビで流れた臨時ニュースを見たのだろう。これは伝えなければならないと思い、わざわざ来てくれたのだろう。
葛山「なっ!!」
フブキ「そんな、こんなときに…。どうしよう、ココちゃん達が行っちゃうよ」
ミオ「まずいよ…。ねぇS君!起きて!S君が起きてくれないとココちゃん達が!!」
ちょこ「お願い!目を覚まして!!」
状況が悪くなっていく中、みこ達は呼びかけ続けた。
同時刻 こよりのラボ
TV『臨時ニュースです!未確認生命体第22号が出現し、次々と市民を襲っているという情報が入ってきました!場所は〇〇区□□です!近くにいる方々は、今すぐに避難してください!繰り返します!――――――――』
ココ「動きだしやがったか…」
いろは「どうするでござる?まだ有効な手段が見つかってない…」
ノエル「でも、このままだと逃げ遅れた人たちが…」
ラプラス「くっそ!どうしたら…」
ギノガを確実に倒す方法がまだ見つかっていない。行動を起こすべきか、それとも動かないべきか。ココ達は葛藤し、静寂が支配する。だが、その静寂を破る者がいた。
ラミィ「私は行くわよ。今動かなかったら、次のチャンスがいつ訪れるかわからない」
こより「そんな、無策で挑もうっていうの!?」
ラミィ「毒の対処はわかってるでしょ?もうあとは、あいつが死ぬまで攻撃し続けるだけよ」
こより「でも…」
ココ「…行くぞ」
ココ「S君がやろうとしたことを、あたしたちがやるんだ」
ココ(S君、あとは任せて)
警視庁
警視庁でもギノガの動きは把握しており、警視総監室では、警視総監と副総監が話している。
警視総監「ついに大胆な動きを始めたか」
副総監「はい。既に市民に被害が出ています」
警視総監「現場の方には?」
副総監「所轄がすでに動いており、市民の避難誘導及び未確認生命体の討伐に向かっています」
警視総監「勝算はあるのか?」
警視総監が尋ねる。これまで、幾度となくグロンギを倒そうと試みたが、悉く失敗してきたからだ。警官の標準装備の拳銃では、グロンギに傷をつけることすらできない。科警研から、何度か対グロンギ用の装備が提供されたが、いずれも大した効果は得られなかった。そして今回も、新たな装備が提供されている。
副総監「科警研から新型の弾丸が提供されましたが、弾数も少なく、効果があるかは…」
警視総監「そうか…」
警視総監は、グロンギに対して、明確な対抗手段がないことに歯痒さを覚える。グロンギを討伐し、市民の犠牲を出したくないという思いもあると同時に、グロンギに直接対応する警官や刑事達の身も危険にさらし、犠牲となってしまうことも憂いているのだ。
警視総監「今回は、自衛隊にも協力を仰ぐ。なんとしても、未確認を止めるんだ」
副総監「はい」
警視総監と副総監も、己のできることをするために動き始める。
??????
どこか真っ暗な空間。辺りには何もなく、そこは水の中なのか、または暗い雲の中なのか。
そこに、一つの影が漂っている。
ここは…どこだ…
俺は何をして…
何もわからない…
意識が…
??「……さ…。…て……い」
なん…だ…?
??「宏…さ…。お…てく……さい」
誰かが…呼んで…?
??「宏斗さん。起きてください!」
この声…
女神「桜木宏斗!!起きなさい!!!」
S君(女神様…?)
