獣になる、少女に出会う 作:ミステリアス面白女スキー
「ふむふむ、なるほど。」
虚空にツッコミを入れた後、俺は何事もなかったかのように案内図から現在の場所を確認していた。
どうやらここは
まぁ廃墟になっていたけど、お土産屋さんあったからね。
アニメ一期の舞台ならこの辺りかな?とはなんとなく思っていたが、そこは想像通りだった。もしこれがゴコクエリアか、あるいはそもそも作中で言及のない場所だったら……まぁ、そうでは無かったのでよしとしよう。
わかったことは他にもある。まぁ地図なので当然だが現在地以外の地形だ。
俺は正直、アニメの時は結構頭を緩くして楽しんでいたのもあって話数の順番からまぁなんとなくこんな感じで繋がってるんだろうなー、くらいしか考えていなかった。
なので全然予想とかできていなかったんだけど、どうやらこのまま遊園地側に歩いていけばろっじの方……多分ゆきやまちほーの一部?なのかな?につながっているらしい。疑問系なのは地図の文字が掠れてうっすらとしか読めない部分が結構あるためである。まぁ手入れなんて中々難しいだろうし、そこは仕方ない。
さて、おそらく日の出港──原作アニメでかばんちゃんが船を探しに行った港──もこの辺りにあるわけだ。多分ここだろうな、というのは地図上にもあるし、少し遠いが今から歩けばなんとか日が暮れる頃には辿り着けるんじゃないだろうか。恐らくは。
そんなこんなで現在地も把握したことだし、せっかくなので港に向かってみようと思う。
別に島の外に出たいとかではなく、時系列を知るためだ。
人の姿がない……というかそもそも俺の目が覚めた場所がお土産店の廃墟である以上、アプリ時代ということはないだろう。一瞬危険区域に指定された可能性も考えたが、もしそうならもう少し荒れてる気がする。セルリアンもまだ見てないし、何より無事起きれた以上はあまりいない気もするし。
であれば必然的にアニメ版の時系列になるわけだが、船が残っているのなら、まだ本編が始まっていない……まぁ仮に始まっていたとしても、巨大セルリアンは倒されていないことになるだろう。
別に現状これといって目標があるわけではないし、時系列がわかった所で何をしようというわけでもないが……同じ世界であるならば、あの三人──二人と一機と呼んだ方がいいのだろうか──を見てみたいという気持ちもある。あわよくば話を聞いてみたい。
旅の邪魔をするつもりや同行などするつもりは勿論ない。原作……という呼び方も転生した今適切かはわからないけど、とにかく描かれている範囲に自らの意思で手を加えるような行為をするのはちょっとなんか恐れ多いし。
「持ち運びできる地図とかどこかにないかなぁー……っと……」
こういうのはね、案内図の脇とかにあるもんだからね。きっとすぐに……
……すぐ…………
……見つからねえな。どの案内図にでもついてるってわけじゃないのかね。
「……太陽の位置的に多分こっちが西!」
大まかな方角を定め、卵を片手に歩き出す。まぁきっと、多分なんとかなるだろ!
─────────────
そんな訳無かった。当たり前だろおバカさんか?
全く進展がなかったわけではない。少なくとも目覚めた時の場所よりは近付けたし、運良く途中でまた発見できた案内図を見る限りこの距離なら明日には辿り着けるだろう。
問題があるとすればうろ覚えの知識を頼りにしたせいで想定と逆方向に突き進んでたことに体感二時間近くの間気付けなかった点か。
元の場所に戻ろうとして道に迷い、なんとか別の案内図があるところに辿り着いたと思ったらもう日が沈みかけている。本来ならもう着いてたどころか他の場所に向かえるくらいの余裕があった気はするのも中々キツい物がある。
おかげさまでこの体の動かし方というか、スペックはうっすらと理解できたが、その代償として若干の空腹感と危険な時間帯に何の備えもしてないと言う割と不安な現実を得ることになってしまった。水については運良く途中で湖を見かけて飲むことができたが……
ダチョウという動物が持続60キロ前後で一時間走れるというかなりスタミナある動物だからだろうか、疲労は対して無いのがギリギリ救いと言ったところだろうか。
「はぁ……今日はここで寝るしかないかな……」
