全てはホロメンのために   作:夜桜透

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4話投稿です。

今回はオリジナルキャラが出てきます。
では、お楽しみください。


4話 先輩

ホール内は慌ただしかった。数日後に控えたライブの準備で、スタッフもホロメンも行き来している。ステージの上では立ち位置の確認、照明の調整、音響チェックが同時に進んでいた。

 

S君もその中の一人として作業をしていた。

 

S君「ふぅ、この辺りはこんな感じでいいかな」

 

S君「次やることは……えっと……」

 

手元のメモを確認しながら次の作業を探す。そのとき背後から声がかかった。

 

男「よう、桜木」

 

S君「あっ、葛山さん」

 

振り返ると葛山薫が立っていた。入社した頃から世話になっている先輩だ。

 

葛山「久しぶりだな。どうだ、仕事は順調か?」

 

S君「はい、まぁそこそこですね」

 

葛山「そこそこ、か」

 

軽く笑う。

 

葛山「桜木ももう入社して4年くらいか。最初の頃に比べたら、だいぶ動けるようになったな」

 

S君「いえ、まだまだですよ」

 

反射的にそう返す。

 

葛山は少しだけ目を細めた。

 

葛山「さっき見てたけどな」

 

葛山「もう普通に一人前の動きしてたぞ」

 

S君「そうですか?ありがとうございます」

 

少し照れくさくなって頭に手をやる。

 

葛山「相変わらず控えめだな」

 

葛山「もう少し自信持っていいと思うぞ」

 

S君「……そうですかね」

 

どこか実感のない返事だったが、その言葉は少しだけ胸に残った。

 

葛山の視線が止まる。

 

葛山「おい、その手どうした?」

 

S君の左手首には包帯が巻かれていた。

 

S君「ああ、これですか」

 

S君「昨日ちょっとぶつけちゃって」

 

葛山「……そうか」

 

葛山「無理はするなよ。悪化したら大変だからな」

 

S君「はい、気をつけます。ありがとうございます」

 

葛山「ああ」

 

軽く頷く。

 

葛山「じゃあ残りも頑張ろう」

 

葛山「そうだ、今日終わったらメシでも行くか?」

 

S君「……」

 

一瞬考える。

 

S君「いいですね。久々に行きましょう」

 

葛山「よし、決まりだな」

 

葛山「じゃ、後でな」

 

S君「はい」

 

葛山は自分の持ち場へ戻っていく。

 

S君(相変わらず、いい人だな)

 

入社した頃は、現場の動き方すら分からなかった。そんな自分に、一つずつ仕事を教えてくれたのが葛山だった。

失敗したときも、さりげなくフォローしてくれていた。

 

S君(あの頃に比べたら……少しは成長したのかな)

 

周囲を見る。遠くから聞こえる歌声。バタバタとスタッフたちが走る。マイクのテストをしている人達。ホロメンたちも真剣な表情で準備を進めている。ステージの空気には緊張と集中が混ざっていた。

 

その光景を見て、自然と背筋が伸びる。

 

S君(ちゃんとやらないとな)

 

S君(ホロメンたちのライブが成功するように)

 

小さく息を吐く。

 

S君「……まずは、目の前の仕事からだな」

 

そう呟いて、次の作業へ向かった。

 

 

 

全てはホロメンのために




4話を読んでいただき、ありがとうございます。

今後も、ゆっくりと投稿していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
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