今回は、ギノガとの戦いを終えたS君のその後を描いています。
よろしくお願いします。
○○病院
S君が息を吹き返し、ギノガを撃破した翌日。S君は経過観察のため、まだ入院していた。そこに、S君の見舞いのため、ギノガの件に関わったホロメンや葛山が病室を訪れ、賑やかに談笑していた。
葛山「しっかし、今回は流石に心に来たぞ。ほんと、よく息を吹き返してくれたよ」
S君「いやぁ、ほんとに皆さんにはご心配をおかけしました」
みこ「でも、どうして心臓が止まってたのに死ななかったの?普通は死んでるよね?」
みこは、S君が心臓が止まった状態から息を吹き返したことの疑問を口にする。喜ばしいことではあるのだが、それは生物としての仕組から大きく外れている。みこが疑問に思うのも仕方がない。
S君「それは、こいつのお陰です」
S君が腹部をさすりながら答える。
だが、他の面々はどういうことかわからず、腑に落ちない顔をしている。
ポルカ「なぁ、それってどういうことなんだ?」
S君「あぁすみません。ちゃんと説明しますね」
S君はポルカの質問に対し、ゆっくりと話し始める。
S君「まず、俺の体内にあるベルト。アークルっていうんですが、これには装着者が怪我をしたり毒などを受けたりしたときに、それを治そうとする働きがあるんですよ。」
S君「俺がギノガ…未確認の毒を吸ってしまったとき、最初は体温を上げることで対抗しようとしていました」
S君「でも、それでは毒を殺しきれないと判断したアークルが、今度は心臓を止め、体温を急激に下げることで毒に対抗しようとしたんです」
S君「その結果、俺は助かったということです」
ラプラス「なるほどなぁ。全く常識外れなやり方だ」
葛山「桜木、お前は最初から毒を受けても助かることがわかっててヤツと戦ってたのか?」
S君「いえ、それは考えていませんでした。アークルには装着者を助けようとする働きがあるのを知ってても、確実に助かるかどうかは分かりません。運が悪ければ回復し切る前に死んでしまうかもしれませんからね。今回は運がよかっただけだと思います」
ラミィ「ほっ、ほんとに助かってよかったよ…」
ミオ「うん、これを頼りに戦っていくのはかなりリスキーだね」
S君から語られた話を聞き、みこたちは改めてゾッとしてしまう。今回はあくまで運がよかっただけで、もしかしたらそのまま死んでしまっていたかもしれない。周りがどれだけ呼びかけても息を吹き返さなかったら…。誰もが考えたくないことだった。
葛山「とりあえず、その…アークルってやつの機能はあまりあてにし過ぎるんじゃないぞ。そんな博打のようなことをしていたら、命がいくつあっても足らん」
S君「そうですね。できるだけ、アークルに頼らないようにします」
アハハと苦笑いし、また腹部を擦りながら答える。
おかゆ「…」
フブキ「どうしたの?おかゆん」
腹部をさするS君を黙って見ているおかゆに、フブキが声を掛ける。
おかゆ「あっ、いや、ボーっとしてた訳じゃないよ。ちゃんと話は聞いてたよ」
おかゆ「お腹を擦ってるS君を見ててなんだか…」
おかゆ「妊娠しましたって人みたく見えちゃって笑」
S君「ブホッ!!」
フブキ「ちょっ、おかゆん!何言ってんだよw!!」
おかゆ「いや、ごめん!大事な話なのはわかってるんだけど、どうしてもそう見えちゃってw!」
ちょこ「それにさ〜S君は男だよ〜?妊娠なんてするわけないじゃん」
ラプラス「普段からスケベ路線走ってる人は違いますねぇw」
S君「あ、あはは…」
葛山「はぁ、全く…」
ホロメン達からは笑いが起こり、S君は苦笑いし、葛山は呆れていた。
ノエル「あっ、そろそろ面会時間終わりだね」
葛山「じゃあ、俺達は帰るか。桜木、またな」
みこ「S君、お大事にね」
S君「はい、来てくださってありがとうございました。帰り道、気をつけてくださいね」
