プロメテウスの火負い   作:かゆ、うま2世

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本編は終わったので、後日譚とかifルートとかを垂れ流そうと思います
多分次はifルートです


2人並んで、一歩先へ

「えっ───暴走の心配なくなったの!?」

「………まぁ、うん」

 

 

アグライア、セファリア姉さん、ヘレクトラの3人で始めたらしい仕立て屋。その手伝いで色々編んでる最中、ぽろっと昨日の出来事をこぼした。やっぱりどこか他人事みたいに感じたままだ

そのせいか世間話のノリで言ってしまって、アグライアとヘレクトラもすごい目でこっちを見てる

 

 

「もう!プロメイア!」

「うぇ、ごめんキュレネ」

「……どうあれ、喜ばしい事です。……本当に」

「すぐに皆を呼んでこよう。盛大に祝わなければ」

「ちょ、ちょっと待って!ヘレクトラストップ!」

 

 

勢いよく立ち上がったヘレクトラを慌てて引き止めた。今みんな呼んだらどうなるか考えなくてもわかる。パーティー、パーティーパーティーだ

 

 

「まだちゃんと実感できてないから……!少し猶予ちょうだい……!」

 

 

心から祝福を受けとれる時にしてくれ、と言えば3人も理解してくれたみたいで落ち着きを取り戻してくれた。この他人事状態のまま祝われたら不完全燃焼で後悔しそうだし

 

 

「ならば実感が湧いた時に。必ず呼びなさい」

「うん、ありがとうアグライア」

 

 

そうして、また仕立て屋の手伝いを再開する。僕とアグライアが編んで、ヘレクトラが布を切って、キュレネとセファリア姉さんが色々運ぶ。ラプティスやってたアグライア直伝の技術だけど、人に見せるのは初めてのことで

 

 

「……上手ね?」

「私の記憶よりもずっと上達していますね。……というより、私よりも…」

「やるな、ラブカ」

「時間だけはあったから」

 

 

こういう事するのも数百億年ぶりぐらいだけど、忘れたわけでもないし。ちょっと触れば感覚は取り戻せる。スムーズに作業を進める僕の手先を、隣のキュレネはじっと見つめて

 

 

「ねぇ、プロメイア。もしかして料理もできたりするのかしら」

「え?…………僕はキュレネの料理好きだよ?」

「何だ、知らないのかウミウシ。ラブカの作る料理は絶品だぞ。オクヘイマでレストランを開いていたこともあった」

 

 

ヘレクトラの暴露。キュレネはため息を一つ吐いて

 

 

「修行が必要ね。あなたには美味しいものを食べて欲しいもの」

「今のままでも充分美味しいけど……」

「あたしがそうしたいの!いいでしょう?」

「じゃあ楽しみにしてるね」

 

 

どんな成長を見せてくれるのか期待して、待ち遠しく思うことにした。僕のはそれこそ何千年単位の技術だし、追い抜くのは大変だろうけど、僕のために頑張ると言ってくれるのが素直に嬉しい。改めて惚れ直してしまうぐらいには

 

 

「メイアってほんと多芸だもんねー………あ、そうだメイア、ずーっと聞きたいことあったんだけど」

「どうしたの?」

 

 

ニヤニヤと笑みを浮かべながら、僕を指差して

 

 

「ズバリ───好きな人とかいんの?」

「ぶっ」

 

 

思わず吹き出してしまった。ヘレクトラとアグライアは手を止めてじっとこちらを見る。セファリア姉さんは満面の笑みで僕を観察してる

ダメだ、目がバッチリ合ってしまった。逸らしたところで目が泳いでる時点でアウトなのはわかっていても、耐えきれずに泳いでしまう

 

 

「そっ、それ、は」

「えっ───えっ?本当にいんの?」

「誰だ」

「どなたですか」

 

 

皆の目が据わってる。明らかに僕への尋問体制に入ろうとしてる。さっきまでの仲良し空間は何処に行ったんだ

正直に言う?だめだ恥ずかしすぎて言えない。そもそもキュレネ本人が目の前にいる。誤魔化す、黙る、嘘つく──どれもキツそう

 

 

「………い、イナイヨ」

「わっかりやす……」

「恥ずかしがることはありませんよ」

「ふむ……やはりカイザーだろうか…」

 

 

三方向からの厳しい追及。もう終わりだと観念してキュレネの方を見た。助けてくれと眼で訴える。キュレネはその眼差しに対して───にっこりと笑って首を傾げる。可愛い笑顔だけど……この状況だと可愛く見えなくなってきた。絶対助けない気だ

どうしよう、どうする?あぁ、早く何とかしないと詰将棋みたいにジワジワ問い詰められてしまう

 

 

