クソボケに勝手に脳焼かれた人達と要介護者がなんやかんやあって生きる話〜俺はもう終わりたいんですけど!!〜   作:冷製春雨スープ

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二話

 

 方陣の屋敷、その執務室にて

 

 スミレは腕を組み、見下ろすようにマサオミを見ている。

 

 マサオミにくっついていた2人は、スミレの顔を見た後、2人顔を合わせて同時に頷いた。

 

 ねいとカレラはマサオミから離れ、ザンザの後ろに隠れる。ザンザはやめてほしかった。本当にやめてほしかった。

 

 スミレは静かにマサオミに質問をする。

 

 「.....其方、当方達もこちらに行くと伝えたのはいつだ?」

 

 「1週間前」

 

 ザンザが一歩後ろに退がる。

 

 「.........今日到着することを伝えたのは正確にはいつだ?」

 

 「5時間前」

 

 ねいの口があわあわとひ、手をわちゃわちゃとさせて、だんちょ!喋らない方がいいよ!もう何も言わないで!と心の中でマサオミに送信する。

 

 「...............其方、別れる前、"わかった"と言っていたが、何をわかっていたのだ?」

 

 「わからん」

 

 送信は拒否された。マサオミはそんなねいを少し見て、不思議に思うだけだった。

 

 カレラは手を額に当て、ため息を吐く。

 

 「.......................ザンザが失礼のないよう言っていただろう。失礼は無かったのだろうな?」

 

 「ああ」

 

 スミレはマサオミのことを理解していた。信用などできるはずがない。

 スミレはゆかりの方を見た。視線で返答を促していた。

 

 ゆかりはそんなスミレの目を見て思い出していた。

___ゆかり様、不審者を捕らえました。

 

___上座への着席

 

___わからん

 

 失礼はしていた。間違いなく失礼はしていたのだ。

 

 ゆかりはスミレから目を逸らした。ゆかりが選択した答えは黙秘。

 内心ゆかりは、マサオミ様!私、喋りませんよ!任せてください!!と考えている。

 

 しかしこの状況での沈黙は必然になってしまう。ゆかりはマサオミに関しての嘘は致命的に下手だった。

 

 スミレは目を逸らすゆかりを見て確信する。

 何もわかっていなかった。やはり1人で行かせるべきでは無かったな。

 

 もう一度問う。これが最後のチャンスだ。

 

 「本当に失礼は無かったのだな?少し考えてみろ」

 

 マサオミはそう言われて、本当に少しだけ考えた。時間にして2秒。短すぎる。

 

 結論 ない。

 

 「ああ」

 

 「...............」

 

 スミレは思う。

 当方は失念していた。そうだ。此奴は"少し考えろ"と言えば、本当に少ししか考えない男だった。呆れて言葉もでない。

 

 「其方、宿屋で話がある」

 

 「なぜだ」

 

 「話がある。」

 

 「わかった」

 

 この空間でマサオミだけが平然としていた。

 元凶だけがなにもわかっていなかった。その頭の中は、今日の夕飯でいっぱいだった。

 

 

 

 

 執務室に残っているのは、ゆかりとスミレ。この2人だけだった。依頼の擦り合わせを行うのに複数人いても意味がない。2人で十分だからだ。

 

 ゆかりとスミレが対面のソファに腰掛けている。話し合いが始まった。

 今回の議題は、依頼内容、依頼料の確認そして、どのように護衛するのか

 

 「マサオミ様とも話をした内容は、書面に残しています。確認してください」

 

 ゆかりがスッと一枚の紙を机の上に差し出す。

 スミレが丁寧な手つきで紙を受け取った。

 

 「拝見しよう。」

 

 

 マサオミ様との再会とっても嬉しい!!一緒に住むことができなかったのは残念だったけど、夕飯をご一緒できました!私の作っ.....

 

 スミレはパチパチと瞬きをする。

 

 再度書類を読み直し、こめかみを抑えた。

 そこに書いてあったものは怪文書。ゆかりが嬉しかったことだけを書き殴っている個人的な日記のようなもの。ポエムのようでもあるそれだった。

 

 なんだこれは......これが.....書面?

