クソボケに勝手に脳焼かれた人達と要介護者がなんやかんやあって生きる話〜俺はもう終わりたいんですけど!!〜   作:冷製春雨スープ

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三話

 

 団員達が到着した夜。

 宿屋にて、傭兵団全員で会話していた。1人、会話に混ざっていない人間はいるが誤差だろう。そう。マサオミだ。

 

 マサオミはベッドに仰向けで寝転び、そのお腹の部分に覆い被さるようにねいがうつ伏せになっている。そしてそのベッドの縁にマサオミの手を握りしめているカレラが座っていた。

 

 「ねぇ〜スミレ。方陣の当主と何話してたの?なんだか話長かったよね」

 

 「そうね。私も思ってたわ。」

 

 「依頼の話だ。それ以外には何も話していない」

 

 スミレはベッドに1番近い窓際の椅子に座っていた。その視線はねいとカレラに向いている。

 膝元に置いてある書籍が1ページも進んでいない。

 

 羨ましい。

 

 少し離れたソファに腰掛けているザンザがリラックスしているのか、偉そうな座り方でふんぞりかえりながら発言する。

 

 「わざわざ、"それ以外"を強調するのは怪しいでやんすよ。スミレちゃぁん。」

 

 ザンザの顔はニヤニヤしていた。揶揄うような視線をスミレに向けている。

 スミレはその視線に気づかなかった。依然としてねいとカレラの手元を見ている。 

 

 「.....たまたまだ。」

 

 「またまたぁ〜スミレちゃんはわかりやすいでやんすねぇ」

 

 するとスミレは、話題を逸らすようにゆかりについて団員の意見を仰いだ。

 スミレは秘密にしておきたかった。他の団員の知らない昔のマサオミの情報を

 

 話したら全て答えるまで解放されないことなど明白だった。英断である。

 

 「其方達は、方陣ゆかりについてどう思った。」

 

 「露骨に話逸らしたでやんすね。」

 

 ザンザが少し上を向き、天井の木目を見る、

___私のことはゆかりで大丈夫ですよ?

 

 「そうでやんすねぇ。珍しい貴族でやんすね。」

 

 カレラとねいも同様のことを思い出していた。

 彼女達の貴族へのイメージは良くない。嫌っていると言ってもいい。例外は片手に収まるほどだけだ。

 

 「.......そうね。珍しいとは思ったわ。でも....」

 

 「うん。わかんないよねぇ〜。」

 

 カレラとねいはまだ把握しきれていなかった。本人と喋ったわけではないのだから当たり前である。

 しかし、マサオミが警戒していない時点でこちらに敵意を向けていないことも理解していた。

 

 「そうか。少し話した当方は悪人ではないと感じた。団長、其方が1番わかっているだろう?」

 

 「ああ」

 

 「え、どういうこと?」

 

 「何よ!教えなさいよ!」

 

 「団長と方陣ゆかりは知り合いだったのだ。当方も知らなかった。」

 

 スミレ以外の団員が一斉にマサオミの方を見る。マサオミはそれに気づかず、天井を見上げてボーっとしていた。頭にあったのは、今日の夕飯後に出てきた大福だけ。

 

 ねいが体を捩り、カレラがマサオミの手をペチペチ叩いた。

 

 「ねぇだんちょ!ねぇねぇだんちょ〜どう言うこと?」

 

 「.....なんだ」

 

 「ちょっとマサオミ!話聞いてなかったわね!!方陣ゆかりのことよ!!知り合いだったの!?なんで教えなかったのよ!!」

 

 「聞かれなかった」

 

 「兄貴、聞かれなかったは万能な言葉じゃないでやんすよ?」

 

 「そうか」

 

 マサオミは平常運転だった。ザンザの言葉の意味は理解していない。マサオミはひたすら天井を見上げていた。

 

 そう言えば何故全員俺の部屋にいるんだ?

 

 考えていることは真っ当である。このタイミングじゃなければ、であるが

 

 カレラがマサオミの手をブンブンの縦に振りながら質問する。

 

 「それで!どう言う関係なのよ!!」

 

 「あ〜!それ私も気になる!」

 

 「俺ちゃんも気になるでやんす。さあさあ兄貴!答えるでやんすよ!」

 

 全員軽い口調で聞いてはいるが、口角は上がっていない。

 

 そんなことを知る由もないマサオミは考える。

 どう言う関係............