「………そ、そもそも僕って精神的には三百億歳近いし?誰相手にしても圧倒的年下というか?赤ちゃんというか?そんな人と恋愛なんて到底できないっていうか……?」

「あら、あたしのこともそんな風に思ってたの?ショックだわ……あたし達、ちゃんと想いを伝え合ったわよね?」

「キュレネ!?」

 

 

横槍どころの騒ぎじゃない。チェックメイトすぎるキュレネの一言。間違いない、ここで完全に外堀を埋める気だ

当然周りはポカンと目を点にして固まっている。石化というか、時間が止まったというか、空気が凍ったというか……とにかく色々硬直して

 

 

「メイア、ようやく掴んだ幸せだし、メイアの問題だし、あたしもとやかく言いたくないんだけどね?いくら何でも子供はどうなのかなって……」

「え?」

 

 

セファリア姉さんのその言葉に、キュレネは自分の身体を見つめた。確かに、今のキュレネはファイノン君がエリュシオンを出た時の見た目のままだから、子供って言葉に何も間違いはないわけで

 

 

「や、精神的なアレコレはわかるけどさ、やっぱ身体の問題ってあるじゃん?そういうのが好みって言うなら、あたしは何も言わないけどさ…」

「誤解だ!!!」

「………ラブカはカイザーとも仲が良かったな。まさか…」

 

 

そんな僕がロリコンみたいな扱いになるのは理不尽なので強く否定する。身体の好みで好きになったわけじゃないから断じて違う。僕の為にもキュレネの為にも言い続けておくべきだ

 

 

「確かに、私も少し幼すぎると思いますが……両者の合意のもと、幸せであればそれでよいのではないでしょうか」

「ちーがーう!身体じゃなくて!貪慾でおかしくなってからもずっと支えてもらってたし!料理も上手だし!優しいし!ちゃんとキュレネが好きなの!…………ぁ」

 

 

墓穴を掘った

言い訳しようと必死に頭を巡らせていると、その間にキュレネはすっごい笑顔。早くも恋愛に適応された。こうなるともう僕に勝ち目はない

 

 

「ふ、ふふふっ、すっかりあたしにメロメロね?」

 

 

───キュレネに揶揄われる度に、あの照れまくってたキュレネは何処に行ったのかと思う。確かにあのキュレネはギャップがあって可愛かったけど……

今のキュレネは、自信たっぷりに僕に迫ってきて……

 

 

「おぉ…大人になっちゃって……」

「ウミウシ、ラブカを悲しませるような事があれば、わかっているな?」

「全ての仕事を取りやめましょう。2着ほど、全霊を以て編まなければ」

 

 

もうどう足掻いても止められそうにないので諦めて天井を見た。お昼寝の時間にして忘れよう。今からでも遅くない、早急に夢の国に行きたい

 

 

「そうなると……あたしもサフェルの事、お義姉さんって呼ぶべきかしら?」

「なっ───悪くないね!」

「勘弁して……」

 

 

もう頭が茹であがりそうだ。物理的に爆発したっておかしくないんじゃないか。止めて欲しい僕と違って皆は楽しそうにしてるし

 

 

「皆にも知らせよう。これの祝いはしてもいいだろう?」

「何で祝う必要があるのさ……」

 

 

恥ずかしさのあまり、逃げるように呟く。何だ僕に恋人できた祝いって。何で皆もそんな乗り気なんだよ

 

 

「当然だ。幸せを願う気持ちは皆同じ───そうだろう、カイザー」

「え?」

 

 

背後に気配を感じて振り向いて、そこにいるのは見慣れた皇帝

 

 

「ほう、恋人か。めでたい事だな───プロメイア?」

「か、カイザー。あはは、皆も祝ってくれて嬉しいばかりというか、その、あはは……」

「何だ、祝ってやろうと言うのに随分と怯えているな?」

 

 

圧が強い。あまりにも強い。反する者を殺してる時すらこんな圧はなかったはずだ。何か機嫌を損ねることをしたかと思案して───どう考えてもキュレネとのアレコレじゃん!

 

 

「喜ばしい、実に喜ばしい事だ。我が忠実なる臣下が伴侶を得、自らの幸福を掴み取らんとしている───だが、同時に僕は思うわけだ。お前を僕以外の何にも渡したくはないとな。さて、どういう意味だと思う?」

 

 

物凄い速さで回転する思考。逃げ道を探すための演算回路の如く働く脳みそ。そして辿り着いた結論

 

 

「助けてキュレネ!!」

「ダメよカイザー、もうあたしのだもの」

「君主の許可なく臣下を手籠めにするとは……良い度胸だ」

 

 

即座に庇ってくれて感謝の限りではあるんだけど、もっとやり方はあっただろと思わなくもない

2人の視線が衝突する様子をただ見上げる事しかできない。怖いものは怖いんだ。この喧嘩が終わるまで身を縮ませておくしかない

せめて……キュレネもカイザーも無事であることを祈っておこう。怒らせた奴が悪いのは確かではあるから、何も申し開きはできていないけども

 