 

 スミレの様子がおかしいことに気がついたらゆかりは、書面を見る。光で少し透けて見えた。

 

 ゆかりの動きは過去一俊敏だった。

 

 ゆかりがバッと立ち上がり、スミレの持っている紙を回収する。その顔は大変赤らんでいた。

 丁寧にその紙を折り曲げ、懐に仕舞う。

 そして、何事もなかったかのように着席した。

 

 「....こほん。失礼いたしました。こちらが書面になります。」

 

 「............拝見する」

 

 スミレは見なかったことにした。優しい子である。

 

 しかし、疑問が浮かんでいた。

 再会だと?団長と方陣家の当主は知り合いだった?団長が日輪の國出身なのは聞いていたが、まさか方陣家当主と昔馴染みだったのか?

 判断材料が足りん。確定ではないな。

 

 あと、同棲?一緒にごはん?もしそれが本当ならば.....

 

 スミレは、女としての警戒度を上げた。この当主、敵かもしれない。

 

 「.....あの、どうかされました?」

 

 「...いや、なんでもない。」

 

 書類に目を通す。

 依頼期間は3ヶ月、依頼料は大金貨5枚

 日毎の護衛時間は大体午前から夜

 

 スミレの脳裏に先ほどの怪文書が思い浮かぶ

___夕食をご一緒できました!私の作っ

 .....そう言うことか

 

 「日毎の護衛時間に関して質問がある。」

 

 ゆかりは微笑みながら答える。

 

 「どうぞ」

 

 「何故夜までなのだ?基本的な護衛依頼は夕方頃までだと思うのだが」

 

 「.....それは"実質的に"そうなってしまう日もあった。と言うことでその表記にいたしました。」

 

 「そうか。その"実質的に"と言うのは、どれほどの頻度で起こるのだろうか」

 

 スミレが鋭い質問をする。

 ゆかりは微笑みを浮かべながら思考を巡らせていた。

 先ほどの文章、どこまで読んだのかはわかりませんが、夕食のことも書いてあったはず。であるならば、スミレ様は理由を分かっている上で聞いてきてらっしゃいますね。

 なら、正直に答えるのがベスト。ここで変に誤魔化せば、要らぬ疑いを持たれてしまう可能性があります。

 

 「毎日ですね。夕食をご一緒させていただいているのです。」

 

 本当は、"それだけです"と言おうとしたが、言葉が出なかった。それだけじゃ嫌だったからだ。嘘でもそれだけと言うのが嫌だった。筋金入りである。

 

 スミレは、確信する。先ほどの文章はゆかり殿の妄想ではなく、実際に起こったこと。

 ゆかり殿は敵だ。

 

 「そうか。あいわかった。問題ない。」

 

 スミレ的には問題ありだが、依頼主の家で食事をいただくことは決してないこととは言えない。傭兵的には、毒を盛られる可能性を加味して断るべきではあるが、団長はそう言う悪意に敏感だ。食べていると言うことは問題ないと言うことだろう。

 

 だが、この女。もしかして団長の世話を焼いているのではないだろうな?

 

 しかしスミレはそんな思いを封じ込めた。今は依頼の話をしなければならない。

 

 「して、今後の依頼についてなのだが、当方から提案するのは護衛の当番制だ。」

 

 ゆかりの微笑みが一瞬崩れそうになる。しかし耐えた。

 

 当番制?当番制ですか?毎日マサオミ様に会えなくなる?.....いや。いやです!認められません!!それだけは阻止しなくては!!

 

 「....当番制ですか。詳細を教えていただけます?」

 

 「当方、ねい、カレラ、ザンザ、団長で日々順番に護衛していくのだ。そうすることで、1人に掛かる負担を減らし、当方達も充分な休息を得ることができる。どうだろう」

 

 筋は通っている。これが他の傭兵団であれば、ゆかりも迷いなく了承していただろう。

 しかし、マサオミに毎日会える日々から隔日に変わるのは嫌だった。

 毎日会いたい!毎日見ていたい!毎日一緒にご飯食べたい!