葛山達は立ち上がり、ぞろぞろと部屋から退出していく。その際、医師が入れ替わるように病室に入ってきた。
医師「桜木さん、調子はどうですか?」
S君「はい、調子は悪くないです。今回はいろいろとありがとうございました」
医師「いえいえ、無事でなによりですよ。おっと、申し遅れました。私はこの病院の院長で、伊達といいます。よろしくお願いします」
S君「はい、伊達先生ですね。よろしくお願いします」
医師の伊達が自己紹介をしたところで、再び体調の確認の話に戻り、いくつかやり取りを進めていく。
伊達「とりあえず問題は無さそうですね」
S君「はい、不調や違和感などはないですね」
伊達「そうみたいですね。では最後の質問です」
伊達「あんたは人間か?」
S君「!!」
先程までの丁寧な口調とはうってかわり、伊達の直球すぎる質問に一瞬ビクッとしてしまうS君。伊達は続けて話す。
伊達「あんたが目覚めた後、いろいろ検査したんだが、これはなんだ?」
伊達が見せてきたものは、S君のレントゲン写真だった。その写真には、腹部にはアークルの影が写っており、そこから細い線が毛細血管のように全身に伸びていた。
伊達「このベルトのようなものが伸びてるのはおそらく神経だ。これが全身のありとあらゆるところに伸びている」
伊達「野戦病院にもいたことがあるが、こんなのは見たこともないし、普通じゃありえない」
伊達「もう1回聞くが、あんたは人間か?」
レントゲン写真に写っていたものから、伊達が改めて聞いてくる。
S君(…これは誤魔化しようがないな)
すこし葛藤するも、目の前の決定的な証拠に、誤魔化すことは無理だと判断したS君は、クウガのことを話した。
伊達「なるほど……。つまり、このベルトがあんたの身体を助けている。そして、あんたはこのベルトを使って未確認と戦っているわけか」
S君「はい、そういうことになります」
伊達「はぁ〜、そこそこ医者をやってきたけどこんなのは初めてだ」
伊達はこれまで多くの患者を見てきた。しかし、S君のような身体を見るのは初めてで、がっくりと項垂れる。
S君(まぁそうですよねぇ)
伊達「…ちなみにだがこの神経、これ以上伸びることはないのか?」
S君「!」
S君(この人、鋭いな…)
S君「…おそらく今後も伸びると思います」
伊達「そうか…」
伊達「なら仮にそうだとして、あんた…人間のままでいられるのか?」
S君「…」
S君は伊達の指摘、質問に対して黙ってしまう。S君には伊達が予想していることがわかっているからだった。そしてそれは、S君も微かに恐れていることでもあった。
S君「このまま神経が脳まで伸びれば…」
S君「俺は、戦うだけの生物兵器になるかもしれません」
S君「でも!…俺は、そうならないようにするつもりです」
不安そうながらも、はっきりと言葉にするS君。S君にとって、まだまだやるべき事は残っている。ホロメン達を支えていきたいという思いがあった。
伊達「…そうか」
伊達「なら、今後は定期的にうちに来い。俺があんたを診てやる」
S君「あのっ、いいんですか?」
S君の言葉を聞き、伊達は自分が主治医として診ていくことを申し出た。それに対し、S君は本当によいのか聞き返す。
伊達「いいもなにも、あんたみたいな身体をした人が、ほいほいいろんな病院にかかれるわけないだろ」
伊達「それに、未確認はまだまだ出てくるんじゃないのか?」
S君「はい、おそらく」
伊達「だったらなおさら医者の協力は必要になってくるだろ。だから、定期的な検査と、なにか負傷したときにはここに来な」
S君「わかりました。では、お世話になります。ありがとうございます」
伊達「よしじゃあ決まりだな。これからよろしく!」
S君は伊達の申し出に感謝し、頭を下げた。突然ではあったが、思わぬ形でS君は協力者を得られたのだった。
伊達「そんじゃ今後のことだが、あと一日は入院だ。様子を見て何もなければ退院。いいか?寝るときは寝て、働くときは働く。これが健康な生き方ってもんだ」