案内図の近くに建っていた、ショッピングモールと思わしき建物に入りながら呟く。フレンズ化した以上野宿とかしても問題ないんだろうなとは思うが、まぁせっかくある文明の残骸だ、有効活用してもいいだろう。
ここは……ジャパ……リ……モール、だろうか?英語苦手なんだよな……字も欠けてるし……成績悪かった気がするし……
「んん〜……やっぱ暗いなぁ」
まだ日の落ちきっていない夕方ではあるが、明かりのついていないショッピングモールは少し不気味だ。生前見たゾンビ映画とかを思い出す。まぁ具体的な記憶は残ってないんだけど。
とはいえ目覚めた直後のように雨が降ってくる可能性のある外で夜を過ごすのは少々気が引けるので我慢して寝るのに適していそうな場所、主に寝具やタオル類とかが売ってる場所を探すことにする。
「……!………〜〜!」
「……んん?」
目が多少慣れ始め、寝具類を探し始めて体感十数分が経過し、2階に辿り着いたところでその音は聞こえてきた。
音とは言ったがなんというか……これは声か?なんとなく機械音や物音の類ではない感覚がある。しかしどうも人の声のような感じがしない。例えるなら何かの反響音というか……効果音?コオロギなどの昆虫の鳴き声のような音も近い気がするが……ともかく、人の声帯から出ている音ではないような気がする。
「……幽霊でもいんのかな、この世界……」
嫌だなぁ、と思いつつ忍び歩きで音のした方向へ歩き出す。
正直かなり怖いのだが、もし仮にセルリアンがいるとかだった場合寝てる場合ではないので正体は確かめるほうが良いだろう。
この世界に来てから、セルリアンもまだ見たことない。実際に相対するとどんな感じなのだろう。
アニメの時は小さいのはそこそこ可愛いデザインだなとか呑気に思ってたけど、実際に出会った時にそんな呑気に構えてられるとは思えないが。
「……!……!!」
奇妙なことに、現場に近づくにつれて聞こえる音は弱くなっていく。加えて先ほどからどすんどすんと何かに何かがぶつかる音が聞こえてくる。
音の場所を探して5分ほど経過した頃だろうか。当初聞こえていた音は聞こえなくなり、途中から聞こえ始めた物音が大きくなる。
恐らくはここの角を曲がればすぐそこに物音の正体があるだろう。一度深呼吸をし、心を落ち着けそろりそろりと物陰に隠れながら覗き込───
「っ、ゃ………っば……!」
───目が合った。
入り口から差し込むわずかな外の光、それ以外の光源が以上、正確な大きさは分からないし、色もわからない。けれどその目を見た途端に走った本能的な恐怖とある意味特徴的な単眼で理解する。
セルリアンだ。
数は二匹、一匹は瓦礫に突進を続けていて、もう一匹はこちらを見つめている。まだ距離はあるし近づいてくる様子もない。逃げようと思えば逃げれるだろう。
近くにセルリアンがいる以上この建物の中で寝るのは諦めることになるが、そこは仕方ない。木の上や近くにあった他の建物を探せばなんとかなるだろう。まだギリギリ夜にはなっていないし、逃げるなら今がチャンスだ。
「…………………。
……?……!!」
逃げるために振り返ろうとしたところで、セルリアンの向こう側から再びあの音が聞こえる。
振り返ろうとした体を強引にセルリアンの方に戻すと、瓦礫に埋もれ体の一部をセルリアンに飲み込まれかけている何者かの──恐らくは、フレンズの姿が見えた。
「っ……もおぉお!!」
咄嗟に体が走り出した。こちらを見つめていたセルリアンも不意をつかれたのか、動き出しはしたものの、こちらより反応速度が遅い。
運がいいのか悪いのか、今日はたくさん道に迷ったおかげでこの体の性能はそれなりに把握できている。
相手がどれだけ硬いのかはわからないし、この暗さじゃ弱点を狙ってどうこうすることもできないが、ダチョウのフレンズであるこの体は足がとても早い。そして蹴りが洒落にならない程に強い。ならばするべきことはただ一つ。
「全ッ……力のッ……!
ダチョウキーック!!!!」
その単眼目掛けて、サッカーボールを蹴り飛ばすように足を振り抜く。思ったより大きかったがそれでも自分の腰くらいまでしかないサイズだ、しっかりと芯に当たって吹き飛ぶ。粘度があるような、けれど妙な硬さがあるような、そんな若干気持ち悪い感覚が足に残っている。
蹴り飛ばした方のセルリアンはもう片方のセルリアンを巻き込んで壁に叩きつけられたかと思うと、パッカーンと小気味良い音を立てて二匹とも弾け飛ぶ。
「やっ……た、か?