 

「ごめんね……」

 

 

小さく謝罪の言葉を呟いた。少なくとも今はこれが精一杯───のそれが、どうやら届いたようで

 

 

「……はぁ、良い。お前が幸福を掴もうとしている、喜ばしい事だ。この言葉に偽りはない」

「カイザー!」

「それはそれだ。お前ほどの男が娶る女が1人だけとは、あまりに寂しいとは思わないか?」

「カイザー……?」

 

 

肩に手が置かれ、しっかりと抑えつけられて

 

 

「僕が生きている限り、お前は僕の傍にいると思っていた。それが、あぁ……僕としたことが。お前を誰かに奪われるなどとは考えていなかった」

 

 

頬を撫でられて、目を合わせられる。視界いっぱいに映るのは獰猛な笑みを浮かべたカイザーの顔

 

 

「伴侶ができた?結構な事だ。だがその程度でお前を離しはしない。なぁに、そんな顔をするな。何も難しくはない、今まで通りに僕の下にいればいい」

「カイザー!出禁にするわよ!」

「器量というものを持て、我が臣下を夫に持つのなら尚更な」

 

 

やいのやいのと僕を差し置いてバトルを続けるキュレネとカイザー。多分放っておいても………最悪殴り合いにならなければいいかなあ。流石にそこまではいかないでしょ

 

 

「あたし皆呼んでくるから、料理……んー、祝われる人に作らせるのもアレだし、メイア以外に頼もっか」

「やはりメーレがなければ始まらないだろう。何より先に用意しなければ」

「また飲み過ぎないでくださいね……」

 

 

それはそれとして助けて欲しかったが、皆は僕を放置してそれぞれ動き出した。残されるのはキュレネとカイザーの喧騒

 

 

「どっちも大事だよ……」

 

 

できれば仲良くして欲しいなぁとも思いつつ、原因が僕でその本人がこんなんなもんだから……と言ってもこれを収められるような人間でもないし…

 

 

「止まってよぉ〜……」

 

 

そんな思いも虚しく、当分喧騒は終わらなかった

 

 

 

──────────────────

 

 

 

「確かにあなたの幸せを願うなら……うーん…」

「何でちょっと負けてるの…?」

 

 

色々あって、僕らはいつも通り家に帰ってきていた。勝敗は…どうなったっけ、時間もアレだったからカイザーは帰って…あぁもう、色々ありすぎてよく覚えてない……

 

 

「……何でもいいけど、僕が1番好きなのはキュレネだよ」

「───ふふ、あたしもよ♪」

 

 

貪慾の脅威が去ったと思ったら、更に色々やってきて……でも、この程度なら可愛いものだ

今後の生活もあるけれど、取り敢えずは今日起こったトラブルの数々に疲れた。キュレネと2人、ゆっくり過ごしながら眠りたい

 

 

「そういえば、この関係になってからはしてなかったわね?」

 

 

ベッドに導かれて、座ったキュレネが両手を広げている。柔らかい微笑みを浮かべて

 

 

「おいで?」

 

 

抗う術もなく、キュレネの胸に飛び込んで、包まれて、匂いに全身浸されるように抱きしめられる。いつだって、この抱擁は温もりを与えてくれる。安堵させてくれる。力が抜ける、心地良い安心感に包まれる。そして幸せに染められる

 

 

「キュレネ…」

「はぁい。ふふ、甘えたさんなのは治らないわね?」

 

 

依存気味だなぁと思いながらも、やっぱり抵抗できない。離れて過ごしていた期間が長すぎたせいだ

 

 

「可愛いあなたも大好きだけど………あぁ、やっぱりダメね。まだ妬いてるみたい」

 

 

頭を撫でる手に、少し違う感情が混ざって

 

 

「あなたが望むなら受け入れるけれど、その前に……ふふ、やりたいことをやっておきましょうか」

「僕は、どうしたらいい?」

「そのままじっとしていて?」

 

 

言われた通りに、ただキュレネに密着し続けた。すると彼女の腕の力が強くなっていく。段々と胸に顔を押し付けられて、呼吸も苦しくなるけれど───苦しいのも良いかもと思ってしまう自分がいる

 

 

「このまま、あたしでいっぱいにしてあげる」

 

 

想いを伝え合って、将来を誓い合って、僕らの関係は変わった。それに舞い上がって、先に色々我慢できなくなったのは、どうやらキュレネの方みたいで

 

 

「愛してるわ、プロメイア」

 

 

僕はきっと、蜘蛛の巣に誘い込まれた蝶みたいなもので───食べられてしまったのは、当然の事だったんだろう

 

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