S君「はい、お世話になります」
S君「あっ、それと一つお願いがあります。レントゲンのコピーを頂けますか?」
伊達「ん?なぜそんなものを?」
S君「後で必要になるからです」
伊達「本当はダメだが、まぁあんたが言うなら特別にやるよ」
S君「ありがとうございます」
レントゲン写真のコピーを求めたS君。一体何に使おうとしているのだろうか。
二日後
ホロライブプロダクションオフィス
S君「おはようございます!皆さん、ご心配をお掛けしてすいませんでした!」
出社して早々、S君は同僚達に心配を掛けたことを謝り、元気な姿を見せていた。同僚達もS君を囲み、「よく戻ってきた」「本当に無事でよかった」など声を掛け、暖かく迎えていた。その暖かい空気の中、谷郷がやってきた。
谷郷「桜木君」
S君「あっ、社長。この度はご心配をお掛けしてしまい、すみませんでした」
谷郷「いや、それはいいよ。体はもう大丈夫なのかい?」
S君「はい、もうすっかり元気になりました」
谷郷「そうか、それはよかった!何はともあれ無事に戻ってきてくれて本当に嬉しいよ」
S君「はい、ありがとうございます」
谷郷「それで悪いんだけど、少し別室で話せるかな?」
S君「あっはい、大丈夫です」
葛山「私も同席します」
S君(わざわざ別室でって、なんだろう。今回のクウガのことか?)
別室で話そうという申し出に、S君は疑問を浮かべ、別室に移動する三人。
谷郷「わざわざすまないね」
S君「いえ、それで話というのは?」
谷郷「うん、それは君のことだ」
S君「私ですか?」
谷郷「そう。今回の件、君が生還したのは本当によかったと思っている。しかし、さすがに常識離れしていることもある。そろそろ僕にも教えてくれるかい?君が隠していることを」
S君(そう来たか…)
葛山に目線を向ける。葛山はコクリと頷き、話しても大丈夫だという意志を告げる。社長は信用できるということか。
S君(今日は秘密を話すのが多いな)
S君「わかりました。全部お話します」
それからS君は谷郷にも、自身が転生者であり、クウガであることを話した。話している最中、葛山も証言してくれ、谷郷はS君が話していることを真実として受け入れた。
谷郷「…これは、思っていたよりも重いことだね」
S君「社長、黙っていてすみませんでした」
葛山「私も、全てお話出来ず、すみませんでした」
谷郷「いや、いいよ。これはおいそれと話せるようなことじゃない」
谷郷「しかし、桜木君。これはかなり過酷なことだ。今後も命を堕とす危険が付き纏う。君は納得しているのかい?」
S君「はい。私はこのことを受け入れ、この世界に生まれ変わりました。正直、不安はあります。でも、それでもやらなければならないと思っています。それに、今更引き下がることはできません」
谷郷「そうか…君の気持ちは分かった。そうなると、仕事はどうする?未確認が出なくなるまで休職ということもできないことはないよ」
S君「あぁっ、それは結構です。仕事をせずに未確認のことばっかりになると気が滅入ってしまいそうです。私はホロメンの皆さんと仕事をしている方が、いい気分転換になります」
谷郷「分かった。ではこれまでどおり頼むよ。何かあったら遠慮なくいってね」
S君「はい、お気遣いありがとうございます」
谷郷「じゃあ、話はこれで終わりだ。二人とも、仕事に戻って大丈夫だよ。あと桜木君は、タレントの皆に顔を見せて来るといいよ。皆心配していたからね。」
S君「はい、わかりました」
谷郷からの話が終わり、S君と葛山はオフィスへ戻る。今日の業務を簡単に確認したが、S君は病み上がりということで、簡単なものだけをこなし、定時で上がるようにということになった。そしてS君は、ホロメン達がレッスンや収録に励んでいるスタジオに向かった。
スタジオ前