はぁ……怖かっ……じゃなかった、無事かな……」
周りにセルリアンがいないことを確認しながら脱力する。今回は運良く不意打ちに近い形で処理できたから良かったが、正面からだとどうなっていたのか。一瞬のことだったのもあり、正直セルリアンがどの程度の脅威だったのか実感が湧かない。
……なんか明るいと思ったら足が光ってるな……これが野生開放?フレンズの技?……いやまぁ良いや。段々光おさまってきてるし、そんなことよりさっきのフレンズの安否確認のが大事だ。
瓦礫の方へ顔を向けてみると、さっきのダチョウキックの衝撃で抜けたのか瓦礫から数メートル先の地面で目を回してうつ伏せになっているフレンズの姿が見えた。
姿は白いワンピースと白髪のツインテールに見える。暗いのでうっすらとだが……ぱっと見では見覚えのないフレンズだ。まぁそりゃアニメで描写されたフレンズだけが全てだとは思っちゃいなかったが……なんの動物だろう。
「えっと……大丈夫、ですか?」
「……?
……!! …………♪ ………………☆」
「んんんん……?」
彼女の手を取り、体を引っ張り上げながら声を掛けてみると、当初聞こえていたあの音が聞こえる。様子を見るにこれは彼女の声……なのだろうか?
一応頷いているように見えるので、怪我は多分なさそう。
「言葉、わかる?」
「…………!!」
物凄く頷いている。言葉は理解できるらしい。良かった、これ意思の疎通もできないってなったらヤバかった。
つまりこのフレンズは会話はできないが言葉を理解していると言うことになるが……もしやセルリアンによって声とかを奪われたのか?アニメ版は確か食べられてしまうと動物に戻る、とかだった気がするが、アプリ版は輝きを奪うと説明があった。実際にトキが声を奪われたりしていたこともある。
「えーと……その、こちらと同じ言葉を喋れていないのは、元々?」
「…… ……。
…………!」
先ほどに比べると少しラグがあったが頷いている。言葉が喋れなくなった、とかでは無さそうに見える。何かを奪われたわけではなさそうだ、良かった。
「取り敢えず俺……私……えーっと……」
……そういえば今まで誰にも会っていなかったから考えていなかったけれど、どのように振る舞うべきなのだろうか。
ダチョウさんっぽくあるべきなのか、或いは俺自身のままでいいのか……何も考えていなかった……正直、俺の中のダチョウさんのイメージを崩すのはなんか……なんか嫌だ。とはいえ演技とか殆どしたことないし、ダチョウさんっぽく振る舞うとか難しい気がする。占いとかよく知らないし……とはいえ諦めるのも………
「……?……ー??」
などと、今後のことについて唸りながら思案していると目の前のフレンズが首を傾げながらこちらをのぞいてくる。
……よし、取り敢えず一旦ダチョウさんっぽく振る舞おう。無理そうだったら諦める方向で。
「すみません、困惑させましたね……私はダチョウです」
「!
……♪…☆」
こんな目の前で唸り始めた不審なフレンズ相手にもお辞儀してくれる。優しい……
「あなたは……他のフレンズに呼ばれている名前などはありますか?」
「…?……??」
ずっと気になっていた問いかけてみると、頷くことも横に振ることもしない……困っている?どこで詰まったんだ?
「んん〜……そうですね、もう一度伝えるのでわからないところで頷いてもらえるとありがたいです。
他のフレンズに……」
「!」
「ああ、フレンズ……」
フレンズを知らない……となると俺と同じく最近フレンズになった子なのだろうか。となると名前の方もあまり期待できなさそうだ。
「フレンズというのは……私やあなたのような、動物が別の姿になった存在とでも言いましょうか。私で言うとダチョウという動物のフレンズと言ったところですね。
先ほどの質問は貴方は何の動物のフレンズですか?という意図の質問でした。ただ、この様子だと分からなそうですね……」
「〜〜♪……?」
なるほど、と言った感じで手をポンとして、首を傾げる。自分はなんの動物なのか?とでも考えているのだろうか。その辺りの知識の有無ってよく分からないんだよな。初めから自覚してるのもいれば分からなくて図書館で聞く子もいるみたいだし。
「……まぁ、わからないものを今考えるのも仕方ないですしね。どこかへ行くにも外はもう暗いですし、取り敢えず夜を明かしましょう。
ここはセルリアンも出ましたし、瓦礫があるので別の階で……どこかいい場所とか知りませんか?」
「! ……〜☆
ーー♪」
地面を蹴り飛び上がり、こちらへついてこい、とでも言いたげにこちらを振り返り手招きをする。
……えっ空飛んでない?鳥のフレンズなの?
人語を喋らないってだけですごい特徴的なのでわかりやすい気はしますが、オリフレとかではなくNEXON版からいるあの子です(ネタバレ)
原作キャラとの絡みは次々回くらいにはできたらいいな…