〇〇区□□
そこでは、既に警官と自衛隊がギノガとの戦闘を開始していた。
刑事1「撃てぇ!」
刑事の発砲の合図とともに、ライフルを構えた刑事や警官たちが、科警研から提供された弾丸をギノガに撃ち込んでいく。弾丸はギノガに命中し、着弾した衝撃で、ギノガは少し体を揺らすが、大きなダメージを受けた様子はなかった。
ギノガ『バビバギダババ?(何かしたかな?)』
刑事2「ダメです!全く効果がありません!!」
刑事1「クソっ、今回もダメか!!」
自衛隊員「新型の弾丸がダメなら、現行の装備で何とかするしかない!敵は止まってくれないぞ!!撃ち続けろ!!」
科警研から提供された新型の弾丸が、ギノガに通じなかったことに悪態をつく刑事。それを見た自衛隊員は、すぐさま現行の装備で対応しなければならないと判断し、刑事や警官達に檄を飛ばす。警官、刑事、自衛隊員は、それぞれの武器でギノガを攻撃し続けた。
そこに、火球がギノガめがけて飛んでいき、ギノガに命中した。火球が飛んできたことに、その場にいた者たちは驚き、火球が飛んできた方を見る。そこにいたのは、ココ達だった。
ココ「この戦い、あたし達も混ぜてもらう」
刑事1「何を言っているんだ!!民間人は早く避難するんだ!!」
ラミィ「そうはいかないわ。あいつは、私たちの大切な人を奪った…。だから、あいつを倒して、仇を取るの!!」
ラプラス「それに、心配は必要ない。自分の身は自分で守る。吾輩たちは、人間よりも力がある」
刑事1「だが!!」
スッ
刑事1「うっ」
いろはが刑事の顔の前に、刀を向ける。刀を向けられた刑事は、動きを止めてしまう。
いろは「ごめんなさい。心配してくれるのはうれしいでござるが、私達にも止まれない理由がある」
ノエル「いざというときにはちゃんと逃げるから心配しないで」
ギノガ『ゲガグズゲダベ。ゼンギンボソギデガゲスジョ。(餌が増えたね。全員殺してあげるよ。)』
ギノガは、銃撃をものともせず、ホロメン達が乱入してきたことで、さらに殺せる人数が増えたことに機嫌を良くする。そして右手を口元に当て、その手を勢いよく口から離した瞬間、ギノガの口から毒の胞子が噴出された。
ココ「ラミィ!!」
ラミィ「ええ!」
ココが火球を放ち、胞子の大半を焼く。そして残った胞子を、ラミィが雪の魔法で絡めとり、氷漬けにして無効化した。
ギノガ『バビ!?(なに!?)』
ラプラス(よし、上手く無効化できている!)
胞子が無効化されたことに、さすがのギノガも驚き、同時にラプラスは手ごたえを感じた。
刑事1(22号の毒を無力化した?なんなんだこいつらは…。)
刑事1(だが、これなら戦いやすい!)
刑事は、胞子を無効化したココ達に驚き、何者なのか疑問に思うが、ココ達が今は有力な戦力であることを認識し、戦意を上げる。
ギノガ『ボギャブバラベゾ!!ボソギデジャス!!(小癪な真似を!!殺してやる!!)』
ギノガは苛立ちを見せる。ギノガにとって、殺しの手段として常用してきたものを封じられたのは、これまでにないことで、自身が課したゲゲルのルールにも影響が出てしまう。これにより、先ほどよりも明確な殺意を持って殺しにかかろうとしていた。
???????
女神「宏斗さん。お久しぶりですね」
S君(女神様、なんで…。それに、俺は…?)
女神「なんでかというと、貴方に早く目を覚ましてもらうためです。貴方は、敵の毒を受けてしまったんですよ」
S君は、毒を受けたこと女神から聞き、ギノガから毒を受けてしまったことを思い出した。
S君(そうか、俺はあいつに…)
女神「ええ、そうです。ですが、もう体内の毒は消えています」
S君(そうですか。でも…体が動きません…。意識も、消えそうです…)
女神「何を言っているんですか。そんなことは許されません。貴方は、自身の使命を忘れたのですか?起きるのです」
S君(でも…)
女神「貴方の代わりに、貴方の大切な人たちが、今戦っているのです」
ピクッ
S君(大切な人達が…戦っている…?)
