獣になる、少女に出会う   作:ミステリアス面白女スキー

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第三話「道連れに出会う」

「ふわぁ……んんんん〜〜っ……はぁ……っと」

 

 この世界で初めて目覚めた時とは違い、落下の衝撃などはなく自然に目が覚めた。目をこすりながら昨晩のことを思い返してみる。

 

 セルリアンを倒し正体不明のフレンズと共に向かった先にあったのは、アウトレット用品のお店であった。

 

 彼女曰く……いや、会話はできないのだが、身振り手振りや表情から察するに、此処はテントなどに身を隠せる上段差や物の配置の都合で店の外から見つかりにくいのだとか。実際店の中に入るまでそもそもテント自体見えていなかったし。

 他にセルリアンを見かけたりはしてないとの事だから、仮にいてもそこまで大きくないだろうし大丈夫だろう、ということで此処で寝ることとなった。今思うと若干軽率だったかもしれないが、実際何事も起きなかったので良しとしよう。

 彼女自身狭いところが好きなのか、或いは暗いところが好きなのか、この店に入ってからは特に口数?が増えていた気がする。

 

 ……ん?そういえば同じテントに入って寝たはずだよな?

 正直昨日は戦闘後ずっと眠かったせいで詳しいことは覚えてないが、場所の都合やセルリアンがまだ残ってても大丈夫なように、とかで一緒に寝たはず。そこまでは間違いない……あの子はどうなって……

 

「……どうしてそんなに端っこに?」

 

「 ……;;

……!!」

 

「……怒ってます?」

 

 テントの端の方でこちらを恨めしそうに見てくる彼女に多少面食らう。どうしたのだろうかと思い冷静に再度周囲を見渡してみると、昨日頭を置いていた場所に足がある。眠かったけどいざとなったらすぐ逃げれるように頭を入り口に近いほうに置いて寝たはずだから間違いない。つまり、ここから導き出される答えは一つ。

 

「……もしかして、寝ながら蹴ったりしちゃいました……?」

 

「!! 〜〜!!

……!!」

 

 あ、すごい勢いで頷いてる……マジか……申し訳ねえな……眠すぎてテントの中に入ってすぐ寝ちゃったけど次からはなんかロープとか体を拘束できるもの探したほうがいいかな……

 ……いや、そもそも誰かと一緒に寝ることなんてまずないだろ、今回は外が危険だからってだけだし。仮に拘束するにしても場所によっては無理だし。

 

「すみません、誰かと一緒に寝たのは初めてのことで自分でもここまで寝相が変だとは思っておらず……次があれば気を付けます。」

 

「! ……♪」

 

頭を下げ、向き直ろうとしたところできゅうと小さな音が鳴り響く。

 何の音だ?と思い周囲を見渡すと再び下から音が聞こえ気付く。

 俺はこの世界に来てから何も食べていないのだった。つまりこの音は俺のお腹の音である。

 

「……失礼しました。

お恥ずかしながら昨日から何も食べておらず、少々お腹が空いており……」

 

「……? …………。

……〜☆ ーー」

 

 これは……少し待て、だろうか。

 手のひらをこちらに向けたかと思うとテントから出ていってしまった。多分平気だろうけど、少し心配だ。

 昨日の事があるので一応テントから出ていつでも追いかけられるようにしておこう。それにしてもなんだか急かしてしまったような形になって申し訳なさがあるな……。

 

 ……そういえば、テントから出て行く時に外の光が入ってきたおかげで少しの間ではあるものの彼女の姿がしっかりと見えたが、何度考えても心当たりがない。やはり知らないフレンズだ。

 白いワンピースだったのは昨日見た通りだったが、先端に行くにつれて青っぽい……青空のような色へとグラデーションがかかっていた。

 ツインテールもなんというか髪の毛というか……イカとかの触手みたいな……うーん、そんな子いたか……?そもそも海の生物のフレンズが……あぁいや一応イルカとかクジラとかはいたんだっけか……とはいえタコやイカは聞いた覚えないしな……

 

 更に言うなら昨日見た空を飛ぶ姿だ。空を飛ぶフレンズといえば最初に思い浮かぶのは鳥系のフレンズ。だが彼女には鳥類特有の羽が存在していない。空を飛べない鳥であるダチョウにすら存在する、頭についている羽が存在しないのだ。

 他に空を飛ぶ動物として思い出すのは……コウモリやムササビ、モモンガあたりだろうか?

