今回は少し変わったお話になります。
S君が初めてホロメンの配信に参加します。
いつもとは少し違う雰囲気の回ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
それではどうぞ。
holoXの襲来から数日後
S君は大神ミオから連絡を受け、建物内の控え室で待ち合わせをしていた。
S君「そろそろ約束の時間か」
S君(それにしても、急に会って話せるかって、いったいなんだろう)
少し待っていると、大神ミオが控え室に入ってきた。
ミオ「あっ、S君お待たせ〜。待たせちゃった?」
S君「いえ、大丈夫ですよ。俺もさっき来たところなので」
ミオ「ありがとう。それにしても急に連絡してゴメンね〜」
S君「いえいえ、それにしても何かあったんですか?会って話しがしたいなんて珍しいですよね」
ミオ「うん、その事なんだけど、実は最近心配な子がいてね。ラミィと枢ちゃんなんだけど...」
S君「ラミィさんに、枢さんですか。そのお二人がどうしたんですか?」
ミオ「実はね、ラミィと枢ちゃん、最近生活がちょっと乱れ気味で、ご飯ちゃんと食べてなさそうなんだよね。配信が多めなのもあるけど、ラミィは配信でお酒飲んで食べずに終わったり、枢ちゃんはご飯がてきとうで1日1食しか食べない日があるらしくて...」
S君「それはちょっと...」
ミオ「でしょ?このままだと体調崩しちゃいそうかなって思って…」
ミオの話を聞いて驚きつつ心配になる。二人の生活がかなり偏ったものだったからだ。
S君(...それはよくないな)
S君(ほうっては置けないよな)
S君「とりあえず、このままにするのはよくないので、お二人の生活を整えるために何かをしないといけないですね」
ミオ「うん、それでね、ちょっと考えたことがあるんだけど〜」
ミオは少し含みのある言い方をする
ミオ「前にS君、ウチの配信のときに料理するって言ってたよね?それで、今度二人と料理配信をしてみたらどうかなって思ったんだよ。しかも今回はS君だけで作って、二人に食べさせるって形で!」
S君「ええっ!なんでそうなるんですか!?」
S君はミオからの予想外の提案に驚く
ミオ「ほら、S君は丁寧な生活してそうだし、不味いものは作らないってはなしてたじゃん?だから体に優しくて、美味しいものを作ってくれそうだなって思ったの。ホントはウチや他のホロメンがやってもよかったんだけど、スケジュール的に厳しくて…」
S君「いや〜理由は分かりましたが、それは〜…」
S君は戸惑う。
それもそうだ。自分はただの1スタッフで、配信なんかやったことがない。それに、女性アイドルの配信に男の自分が出てしまったらリスナーが荒れてしまうのではないかと考えてしまう。
気軽に引き受けられるものではなかった。
ミオ「難しいかな...」
S君「うっ…」
ミオの困った表情に、キッパリと断ることが出来ない。そして...
S君「とりあえず上司に相談してみます...」
ミオ「うん、ありがとう。お願いね」
そうしてお互いその場を後にし、S君はミオからの相談を踏まえ、上司に相談した。
上司「う〜ん、なかなか難しいところだなぁ。事情は分かるが...」
S君「やっぱりそうですよね...」
上司もS君も、安易に答えを出すことができず困ってしまった。
2人が悩んでいると、
ガチャ
谷郷「失礼する。みんなお疲れ様です。」
上司「あっ、社長。おつかれさまです」
S君「おつかれさまです。」
谷郷「おつかれさま。いつもご苦労さま。調子はどうかな?」
上司「はい、概ね大丈夫ですね」
谷郷「そうか、それならよかった。なにか困ったことはとくにないかな?」
谷郷の言葉に、二人は目を合わせる。そして上司が口を開いた。
上司「実は、ちょっと困ったことがありまして...」
先程の話を谷郷にする。
谷郷「なるほどね。確かに懸念点はあるが…S君、やってみてもいいんじゃないかな?」
S君「ええっ!いいんですか!?」
谷郷の予想外のOKに驚いてしまう。
