愚かな悪魔がすべきこと   作:まほかんたっ!

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自分だけはモノホンなんす。

正直。こことは違う世界があって、そこに自分がいたとしても偽物としか思えないです。

あれです。あれ。世界には自分と同じ顔が三人いる、みたいな。それと同じです。

どれだけ自分と似てようと、姿が同じだろうと、別人なんすよ。

それだけは変わらないんすよ。



私は愚かではないが、違う世界の私は愚かなのだろう。だってそれは私ではなく私の皮を被った愚か者なのだから。

 

人間とは、愚かなものだ。

……いや、人間に限らず、知的生命体は総じて愚かなのだ。

それは、歴史という最高の教科書が証明している。

 

それで、私が思うに……悪魔という種族にも、それは当てはまる。

原初の悪魔だとかなんだとか呼ばれてはいるが、そんなもの最初に生まれたからに過ぎない。

無駄に歳を重ねることが強さの秘訣というのならば、その生き方は無駄で満ちているのだろう。

それは、なんと……愚かなのだろう。

 

「そう思うだろう?原初の黒、ノワール」

 

「くふふふふ、いつにも増して貴方は面白いことを言いますね。ですがそれを、原初の悪魔本人に言ってもよろしいのでしょうか?」

 

「君だから言えるんだ。ルージュやブラン、ジョーヌやヴィオレだったらこんなことは言えないさ」

 

「……呆れますね。まぁ、いいでしょう。今回貴方の話に応じたのは、一つ占って欲しかったからなんですよ」

 

占い。まぁ、そう騙っているだけなんだが……私にはこの世界の知識が有り余るほどあるのだ。

それを分け与えて生きてきたら、いつの間にか【慧眼】だなんて呼ばれていたが。

そしたら急に新しい能力として【慧眼】とか【千里眼】が身についたんだ。

最初は嘘っぱちだったのに、気づいたら本当に未来や過去が見通せるようになってしまうなんて、こんなの嘘つき得だな。

 

「……いいよ。何を占ってほしい?」

 

「そうですねぇ……私の理想は……いや、私が満たされる時は、訪れるのでしょうか?」

 

これは、答えやすいな。

 

「……うん。そうだね……君は満たされるよ。間違いなくね。その時になったら分かるよ。『スライムの魔王が生まれる時、君は運命と出会うだろう』。こんなもんでいかが?」

 

「……えぇ、満足ですとも。えぇ、えぇ……では、失礼します。私は、それを聞けただけで満足ですので」

 

……こいつ。この表情、見たことがあるぞ。

 

右手を右目に重ね左目を閉じる。その瞬間、過去が映し出される。

 

『まさか、私なのですか?ありえない……わけではないですね』

 

『えぇ、理解が早くて助かりますよ。この世界ではまだ、ノワール、でしたか』

 

『改めて、始めまして、未来の私……ディアブロ』

 

…………嗚呼、クソ。そーゆーことかよ。

 

「……私の眼は、使うのがとても疲れるのだ。だから言っておこう。あまり先の事に干渉するな。君に接触を図る君は、平行世界線の君だ。未来からきた君ではない。もしも、未来から干渉されていると過信しているのならば、君の運命は曲がってしまうかもしれないね」

 

「……その忠告、留めておきますよ」

 

まじか。原作がもう壊れた。原作が始まっていない現時点で、ノワールがリムルのことを認知している……しかも原因は平行世界線上のディアブロと思われる存在ががこの世界のノワールにリムルを認知させたこと。

今回の占いの件は、リムルが自身を満たしてくれるかの最後の確認といったところか。

 

「……ディアブロ殺してぇ…」

 

原作ならば、1章終了時ぐらいから認知し始めるはずなのだがな。

原作壊れちゃった。これ私悪くなくない?勝手なことしたディアブロが悪くない?

いや普通にディアブロが悪いだろ、これ。ふざけんな。そのせいでノワールが暴走して原作と展開が乖離しちゃったらどうすんだよ。

 

「……そんな怖いこと言わないでくださいよ。慧眼……いや、原初の灰、グリ「やめてくれ。その名前は嫌いなんだ。それとも、なんだ?私を不快にさせるためだけにやってきたのか?ディアブロ」

 

声のした方向へ顔を向けると、そこには先ほど退出したはずのノワールが……いや、それよりもっと強くなった、ディアブロがいた。

 

「何のためだ?」

 

「はい?」

 

「なんのために、お前はこの世界に干渉した?どうして、世界の運命を乱した?平行世界の、未来からの過去への干渉。しかも、己自身への干渉だ。私が、見過ごすとでも思ったか?」

 

「……えぇ、そうですね。貴方が怒る理由も分かりますよ。これは、借りを返しただけです。私の世界では、貴方はあまりにも無残でしたから」

 

「……その世界の私は、リムル=テンペストにでも敵対したのか?そうでなければ、君が無残と言うほどの惨状にはならないと思うのだが」

 

無残か。それにしても、これは有用な情報だったな。

他の世界にも私は存在している。原初の悪魔として。しかもこのディアブロがいる世界は恐らく原作の世界線だろう。

ならば、私は原作でディアブロが無残と思ってしまうくらい悲惨な目に遭ってましうわけなのだが……これが嘘の可能性もある。

というか、嘘の方がいいんだが。

 