S君の目の前に映像が映し出される。そこには、懸命に戦うココ達の姿があった。
ココ「ああクソ!攻撃が通らねぇ!!」
ラプラス「力が足りない!!」
ココは火球を、ラプラスが光弾を放ち続けるも、ギノガの体表を焼くことができない。
ラプラス(封印が仇になってるのが、こんなにもどかしいなんて!!)
ノエル「このぉ!!」
ドゴッ!
ノエルの振り下ろしたメイスがギノガに直撃するが、首が少し動いただけで、ダメージが全く入っていない。
ギノガは、ノエルの方を向き、手を口元に当てる。
いろは「まずい!!」
ギノガの動作から、胞子を噴出させようとしていることに気づいたいろはが、すぐにノエルを抱えて、離脱する。離脱した瞬間に胞子が放たれ、ノエルがいたところは、胞子でいっぱいになった。
いろは(あっ、危なかった!!)
ノエル「いろはちゃん、ありがとう!」
いろは「いいでござる。だけど、攻撃が全然通らなくて倒せる気がしない!!」
ラミィ「このぉ!」
ラミィがギノガめがけて魔法を放つ。魔法が当たったギノガは、一瞬氷漬けになるも、すぐに氷を砕いて動き出す。
ラミィ「はぁ、はぁ」
息を乱すラミィ。これまで、何度も魔法を放ってきたのだろう。顔には疲れが見え、限界が近いことが分かる。
ラミィ「もういいかげん倒れてよぉ!!」
S君(ココさん、ラプラスさん、いろはさん、ノエルさん。それにラミィさん!なんで戦っているんだ!)
女神「貴方の仇を討ちたい。貴方の意思を継ぎたい。彼女たちはそういう思いで戦っているのです」
女神「それに、彼女たちだけではありません。彼女たち以外にも、懸命に戦う人々がいます」
映像が切り替わり、警察や自衛隊も、ココ達と協力して戦う姿が映る。必死に銃を構え、撃ち続け、何としてもグロンギを倒そうとしているのが伝わってくる。その映像の端には、ギノガの攻撃を受け、力尽きてしまった者も映っていた。
女神「貴方は、このままでいいのですか?」
S君(ダメだ…そんなの絶対にダメだ!!)
女神「そうですね。このままだと、彼女たちはいずれ殺されてしまうでしょう。助けられるのは貴方だけです」
女神「それに、聞こえますか?貴方を呼ぶ声が」
S君(俺を呼ぶ声?)
耳を澄ませるS君。すると、かすかに声が聞こえてくる。
さらに耳を澄ませる。
みこ「S君、お願い!目を覚まして!」
おかゆ「頼むよ!起きて!」
ちょこ「S君!」
ミオ「お願いだよ!S君が起きてくれないと、ココちゃん達が!」
フブキ「ココちゃん達を助けて!」
ポルカ「S君!お願い!!」
葛山「桜木!いいかげん起きろぉ!」
かなた「みんな、S君を待ってる。目覚めて…!」
必死に自身を呼ぶ声を聞くS君。だんだんと強い顔つきになってくる。
S君(何をやっているんだ俺は…。みなさんを危険にさらして、みなさんに心配かけて…)
重い体を必死に動かし、起きようとする。S君が動き出すのに従って、暗い空間に光が差し込み始めた。
女神「みんな、貴方を待っています。さあ、行くのです」
S君(はい、行ってきます)
S君は、光に向かって進み始めた。
みこ「はぁ、はぁ、S君…」
みこは、何度呼びかけても反応がないS君の様子に、声をだんだん小さくさせ、体から力が抜けてしまう。叫び続けた疲れが出てきてしまっている。葛山たちも、声を出せなくなってきている。
みこ「ねぇぇ、S君、お願いぃ…」
みこは、S君の手を握り、か細い声で呼びかける。もう無理かと、諦めかけたそのとき。
ピクッ
みこ「えっ?」
僅かだが、みこの手をS君の手が握り返す。
そして、その手には温かさが戻り始めていた。
ノエル「はぁ、はぁ、もうこれ以上は…」
ノエルは肩で息をして、座り込みながら声を漏らす。ココ達はまだ立っているが、全員ノエルと同じように、肩で息をしている。立っているのもやっとのようだ。警察や自衛隊達もじりじりと追い込まれている。パトカーを盾に、銃撃を行うも、効果はない。その隙間には、殺され、倒れてしまった者たちがちらちらと見える。逆に、ギノガは未だ健在だった。手近な警官を捕まえては、圧倒的な力で投げ飛ばしていく。
ココ「ここまでか…」
ラプラス(もう限界だ…)
誰もが諦め、ギノガの視線がココ達を捉えようとしたとき、
ギノガ『!!』
バッ!
