クソボケに勝手に脳焼かれた人達と要介護者がなんやかんやあって生きる話〜俺はもう終わりたいんですけど!!〜 作:冷製春雨スープ
まさおみのおつかい 〜じょうずにできるかな?〜
日輪の國、方陣家直轄領。隣国アストライア王国と近いこともあり、他国の文化が特に流入している都市です。住民の幸福度も高く、活気のあるその街は、日輪の國・移住したい領地ランキング(自領調べ)堂々の1位の座を欲しいままにしています。
さぁ、今回のおつかいの主役は、この男の子
グレートソードを片手で振り回し、得意なことは壊すこと、苦手なことは人の気持ちを理解することでお馴染みのマサオミくん2(2)歳
このやんちゃなクソボケくんがなんと、方陣家直轄領での初めてのおつかいにチャレンジします。
スミレちゃんからどんなおつかいを頼まれるのかな?
「団長、今からでかけるのか?」
マサオミは扉を開こうとしていた手を止め、スミレの方に振り向いた。いつも背負っているグレートソードを担いでおらず、服装も長ズボンに黒のシャツというラフな格好だ。
しかし、そのラフなシャツでは隠しきれない大胸筋がミチィっと服をいじめていた。カレラちゃんとねいちゃんの趣味である。
「ああ」
スミレは読んでいた本を閉じて、マサオミの方を向いた。
「すまないのだが、洗濯用の洗剤が切れていてな。先日の買い出しの際に買うのを忘れてしまった。ついでに買ってきて欲しい。」
「わかった」
今日にでも切れそうな洗剤、早く買って来なければ服を洗濯できません。このままでは、綺麗好きなカレラちゃんがヤダヤダと駄々をこねてしまいます。
マサオミくんはお店なんて甘味処くらいしか知らないけれど、きちんとできるかな?
頑張れ、マサオミくん
「団長、気をつけて行ってくるのだぞ」
「ああ」
マサオミは扉を開けて、宿屋から一歩足を踏み出した。その背中は歴戦を感じられ、その堂々とした歩みは、傭兵団団長然としていた。
いよいよ出発です。洗剤を買えるお店の場所を聞いた上で、お買い物をしなければなりません。住民を無駄に怖がらせないように気をつけるんだよ。
初めての場所でのおつかいに挑戦するマサオミくん、その背中を少し心配そうにスミレちゃんが見守っています。
宿屋から出たマサオミは、ひたすら真っ直ぐ歩いていた。マサオミの元々の目的はただの散歩である。ねいは護衛、ザンザはどこかに出掛けてしまっており、スミレは朝から素振りやら読書やらを行っていた。
1人部屋で天井の木目をジッと見つめて暇を潰していたマサオミは、なんとなく散歩しようと思い至った。
まずは、洗剤を買いに行くか。先に買っておいた方が後々楽だろう。しかし、どこに売ってるんだ?
そんなことを考えながら歩いていたマサオミは突然、あるマダムに話しかけられた。
マサオミくんピンチです。突然恰幅のいい女の方に話しかけられてしまいました。キチンと挨拶できるかな?
「あら、あらあらあら!!ザイテンちゃんじゃないの!!」
「ああ」
ダメでしたね。これにはアリシアちゃんも草葉の陰から泣いています。
マサオミの通っている甘味処の店主のおばちゃんは、マサオミに笑いかけながら言った。
「ザイテンちゃん、実は出来たのよ!新商品!食べてかない?」
「食べる」
マサオミはおばちゃんの提案にノータイムで返答した。その顔は無駄にキリッとしているように見える。
え?マサオミくん、洗剤はいいの?さっき先に買おうって思ったばっかりだよね?
マサオミはおばちゃんに連れられて、甘味処に入って行った。
そこから30分後、マサオミは心なしか少し満足そうな顔をして退店してきた。
それもそのはず、"ウルトラジャンボ餡蜜"を食べてきたからである。重量、脅威の1kg、暴力的なまでの餡子とクリーム、そして大量の白玉にイチゴやキウイなどのフルーツがこれでもかと乗った贅沢な一品であった。
まさにカロリーの絨毯爆撃のようなもの。スイーツ好きの乙女であっても思わず目を見開き、口をあんぐりと開けてから店主を見やる一品。
想像しただけで胸焼けしそうな"甘さ"の塊をペロリと完食したマサオミは、血糖値が爆上がり、少し眠そうにしている。
食べてすぐに寝たら牛になると言うが、誰もが闘牛は想像していない。目を細めるマサオミの顔はいつにも増して威圧感たっぷりだった。泣いた幼児に見せたら泣き止み気絶するだろう。
マサオミくん眠そうですね。少し目がしょぼしょぼしています。まだ寝ないで、おつかいは終わってないよ?
