獣になる、少女に出会う 作:ミステリアス面白女スキー
「いよっし、こんなものですかね」
「……〜?」
店内の物色を始めて大体30分程経っただろうか。俺とソラは推定ジャパリモールの入り口の前に立っていた。
運が良いことに荷物の確保はかなり順調だった。
この場で全てを細かく説明するのも大変なので簡単に用意したものだけあげておくと、まずはなんとか見つけた地図とコンパス、これがないとまた道に迷う。もう昨日みたいな経験はしたくないので気合を入れて探したが、結構すぐに見つかった。
次に水場が見つからなくても大丈夫なように2人分の水筒、夜間や暗所の視界の対策で懐中電灯。これについては使う必要がなければそれに越したことはないが、まぁどうせ必要になるタイミングはあるだろう。初めてのことだらけだし。
そして次が腕時計と縄を数本。腕時計は……正直時間を見る必要があるタイミングはあまり無い気もするので必要ないかもしれない、まぁ趣味だ。
ただ縄については結構大事だ。これで足とかだけでも縛らないと寝相が怖いし……一緒に旅することになった以上隣に誰かがいる状態で寝る事に慣れなくてはいけない。なんとかして体を固定して寝れるように努力しなくては。
最後に布団としても使えそうなコートを二着ほど用意した。これも使うことがなければそれに越したことはないが、これからゆきやまちほーの方へ向かうわけだからね。寒さ舐めてると死ぬってギンギツネも言ってたし流石に怖かったので用意した。俺はともかくソラの格好寒そうすぎるし……
これに持ち物を全て入れるための大きめなリュックサックを合わせて俺が欲しかったものは全てになる。まぁもしかしたら途中で必要なものが増えたり減ったりするのかもしれないが……その時はその時に考えれば良いだろう。
因みにソラも途中で気に入ったものを見つけたらしく、白いウエストポーチとツチノコ?に見える蛇のぬいぐるみと魚のぬいぐるみを持っていた。いやまぁ好きにすればいいと思うけどぬいぐるみか……会話できないから断言できないけどこの子情緒が結構幼い感じするんだよな。このぬいぐるみもその推測を加速させる原因になっているのかもしれないが。
しかし手が塞がるのが嫌だったのでデカめのリュックサックを拝借することにしたんだけど、これだとかばんちゃんと被るような気がするな……まぁいっか、サイズ感も見た目も違うしセーフってことにしよう。
そもそも結構パンパンなので今から他のカバンを用意するのも厳しそうだ。ちなみに最初から持っていた卵もリュックサックの中に入れているためようやく両手が空いたことに内心歓喜中だったりする。
さて、それはそれとして冒頭に話を戻すが、現在俺たちが入り口にいるのには理由がある。ここを出るためとかとは別に。
「せっかくカメラがありますし、写真を撮りたいなーと思うのですが……」
「……? ……??」
そう、写真である。せっかくカメラあるなら記念撮影とかして見返した時にこういうことあったよな〜とかやりたいと思っていたのだ。まぁ印刷できる場所とかあるのかわかんないし見切り発車なところはあるんだけど別に良いだろう。デジタルなカメラなわけだし。
……なんて思ってたんだけど、何言ってんの?みたいな顔されてるな。そんなおかしなこと言ったか?
「そ、そんな変なこと言いましたかね?
カメラがあれば写真──」
「〜!」
「んぇ?
……あぁ、もしかして写真が何かわかっていない……?」
「……! !」
「あ、あぁ……そうでしたか、失礼しました」
うーむ、今更といえば今更だがやっぱり会話できないというのはちょっとハンデだなぁ。こちらの言葉を理解してくれているだけいいのだが、できればこちらからも理解できるようになりたいところだ。いい感じに意思の疎通ができればいいのだが……感情はともかく言語として読み取れるほどの法則はあるのだろうか……っと、それはさておき今は写真について説明するか。
「写真というのはですね………………あ、ちょっと待ってください。
そもそもこれが何をするための道具か分かってます?」
「? ……×!」
……わかってなかったんかい。じゃあなんで持って行こうと思ったんだ……?まぁ別に良いけども。
「……これはカメラと言いまして。写真や映像を撮影することができます。
写真というのは……そのカメラお借りしても?」
「? …!」
「ありがとうございます、電源ボタンは……ここか。
……よかった、電源は付くみたいですね。
おっ?データあるんだ……何があるかな……?」
受け取ったカメラをいじっていると過去に撮影されたと思われる写真が数十枚残っていた。年代とか………ダメだな。わかんねえや。肝心の写真も基本的に風景の写真のみ、人が写っていたりなどはなかった。説明に使えそうな要素もないしこれはもう撮影するとこ見せたほうが早い気がするな……
「……よし。説明が面倒なので撮ってみましょうか」
「! ……?」
「ちょっとこっちに寄ってくれます?