 だがその辺りの動物なら皮膜が存在している以上、そう言った装飾が見られるはず。ムササビ、モモンガは正直見た記憶がないので怪しいが、そもそもコウモリは背中に皮膜にあたる部分が生えているフレンズが多かったと思う。

 

 何より特徴的なのはヒトの言葉を喋れない、あるいは喋らないという点だ。そんなフレンズいたら絶対忘れないと思うんだけど……旧版にはいたけど3にはいなかった、とか?旧版はメインしか見てないし、見たのもだいぶ前だった気がするので出ていたとしてもかなりガッツリメインのメンバーでなければ忘れてるというのはありそう。

 もしくは3でも記憶がないだけで実装されていたか、そもそも公式ではないフレンズ……うーん、考えるだけ無駄な気がしてきた。やめようかな考えるの……

 

「〜! 〜♪♪」

 

「おかえ……おぉ?」

 

 なんてことを考えていると、特徴的なマスコットと大量のじゃぱりまんの入っている籠を抱えた彼女が戻ってきた。

 

「……♪ ……〜♪♪」

 

「ラッキービースト、かぁ……」

 

 抱えられているマスコット──ラッキービーストは、特にあわあわすることもなく無言を貫いて……あ、降ろした。

 アニメ見ていると忘れそうになるが、本来ラッキービーストは生態系の維持がどうとかでフレンズに対してあまり干渉しない。それこそじゃぱりまんをくれたり……くれたり……それ以外で関わることって何があるのか?なんかアニメを見た限りでは基本お人好しというか……困ってる子を見捨てたくない感じの倫理観的なものはありそうだったけど、どこまで縛られているのかもよくわからない。

 

 人相手だと流暢に喋り出すのだが、現状いるのはダチョウと正体不明の、少なくともヒトではないフレンズ。

 昨日は色々あって深く考える時間も無かったわけだが、こうしていると自分がもう人間ではないことを理解させられるな……別にそれが悪いとかではないんだけど、少し寂しさのようなものがある。

 

「……? 〜?」

 

 降ろしたラッキービーストに籠を返しながら自分の分のじゃぱりまんを受け取った彼女がこちらを不思議そうに見ている……取り敢えず一つ受け取った方がいいか、善意で連れてきてくれたんだし、お腹も空いたし。

 

「あぁ、ありがとうございます……味はわからないし、これを貰いましょうか。」

 

「〜! ……♪」

 

 なんだか上機嫌なのでチラリと彼女の手元を見てみると、彼女も同じピンクのじゃぱりまんを取っていたらしい。お気に入りなのだろうか。

 空腹も限界なので口をつけてみるとイチゴの味と滑らかな食感が口の中に広がる。語彙はカスなので食レポなんてできないししない訳だが、しかしそれでもこれだけは言える。

 とても、とても美味しい。少なくとも生前食べていたコンビニの菓子パンより美味しい。饅頭と菓子パン比べるのはどうなのと思わないでもないけれど、他に例えが思いつかなかったのだから仕方ない。

 

 色々な味があるらしいが全部このクオリティなら生前より食事に満足できるような……いやでも何年も饅頭しか食べれなかったら飽きがくるのだろうか。まぁ少なくとも今飽きることは無いし、お腹が空いていたのもありいくらでも食べられてしまいそうだが。

 

「ごちそうさまでした。

……食べ物ありがとうございました、とても美味しかったです。」

 

 いつの間にか三つほど平らげてしまったことに気づいた所でラッキービースト達へと向き直る。……なんか妙にニコニコと見つめられているが、変なことでもしただろうか。まぁいいや。

 

 さて、お腹もいっぱいになったし、今後の話について振ってみよう。

 正直俺の目的なんて無いようなもの……というか、ここから数時間歩けば済む内容だし、彼女には食事を見つけてもらったり、安全な寝所を教えてもらった恩もあるので、少なくともここにとどまるのは危険であると伝えるくらいはしておきたい。

 

 ……一応、昨晩についてはこっちが助けたという形にはなってる気もするが、あの時助けたのも見捨てたら寝覚め悪くなりそうという極めて利己的な理由だったこともあって負い目のようなものがあり、それをどうにか解消したいと思っているのは内緒だ。

 

