獣になる、少女に出会う   作:ミステリアス面白女スキー

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第一話「ダチョウに出会う」

「おぶべっ」

 

 芸術的な寝相を披露した俺がこの世界で初めて目を覚ましたのは、雨音の聞こえる薄暗い室内であった。

 

「いつつ……なん……え、どこここ……?」

 

 おそらくは落下する前に横たわっていたであろう商品棚らしき木材に目を向け、打ちつけた体を摩りながら立ち上がる。

 

 見覚えのない光景だ。

 というか今の声はなんだ?まさか俺の声なのか?

 それともなんか偶然俺が思ったことと全く同じ言葉を口にした女の子か、あるいは子供が近くにいるのか?そんなわけないとは思うが……

 

「誰かいるのか?

……返事ないしそもそも言おうと思った言葉が聞こえる辺りさては俺だなこれ……」

 

 周りを見回しながら声をかけるも返事はない。というか俺が体を動かす音以外に聞こえる音といえば雨の音くらいしかない。

 そんなことを思いながら痛みが引いてきたので摩るのをやめようとした、そのタイミングで右手に何か柔らかいものが触れた感覚を覚える。

 

「……尻尾だ……」

 

 未知の部位に手が触れている感触に、この尻尾も自分の体の一部なのだろうと思うと、少しばかり頭が痛くなった。

 

 

 

 

 

 

─────────────

 

 

 

 

 

 

 周囲に生き物の気配がないことを確認した俺は、ひとまず辺りの物を調べてみることにした。

 

「とはいえ……大した物はないかな……」

 

 ほとんどが空っぽの商品棚に時折見つかるのは動物の人形。少なくともこの建物の中心部分にはそれしかないらしい。

 見回す限りそれなりに広いが……所謂テーマパークのお土産を売ってるような、そんな規模のお店だ。

 雨が降っていて薄暗いとはいえ、いくつかある窓のおかげか足元が見えず転んだりとかはなさそうな程度には明かりは入ってきている。

 入り口付近には何も見当たらないが……おそらくは食べ物なんかが置いてあったんだろう。

 ここが使われなくなっている理由はわからないが、どんな理由であれ食べ物なんて期限もあるし廃棄されたか持ち出されたかしたんだろうな。

 奥の方には……お、まだ色々グッズらしきものが確認できるな。

 

「こういうとこだとグッズを身につけた姿を確認するために鏡とかあったりするもんな気がするんだけど……お、あっ……た…………」

 

 鏡なんかがあれば自分の姿を確認できてもう少し状況の理解が進むだろうと考え探していたところ、欠損はあったものの姿を確認できる程度のサイズの鏡を発見できた。……発見できたのは、良かったんだけど。

 

 そこに写っていたのは一人の美少女……少女っていうほど小柄でもないか、美女だった。

 特徴的な赤い模様をもつ白髪に大きめの黒い羽根飾りのようなものを付け、青と黒を基調としたドレスに身を包み、ピンクのタイツに白いヒール……えっ全く違和感なく歩いてたんだけど俺ヒール履いてんの?

 

 念のため、あるいは一縷の望みに賭けて、俺は右手を振ってみる。

 鏡像に映るその美女は、左手を振っている。

 ……俺が跳ねてみると、その美女も跳ねている。

 ダメだこれ俺だ……

 

「……俺、ダチョウさんになっちゃった……」

 

 この姿には、心当たりがあった。

 

 けものフレンズという作品がある。

 初めはソシャゲとして生まれ、アニメで爆発的に流行した。基本的には優しい世界の作品で……少女の姿をした獣たちの暮らしを描く作品だ。

 流行り始めで見た身ではあるがとても面白かった。とはいえ最終的にあそこまで流行るとは思っていなかったので結構驚いた記憶がある。まぁ最終話とかすごかったしな……納得ではあるんだが。

 ちなみに俺はアニメ一期を見ていたのとアプリの3をちょっとだけ……具体的にはシーズン1完結くらいまでやってた……くらいの人間だ。もしかしたら続けていたのかもしれないが記憶がないあたりそのくらいで死んで転生したとかなのかもしれない。まぁ死んだ時の記憶はないんだけど覚えてたらそれはそれで怖そうだし覚えてないのはラッキーということで。

 そういや初期アプリ版も興味あったんだけど始めようと思った頃にはもうサ終してたんだよなぁ……メインストーリーは有志のおかげで見れたけど結構うろ覚えだし…………じゃなかった。今はその話はいいんだ。

 

 俺のこの姿は、最初のアプリ版と後続の作品であるけものフレンズ3、ぱびりおんなど…幾つかのゲーム作品で登場している、ダチョウというフレンズの姿と一致している。

 ちなみに余談だが彼女はアニメには出ていない。でも3のメインストーリーと戦闘時のギャップがすごくて一時期ちょっと話題になっていた記憶がある。俺もあの声出せるのかな……ちょっと気になるな……

 ともかく、俺はそんなフレンズの姿になっていた。

 

「……となると、もしや俺はけものフレンズの世界に転生した……ということになるんだろうか。」

 

 もしそうならここはきっとジャパリパークなのだろう。フレンズはジャパリパークの外には出られないという話だし、まぁ酷似している別世界なら話は違うのかもしれないがそうなると俺がダチョウさんの姿なのがよくわかんないし──別にジャパリパークならダチョウに転生した理由に納得できるかと言われると別にそんなことはないけど──ジャパリパークの中と仮定しよう。

 お店が使われてないのをみるにおそらくはアニメ版と同じくらいの時期だと思われる。

 もしかしたらそれよりずっと前とか後とかも考えられるかもしれないが……まぁそこは今考えても仕方ない。どうせ誰かにヒトのことを聞けば本編前か後かくらいはわかるだろう。今考えるべきことは他にある。

 

「現在地がどこなのか、とかね」

 

 うっすらと光が差し込み始めた窓を見て、雨音が小さくなっていた事に気付く。

 丁度いい、誰かに話を聞くにしても、現在地を知るにしても、きっと案内マップのようなものがジャパリパークのどこかにあるはず。

 パークとして客を呼んでいた……あるいは呼ぼうとしていた場所だ。必ずある。

 なかったら……もうその時は誰かに会うまで彷徨うしかない。もし誰かに出会えたら…‥よほどの無礼を働かなければ多分……おそらくは大丈夫、そのはずだ。

 

 覚悟を決め、俺は扉の外へと歩き出した。

 そこに広がる光景とは──

 

「いやすぐそこに有んのかよ……」

 

 ──大きな案内マップと舗装された地面、無数のアトラクションだった。

 




期間限定配信見て久々に書きたくなったので書きました。
大まかなプロットは昔書いてたのでありますが遅筆な上にストックもないので次回がいつになるかはなんとも…
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