ギノガが何かに気づき、ココ達とは別の方向を見る。
ギノガ『ギビデギダボバ、クウガ』
ギノガがそう言った瞬間、何かがギノガに飛び掛かり、ギノガと共にパトカーの向こう側へ消える。
突然ギノガが吹き飛んだことに、その場にいる者たちは驚き、呆然と立ち尽くしてしまう。そして2、3秒たったとき、バッとギノガが起き上がり、ココ達を見る。
その瞬間、
クウガ「ハッ!!」
BGM 〜戦士〜
ギノガの背後から、白い姿のクウガが現れ、ギノガに掴みかかる。その姿を見て、ココ達は目を見開いた。
ラプラス「S君…?」
クウガは、何度もギノガの顔面をパトカーに叩きつけ、攻撃を加えていく。
ココ「はっ、ははっ!夢じゃねぇよな!」
ノエル「うん!夢じゃない!S君だよ!」
いろは「生き返ったんだ!!」
ラミィ「S君…!!」
ココ達は、目の前でギノガと戦うクウガの姿を見て、心が歓喜で満たされる。ラミィにいたっては、涙を流し喜んでいる。
警察や自衛隊達も、クウガが現れたことに安堵の表情を見せている。
勝てるかもしれない。
僅かだが希望が見え始めたことを、誰もが感じていた。
クウガ「ふっ!だぁ!!」
クウガは、ギノガになおも攻撃を続ける。力強く繰り出される拳、振るわれる脚。果敢に攻めるクウガだが、少しずつギノガの反撃を受け始める。クウガの攻撃を搔い潜り、腹に蹴りを入れる。よろけたクウガの首を掴み、パトカーに押さえつける。
クウガ「グッ、グウウウウウ!ガァ!!」
両手を振り上げ、自身を押さえつける手を弾き上げ、蹴りを入れる。
ギノガ『グ、ボンォ!!(グッ、このぉ!!)』
ギノガも負けじとクウガを殴り、体勢を崩したクウガを掴み上げ、ココ達の方へ投げ飛ばした。
クウガ「ぐあっ!!」
ノエル「S君!!」
ノエルが声を出し、ココ達が駆け寄ってくる。
クウガ「はぁ、はぁ、はぁ」
クウガ(くそっ、まだ力が…!)
ギノガ『ボンゾボゴ、バンゼンビボソグ!!(今度こそ、完全に殺す!!)』
クウガにとどめを刺そうと、ギノガはクウガとココ達の方へ近づこうとする。
だが、
自衛隊員1「撃てぇ!」
自衛隊や警官から激しい銃撃が繰り出され、ギノガを襲う。
刑事1「新種を援護しろ!22号を倒せるのは新種だけだ!!立ち直るまで絶対に近づけるなぁ!!」
警官「うおおおおおおおおおおおお!!」
ギノガ『ブゴ、グドドグギギバガ!(くそ、鬱陶しいなあ!)』
銃撃をくらっても効きはしないのだが、弾丸が当たる感覚はあり、どうしても気を取られてしまい、苛立ちを募らせる。
ココ「あたし達もやるぞ!!」
ラミィ「ええ!!」
ココ達も再びギノガに向かって行く。
クウガを援護するために、みんなが死力を尽くして、ギノガを攻撃する。その姿を見て、クウガは奮起する。
クウガ(倒れては…いられない…!!)