「こほんっ……ええと、これからの話をしましょうか。

昨日はなんとかなりましたが……正直、この場所に留まるのは危険かもしれないと思っています。」

 

「……。 〜」

 

「昨日は二匹しかセルリアンを見ませんでしたが、そもそも確認もほとんどできていません。

実を言うと、私はここには夜を明かすために立ち寄っただけで、行き先は他にあるので別に問題ないんですが……その、あなたは大丈夫ですか?」

 

「……〜 ……><」

 

 困ったようにしょんぼりと俯いてしまう。無理もないだろう、昨日まで使っていた場所が使えなくなったのだから。

 考えていること自体はあるし話してはみるが……どうなるかはわからない。

 

「一応、解決手段というか……考えていることとしては二つあります。」

 

「! 〜?」

 

「一つ目は、この場所の調査をすること。

隅々まで見回ってセルリアンがいないか確認するだけです。それなりに広いようですが、まぁ私とあなたの二人いれば夜までにはなんとかなるでしょう。

まぁ問題もあるんですが……」

 

「……? 〜……?」

 

 

「戦力です。

ダチョウという種はともかく私自身はそこまで強いわけではないんですよ。昨日も運が良かっただけです。あなたも昨日の様子を見るに若干危ない気がしますし……まぁ、次の案の話をしましょうか。」

 

 実のところダチョウという動物は馬鹿げたキック力と足の速さ、鳥類特有の目の良さ──夜目は効かないが距離はかなり見える……らしい。俺は正直集中しないとそこまでなんだけど──に人を除いた動物の中では結構ある方なスタミナなど、強みは沢山あるんだが……中身が俺なのが問題なのだ。

 軽く走っただけでも視点と意識が噛み合わないというか……思ったよりも距離が進めてしまうし、目も追いつかないということはないのだが想像と意識が噛み合ってくれない。

 キックもそうだ、想像以上の威力を出してしまったし振り抜きすぎて後のこと何も考えてない動きだった。その上疲労も凄かったし気分もあまり良くなかった。転びかけたしね。

 

 少なくとも自分がこの体の動かし方に本当の意味で慣れるまでは強いフレンズであるなんて口が裂けても言えない。動物そのものは非常に強いはずなので早いところ慣れてワタシチョットツヨイくらいは言えるようになりたい。

 

「二つ目は……ここを離れて、新しい住処を探してみること。

とはいえこちらも似たような場所を探すのは骨が折れるかと思いますが……」

 

「!?」

 

「あぁいえ骨が折れるというのは……まぁ例えの話です。実際に骨折するわけではなく……」

 

「……? ……? !!」

 

「そうですねぇ……わかりやすく言うと、難しいかもしれない、という事です。

これだけ形がしっかり残っている建物がどれだけあるのかわかりません。

なのでもしかするとあなたが何の動物か調べ、建物以外で適した環境を探すのが一番手っ取り早いかもしれない……まぁ、これは私の考えですが」

 

 どちらであっても、あなたが迷惑でなければ手伝いますよ。と付け加える。

 用事が済めばやることもない。正直なところ何か目的がないと将来の事とか自分のこととか色々若干不安なので今は何かを考え過ぎずに済むように目標が欲しい。

 

そんな事を思っていると、どこか不安そうな、それでいて疑問を持っているような表情を向けられる。

 

「…〜?」

 

「んー……と、何か聞きたい感じでしょうか?」

 

「! !」

 

 勢いよく首を縦に振っている。 うーん、聞きたいことか……よく考えなくてもこれってこちら側から推察して聞かないといけないんだよな。

 俺が向こうの立場なら……なぜこんな事をするか、とかか?

 

「その質問は……あー、なんでこんな事をするか、で合っていますか?」

 

「……!」

 

 若干ゆっくりとだが頷いている。良かった、合ってたらしい。

 

「昨日、危険の少ない寝床教えてくれたでしょう?朝ごはんも頂きましたし……そのお礼という事で。

……それと、せっかく自分以外のフレンズに会えたので。

ちょっと恥ずかしいんですが……実は少し不安だったんですよ、一人でいるの。昨日は結局あなた以外誰にも会えませんでしたし……もしやこの世界に1人なのでは?と思うと少々……いやそんなことないとは思っていましたが……」

 

「!」

 

 ……いやなんか思ったより恥ずかしいな本当に。後半ちょっと声小さくなってないかな。やめやめ、さっさと話を進めよう。

 

「……さて!