「いえ、貴方はリムル様に尽くしてくれましたよ。共に、闇へと堕ちてくれましたしね……いえ、悪魔なのですから、堕ちたというよりはあるべき場所へ戻った、というべきでしょうか?」

 

「……闇へと堕ちた?リムル=テンペストが?私と共に?」

 

………まさか。あり得るのか?いや、分からない。私はその世界線を最後まで観測してはいない。

だから、断言はできないが……

 

「……一つ聞かせてくれ」

 

「えぇ。一つと言わず何度でも」

 

「君の世界で、シオンという鬼は生きているか?」

 

「……私が知る限りでは、そのような者は居ませんでしたね」

 

「……そうか」

 

……闇堕ちリムルですかぁ…

……私も闇に堕ちた?……まぁ、味方になんないと殺されちゃうか。

 

「……君の世界での出来事が、この世界の干渉にどう繋がるんだ?私への借りと言ったが、それはどういった借りなんだ?それをまず教えろ」

 

「相変わらず、貴方は強引ですね」

 

「無駄口はいい。今は一分一秒を大切にしたいんだ」

 

「……まず、貴方への借りですが、それは悔しいですが貴方が一番リムル様を支えられていたからですね。干渉の理由は、貴方が死ぬとき、私に伝言を残していきましたので、それをこの世界の私と、貴方に届けにきたのですよ」

 

「……詳細は?」

 

「この世界の私への伝言は控えさせて貰いますが、貴方への伝言は、これです」

 

「…手紙?」

 

渡されたのは一枚の紙切れだった。

最初に『私へ』と書かれていた。

 

──私へ、未来を見通す私へこれが届いていることを願う。

要点だけ記しておこう。

どんな世界の私にも『転スラ』という世界の知識は入っていることを前提としておく。

単刀直入に言う。私のせいで、君の世界にイレギュラーが襲いかかるかもしれない。

イレギュラーの名は、闇堕ちした主人公。

リムル=テンペストだ。

私の世界では、魔物の国『テンペスト』は壊滅状態にあった。

私の目の情報の正確さについて、君ならばよく分かると思うが、ファルムス王国の侵略戦争によって滅ぼされた形だ。

リムル=テンペストは長い期間を得て復活したが、それは私たちの知る本来の正史とは異なる。

その結果、リムル=テンペストを含む生き残りの者たちは闇へと堕ちたのだ。

リムルは仲間がこれ以上失われるのを許容しない。

だというのに、私はリムルの目の前で死んでしまう。

これは直接、『視た』ものだ。

覆すためのターニングポイントは過ぎていたのだ。

君のもとに手紙が届いているのならば、ディアブロが約束を果たしたのだろう。

つまり、だ。

ディアブロにも空間移動ができるのだから、リムルにできない道理はない。そして、それはほかのキャラクターも同様だ。

君には迷惑をかけるだろう。これは確定だ。

未来をのぞいてみろ。

ただ、覚悟しろ。

この手紙を読んだ時点で、イレギュラーは君の世界を感知した。

気をつけるべき者たちを記しておく。

リムル、ランガ、ヴェルドラ、ソウエイ、ガビル、ソーカ、トレイニー。

私には伝えることしかできない。

唯一、対策を講じるのならば、悪魔は性別が自由だ。

だから、出会ったキャラクターと同じ性別にしてしまえば、依存度は微々たるモノだか弱まるだろう。

だが、異性の状態でエンカウントしてしまったら、まず詰みだと思ってもらいたい。

ちなみに、リムルに性別が存在しないため、男女どちらでも見つかった時点でアウトだ。

では、それらに気をつけ、君の世界が原作通りのハッピーエンドを迎えられることを願う。

君に幸あらんことを──

 

「……ふざけるな」

 

「おや、何が書かれていたのですか?」

 

「君は道中、これの中身を覗かなかったのか?」

 

「こちらの世界の貴方に言われたのですよ。中身を見たら、リムル様とは二度と会えなくなる、とね」

 

「……あぁ、まぁ、そうだな」

 

知られていい情報じゃない。というか、私以外が開けたら手紙が燃えるようにできている。

 

「……この手紙には、世界の危機について記されている。ディアブロ……君は、この世界に長居はするのか?」

 

「いえ、すぐ帰る予定ですが」

 

「……そうか」

 

じゃあ次会うときは敵の可能性もあるってことか?いやいやいや、勝てるわけがない。

原初の中で生まれるのが一番早かったのは私だ。しかし、未来視に力を入れすぎて戦闘面じゃ黒と赤には敵わない。

他だったら相性もあるし、辛勝か楽勝のどっちかなんだが。

 

そもそもとして、何故私が追われるのだ?

違う世界の私なのだから別人に決まっているだろう。

リムルの好物とか知らない。

わからないことが多すぎる。

情報不足だ。

 

「とりあえず、だ」

 

リムルがその気ならば、私などもう捕まっているだろう。

ならば、干渉するのはまだ先ということだ。

それが明日なのか明後日なのか、はたまた1年後とかなのかは知らない。

だが、やることは決まった。

 

「闇堕ちキャラクターたちにはエンカウントしないように常に気をつける。原作を忠実に再現する」

 

この2つを守ればいいんだ。

 

 

……ていうか、今更ながらの疑問なのだが、ソーカが依存するなら私ではなくてソウエイに依存するべきだろ。

 

 

 





いやまぁ、その思考なら、相手からしたら、こっちが偽物になっちゃうんすけどね。
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