今回はオリジナルキャラが出てきます。
では、お楽しみください。
ホール内は慌ただしかった。数日後に控えたライブの準備で、スタッフもホロメンも行き来している。ステージの上では立ち位置の確認、照明の調整、音響チェックが同時に進んでいた。
S君もその中の一人として作業をしていた。
S君「ふぅ、この辺りはこんな感じでいいかな」
S君「次やることは……えっと……」
手元のメモを確認しながら次の作業を探す。そのとき背後から声がかかった。
男「よう、桜木」
S君「あっ、葛山さん」
振り返ると葛山薫が立っていた。入社した頃から世話になっている先輩だ。
葛山「久しぶりだな。どうだ、仕事は順調か?」
S君「はい、まぁそこそこですね」
葛山「そこそこ、か」
軽く笑う。
葛山「桜木ももう入社して4年くらいか。最初の頃に比べたら、だいぶ動けるようになったな」
S君「いえ、まだまだですよ」
反射的にそう返す。
葛山は少しだけ目を細めた。
葛山「さっき見てたけどな」
葛山「もう普通に一人前の動きしてたぞ」
S君「そうですか?ありがとうございます」
少し照れくさくなって頭に手をやる。
葛山「相変わらず控えめだな」
葛山「もう少し自信持っていいと思うぞ」
S君「……そうですかね」
どこか実感のない返事だったが、その言葉は少しだけ胸に残った。
葛山の視線が止まる。
葛山「おい、その手どうした?」
S君の左手首には包帯が巻かれていた。
S君「ああ、これですか」
S君「昨日ちょっとぶつけちゃって」
葛山「……そうか」
葛山「無理はするなよ。悪化したら大変だからな」
S君「はい、気をつけます。ありがとうございます」
葛山「ああ」
軽く頷く。
葛山「じゃあ残りも頑張ろう」
葛山「そうだ、今日終わったらメシでも行くか?」
S君「……」
一瞬考える。
S君「いいですね。久々に行きましょう」
葛山「よし、決まりだな」
葛山「じゃ、後でな」
S君「はい」
葛山は自分の持ち場へ戻っていく。
S君(相変わらず、いい人だな)
入社した頃は、現場の動き方すら分からなかった。そんな自分に、一つずつ仕事を教えてくれたのが葛山だった。
失敗したときも、さりげなくフォローしてくれていた。
S君(あの頃に比べたら……少しは成長したのかな)
周囲を見る。遠くから聞こえる歌声。バタバタとスタッフたちが走る。マイクのテストをしている人達。ホロメンたちも真剣な表情で準備を進めている。ステージの空気には緊張と集中が混ざっていた。
その光景を見て、自然と背筋が伸びる。
S君(ちゃんとやらないとな)
S君(ホロメンたちのライブが成功するように)
小さく息を吐く。
S君「……まずは、目の前の仕事からだな」
そう呟いて、次の作業へ向かった。
全てはホロメンのために
4話を読んでいただき、ありがとうございます。
今後も、ゆっくりと投稿していきたいと思います。
よろしくお願いいたします。