恥ずかしい話は終わりにしてどうしますか!私にできる協力はその2つくらいです!」

 

「〜……」

 

「あぁそうかこっちから聞かないとか……えっと、じゃあ聞きますね、あなたのことを手伝ってもいいですか?」

 

「〜! 〜♪♪」

 

「そんなに頭降らなくても大丈夫ですよ……

受け入れてくれてよかったです、ではどちらにしましょうか。

一つ目か二つ──」

 

「!! !!」

 

「二つ目、別の場所を探す方ですね。

では、新しいあなたの住処が見つかるまで……

いや、やっぱり何の動物かも調べたほうがいいですね。感覚頼りだけというのも不安ですし……とにかく、これからよろしくお願いしますね」

 

「〜♪ ……〜☆」

 

 話がひと段落ついたところで、そういえばラッキービーストにもお礼を言ったほうがいいかな、と思い周りを見渡すが姿が見えない。どうやらもう行ってしまったようだ。

 ……まぁ、お礼は次にあった時でいいかな。向こうから返事は来ないんだし……今から探すのもちょっとね。

 

「さてと、方針も決まりましたし準備を済ませたら早速出発しましょうか。

昨日は見つけられなかったけど地図とか……あとカバンと水筒も欲しいですね。できれば布団か寝袋……あと寝相対策で縄とかも……」

 

「〜♪」

 

「あなたは何か……というかそうですね、これから一緒に旅をするわけですし、せめてあなたが何者かわかるまでの仮の名前を決めましょうか。希望とかあります?」

 

「? ……××」

 

 首を横に振っている。ならまぁこちらで決めるしかないか。こういうセンスあんまりないから気に入ってもらえるかわからんが……

 

 ふむ、見た目から何か……空に浮かぶ雲のようだから「くも」とかどうだろう。

 ……ねえな。虫と同じ音の名前とか俺が呼ぶのが嫌だわ。かと言ってクラウドとか呼ぶとどこぞのソルジャーが思い浮かぶし雲から取るのはやめよう。

 

 まぁ…‥無難に「ソラ」とかか?こっちもこっちで思い浮かぶものがないでもないが……まぁクラウドかくもの2択よりはマシだろう。ソラなら女の子の名前と言われても違和感ないし。

 

「……では、そうですねぇ。

ソラ、でどうでしょう。あなたの名前がわかるまでの仮の名前ですが」

 

「〜! ♪♪」

 

 空を飛びながら小躍りすると言う若干器用な真似をしつつ喜んでくれている。まぁこの反応を見る限り問題なさそうだ。

 ……くもとかにしなくて本当に良かった。

 

「では、準備しましょうか。ソラ……さんは、何か持っていくものはありますか?」

 

「? …… ……! …………♪☆」

 

「何を……おや、デジカメ?」

 

 少し服の中に手を突っ込んだかと思うと中からデジカメを取り出す……その服のどこに隠してたんだそれ。ポケットとかあるようには見えないんだけど……

 というか充電器とか大丈夫なのかな。後で聞いておこうか……

 

「えぇと……それを持っていきたい、と?」

 

「……○」

 

「構いませんよ。なんなら別に言わなくとも……あぁでも私が聞いたんでしたね。他には無いですか?」

 

「〜♪」

 

 他には無いらしい。まぁ確かに沢山持ち運ぶのも難しいだろうことを考えるとむしろありがたいか。

 となると俺も持ち出すものはあまり多く無い方が……というかあるかもまだわかんないんだよな。まぁ、朝もまだ早いし時間はある。多少ゆっくり探しても大丈夫だろう。店の中にあった時計を見る限りまだ朝の6時だ。まぁ正しいのかわかんないけど針が動いてるし多分概ね一致してるだろう。

 

「では、私が欲しいものを探させてもらいましょうか。安全かはわからないので一緒に行きましょう。

……もし探してる途中で何か欲しいものが増えたら、その時は声をかけてくださいね。基本的には持っていっていいと思いますが、念のためです。」

 

「……! 〜〜……」

 

 店内を見まわし、声をかける。

 さて、物色の時間だ。




というわけでようやく2人旅のスタートとなります(まだ外歩いてないけど)
色々口調の怪しいダチョウさんとそもそもちゃんと喋れないソラちゃんをよろしくお願いします。
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