谷郷「うん。S君、君は今まで我社のタレントのためにいろいろ頑張ってきていたね。普段の仕事ぶりも、他の社員やタレント達から聞いているよ。君なら任せても大丈夫かなって思うよ。もちろん無理にとは言わないけど」
S君「…」
言葉が出ない。すぐに腹を括れというのは無理がある。
少し悩んでいると、
上司「社長がこう言ってくださっているんだ。やってみたらどうだ?」
そう上司も言ってくる。
更に、近くで話を聞いていた葛山も会話に入ってくる。
葛山「話を聞いていたが、俺もやっていいって思うぞ?桜木のことは近くで見てきたからよくわかる」
周りの言葉を聞いて、S君も腹を括る
S君「分かりました。やりましょう」
谷郷「分かった。じゃあ頼むぞ」
こうしてS君は、初めてホロメンと配信することになった。
その後ミオに連絡を入れ、引き受けることを伝え、諸々の段取りを済ませた。
そしていよいよ配信当日になった。
ラミィ「はぁーい、こんラミ〜。雪花ラミィだよ〜」
枢「しゅぴしゅわ〜FLOWglowの宣伝担当、水宮枢だよ〜」
ラミィ「はーい、始まりました〜。今日はですねぇ、田舎のおばぁちゃんのご飯を食べようという配信になっております〜」
枢「なんか唐突な企画だよねw」
ラミィ「そうだねwそして今日は特別ゲストに、ホロライブスタッフのS君が参加してくださいま〜す!」
S君「あっ、えっと、ホロライブスタッフのS君です。リスナーの皆さん、初めまして。よろしくお願いします」
ぎこちない声とともに、画面にのほほんとしたおばあちゃんのイラストが現れた。S君は姿を見せず、イラスト越しに話すようである。
〈ほぉ、ホロライブのスタッフか〉
〈男のスタッフが出てくるなんて珍しいね〉
〈いつもと違って面白そうだな〉
視聴者も初めて配信に参加しているS君に対してコメントしている。
ラミィ「緊張してるねぇ〜笑。気楽にやってもらって大丈夫ですからねぇ〜」
枢「そうですよ〜。ゆったりとやっていきましょ〜」
二人は緊張しているS君を気遣う。
S君「ありがとうございます。よろしくお願いします」
ラミィ「はい、ということで!今日はスタッフS君がおばあちゃん役として私達にご飯を作ってくれます!」
枢「どんなご飯を作ってくれるんだろ〜楽しみ〜!」
S君「あはは、今日作るのはシンプルなものですよ」
ラミィ「いったい何が食べられるんでしょうね〜!それでは早速作ってもらいましょう!ここからはS君はおばあちゃんになりきってね〜」
S君「はっはい!それでは…」
※ここからS君こと、Sばあ
Sばあ「じゃぁ2人のご飯、作っていくよ〜」
Sばあ「まずはお米を炊いていくよ〜」
Sばあは慣れた手つきで米を研ぎ、炊飯器のスイッチを入れた。
S君「さて、次はおかずと汁物を作っていこうかね」
そう言い、まずは汁物に取り掛かった。
こちらも慣れた手つきで豚肉、大根、ごぼう、人参、こんにゃく、里芋を切って鍋に入れ煮込んでいく。そして味噌を加え、さらに煮込む。
少し味見をして、Sばあは頷く。
Sばあ「うん、このくらいでいいさねぇ。あとは、食べる前に薬味葱を加えればいいねぇ」
そしておかずに取り掛かる。
ウインナーを、油を引いたフライパン落とし、軽く焦げ目が付くくらい焼く。
その間に卵を割り、調味料を加え混ぜていく。
ウインナーが焼きあがったら皿に移し、今度は卵を入れていく。
2、3度ひっくり返し、また卵を追加して焼いていく。なんどか繰り返し、厚焼き玉子が完成した。
そしてちょうどご飯が炊き上がった。
Sばあ「うまく炊けたねぇ。これでおにぎりを作っていくよ〜」
炊きたてのご飯は粒がよく立ち、白く輝いている。
Sばあは、熱さを我慢しながら丁寧に握っていく。塩を振り、海苔を巻いて完成だ。
Sばあ「は〜い、できましたよ〜」
Sばあのメニュー
・炊きたてご飯のおにぎり
・焼きウインナー
・厚焼き玉子
・野菜たっぷり豚汁
ラミィ「わぁ〜!美味しそう!」
枢「はやく食べたいよ!」
Sばあ「お口に合うといいわねぇ。たんとおあがり〜」
ラミィ・枢「いただきます!」
ラミィは厚焼き玉子、枢は豚汁を一口
ラミィ・枢「…」
S君(あれっ、口に合わなかったかな?)