……そうそう、肩寄せてもらって……あ、今から聞きなれない音が聞こえると思いますが気にしないでくださいね〜?
……ハイ、チーズ」
「!?!?」
パシャリ、と小さな音を立ててカメラが光る。そういえばフラッシュの設定とかいじってなかったなぁ。なんて思いながらカメラを確認する。横でソラちゃんが変な声を出して空を飛び回っているが一旦置いておこう。気にしても仕方……あれま。
「めっちゃ半目ぇ……」
「〜〜…! 〜〜!!?」
「……まぁ、これが写真で……あら、大丈夫ですか?」
「……!? ……!!!?」
大丈夫に見えるの?みたいな顔をしながらこちらを見ている。わざとではなかったんだけど……うーん、申し訳ないな。
「いやぁすみません、カメラを扱うのはわたしも久々だったもので……」
「……! ……?」
とはいえ数秒立てば落ち着いたのかカメラの中を覗き込んで不思議そうな顔をしていた
「これが写真です。
見た通り……そうですね、このボタンを押した瞬間を絵のような物にしてくれる……みたいな感じの道具です。
カメラはお返ししますね」
「〜! 〜♪♪」
目に見えて上機嫌な様子でカメラをぽちぽちいじっている。ちょくちょくシャッター音が聞こえその度にビクッとなっている様子は少し面白い。とはいえ目的も済んだしそろそろ移動したいな。
「さて、満足したらそろそろ移動しようと思いますが……あぁ、そうそう。
このカメラ、充電器……えぇと、コード……一緒についてくる紐みたいな物ですね。それがないとそのうち動かなくなってしまうんですが、持ってます?
ここを出たらしばらくそういうのを探すのは厳しいと思うので、念のため」
まぁ、ジャパリモールのような電気の生きている建物でないと充電はできないだろうが、それはそれ。
そもそもこれから向かう図書館や、道中で通るであろうゆきやまちほーにもそれらしい人工物はあったし、そこまで困ることはないんじゃなかろうか。
……とはいえ
「? ………×!!」
「……それも探してから行きましょうか」
充電器自体を持ってなかったら意味ないんだけども。
─────────────
「さて、現在向かっている場所について簡単に話しておきましょうか」
「〜♪ 〜??」
あの後、なんとか充電器を見つけジャパリモールを後にした俺たちは、俺の当初の目的である日の出港へと向かっていた。
「目指している場所は日の出港という港です。
港というのは……船が停まる場所のことで、船は水の上を移動することのできる乗り物……なんですが、この説明でわかりますか?」
「〜…… 。」
少し疑問がありそうな表情ではあるが、小さく頷いてくれる。まぁ詳しい話とか求められてもできないのであんまり追及されないのは良かった。
「で、なぜそんなところに行くかと言いますと……ぶっちゃけただの好奇心でして……」
本当のこと言われても困るだろうし、何言ってんだこいつ?と思われるだろうからなぁ……
そもそも前世の話とかあんまりするべきじゃないと思うし、適当に誤魔化すしかないんだけど……まぁ多分なんとかなる。
「……まぁ、船を実際に見てみたいなと思っていたんです。知識には有ったんですが、実物を見たことはなかったので。
方角的に図書館へ向かうときに通る場所ですし、別に目的から外さなくても良いかなと思いまして」
「〜…… !。」
よくわからないけどいいよ、みたいな表情をしながら親指を立てている。納得はしてくれたようで一安心。
……そんな話をしながら歩くこと数分、ついに港が見えてきた。
「……うん、見えてきましたね。
あれが港です」
「〜? ……〜〜♬」
「船は〜……おっ、ありますね。
となると開始前で確定か……」
「?」
「なんでもありません、こちらの話です。
せっかくだしもう少し近づいて見てみま……あら?」
この姿になってから思ったことがそのまま口から出てくることが増えたよなぁ、気をつけないとなぁ、なんて思いながら船の周りを眺めていたら、見覚えのある人影があった。
……人じゃなくてフレンズだからフレンズ影とかのがいいのかな?まぁいいや
黒と白の混ざった癖っ毛、犬系のフレンズ特有のケモミミ、そして何より両手にスケッチブックとペンを持ち、熱心に絵を描いている姿
「おや?
君達は……」
タイリクオオカミが、そこに居た。