 そんな思いがゆかりの頭をぐるぐる回る。

 

 しかし、当主としてのゆかりはこの意見に賛成してしまっていた。彼らのパフォーマンス維持には最適の提案。断る理由はない。 

 

 「.....わかりました。」

 

 話し合いは終了した。

 スミレは深呼吸を行い、少し深くソファにもたれた。

 

 「ゆかり殿」

 

 「.....なんですか?」

 

 ゆかりの表情はいつもの微笑みよりも曇っているように見えている。マサオミ様と毎日会えなくなる。それだけでゆかりはびっくりするほど気落ちしていた。

 そんな思いを察しているのか、スミレが話かけてきた。

 

 「団長とは毎日夕食を食べているのだろう?」

 

 「...ええ、それがなにか?」

 

 ゆかりは考える。

 もしかして.....もう夕食も一緒に食べられないのでしょうか.....

 

 「悪いのだが、団長だけでも依頼終了まで夕飯をご馳走していただけないだろうか」

 

 ゆかりの目が大きく開いた。

 

 「なぜ....ですか?」

 

スミレがソファの肘置きで頬杖をつきながら、目を逸らす。なんとなく不服そうであった。

 

 「....団長は、毎日ゆかり殿の作った飯を食べているのだろう?と言うことは、団長は其方の作る料理を気に入っていると言うこと。」

 

 「そう...なのですか?」

 

 「ああ、彼奴は食にだけは反応がいい。毎日食べると言うのはよっぽど気に入っていないとない。........当方も、彼奴の好きな物を取るのは本意ではないのだ」

 

 ゆかりは思う。

 これは、毎日会える....と言うことですよね?一緒にいる時間は少し減りますが、毎日マサオミ様の食べる姿を見られるということですよね!!

 

 ゆかりの機嫌はすぐに良くなった。単純な子である。

 

 逆にスミレの機嫌は少し悪くなった。本当に不本意だったからだ。スミレはマサオミが自分以外の手料理を食べることは面白くない。これから依頼終了まで毎日自分が作る予定だったのだ。それが無くなるのは本当に嫌だった。

 しかし、マサオミの好きな物は何も奪いたくなかった。

 

 ゆかりはそんなスミレを見ながら、気になっていたことを質問することにした。

 

 「あの...聞いてもいいでしょうか?」

 

 「なんだ」

 

 「そ、その。マサオミ様はどんな方ですか?」

 

 「?どんな方?どう言う意味だ。」

 

 「.....私は、10年前のマサオミ様しか知りません。ですので、今のマサオミ様に1番近くにいるあなた達は、マサオミ様のことをよくわかっているように見えたのです。」

 

 ゆかりは気になっていた。マサオミの圧縮言語に対応できていた団員達の姿を

 ゆかりとて少しはわかる様になってきた。しかしそれは完璧にではない。

 それがゆかりには、とても眩しく見てた。嫉妬してしまった。

 

 スミレは少し驚いたように目を見開き、柔らかい口調で言った。

 

 「全てはわかっていない。事実、ゆかり殿と団長が知り合いだったことなど知らなかったのだから」

 

 「......そうなのですか?」

 

 「ああ、彼奴は聞かんと何も答えない。知っているだろう?」

 

 スミレは微笑みながらそう言った。それにゆかりはふふっと笑う。

 

 「そうですね。なら、教え合いませんか?」

 

 「?何をだ?」

 

 「マサオミ様のことをです。スミレ様も知りたいでしょう?昔のマサオミ様の事を、その代わり教えてください。今のマサオミ様を」

 

 スミレは少し楽しいそうに答える。

 スミレにとって、それは願ってもない話だったからだ。そしてそれはゆかりにとっても同様のことだった。

 

 「.....ゆかり殿。其方とは仲良くなれそうだ」

 

 「奇遇ですね?私もそう思っていたのです」

 

 そこから半刻ほどスミレとゆかりはマサオミの話をした。

 

 「実は彼奴、ああ見えて甘い物が好きなのだ」

 

 「ええ!知っています!マサオミ様は"私が"作った大福を大変美味しそうに食べてくださるのです!」

 

 「.......そうか。前線では当方が料理を作るのだが、彼奴は"当方の"作った料理を毎日食べていたぞ」

 

 「ふふっ。そうですか。それはよかったですね?」

 

 「ああ。そうだろう?」

 

 マサオミ様は昔、こんな事をしていた。と

 団長はこの間、こんな事を言っていた。と

 

 たまに牽制を入れながら話に花を咲かす。

 楽しそうに会話を続ける。

 

 そんな2人の姿は、友人と言っても差し支えない物だった。

 





 リプトンのミルクティーを飲んでる時が一番生きてる感じがします。
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