 

 「昔馴染みだ」

 

 「それは知ってるわよ!!!聞きたいのはそこじゃないわ!!!」

 

 「そうだよだんちょ!!いつ知り合ったの!?」

 

 「子供の頃だ」

 

 数秒の沈黙

 

 その時、ねい、カレラ、ザンザの思考は一致した。

 スミレ、絶対団長の話してたせいで遅くなったんだ。そうじゃなきゃスミレが貴族と長時間会話する筈がない。

 

 3人の視線がスミレへ向かう。

 スミレは目を逸らした。

 

 「何を聞いたのよ!!教えなさいよ!!」

 

 「スミレ、独り占めはズルっ子だよ!!」

 

 「スミレちゃぁん。俺ちゃんも気になるでやんす!」

 

 スミレは思う。

 こうなるから話を逸らしたのだが.....

 

 でも話したくなかった。できる限り独り占めしておきたかった。ただでさえ団長の過去話は貴重なのだ。誰かに話すのはもったいない。

 

 「当番の日にゆかり殿に聞け、当方は喋らん」

 

 スミレは腕を組み、顔を逸らした。

 断固として言わないポーズだ。

 

 「ああ〜!!スミレ独り占めするんだ!!」

 

 

 夜は更けていく。深夜になるまでその部屋の明かりが消えることはなかった。

 

 

 

 

 早朝、スミレは方陣の屋敷に来ていた。

 今日はスミレの当番だからだ。

 

 門番に挨拶をした後、ゆかりの執務室に向かって歩いていく。その間に複数人の使用人にも同様に"おはよう"挨拶をする。

 

 スミレは不思議だった。門番や使用人は、おはようと言うだけで少し驚いたような反応を見せる。最初は気のせいだと思ったが、それが2度3度と続くのなら必然だ。

 

 まさか......彼奴...........

 

 そんなことを考えている間に執務室の前についた。コンコンコンとノックを3回する。

 すると執務室から「どうぞ」と言う声が聞こえた。

 

 「失礼する。護衛に参った」

 

 書類仕事をしているゆかりは、筆を止めて顔をあげる。少し目を見開いた。

 

 「ええ、スミレ様。時間ぴったりですね?」

 

 「?当たり前だ。仕事だからな」

 

 「そうですか。今日の予定は基本的に書類仕事です。外回りもないので、ソファにお掛けになっていてください」

 

 そう言うとゆかりは、書類に視線を戻し、筆を動かし始めた。

 

 「そうか、ありがとう。」

 

 ゆかりは部屋中央のソファに腰掛けて、懐から一冊の本を取り出す。

 

 半刻ほど経った頃、ゆかりはスミレの方を見た。

 本を読んでいる。まさか........

 

 「スミレ様。お聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

 スミレが本から顔を上げて、目線を合わせる

 

 「なんだ。」

 

 ゆかりは気になっていた。もしかしてその本は、『貴方と私の逃避行(ランデブー)』なのではないかと。

 マサオミ様が読んでいた本、私も少し気になっていたんです。もしそうならお貸しいただけないでしょうか?

 

 ゆかりはマサオミには直接言えなかった。ずっとそれどころではなかったからだ。マサオミがいる時は時間の許す限りマサオミのことを見ていたかった。

 

 「その、今お読みになっている本が気になりまして.....」

 

 きょとんとしたようにスミレは自分の持っている本の表紙をなぞり、題名を向けながら言った。

 

 「武術の指南書だ。当方は剣を扱うのでな。勉学は欠かせん」

 

 「......そうですか。」

 

 ゆかりは露骨にがっかりする。そんなゆかりの姿を見て、スミレは首を傾げた?

 

 「何かあるのか?」

 

 「いえ、その。以前マサオミ様も本を読んでいたのですが......」

 

 スミレはその言葉で勘づいた。

 アレか。ねいとカレラがマサオミに読ませている恋愛小説だな。彼奴達もよくやる。話をしたいからと読ませているが、団長の反応はいつも変わらん。わからんの一言だけだ。

 

 そうか。ゆかり殿は気になっているのだな?