そしてクウガは立ち上がり、ギノガを取り囲むココ達を飛び越え、ギノガの胸に拳を叩きこむ。それを受けたギノガは大きく吹き飛ぶ。
クウガは構え、ギノガの動きに備える。
ラプラス「S君大丈夫か?」
ラプラスが小さく声を掛け、ココ達がクウガの両脇に並び立つ。
クウガは、構えを解かずにココ達を見て、一言だけ言う。
クウガ「皆さん、今回だけは力を貸してください」
クウガから言われたことに、ココ達は一瞬驚く。
だが、すぐに笑顔になり、力強く返事をする。
ココ「ああ!任せろ!」
ラプラス「やってやるぞ!」
いろは「決着をつけるでござる!」
ノエル「私達の力、使って!」
ラミィ「絶対に勝って帰るよ!」
ギノガ『ジョグギビボスバ!(調子に乗るな!)』
ギノガが起き上がり、怒りの声を上げる。
クウガ「行きますよ!」
ココ・ラプラス・いろは・ノエル・ラミィ「「「「「ああ!(ええ!)(うん!)」」」」」
クウガの掛け声とともに5人が動き出す。
ココ・ラプラス「「くらえ!」」
ココとラプラスが、火球と光弾を放ち、顔面に当てることで、視界を防ぐ。
いろは・ノエル「「やあ!!」」
いろはとノエルが、ギノガの後頭部に斬撃と打撃を加え、注意を反らす。
ラミィ「くらいなさい!!」
ラミィが、今放てる最大出力の魔法でギノガの足を凍らせ、身動きをとれなくする。そして、
クウガ「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
バキィ!!
クウガが力強い雄たけびを上げ、ギノガに飛び込み、ギノガの口元を全力で殴りつけた。ギノガは、殴られた勢いで足元の氷が砕け、後方へ吹き飛び地面に激突する。そして、口元を両手で押さえ、口を襲う激痛に激しく悶える。
クウガ(よし、これで毒は吐けない…)
ギノガは口元を抑えつつ、よろよろと立ち上がってくる。
ギノガ『ジョ、ジョブロ…(よ、よくも…)』
クウガ(今しかない!)
クウガは少し下がり、ギノガと距離を取る。そして一気に走り出し、ギノガの手前で跳躍。空中で一回転し、右足を突き出して『グローイングキック』を放った。キックを受けたギノガは、再び後ろに飛ばされ、その胸に封印の文字が浮かび上がる。しかし、その文字は不完全で、通常の半分程度の文字しか浮かび上がっていなかった。そして、文字はすぐに消えてしまう。
クウガ(やっぱり、まだ不完全か…)
クウガ(だったら…何度でも叩き込んでやる!)
クウガ「うおおおおおおお!」
二度目のキック。これもギノガに直撃し、再び封印の文字が浮かび上がる。
今度は三分の二ほど浮かび上がっていた。
ギノガ『ボンバロボ…(こんなもの…)』
ココ(S君…)
ココ達や警察・自衛隊はクウガとギノガを見つめる。この戦いの決着を全員が見守っていた。
クウガ(あと少しだ!!)
その時、クウガの足に埋め込まれた霊石が発光し、赤く染まる。
クウガ「ふっ!」
クウガは、マイティキックの構えを取る。そして、ギノガに向かって駆け出す。ギノガの手前で跳躍し、空中で一回転。
クウガ「おぉぉぉりやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
叫び声とともに、『マイティキック』を繰り出し、ギノガに直撃。
ギノガは、先ほどよりも大きく吹き飛び、その胸には完全な形の封印の文字が浮かび上がっていた。そして、封印エネルギーがゲドルートに向かって流れ始める。
ギノガ『ゴッ、ゴンバ…(そっ、そんな…)』
エネルギーがどんどん流れ、ギノガは苦しむ。
ギノガ『ラダ、ギソギクウガビラベスバンデェ…(また、白いクウガに負けるなんてぇ…)』
クウガ(また…?)