何も言わない二人に内心焦る。
だがすぐに、
ラミィ・枢「美味しー!!!」
ラミィ「この玉子焼き、出汁が効いてるのとほのかに甘いくて美味しい!」
枢「こっちの豚汁はよく煮込まれてる!」
二人とも美味しそうに食べていく。
S君(よかった。口にあったみたいだ)
S君(……でも、これだけじゃ意味がない)
S君(今日の目的は……)
S君(ここからだ)
Sばあ「口にあってよかった〜。ところで二人は、なんでいつも配信を頑張るの〜?」
ラミィ・枢「えっ?」
いきなりの質問に少し驚く二人。
ラミィ「うーん、そうだなあー。ラミィはやっぱり自分を見て楽しんでくれるリスナーさんがいるからかなぁ。ラミィを見て楽しいな、元気が出るなって思ってもらえるのが嬉しい。」
枢「すうも同じかなぁ〜。すうを見てくれる時間が楽しい時間になってくれるのが嬉しいよ!」
二人とも嬉しそうに話す。
S君(...二人とも、リスナー本当に大切にしているんだな)
S君(だからこそ、ちゃんと伝えないと)
Sばあ「そうなのねぇ〜。二人とも、みんなのことを考えてて偉いわねぇ」
Sばあ「でも、おばあちゃんは自分自身のことも大切にしてほしいわぁ」
ラミィ・枢「え?」
Sばあ「二人がリスナーさん達を大切に思っているのと同じように、リスナーさん達も二人を大切に思っているはずよ〜」
Sばあ「最近二人とも頑張り過ぎていた感じがしてねぇ。体調を崩さないか心配だったのよぉ。」
ラミィ「それは...」
枢「そうかも...」
ラミィ「配信終わったあと寝落ちして、ご飯食べてない日もあったなぁ」
枢「お腹空いてても配信準備優先しちゃうんだよね」
二人は自分の生活を振り返り、自信に負担を与えていることに気付く。そして、S君もゆっくりと語り出す。
Sばあ「もし二人が倒れちゃったら、リスナーさん達は心配すると思うし、悲しんじゃうと思うわぁ。もちろんおばあちゃんもそう」
Sばあ「だから、心配かけないためにも二人には元気でいてほしい。元気な姿を見られる方が、リスナーさん達も喜ぶと思うわぁ」
二人とも目が涙ぐんできている。
Sばあ「それに...おばあちゃんにとって、孫が元気でいてくれることが1番嬉しい。だから、自分の体も大切にしてちょうだい。」
ラミィ・枢「ううっ、おばあちゃ〜ん!」
ラミィ「これからは自分のことも大切にする!」
枢「すうも気をつける!」
〈なんか泣ける〉
〈俺、ばあちゃんに会いたくなったわ〉
〈二人にはいつまでも元気でいてほしい〉
S君(よかった)
伝えることをちゃんと伝えられ、コメントを見ると荒れている様子はなく、安心した。
その後泣き止んだ二人はご飯を完食し、配信を終えた。
ラミィ「S君、今日はありがとう」
枢「ほんとにありがとう。ご飯も美味しかった!」
ラミィ「それに、私達のことを心配してくれたんだよね。それについてもありがとう」
枢「これからは、無理のないようにしていくね」
S君「いえいえ、私は大したことはしてないですよ。感謝をするなら、周りでお二人を見てくれていたホロメンの皆さんに言ってください」
ラミィ「うん、わかった。」
S君「じゃあ、私はこれで」
そうして3人は各々帰路に着いた。
夜の街を歩くS君。
S君(ふぅ、今日は何とかなったな)
S君(配信に参加するってなったときはどうなるかと思ったけど…)
すると、スマホが鳴る。
ミオからだ。
ミオ『S君!配信ちょっとだけ見てたよ!上手くいってよかった!本当にありがとう!』
S君(ミオさん、あなたが話してくれなかったら、何も解決できなかったですよ)
S君(今は...やりきったって感覚あって、なんだか嬉しい)
S君(こういうふう、またみんなを支えられたらいいな)
顔を上げ、夜空を眺める。
空にはうっすらと銀のオーロラが見えた。
S君はゆっくりと目を細め、前を向いた。
S君(これからも、自分にできることは少しでもいいからやってみよう)
S君はそのまま歩みを続けた。
全てはホロメンのために
おまけ
数日後、ラミィはスタジオで収録をしていた際、ふとした拍子にS君を「おばあちゃん」と呼んでしまい、それを見た他のホロメンにたくさん弄られてしまった。
また、S君が出演した配信には、こんなコメントが書き込まれていた。
〈S君の料理、スバルも食べたいんですけーど〉
〈S君、牛丼も作れる?〉
〈今度、料理配信コラボしないぺこ?〉
今回も読んでくださり、ありがとうございました。
今回は、S君を配信に出演させてみました。
スタッフであるS君がホロメン達とどのように関わるのか、一度書いてみたいと思っていたお話です。
また、作中で登場した料理ですが、実際に作者が作ったものを参考にしています。
おにぎり、厚焼き玉子、ウインナー、豚汁というシンプルな献立ですが、どこか懐かしくてホッとするようなご飯をイメージしました。
そして配信内で登場した「Sばあ」のイラストは、ChatGPTに描いてもらったものになります。
こういった日常回や、ホロメンとの交流を中心にしたお話も今後書いていけたらと思っています。
感想、評価、誤字脱字報告などもお待ちしております。
それでは、また次回も読んでいただけたら嬉しいです。