 

 「ねいとカレラが読ませている恋愛小説だろう?」

 

 ゆかりは少し驚きながら答える。

 

 「え、ええ。知っているのですか?」

 

 「ああ、彼奴達が団長にそう言った本を読ませるのはしょっちゅうだからな。」

 

 「そうなのですか?」

 

 「ああ。まぁ団長の反応はいつも変わらんがな。わ.....」

 

 「わからん。ですよね?」

 

 スミレとゆかりは目を合わせあって少し笑った。

 

 「そうだ。それだ。その恋愛小説が気になっているのだろう?」

 

 「ええ、マサオミ様。3回も読んでらしたので私も気になって...」

 

 「ならばねいに聞いてみるといい。喜んで教えてくれるだろう」

 

 多分。とはスミレは言わなかった。

 ゆかり殿の性格ならば大丈夫だろうと判断してのことだった。

 

 「ええ、わかりました。確かねい様が当番の日は明日でしたよね?その時に聞いてみることにします。」

 

 するとスミレは足を組み、少し上を向く

 ゆかりがどうしたのでしょう?と不思議そうにする。

 

 「.....他の団員達にはゆっくりとコミュニケーションを取った方が良い」

 

 「.....何故でしょうか?」

 

 「彼奴達は貴族を苦手としている。理由は話せんが、頭の隅にでも入れておいてくれ」

 

 「.....そうですか。わかりました。ご忠告ありがとうございます。」

 

 そう言ってスミレは本をまた読み始めた。

 

 ゆかりは考える。かぐや様から、傭兵の方々は貴族が苦手な人が多いとは聞いていましたが、本当だったのですね。

 気をつけなければいけません。マサオミ様のお仲間ですし、私も良好な関係を築きたいのです。

 

 

 そんなこんなで夕方になった。

 

 スミレはゆっくりと立ち上がり、ゆかりの方を見る。

 

 「では、ゆかり殿。当方は失礼させてもらう」

 

 「ええ。もうそんな時間なのですね。本日はありがとうございました。」

 

 スミレは扉へ歩き始めた。

 

 その時、突然ノックも無しに扉が開かれる。マサオミだ。

 ゆかりの肩がビクッと震えた。いつまで経っても慣れないらしい。

 

 「ああ、だん.....」

 「マサオミ様!!おかえりなさい!!夕飯ですよね?すぐに準備いたします!!」

 

 「ああ」

 

 いつも通りの淡白な返事をして、スミレが元々座っていたソファにどかっと腰掛ける。

 

 ゆかりは椅子から立ち上がり、急いで執務室の端の机へ向かい、煎茶を入れ始める。急須に茶葉ふたつまみ入れ、お湯を注ぐ。

 

 出来上がったお茶をお盆に乗せ、急須とお茶菓子と共にマサオミに持っていく。

 マサオミの前に湯呑みを置き、ゆっくりと急須でお茶を注ぐ。温かそうな湯気がたっていた。

 

 「マサオミ様!こちらをお飲みになってお待ちください!出来上がりましたらお呼びいたしますね!今日ももちろん大福を用意しています!夕食後に一緒に食べましょうね!」

 

 「ああ」

 

 マサオミは湯呑みを持ち、お茶を飲み始めた。

 ゆかりはそんなマサオミを見て、満足そうに微笑んだ後、パタパタと急いで執務室から出ていく。その前にスミレへ一言

 

 「あ、スミレ様!お気をつけてお帰りくださいね!!」

 

 今日1番の元気な声だった。貼り付けた微笑みではなく、少女のような顔。

 

 スミレはその一部始終を口を開けながら眺めていた。思考が追いつかない。

 

 此奴、今ノックもせずに突然扉を開けたな。それにゆかり殿は気にした様子もない。いつも通りなのか?あと"おかえりなさい"とはなんだ?

 は?なんだ?

 当主自ら茶を淹れるだと?しかもあんなに甲斐甲斐しく

 今日も大福食べましょう?今日も?毎日なのか?は?

 

 スミレの脳は、ガラガラと崩れ落ちるような音を幻視した。

 

 なんだこの熟年夫婦のようなやり取りは

 これを3週間毎日続けていたのか?は?なんだそれは、羨ましい。

 

 その席は当方のもの。その筈なのに......なぜだ?マサオミ.......

 

 スミレの脳が少し破壊された。

 

 団員達の護衛依頼

 1日目、終了である。

 

 





 カステラは下の紙みたいなところが一番美味いと思います。
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