「どうだった?ザイテンちゃん」
「美味かった」
「それはよかったよ!また来てちょうだいねぇ」
「ああ」
おばちゃんはヤクザなマサオミフェイスを見ても一切動じていない。慣れてしまったのだろう。
マサオミはおばちゃんに背を向けて歩きだした。そしてマサオミは考えていた。
お店にいる時に洗剤を買える場所は聞いておいた。だが、何用洗剤だったのか思い出せん。
なんとかなるだろう。
首を傾げながら歩いていると、いつの間にかおばちゃんに教えてもらった日用雑貨店についていた。店に入り、思ったよりも種類がたくさんあった洗剤や石鹸に目を丸くする。
そこには食器用洗剤や洗体用石鹸、洗濯用洗剤、掃除用洗剤などが並んでいる。
どうするのかな?マサオミくん。こんなに種類のある洗剤から一つの当たりを引くなんて、そんなことできるのかな?
マサオミはどの洗剤を買うべきか迷っていた。大男が棚の前で立ち尽くしている。無駄にデカく、無駄に威圧感が出ているせいで同じく洗剤を買いに来た主婦の方々が近づけないでいた。子供が母の後ろに隠れて震えてしまっている。これが本当の人災
その時、マサオミは過去の出来事を思い出した。
そういえば昔、風呂場でザンザが言っていた。
『兄貴、石鹸は日常で幅広く使えるものなんでやんす!男はとりあえず石鹸使えばいいでやんすよ!』
そうか、ならば俺は石鹸を買って帰ればいいんだな?
違うよマサオミくん。スミレちゃんが言っていたのは"洗濯用"洗剤です。間違っても石鹸じゃありません。
マサオミは石鹸を一つ取り、会計を済ませた後に宿屋に向かって歩き出した。
その一歩一歩に迷いはなく、あたかも完璧にこなせたと言わんばかりの足取りだった。
◇
マサオミくんの帰りを今か今かと待っていたスミレちゃん。宿屋に帰ってきたマサオミくんの持っている物を見て固まってしまっています。どうしたのでしょうか?
スミレはマサオミに手渡されたものを握りながら、腕を組んでいた。額には青筋が浮かんでいる。
「........団長、これはなんだ?」
「石鹸だ」
「当方は何を買ってこいと言っていた?」
「洗剤だ」
「これはなんだ」
「石鹸だ」
マサオミは仏頂面でなんでもないことのように答えている。スミレが怒っていることに気がついていたが、なんで怒っているのかはわからなかった。
「........当方は"洗濯用"洗剤を買ってきて欲しいと言ったんだ」
「そうか」
数秒の沈黙の後、スミレは片手でこめかみを揉みながら、ため息を吐いた。
「......団長、後で当方と一緒にもう一度買い出しに行こう。」
「なぜだ」
「当方ともう一度買い出しに行こう」
「わかった」
何もわかっていないマサオミは首を傾げて、そんなマサオミを仕方ないと言うように微笑んでから、スミレはマサオミに温かいお茶を入れ始めた。
お茶を淹れているスミレの内心は、この後のマサオミとの買い出しで頭がいっぱいになっていた。
顔を赤らめ、少しニマついている。
おつかい失敗!
◇
【スミレちゃんへのインタビュー】
___おつかいを頼んだきっかけは?
「団長は暇な時、基本的に散歩に行くからな。ちょうど洗剤も切れていたし、ついでに頼むことにしたのだ。本当は一緒に行こうと思っていたのだが、それでは団長のためにならん。当方が一生側にいるとはいえ、おつかいくらいはできねばな。将来のためにも、団長は"たまに"しか甘やかさん」
___本当にたまになんですか?
「当方基準のたまにだ。他など知らん」
___おつかいをさせてみてどうでしたか?
「予想外であった。まさか洗剤でもなく、石鹸を買ってくるとは........、しかし、それでこそ団長だ。支えがいがあると言うもの」
___マサオミくんは普段どんなお子さんですか?
「そうだな。仏頂面で何を考えているのか分かりづらいが、よく人のことを見ていると思っている。......見ているだけで、何もわかっていないがな。そして素直な一面もある。天然と言ってもいい。私生活でダメダメだからこそ、当方が支えてあげねば、と思うのだ。」
インタビュー時のスミレの表情は、終始優しい微笑みを浮かべていたが、どこか危ない雰囲気を漂わせていた。
子供を気遣う母のように見えるが、どこか女が滲み出ていた。
本日の『まさおみのおつかい 〜じょうずにできるかな?〜』はここまで!
次回をお楽しみに!
この番組はーーーーー
兄貴の"できた!"を応援するザンザ・クローバー
今日の夕食は豪華にしましょう!方陣ゆかり
住民の安全を最優先に方陣家所属使用人一同
の提供でお送りいたしました。