扉の前でS君は立ち止まっていた。そろそろ2分程になる。
S君(あ〜、なんだか緊張する…事情を知ってる人もいるけど、めっちゃ心配かけたからなぁ。どんな反応してくるんだろ)
S君は中にいるホロメン達がどんな反応をするのかが気になり、なかなか入れないでいたようだ。一度死亡宣告を受けた人間がひょっこり現れたら、自分だったらめちゃくちゃ驚くし、ホロメン達の中には大騒ぎする者もいるかもしれない。そんな事になったら自分は上手く受け答えできる自信がない。そんなことを思うとなかなか扉を開ける気になれなかった。
しかし、ずっとこのままでいる訳にはいかない。意を決して、扉に手を掛けた。
ガチャッ
S君「失礼しまぁ〜す…」
スバル「あっ!!S君!!おいみんな!S君が来たぞ!!」
枢「えっ!?おばあちゃん!?」
すいせい「S君!」
みこ「あっ!S君きちゃ!」
ノエル「やっほー!S君!」
スタジオに入ってきてS君にいちばん早く気づいたのは大空スバル。S君に気づくやいなや、大声で周りのホロメンにS君が来たことを伝えた。
枢「おばぁ〜ちゃ〜ん!!」
S君「ゴフッ!」
枢が叫びながらS君に突撃し、頭がS君の腹に突き刺さる。また、当たり所も悪く、みぞおちに入ってしまい、S君はふきだしてしまった。
マリン「こら、枢ちゃん!S君病み上がり!」
ぺこら「あ〜、S君大丈夫ぺこ?」
枢「うわぁぁぁぁん!おばあちゃん無事でよかったよぉぉぉぉぉ!!」
すいせい「全く!心配掛けて!死んだって聞いたときは本当にショックだったんだからね!!」
マリン「まぁでも、ほんとぉに生きててよかったよ」
ぺこら「そうぺこね。また一緒に仕事ができて嬉しい」
S君「皆さん、ご心配をお掛けしました。枢さんもすいませんでした」
枢「うぅ〜…グズッ。すぅ〜、はぁ。もうこんなのは懲り懲りだよ。生きててくれてありがとう」
S君「はい」
枢達はS君が戻ってきた事の喜びを噛み締め、皆笑顔でS君を迎え入れた。その後も、同じスタジオ内にいたホロメンや別室にいたホロメン達もわらわらと集まってきて、それぞれがS君を迎える言葉を述べた。一通りのホロメンと話し終えたところで、スバルが口を開く。
スバル「いや〜しっかし、S君てホントすごいよな!」
S君「えっ、何がですか?」
スバル「いや、心臓が止まって死亡宣告されたのに息を吹き返したことだよ!普通じゃありえねぇって!」
S君「あっ、あ〜…あはは…」
スバルの言葉に苦笑いするしかないS君。今いるホロメン達はクウガについて知らない者もおり、おいそれとクウガのことをバラすわけにはいかない。
奥の方に、ノエルやみこの姿が見えるが、こちらも苦笑いしている。
スバル「今じゃ、ホロライブのヤベェスタッフで『不死身のS君』て言われてるぞ!」
S君「不死身のS君??」
スバル「そうそう!!」
S君「ちょっと待ってくださいスバルさん!それってどういうことですか?」
スバル「え?」
スバル「だってさ、S君1回死んで息吹き返してるし、何回も危ないところや未確認が出たっていうところから無事に帰ってきてるから、俺達ホロメンやスタッフさん達みんな言ってるよ」
S君「…えぇ〜」
S君(何それ、全然嬉しくない…)
ホロメンやスタッフ達にまさかのアダ名を付けられていることに、力なく声を漏らすしかないS君であった。その後は、レッスンや収録の手伝いなどをしていった。その時のS君は終始笑顔であり、幸せな時間を過ごしていることが伝わってきていた。
全てはホロメンのために
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
今回は、新キャラクターとして伊達院長が登場しました。
ちなみに、この伊達院長、ある人物をモチーフにしています。
さて、誰がモチーフになっているか、皆さんは分かりましたか?
感想と評価、お待ちしております。
次回もよろしくお願いします。