ギノガ『クッ、クウガァァァァァァァァァ!!』
ギノガは、クウガへの恨みを込めた声を上げ、爆散した。
ココ「やった…倒したぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ノエル「みんな!やったね!!」
ラプラス「ああ!吾輩たちの勝利だ!!」
ココ達はギノガとの戦いに勝利したことに歓喜の声を上げる。それは、警察や自衛隊の方も同じだった。皆、笑顔を浮かべている。クウガはその様子を見て、こくりと頷いた。そして、クウガがココ達を含めた、今回の戦闘に参加した全員の方を見ていることに気づいた全員が、クウガを見る。視線が自分に集まっていることに気づき、クウガはサムズアップをし、最大限の感謝を伝えるのだった。
そして背を向け、飛来してきたゴウラムの足につかまり、飛び去って行った。
〇〇病院
ギノガとの戦闘を終えたココ達は、戦闘があった場所を後にし、こよりにも連絡を入れ、病院に来ていた。受付でS君の病室を聞き、真っ先に病室へと向かった。
ガラッ!
ココ「S君は戻ってるか!?」
勢いよく扉を開き、S君が戻ってきているかを聞く。
S君「ああ、ココさん達。俺はここですよ!」
ベッドに座り、みこ達に囲まれているS君が返事をする。
元気そうな姿に、いつものS君が戻ってきたのだと実感する。
ラミィ「S君…、おばあちゃん…。ほんとによかったぁ~!!」
ラミィが涙を流しながら飛び込んでくる。
S君「うわっ!ラミィさん!?」
ミオ「ちょっと、ラミィちゃん!S君は病み上がりだし、戦った後でヘロヘロなんだよ!」
フブキ「まぁまぁ!推してた人が生き返ったんだから無理もないよ~」
ラミィ「うわーーーーーん!よがっだぁーーーーー!」
S君「あはは…」
ラミィに注意するミオをフブキが宥め、ラミィはわんわん泣いている。
ラプラス「よく…戻ってきた。おかえり。」
ラプラスはS君の手を握り、戻ってきてくれたことの喜びの言葉を述べる。
S君「ええ、皆さんが頑張ってくれたからです。みなさんの声、聞こえていましたよ」
S君「心配かけてすいませんでした。それと、ありがとうございました!」
その言葉に、全員が笑顔になる。その後も各々が、何度も「おかえり」を言ったり、元気になったら何をするかなどガヤガヤと騒ぎ始め、看護師が来て叱られるまで騒いでいた。
そしてS君が蘇生したことは、社長の谷郷を始め、ホロメンやホロライブプロダクション関係者に連絡が行き、誰もがS君が生き返ったことに喜んだ。
S君はその後、三日ほど入院してから退院するのだが、その間にホロメン達が代わる代わるS君の見舞いで訪ねてきた。中止されたバレンタイン企画も遅れて実施されたようで、ホロメンが各自作ったチョコを置いていき、チョコの山ができてしまった。
S君はその山を見て苦笑いしつつも、このあたたかい日々をまた送ることができることを素直に喜ぶのであった。
全てはホロメンのために
いかがだったでしょうか。
今回は、クウガとホロメン、警察、自衛隊が協力して戦う話にしました。熱い展開になっていたでしょうか?
死の淵から戻ってきたクウガですが、五代雄介はなんであんなにバンバン戦えるんですかね?(笑)
S君はそこまで強くないので、今回はこういった展開にしてみました。
ちなみに、ギノガが死に際に口にしていた言葉ですが、今作のギノガは原作のギノガの転生体という設定です。
原作同様、クウガのグローイングフォームに2回も負けるという皮肉を込めてみました。
今回も読んでいただき、ありがとうございました。
感想、評価お待ちしています。
次回もよろしくお願いします。